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2006年5月20日(土)

お寺の家の少女

「私の実家って、隣の家がお寺なの」
照恵さんの生家の横にはお堂へ向かう道、裏手には墓地が広がっていた。
「それまでは特に怖い思いをした覚えもなかったんだけど……」

中学2年の夏休みのある日、照恵さんは友人達と海に行く約束をしていた。
家から海までは自転車で20分程度、いつものことだ。
ただ、その日はお盆の中日なので親には内緒にしておいた。
「以前から『そんな日に海に入ったら連れてかれるよ』って言われてたから」

当日の朝、照恵さんは夢を見た。
「お寺の斜め向いにある小学校にいるの。中庭にでたら池の前に大人が数人と、
地面に横たわった幼稚園児くらいの女の子」
女の子は全身ずぶぬれで、海藻のような濡れ髪が顔の上半分を覆っていた。
動く気配は全くない。

あっ、と口に出して目が覚めた。心臓の速い鼓動が全身に響いている。
「さっきまでその場にいたような、ものすごく鮮明な夢」
なにかが心の奥を引っ掻くような感覚が残っていた。
「けど、外は暑いし、天気もいいし、ま、いっかって」
すぐに気持ちを切り替えて、照恵さんは海水浴に出掛けていった。

「そしたら、案の定っていうか……まあ、準備運動も足りなかったんだろうけど」
海にはしょっちゅう来ているし、泳ぎにも自信があったのだが、
足がつかないところでこむらがえりを起こしてしまった。
慌ててもがくと、鼻から、口から、塩辛い水が流れ込む。
「ヤバイ、死んじゃうかも、って初めて思った」
幸い、友人が照恵さんの様子にすぐ気づいてくれたおかげで
大事には至らずに済んだ。

海から上がり、気をとりなおして遊び回った照恵さん達が
帰る頃には、すっかり日が暮れていた。

友人達と別れ、いつもの近道、小学校横の小径を
自転車で通りすぎようとした時、
「中庭の池にね、橙色の灯がぼおっと浮いてた」
灯は水面より少し上にあり、外灯が設置してあるとか、
どこかの光が反射しているようにはみえない。

「それで、急に思い出したの。誰かが昔そこで溺死したらしいって話」
中庭を囲む古びた校舎がいっそう暗く感じる。
背筋がスッと冷えた照恵さんは、立ちこぎでダッシュしてその場を走り抜けた。

帰宅後、母親に池について尋ねてみるとこんな返事が返ってきた。
「そうか、あんたは全く覚えてないんだねぇ」

亡くなったのは隣のお寺の家の子だった。
名前はスミちゃんといい、照恵さんの一つ年下。幼稚園に通う頃、
照恵さんとスミちゃんは毎日のように一緒に遊んでいたのだそうだ。
二人の遊び場はスミちゃんの家のお寺の境内か、小学校の中庭だった。
中庭にあるのは凹形に似た、浅く広い人工池で、
真ん中の半島状になった部分には花壇と日時計があり、
照恵さんはその場所が特にお気に入りだった。

とある休日、照恵さんは朝から家族と出掛けていた。
午後、明るいうちにに帰宅したのでスミちゃんの家を覗いてみると、
一人で外に出ている様子だった。
境内に姿がなかったので照恵さんは小学校に向かった。

「……あんた、ちょうど池から引き上げたトコロ見ちゃったんだよ」

池の深さは、幼児が頭まで潜る程ではないのだが、底に生えた藻がすべりやすく、
転落したスミちゃんは池の中で立てなかったらしい。
誰かが気づいた時には、すでに手遅れだったそうだ。

幼心に大きなショックを受けた照恵さんは、
しばらくは家から一歩も外出せずに伏せっていた。
隣家では葬儀が行われたが、同じ年頃の娘を亡くした親の気持ちも考え、
両親は照恵さんを連れていかなかった。

荼毘に付された小さなスミちゃんは、やがて、大きく立派な墓所に埋葬された。
照恵さんもだんだんと以前の様子を取り戻していったが、
幼稚園から帰宅した後は、家の中で遊ぶのが習慣になった。

そんな頃、母親が夕飯の支度中に、台所の窓からふと外に目をやった時、
立ち並ぶ墓石の隙間を、小さな人影が横切るのがみえた気がした。
家の中を見渡せば、照恵さんの姿がない。
訝しんだ母親がすぐに墓地に向かうと、
真新しい花とおもちゃに囲まれた墓石の前に、照恵さんがいた。
スミちゃんの墓の真正面に立っているのだが、
視線はどこか遠くに焦点を合わせている。

母親は、不安を押し殺しながら穏やかに声をかけた。
「こんなところで何してるの?」
キョトンとした照恵さんは不思議そうにあたりを見渡してから
「スミちゃんと遊んでた」
そういうなり背骨を抜かれたように、ふにゃり、とくずれおちてしまった。

「その後も、ちょっと目を離すとあんたはお墓にいってるのよ。
でも、お隣でお寺さんの家だし、滅多なこと言えないからねぇ」
隣家には何も言わず、しばらくは家族で照恵さんを見張るようにしていたそうだ。
「ところで、なんで突然そんなこと言い出したの」

