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2006年4月5日(水)

open

都内のアパートで一人暮らしをしているEさんは、洗濯をほぼ日課としている。
友人に言うと「マメな奴だなぁ」と言われるらしいが、Eさんは否定してしまう。

「そんなじゃないんですよ、本当。毎日のように洗濯しないと着る物がなくて」

Eさんは所謂「物持ちの悪いタイプ」である。
靴下の片方から始まってシャツやパンツといった凡そ失くしそうにないものまで――なくなっていることがよくあるのだそうだ。

そんなEさんの悩みは、失くし物ではなく妙な気配であるという。

最初にそれを感じたのはある朝、洗濯機に汚れ物を入れている時だったそうだ。
視線は唐突に天井付近から発せられた。
狭い脱衣場なので、人が隠れられるスペースなどあるはずもない。
たぶん気のせいだろう、とその時は深く考えなかった。
気が付くと僅かな隙間から視線。さらに洗顔中、耳元で息遣いのような音が聞こえたこともあった。

その気配が現れるのは決まって洗濯中である。
だがEさんは気配よりも、脱衣場に備え付けの鏡を見るのがどうにも恐ろしくなってしまったという。

「自分の後ろに誰かいるんじゃないか、ってね。それが毎日ですよ。キツかったですね」

脱衣場に何かがいると思ったEさんは近所のコインランドリーへ通うことにした。
幸い最寄駅までの道すがらであるので、真冬や台風でもない限り大変ではない。
すると不思議と視線すらも感じなくなり、生活に平穏が戻った。

そうして2週間も過ぎた頃。
深夜に脱衣場から物音がした。

(泥棒か?)

あるいは気配の主だろうか?とEさんは布団の中で怯えた。
だが良く聞けばそれは洗濯機の回転音らしかった。
年季の入った洗濯機もついに壊れたのだろうか。いずれにせよ止めなければ近所迷惑になる。

Eさんは諦めて脱衣場に行き、電気を点けた。
その瞬間、

ドンドン!

洗濯機の蓋が鳴った。それが二度。
Eさんは飛び上がって驚いたが、音はやはり洗濯機のものだった。スイッチは手さえ伸ばせばすぐに届く。Eさんはスイッチに向けて右手を伸ばしたが、断念した。
電源が入っていないのだ。
Eさんは混乱を極めた。
しかし洗濯機は回っている?いや、違う。これは・・・唸り声だ。
そう気づくと唸り声はピタリと止み、代わりに中から、

「毎日開けろよ」

はっきりとそう聞こえた。
低く強烈だった唸り声と同じ、男の声だったという。

それからしばらく、Eさんは言われた通り毎日洗濯を続けた。
そうしている限り特に異変は起こらなかったが、脱衣場の鏡はどうしても見られなくなった。

「その洗濯機ですか?後輩に欲しいって奴がいたんで、あげちゃいました。なにかが棲み付いているのは秘密です」

今では失せ物も減ったらしい。
だがそう語るEさんの靴下は、左右で少し色が違った。


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柏木 麻宏 2006年6月3日 19:32

すばらしい文の書き方、組み立て。短いながらもその独自の世界観に引き込まれました。+1

mariman 2006年6月2日 20:46

http://plaza.rakuten.co.jp/mariman1234567/3046

イマニ 2006年6月2日 15:58

素材:A
調理:A
盛付:A
結果:1

ポテトサラダのリンゴ、酢豚の中のパイナップルのごとく、凄まじい恐怖の中に凄まじい笑いが入っていて大変楽しめました。

2006年6月1日 9:48

+1
最後の最後まで面白かった。
この進退窮まった様子がイイです。
軽快な文ですね。

久遠平太郎 2006年5月28日 14:40

評価+1。
いろんな意味で緊迫感がある作品ですね
(笑
文章も過不足無く、怪談落語としてはなかなかの良作だと思います。

ぼっこし屋 2006年5月28日 13:43

手の出現が怪異として十分に恐怖を持っている分、さらに不気味なトイレットペーパーの内容が分からずじまいなのが惜しかったです。
最後の一行で、怪談というより落語になってしまった感があります。
読ませる力は十二分にお持ちだと思います。±0

藪蔵人 2006年5月27日 21:46

公園の公衆便所に紙があるだけラッキーですが、それが悪意ある企みだったとは。
描写も的確で、コミカルで、味のある作品に仕上がっていると思います。
評点: 1

吉田 2006年5月26日 13:08

得点なし
ウンコ描写に、この凝った文章はやり過ぎなのでは。
強烈な怪異でも、仰々しく書くと興ざめするのと一緒です。「ウンコを我慢」という時点で完全に笑いに傾いている状況なので、文章はサッパリさせるべきでした。
そういう意味では、脱糞後の文章はけっこう好みです。ただ、やはり最後の一文が、どうも……。
お尻にアレがついている時には、内股にはなりません。もっとヒョコヒョコした歩き方になります。って主張は敢えてしませんが、
ここを一文独立させるのは読者に親切過ぎます。これではバラエティー番組のテロップの悪い使い方。前の行の中にサラリと入っていた方が、僕には好印象でした。
怪談読者なら、「どこが面白いところか」ってポイントを見つける嗅覚には優れている筈です。それは恐怖でも笑いでも、ある程度は一緒でしょう。いくら「怪談での笑い」といえど、もうちょい読者に面白さを委ねてみても良いのでは。
ま、全体的には完成度が高いので、プラマイゼロです。
上記の主張は、怪談とは関係ない個人的なものと受け流してやって下さい。

