美郷さんに初めての子どもが生まれた。
女の子だった。
夫婦で相談して名前を決めた。
彼女の名前から一文字取って“愛”と名付けた。
愛ちゃんがおしゃべりをするようになった頃。
よく口に出す事があった。
「あいはね、あいにね、あいのね、あいなの」
という言葉だった。
その頃から、愛ちゃんは熱を出して、嘔吐を繰り返す事が増えた。
原因は不明。
他の子と比べて、発育も遅れ気味だった。
五歳になって、数ヶ月が過ぎた。
その日も愛ちゃんは熱を出して寝込んでいた。
彼女はこんな事を頼んできた。
「ママぁ、あいに、え、かかせて」
ちゃんと寝てないと駄目よ、と言うのだが、頑として聞かない。
じゃあ一枚だけよ、と画用紙とクレヨンを渡した。
愛ちゃんは、何かを描き始めた。
黒いクレヨンをぐりぐりと這わせる。
次に赤いクレヨンを。
次に茶色を。
次に黄色を。
何を描いているか判らなかった。
ただ単に色を重ねているように見えた。
「ママぁ、できたよ」
そういって愛ちゃんは画用紙を両手で持ち上げた。
どす黒い色の奔流だった。
いつも愛ちゃんが描く絵とは全く違う。
愛ちゃんはけたたましく笑い始めた。
笑いながら「あいはね、あいにね、あいのね、あいなの」と繰り返した。
その日から、愛ちゃんは「どす黒い」絵をしばしば描くようになった。
絵を描き終えると笑い「あいはね、あいにね、あいのね、あいなの」と繰り返す。
美郷さんもご主人も、どうしていいか全く判らず、困り果ててしまった。
そんな事が続いたある日。
愛ちゃんが描いた絵が少し変わった。
いや。絵ではなかった。
画用紙いっぱいに赤いクレヨンで描かれていたのは、ひらがなだった。
<あい じゃない>
その文字を見たとき、背後から声がした。
「あい、なの」
澄んだ女性の声だった。
背後には誰もいなかった。
代わりに、着せ替え人形の頭だけが落ちていた。
古びた着せ替え人形の頭だった。
見覚えがある気がしたが、愛ちゃんのものではなかった。
「急に寒気がして……捨ててしまいました」
不思議とその日から、愛ちゃんがあの絵を描く事はなくなった。
そして「あいはね、あいにね、あいのね、あいなの」ということもなくなった、という。
今、愛ちゃんは小学生になった。
他の子よりも少しだけ身体は小さいが、元気で活発だ。
ただ。
最近寝言で「私が先なんだから。愛なんだから」と呟くことがある。
LRg
mariman 2006年6月2日 20:35
イマニ 2006年6月2日 15:23
素材:A
調理:B
盛付:B
結果:±0
ぼっこし屋 2006年6月1日 1:05
何かの因果を感じる、思わせぶりな内容だからでしょうか。
不条理とはまた違う、スッキリしない苛立ち感が残ったように思います。
これで「この子を産む前に中絶(ないしは流産・死産)をしている」ならまだスッキリしたのでしょうけどね。
±0
柏木 麻宏 2006年5月30日 12:41
いやな雰囲気漂うお話でしたが、怖さがいまいち伝わらず; -0
水町 2006年5月28日 2:27
見覚えのある人形の首。
伝えたいことがうまく伝わるかどうかですね。もう少しというところです。±0
久遠平太郎 2006年5月28日 1:14
評価±0。
非常に不気味な雰囲気は出ているのですが、何だか解らないというのが正直な感想。
藪蔵人 2006年5月27日 21:32
幼児の繰り返す言葉は怖かった。
怪異全体も、不条理で、嫌な気配が漂ってますね。
評点: 1
吉田 2006年5月25日 21:11
得点なし
どんどんと強烈な怪異が、息つくヒマもなく起こるっていう意味では、超ー1の中でも上位のネタだったと思います。
ただ、あまりにも色々なことが連続してしまったため、全体のピントがボケてしまった印象があります。これで最後に収束していくようなオチがあれば、本当に凄い話だったのですが。
大抵の人がボンヤリした怪異しか経験していない中で、ここまでのネタは物凄く珍しい。しかし、怪異がハッキリとしすぎてて、逆に話として混乱してしまうって事があるんですね。実話ならではの難しさでしょうか。
マリポーサ 2006年5月21日 0:59
ありゃ?
ちょっとミスった?
