豊田さんには、もうすぐ1歳になる娘がいる。名前はマキちゃん。
豊田さんには悩みがあった。マキちゃんが自分に全くなついてくれないことだ。
豊田さんがだっこをしても、オムツを替えても、叫び声を上げて泣き出す。
自分のやり方が悪いのだと思った。
色々な育児講習にも通ってみた。しかし、効果はない。
豊田さんは困り果てた。
周りの人は<その内なつくだろうから気にするな>と慰めてくれたが、豊田さんは悩んだ。
ある日、豊田さんの奥さんが1冊の本を持ってきた。
「右脳教育の団体があって、そこの偉い人が書いた本ですって」
その本には、子供と友好な関係を持てない親が、その問題を解消する為のヒントが書かれていた。
そのヒントの一つにこうあった。
―自分がお子さんにした、“悪かったなあ”と思う行為を、お子さん本人に告白しなさい―
豊田さんは泣き喚くマキちゃんを膝の上に乗せ、思いつくことを順番に告白し、謝った。
<パパ、いつも帰り遅くてマキと遊べなくてごめんねえ>
変わらず泣き通し。
<パパ、タバコ吸ってごめんね、マキ嫌だよねえ>
変わらず泣き通し。
そんな状態が30分は続いただろうか。全く変化はない。
しかし、豊田さんの頭にふと、あることが思い浮かんだ。
豊田さんは姿勢を正すと、マキちゃんに向かって言った。
<パパ、マキがまだママのお腹に来てすぐの頃、ママにマキのこと“殺して”って言っちゃったんだ、それが嫌だったのかな?>
言った次の瞬間、マキちゃんはピタリと泣くのを止め、豊田さんを見つめると
<マキ、それが嫌だったのぉ〜!>
と叫んだ。
マキちゃんは豊田さんの腕の中で暴れ、また泣き出す。
豊田さんはマキちゃんを抱き締め、<ごめん!ごめん!>と泣きながら謝った。
豊田さんの奥さんがマキちゃんを妊娠した頃、豊田さんは多額の借金を抱えており、出産を考えられなかった。
その為、一度は奥さんに中絶を頼んだのだが、長い話し合いの末にマキちゃんを出産する事にしたのだった。
「今ではすごいなついてくれて、本当に幸せです」
そう言いながら、豊田さんはマキちゃんを胸に抱きしめて笑った。
今、マキちゃんが話せる単語は「ぱぱ」と「まま」だけだという。
LRg
mariman 2006年6月2日 20:34
水町 2006年6月2日 2:27
お子さんの言葉の発育、遅くないですか?気になってしまう。±0。
2006年5月30日 15:26
へぇ〜〜。良かったじゃん。
+1
柏木 麻宏 2006年5月30日 13:40
ありきたりなお話のような気もしますし 怖さもなんだか薄く感じました。マキちゃんが懐いてくれるようになってよかったですね、と±0で
久遠平太郎 2006年5月28日 1:03
評価±0。
古典的怪談の現代バージョンという感じの話ですね。
タイトルがちょっと適さないような気がします。
藪蔵人 2006年5月27日 21:25
うーん、右脳教育云々は省略しても良かったんじゃないかなあ。
ネタはなかなかなのですが。
評点: 0
吉田 2006年5月25日 21:00
良い▲
初読でギョっと驚いて、あとからジーンと感動という珍しい怪談ですね。
怪異の中に色々な感情が仄見える怪談は好きです。
「右脳教育の団体」とだけ書いては、確かに胡散臭い感じもします。詳しく書くとこでもないし、サラリとぼかしてしまった方が良かったかも。
イマニ 2006年5月25日 18:12
素材:B
調理:B
盛付:B
結果:±0
ずっと仲良くして欲しいですね。家族っていいものです。
ミミちゃん 2006年5月17日 21:36
有澤 凪 2006年5月17日 1:13
右脳教育団体とやらの言うヒントがどうにも胡散臭くて、作品自体にも影をおとしてしまいました。すみません、−1です。
もり けんた 2006年5月14日 12:55
うーん、そういう意味ならうちのおかんは最後までオイラに謝る気はなかったなー(--;)マキちゃんは幸せです。
ただ、うーん、そこどまりで。
臨死体験しちゃったからなあ。小さい頃で記憶ないけど。±0
TOMOKI 2006年5月12日 17:25
すらすらと読める巧い文章に、なかなかぎょっとさせられる怪異
(字面では語弊がありますが、これは明らかに怪異ですので)
玉に瑕はやはり「右脳教育」ですか。ただ「育児本」とするなどで
さらっと流した方が怪異が際だったと思いますが、良かったので+1
林不二男 2006年5月11日 23:42
ぎょっとしました。 +1
ponken 2006年5月11日 22:10
そいいうオチでしたか。マキちゃんが怖くもあり、かわいくもあります。プラスで。
田原 誠 2006年5月8日 13:29
とにかく胡散臭いことを除いても、一言謝っただけで許せる程度のことだったのだろうか。 ▼
sora 2006年5月6日 20:02
文章;■■■□□
怪異;■■■□□
恐怖;■■□□□
評価;■■■□□→±0
言語を習得する前の赤子が言葉を話すという怪異は1st seasonにもあった。
ただ、この話は酩酊氏も講評しているように自身の意思による台詞であると考える。実に稀な事例である。
ただ、告白すれば問題が解消するという右脳教育団体なるものの著書が非常に胡散臭く、そのポイントで全体的に説得力に欠けているように感じた。
hydrogen 2006年5月6日 17:56
-0
怪談とすると「今度は落とさないでね」というアレと比べたりして
ちょっと弱いかなぁ、と。
てらまち 2006年5月6日 16:15
怪異というか、いい話なのかなぁ。怪談とは異なる感じ。±0。
金縛郎 2006年5月6日 2:23
話中に登場する右脳教育団体の話は割愛した方がよかったかも。
もちろんタイトルも。
その右脳教育団体のことをとやかく言うつもりは
ありませんけど、胡散臭く見える原因になって
しまっていると思います。
±0。
ネジ 2006年5月6日 2:11
赤ちゃん雑誌を読むと「胎児の頃の記憶」の話はわりと珍しくないので、お母さんをやってる人にはインパクト薄いかもしれないですね。
一瞬マトモにしゃべったのはすごいけど、そこだけだったので。 ±0
ぱんだ 2006年5月6日 1:41
まだコンパクトに纏まる気もしますがとても好きな話でした。産まれてきて良かったねって温かい気持ちになれました。怪異の息抜きにあると嬉しいですね(^-^)+1で。
風来月人 2006年5月5日 17:27
前段をもう少し整理すれば良くなったと思われます。±0です
撃墜王の孤独 2006年5月5日 13:37
怪異は凄いし文章もいい。 1で。
くりちゃん 2006年5月5日 12:51
何だかなあ…ごめんなさい。
ナルミ 2006年5月5日 12:45
「喋れないはずの赤ん坊が喋る」という怪異はありきたり。
±0
(「右脳教育の本」とやらのいかがわしさはまあご愛敬だが)