照恵さんが正直にその日の出来事を話したところ、
母親の厳しいお叱りと長時間の小言をもらうこととなった。


「私は警告しに来てくれたんだ、って思いたいけどね」
そう苦笑いする照恵さんは、それ以来、お盆の海には入っていない。


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sora 2006年6月3日 12:54

文章;■■■□□
怪異;■■□□□
恐怖;■□□□□
評価;■■□□□→±0

mariman 2006年6月2日 21:26

http://plaza.rakuten.co.jp/mariman1234567/3158

久遠平太郎 2006年6月2日 21:21

評価±0。
話の山がはっきりしないまま終わってしまった感じがします。
文章は整っていたのですが構成面での練り直しが必要かも知れません

ミミちゃん 2006年5月31日 2:39

tb
http://chabin.blogtribe.org/entry-87fdf134b943bd07b7555c49edc5aaf4.html

てらまち 2006年5月30日 17:40

全てを記そうとされているので、読者としては想像する楽しみがない。盛り上がりも欠けているように感じる。−1。

柏木 麻宏 2006年5月30日 14:07

う、うう…。文体ダイエットをしてから出て来て欲しかったですねorz −1

吉田 2006年5月29日 17:22

得点なし
現在→昨夜の夢→現在→過去→現在と、すごく凝った構成ですね。まあ、この日の出来事を十全に描こうとするなら、こんな構成にせざるを得ないですが。
しかし話が複雑になってしまったために、「肝」の部分が曖昧になってしまったように感じます。あまり全てを描き過ぎない方が良かったのでは。

有澤 凪 2006年5月29日 0:02

お盆に海水浴に行き溺れそうになった事をスミちゃんと結びつけるのはちょっと強引かなと思いました。彼女が亡くなった当時、気付くとお墓の前にいたという出来事も怪異として捉えるのもどうかなぁ。−1

藪蔵人 2006年5月28日 1:04

それぞれの関連がとても希薄に感じられるので、読んでいて不自然に感じられました。
評点: 0

林不二男 2006年5月27日 22:58

綺麗な文章につられてすらすらと読み終わりましたが、どうも高評価するだけの強い印象を持てませんでした。 得点なし

もり けんた 2006年5月25日 12:57

うっしゃー(TT)
昔の事思い出してたら評点忘れました。
±0です。すみません〜。

もり けんた 2006年5月25日 12:56

房総で終戦記念日に海に入り、そのまま流された経験アリ(TT)離岸流って知ってるか〜?ハイ…(_;)
以来、海には入れません。浜辺でビール飲むだけです。そんな記憶がまざまざと〜。ただスミちゃんの事と海水浴の件はちょっとからみが弱いかなー。文章は綺麗ですから、むしろその部分のない構成のほうが良かったかも知れんですね。
お友達、オイラも小1のとき自宅のすぐ裏で亡くしました。ダンプに轢かれて。子供にはトラウマの出来事だと思います。

brother 2006年5月25日 12:47

ん〜。
どうかなぁ。ちょっと長いかな。
臨場感はあるんですが、怪異に較べるとどうもなぁ。
いっそのこと、海での出来事を削る…と、全体として説明不足か。難しいなぁ。
文章は良いので、素材さえ誤まらなければ大丈夫だと思います。
ここは0点で。

TOMOKI 2006年5月23日 14:59

文章は実に端正で引き込まれました。しかし、前半の溺れる話は
怪異と認定するには少し弱いと思います。「お盆に海に入ったら
連れていかれる」という言葉に喚起されて、幼い頃の不幸な思い出が
甦ったとしても不思議はありませんし、溺れかけた事については
照恵さん自身が「準備運動が足りなかった」と解説しています。
海と池では状況も違いますし、「溺れた」というキーワードだけで
強引にスミちゃんのエピソードと関連付けてしまったような印象が。
幼い頃の、亡くなったスミちゃんと遊んでいたというエピソードに
ついても、幼い子供が親しい友達を突然亡くし淋しさから想像を
膨らませていたという解釈もできてしまいますので0

金縛郎 2006年5月21日 2:56

起伏のない構成のためか、怪異が浮かび上がってきません
し、それゆえ読後の印象も薄い感じ。
文章はお上手なんですが。
±0。

ponken 2006年5月21日 0:04

はっきりとわかる怪異がないまま、終わってしまいました。文章ももっと削れるはずです。−1で。

ネジ 2006年5月20日 23:32

長い割には細かい怪異が続き、ヤマ場と言えるほどのものは見つからないような印象です。難しい怪談でした。±0

hydrogen 2006年5月20日 21:31

-0

ううむ、なんとも感想を持ちにくい。
いい話だと言うべきなんでしょうか。
足が攣った話は怪談としては少し弱いように思いますね。
水難というだけじゃ繋がりが弱いし。

ナルミ 2006年5月20日 21:04

夢は幼いころに見た情景が記憶の底からよみがえってきたものであり、溺れかけたのは準備運動が足りなかったせいであり、お墓の前に来ていたのは友達を亡くしたショックのせいであり……と考えていくと、怪異と言えるのは「池の上の灯」くらいになる。
±0

風来月人 2006年5月20日 18:42

怪異の内容にしてはよけいなことが長すぎです。-1です。

くりちゃん 2006年5月20日 14:31

欠くことはできないとは思うのですが、スミちゃんに関する記述が詳細すぎるように感じました。
おぼれるお話かスミちゃんつながりの因縁話にするかどちらかで我慢しておいた方が引き締まったのではないでしょうか。
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