評点は+1
マリポーサ 2006年5月21日 0:57
色々と想像の余地があって面白い話でした。不気味な雰囲気が続くのもいい。
最後の一言が想像の余地を狭めて興ざめな感もありますが全体としては
1
ミミちゃん 2006年5月17日 21:45
壁虎 2006年5月17日 20:51
話は不気味でよかったのですが、文が少し長すぎでした。 ±0
有澤 凪 2006年5月17日 1:14
愛ちゃんがだんだんと様子がおかしくなっていく様は、不気味さが漂っていました。とりあえず解決したようにみせて実は、というのも併せてお約束通りでした。
文章は読みやすかったです。±0
すみません、間違えてコメントいれてしまいました↓
有澤 凪 2006年5月17日 1:12
右脳教育団体とやらの言うヒントがどうにも胡散臭くて、作品自体にも影をおとしてしまいました。すみません、−1です。
もり けんた 2006年5月14日 13:03
行間読みというか、そこらが難しい〜(--;)小さな子というのは変な事をやらかすようです。オイラも小3のときに乱歩の「化人幻戯」と大藪はんの「野獣死すべし」を借り出そうとして図書館のにーちゃんがぶったまげたのを記憶してます。
しかも読破した。いま考えるとなぜだかわかんなーい(^^;)気持ち悪いコ…。±0
灯篭 2006年5月13日 9:42
他の方も話しておりますが、怪異の割に文章が長いとおもいます
判断するには内容が難しいですね・・・
±0
林不二男 2006年5月12日 22:30
〔乗っ取り」の話なのかなあとも思いましたが、どうもそうでも無いようで、結局何だが分かりませんでした。作者には申し訳ありませんが、得点なし
TOMOKI 2006年5月12日 17:25
うーん、これは難しい。
愛ちゃんの不可解な言動と不条理な怪異。これは美郷さんご夫婦とは
何の因果関係もない通り魔的なものなのでしょうか。いきなり現れた
人形も不条理ですし、今でも時折あるという愛ちゃんの寝言にも、
不安感をそそられます。明快なオチがなくともじわじわ怖いのは、
実話ならではの説得力というものでしょうか。文章も非常にお上手だと
思います。迷ったのですが+1
てらまち 2006年5月9日 9:30
実話といのはこういうものなのかもしれない。ここに、著者の想像、脚色が入れば、さらに怖い話になるのだろうが、実話と創作の線引きが難しくなってしまう。文体、構成は良くできていると思う。±0。
sora 2006年5月8日 12:35
文章;■■■■□
怪異;■■□□□
恐怖;■■□□□
評価;■■■□□→±0
実に不可解な怪異である。
ある程度のストーリーが展開されながらも、明確な結論のないまま結末を迎えている。
実際、怪異というものは突拍子もなく発生し、対する因果関係も辻褄合わせも必要としないものであるとは思うのだが、この作品の場合は、そのことが結果的に仇となり、読み手に混乱を招くこととなってしまったのではないだろうか。
表現、描写は確かであると思う。
ponken 2006年5月7日 13:32
不条理な不気味さは、トップクラスでしょうね。すごく迷いますが、+1で。
2006年5月7日 2:29
最後の一行がキモであることを考えると、非常に怖い話なのだが、全般にやや冗長。
0で。
でも、怖いのは確か。
ナルミ 2006年5月7日 2:14
理由のほのめかしすらなく、不条理なままで終わってしまった。
そこが実話っぽいと言えばそうなのだが‥‥。
±0
金縛郎 2006年5月7日 0:49
他の方々とだいたい同じ感想です。不条理で不思議なの
ですが怖さはいまひとつ。±0で。
じぇいむ 2006年5月6日 23:04
愛ちゃんに何かがとり憑いているんでしょうが、それが人形なのかどうなのかが分かりづらかったです。「あいはね、あいにね、あいのね、あいなの」の言葉は、いかにも幼児が言いそうでちょっと怖いですね。
評価±0
hydrogen 2006年5月6日 17:24
-0
やはりなにやら解らなかったというのが正直なところ。
何かワケアリっぽかったけど、ご夫妻は平和そうで後ろ黒いものを感じない。
先というからには前があるのでしょうが。
風来月人 2006年5月6日 16:29
うーん、怪異の内容にしては文章が長くて損をしている気がします。±0です。
撃墜王の孤独 2006年5月6日 16:15
不気味な雰囲気が漂う話なんですが、人形の首が転がって女の声が聞こえたので終ったのがあっけない。そのあっけなさと不条理さ実話らしいとも言えるのだが・・・。
これは10行〜20行ぐらいに縮めて小さい話として書いたほうがネタが生きたのでは。いいネタを生かし損ねたという感じだ。惜しい。
次に期待して±0で。
ネジ 2006年5月6日 14:25
子供の不気味な絵とか良かったんですが、いまひとつ。人形の首を捨てただけであっさりおさまったので、ヤマ場が期待値を下回ってしまった感じでした。 ±0
くりちゃん 2006年5月6日 13:06
美郷さんってご苗字ですか。
女性名かと思ったので、「愛」の字の由来でちょっと混乱しました。
(語り手の名は仮名にすると思うので、姓か名か区別のつきやすい名前にした方がいいのでは)
人形の首、というところは不気味ですが、なにやらわけがわかりませんでした。??