有澤 凪 2006年5月24日 1:50

全く管理されていないような公園のトイレにペーパーが?と思いましたが、すでにそれ自体が怪奇現象なのではと思い勝手にゾッとしてしまいました。作品としても非情によくまとまっていたと思います。+1

てらまち 2006年5月20日 14:48

全編にわたっての切羽詰った感と悪臭感。コミカルタッチだが、深夜、公園、汚れた公衆便所、不可解なトイレットペーパーなど怪談としての役者は勢ぞろい。でも、やはりコメディだった。惜しい。±0。

hydrogen 2006年5月20日 3:57

1

ゲイリー・オールドマンが便所でキメキメかぁ。
「違うんです、違うんです」が社会派とするとこれは
個人の内面に迫ると言えますか。
言えませんか。そうですか。

ただまぁ描き過ぎかなぁという点と、著者も何か急いでいたのか
座りの悪い文章があるのが気になりますが。
まぁその不安定さも込みなのかな。

ponken 2006年5月19日 0:47

三本目の手もいいけど、トイレットペーパーに、文字が書かれているのがとても不気味です。無防備なトイレでこの仕打ちは嫌ですね。+1で。

brother 2006年5月18日 21:45

( ゜∀゜)ノ アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \ /  \

(・∀・)イイ!!
+1

ミミちゃん 2006年5月18日 10:40

tb
http://chabin.blogtribe.org/entry-c9f5c16b3a409f597af3d69137b9382a.html

こころママ 2006年5月18日 1:52

 上手だなあ、ほんとに上手ですよね。
ただ、ふと不安に思うのが、私も気に入ってしまったコミカルタッチのあの作品やその作品と同じ作者さんなのかしら、ということ。
 もしも得意分野がこれと限定されるのであれば、ちょっとまずいかな。
 このテのものも書ければ、『超 怖』ならではのずどーんと重い恐ろしさも書けるというのが希望なのです。
 でも、面白かったです。怖さとおかしさのバランスがとれていました。

2006年5月17日 8:42

な、なぜにミスター・オールドマン?
ファンだけど。

もり けんた 2006年5月16日 21:49

うーん、ごめんなすい。±0です。
文章も旨いし怪異もいけてる。
けど、トイレガマンネタ三回目になるとそろそろなあーっと(--;)オイラはこの超−1をひとつの巨大な「超怖い話」として見てますから。
四百以上の怪異が集まるのだから、目が慣れてしまう。これほどスキルがある方は新しいジャンルに目を向けてほしいなあーという楷書から行書への変換希望のコメントです。
だから、これは私見です。決してスキルとかそういう問題ではありません。作者様ごめんなさい!
しかし、もし再現ドラマになったらぜひともゲーリー・オールドマンのキレてる演技で〜!o(_)o…。

TOMOKI 2006年5月15日 17:18

緊迫感がありました。こんな状況で怪異に遭遇とは…他人事ながら
他人事と言い切れない所が…読んでいて脂汗かきましたw
「なんか解らんけどこれは読まん方がいいな」は秀逸ですね。
びっしりとトイレットペーパーに書かれた文字のくだりは禍々しくて
怖いのですが、第三の手が出てこなければ東京伝説系の人災だと思って
しまうところでした。手と囁き声より、びっしり書かれた文字の方に
インパクトがある感があり、少々惜しいと思いました。+1

林不二男 2006年5月14日 22:54

「なんか解らんけど、これは読まん方がいいな」は凄く気持ち分かります。ぞっとしました。 +1

sora 2006年5月11日 18:49

文章;■■■■□
怪異;■■□□□
恐怖;■□□□□
評価;■■■□□→±0
この怪異でこれだけの話が書けるのは、ある意味凄いと思った。
怪異を除けば大いにプラスに評価する。
正直迷ったが、やはり「恐怖」にはこだわりたいので。

ナルミ 2006年5月9日 1:57

怖さはそれほどでもないが、面白く読めた。
1

メイ 2006年5月8日 22:30

「これはヤバイ、これは柔らかい」
冒頭のこれですでに吹きました・・・。
ごめんなさい、上手い下ネタ好きです。
笑いに走らずきっちり怪異が怖いところがいいですね。
トイレットペーパーにびっしりと書かれた文字・・・読んで見たいような気も。
+1

風来月人 2006年5月8日 20:31

これは怖いです。公園のトイレには夜行けなくなりそう。+1です。

金縛郎 2006年5月8日 12:34

泉昌之の漫画「ロボット」を思い出しましたw
あちらは犬の吠え声でしたが、こちらは怪異。
何て人(?)の悪い霊なんでしょうね。
○。

ネジ 2006年5月8日 10:40

面白かったです。
尿意とか便意とかに絡むと、切羽詰った感が増して面白いのだなぁ。+1

くりちゃん 2006年5月8日 10:05

これは読ませる!○
字が書いてあるトイレットペーパーも不気味だが、三本目の手も予測不可能で、アッといわせる。
内股の一言が。救い、かな。
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