僕の母は看護婦をしている。
昔は大きな病院で働いていたようだが、僕の弟が産まれてからは、どこの町にもある、地元の小さな診療所で勤めている。
毎日通院する看者さんたちも、その大半がお年寄りで、治療を受けに来るよりも、先生や母たちと喋りに来ているようなものだという。
「毎日、朝早うに来て病院の前に座ってるよ、他に行くとこないからなあ、寂しいんやろかい」
半ば社交場となっているので、長居して看者さん同士で話し込むこともあるという。
だから、いろんな変わった話しも聞けるらしい。
何というか、相手はお年寄りだけに話しがぽんぽんと飛んでしまうのだが、母の勤める診療所の、愛すべき看者さんたちの体験したことを僕なりにまとめると、次のような話しになる。
ある夏の日の夕方、Aさんは銭湯に行った帰り、まだ明るい川辺を歩いていた。
きれいに舗装され、川を正面に見るような形で建て売り住宅が並んでおり、夜も街灯が明るいので、それ程一人歩きも怖くない道なのだが、その時は辺りにAさん以外の人影もなく、ひっそりとしていたという。
蝉の声と家の中から小さく聞こえるテレビの音を耳にしながらAさんは歩いていたのだが、ふと気付くと周囲の景色がおかしい。
「暗くはないんやけどな、なんやろ、夕やけやのうて、明るいんやけど周りの景色が皆もう赤黒いんや」
まるで、赤いセルロイドの下敷に越しに見たように、周囲の色が変容していたという。
「でな、気持ち悪いようと思てそのまま歩いてたんやけど」
しばらく歩いていると、ふっ、と首筋に風を感じたという。
「なんか、息吹きかけられたみたいやった」
びっくりして後ろを振り向くと、しかし何もいない。
が、Aさんがまばたきをした瞬門、
「いきなり大きな大仏さんの首が、ばあって出て来たんよ」
突然、目の前に現れた仏さまの顔は、それだけでAさんの身長と同じくらいあったという。
それが宙に浮いたままAさんを見つめていたという。
「慌てて走って逃げたけど、またぶわあって飛んで来るんよ、おっそろしかったでえ」
必死で逃げても追いかけて来る仏さまの生首から逃がれようと、路地の一つに入った途端、周囲の景色が元の色に戻ったという。
「毎日通る道やのに、あんなん出られたら怖て通られへん」
それ以来、Aさんは同じ体験はしていないが、毎日その道を利用しているという。
同じく、看者のBさんはこんな体験をしている。
診察を終えて、ひとしきり井戸端会議をした後、病院を出たBさんは、すぐ近くの自動販売機でジュースを買おうと思ったらしい。
聞くところによれば、健康のために野菜ジュースを病院の帰りに飲むことにしているとのことだが、この日はBさんが買おうとすると、先客がいた。
どうやら何を買うのか迷っているらしく、Bさんは先客の若い男性のすぐ後ろで待っていた。
しかし、その男性はいくら待っても買おうとしない。顔を右に左に動かしているので、何を買うか迷っているらしいのは分かるが、それにしても永すぎる。
しびれを切らしたBさんが声を掛けようと更に近付くと、ようやく男性はボタンを押した。
ゴトン、と音がし、男性がしゃがんで取り出し口から缶ジュースを拾い、立ち上がってBさんの方に振り向いたところ、
「ものごっついびっくりしたわ、ずんべらぼうや、ずんべらぼう」
男性には顔が無かった。
のっぺらぼうというやつである。
Bさんは慌てて病院に引き返し、さっき見た事を皆に話して聞かせたという。
以来、うちの母までもが、「のっぺらぼう」のことを「ずんべらぼう」と言うようになってしまった。
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久遠平太郎 2006年6月3日 20:53
評価±0。
ネタはとても良かったのですが、文章に無駄な部分が多いのが気になりました。
怪異に直接関係無い部分は極力削った方がスッキリすると思います。
柏木 麻宏 2006年6月3日 15:25
のっぺらぼう出た!怖さはどうかとおもいますが、雰囲気が好きなので個人的に+1。
mariman 2006年6月2日 21:36
sora 2006年6月2日 12:33
文章;■■□□□
怪異;■■■□□
恐怖;■□□□□
評価;■■□□□→±0
文章でネタを殺している。
書き方次第ではプラスの評価に繋がる怪異だけにもったいない気がした。
水町 2006年6月2日 1:59
前段長すぎ。大仏の話は面白いと思うけど。±0。
ミミちゃん 2006年6月2日 0:53
しまあに 2006年6月1日 11:00
貴重な妖怪譚なので、 1
やはり、「患者」の誤記が気になりました。
2006年5月30日 14:42
話が好きなので、+1
でも、誤字には注意。
吉田 2006年5月30日 12:23
得点なし
うーん。ネタ自体は面白いし、なんかホノボノした雰囲気も好印象なんですが。
話が、レポートみたいな味気ない文章になってしまっているかもしれません。生の呼吸が無いというか。
やっぱり、Aさん・Bさんに直接に話を聞かなかったのが一番の敗因かと思います。目撃談というだけなら又聞きでも問題は無さそうですし、確かにサラリと取材するだけなら、この位の情報しかもらえないでしょう。しかしそこからさらに突っ込んで、「その瞬間に、何を思いましたか?」「他に何か変わった特徴は無かったですか?」などの事柄を、細かく深く思い出してもらうのです。そうすると大抵は、お話が活き活きと立ち上がってくるディテールが出てくるものではないかな、と思います。
有澤 凪 2006年5月30日 0:04
面白い怪異を聞いたから超―1で紹介しよう、というスタンスでの応募だったのでしょうか。ネタの可愛さも台無しです。±0
brother 2006年5月29日 22:24
誤字については誰かが指摘しているでしょう…。←読んでない
で、Aさんのお話ですが、大仏さんと言うとありがたい怪異ではないかと思うんですが、これはどうやら狐狸のたぐいっすね。^^;
さすが老人はのんびりしてるなぁ。「通れない」とかいいながら通ってるあたり。
怖くはないですが、好きです。
Bさんも稀有な体験を。^^;
のっぺらぼうは希少価値の高い怪異ですよー。
怖くはないですが、妖怪無害系は大好物です。
でも「ずんべらぼう」は超速で「のっぺらぼう」に脳内変換されていました。
職業を書く意義ってのは、こういうお話を書くときにあるんです。
家で起こる出来事なら家族構成だけでいいし、特殊な職場環境で起こるなら職業を書く。
無駄に冗長になると、怪異をカルピス並に薄めてしまいます。5倍くらいに。
ですから、「果たして、この説明は必要なのか?」という疑問を常にもって書くと良いのではないかと思います。
と、これは下のエントリに対する苦言。
これは良いです。
+1
林不二男 2006年5月29日 20:12
落ち着いた語り口で楽しく読めましたが、今一つ強い印象を持てませんでした。
得点なし
ponken 2006年5月28日 23:16
なんかこういう話を聞くと、怖いよりもホッとします。妖怪たちがまだいるんだなーと。大仏様の首の話は特に面白かったです。+1で。
てらまち 2006年5月28日 17:25
お年寄りのお話として聞けば、ユーモラスで楽しいものです。また、方言が似合っています。ただし、そこまででした。−1。
藪蔵人 2006年5月28日 17:07
良い雰囲気の怪談ですね。
大仏といいずんべらぼうといい、怖くはないですがかなり魅力的に感じましたが、
怪異に集中させるためにも、冒頭等をもう少しすっきりさせれば作品自体の輝きも増すのではないでしょうか。
評点: 0
もり けんた 2006年5月28日 14:06
いや、古典的ムジナ!(へ∀へ)えへっ!
よだれドロドロのステキなネタですね!うわーアイテー!マジックでへのへのもへじを顔に書けるか挑みたいのでプラス1。大仏様の首は〜うーん、やはり克子さんに任そう(^^;)いつも読み終わってから誤字に気付くオイラは幸せ者です(TT)
風来月人 2006年5月27日 22:01
別に患者さんに聞いた話ではなく、二つのネタに分けて書いても良かったかなと思います。もう少し書き方を工夫したら良かったとも思う。−1です。
TOMOKI 2006年5月26日 16:40
現代に息づく妖怪譚ですね。大仏の首もずんべらぼう(ツボりました)も
狐狸狢系っぽいですし、ずんべらぼうに至ってはわざわざ若い男性の姿で
お年寄りの前に現れて驚かそうとした?のはいいけれど、自動販売機の
銘柄を見分けられるんだろうか?などと微笑ましくなってしまいました。
筆者氏がお母さんや患者さんたちに向ける暖かい視線にはとても心を
打たれますが、冒頭段落(イントロ部分)はもっとコンパクトにまとめて
しまった方が、中盤・後半の怪異が生きるのでは?
「怪異に魅力がありますので看者」表記には目をつぶって+1
ぼっこし屋 2006年5月26日 13:42
現代の日常に登場する妖怪譚として興味深く思いましたが、年寄りの体験ということもあって怖いというよりノスタルジックにまとまってしまった印象を受けました。
登場する大仏の頭そしてのっぺらぼうに対し、ポピュラーでややもするとコミカルなイメージがあるせいでしょうか。
ナルミ 2006年5月26日 0:58
私も「看者」という表記が気になった。
タイトルだけ見たときは「ああ、見える人の話か」と思ったが、最初をちょっと読んで「患者の誤記か」と思い、さらに読み進んで「患者と看者をかけているのか」と思い、しかしやっぱり「看護婦の看に引きずられた誤記かも」と思った。これが気になって肝心のストーリーに入っていけなかった。
±0
(のっぺらぼうはどこからジュースを飲むんでしょうね。これを考えると夜も眠れません)
くりちゃん 2006年5月25日 21:39
のどかな、のんびりしたお話ですね。
でも「患者」じゃなくて「看者」という表記はどうしてですか?怪異を看る人だから?誤記?
なぜかそっちの方が気になってしまいました。すみません。
ネジ 2006年5月25日 21:19
へぇ、のっぺらぼうのことを<ずんべらぼう>なんて言ったりもするんですね。初めて聞きました。
それにしてもお年寄りだからなのか、怪異の内容がどことなくノスタルジックですね。狸か狐に化かされたっぽい味があるというか。
でもプラス評価までは行かない感じでした。±0
金縛郎 2006年5月25日 16:44
すいませんが、どちらの話もありきたりです。
±0。