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2006年4月26日(水)

嫌な先輩

ある地方の、港に面したビルでの話。

マミヤ君は、そこで夜勤警備のアルバイトをしている。
仕事は楽で金払いも良い、と気に入っているバイトなのだが、難点が一つあった。
いつもコンビを組むカトウ先輩。
彼が、霊が見えて見えてしょうがない人間だったのだ。

それだけなら、別にいい。
だが何か見えても黙っていればいいものを、逐一報告してくるのだから始末が悪い。
「お、3番モニター見ろ。今、女が写ってるから」
「あそこのトイレ、昨日も変なモノいたんだよ〜。だから今日はお前が行って」
「お前、今後ろ向くなよ。向くと怖いことになるよ。お〜、うわ、怖え〜」
等々。
何も無いですよ、とマミヤくんが言っても
「やっぱりな。お前には見えないか」
うんざりだった。
(からかってんのか?こいつ)
本当に霊能力があるかどうかは知らないが、何度注意しても止めてくれない。
他の部分では、面倒見もいいし悪い人ではないのだが
(辞める時に、一発くらい殴っておこうか)
そう思っていたそうだ。

ある夜のこと。
マミヤ君は一人、警備室でマンガを読んでいた。
カトウ先輩は夜食の買出しに外に出ている。
1階にある警備室の窓から、港で波がさざめく音が聞こえる。
静かな夜だった。

と、携帯電話の呼び出し音が鳴った。
着信は先輩からになっている。
マミヤ君が通話ボタンを押した瞬間
「出ろ!」
先輩から大声で怒鳴られた。
はあ?と聞き返す。
「お前、出ろ!今すぐそっから出ろ!早く!」
尋常ではない慌てぶりだ。
なにかの非常事態かと思い、急いでビルを飛び出した。
見回すと、入り口から遠く離れた道路に先輩が立っている。
どうしたんですか?と近づこうとすると

「逃〜げ〜ろ〜!!」

先輩はそう叫んで、市街地の方へと走り出した。
何が何だか分からないマミヤ君も、つられて駆け出す。
その時、

 ドッドドッドドドッドドド

一瞬、地震かとも思った。
地面を響かせる轟音が、背後で鳴り響く。
港の方からだ。
走りながら振り向いたが、何も見えない。
だが地響きが近づいてくるのは分かる。
(ヤバい)
夢中で走る先輩の後ろ姿を見ながら、マミヤ君もスピードを上げる。
するとまた、別の音がした。
頭の奥にまで響くような振動が伝わる。
港にいくつかある建物の窓ガラス。
それが一斉に震え出した音だった。
「わわわわわわ」
訳も分からず、マミヤくんは先輩と全速力で走った。


二人は、深夜の商店街まで逃げたところで立ち止まった。
港の方を見ると、何もなかったように静まり返っている。
「……なに、今の」
マミヤ君が呟く。
「うま、うま」
息を切らしながら、先輩がそう返した。
先輩の話によると、
買出しから帰った時、海の向こうから巨大な塊が走ってくるのが見えたそうだ。
海面を徐々に近づいてきたそれを見て、先輩は飛び上がるほど驚いた。
数え切れないほどの、馬の大群。
それがこちらに向かって突進してくる。
(轢き殺される)
先輩はいったん、ビルの中に避難しようとした。
が、瞬間、こんな発想が頭をよぎった。
(もしあの馬が建物をすり抜けてきたら!?)
2人とも轢き殺される。

「そう思って、お前にも電話したの」
とのことだった。


マミヤ君は、今でもそのバイトを続けているが、それ以降は特に不思議な事は起こっていない。
カトウ先輩からの「目撃情報」は相変わらず続いているのだが
「なんか命の恩人ってことになっちゃったんで」
とりあえず、殴るのは無しにしたらしい。


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LRg

柏木 麻宏 2006年6月3日 21:33

題名を見た限り「腫れ」かと思ってましたが、「晴れ」だったんですね。
最後の不安感がお話の良さをUPでした。+1

sora 2006年6月3日 19:01

文章;■■■□□
怪異;■■■■□
恐怖;■■□□□
評価;■■■□□→ 1

ぼっこし屋 2006年6月3日 15:28

「はれおんなさま」の描写が和やかな分、結末に漂う不吉感が余計に怖いですね。
1とさせていただきます。

久遠平太郎 2006年6月2日 23:24

評価+1。
良い。
この手の話は好きなんで。
しかも、ただのほのぼのする話で終わっていないところがまたいい。
この話はぜひ後日談が読みたいです。

mariman 2006年6月2日 21:31

http://plaza.rakuten.co.jp/mariman1234567/3171

ミミちゃん 2006年6月1日 1:02

tb
http://chabin.blogtribe.org/entry-01f04abc48bb1439f7e68dd96c5dade9.html

2006年5月31日 17:54

いい!!
私も見てみたい。ラストの不安感がまた何とも・・。
+1

吉田 2006年5月30日 0:41

良い▲
神棚って、中心にアマテラスを祀るもんらしいですね。ん?すると、容姿といい、踊りといい、”はれ”を呼ぶところといい、これは……アメノウズメ様!?
って、考えすぎか。
このホノボノさもラストの不安な感じも、無理に突っ込むことなく、実に適切なスタンスがとれていたと思います。この微妙さが、いい。

有澤 凪 2006年5月29日 1:52

ほのぼのとした雰囲気で終わるのかと思いきや、何やら怪しい雲行きに。それがあったお陰で講評が+1になりました。

こころママ 2006年5月29日 0:11

 筆者の巧みな描写力と、品のあるセンスが『はれおんなさま』に命を与えていると思います。またまた、いい作品を読ませてもらいました。ほんとここのサイトを覗いてみてよかった。
 みなさん、おっしゃっていられるとおり、ラストの一転して暗雲立ち込め…の展開も素晴らしいの一言ですよね。完璧です。
 おおきくプラス1点!

 ところで、はれおんなさまをお招きした曾祖母さんはご存命なのでしょうか?もし、お亡くなりになっていたら、それとともに現れなくなった、というのはありませんか?そこがちょっとひっかかりました。

林不二男 2006年5月28日 20:36

最後まで幸せそうな感じで終わって欲しかったのですが。 +1

メイ 2006年5月28日 16:02

妹さんは大丈夫なのか!?
今時点で、妹さんの結婚からどれくらいの年月が経っているんでしょう。
布引家は今どうなっていますか?
是非是非是非近況を!
+1

藪蔵人 2006年5月28日 1:29

実に興味深い怪異ですね。
文章・構成も上手いです。
評点: 1

もり けんた 2006年5月27日 7:21

ううっ、お焚き上げ式突き落としネタ!
(−□−;)
はれおんなさまのキャラにプラス1。
東北のワラシとかオシラサマ系のお話ですね。うん頷けます。やっぱりタミヤタイガーで追いかけたいぞ!回られるのカシャーン君とお見合いをさせたい。縮尺スケール同じくらいだし(^о^)

hydrogen 2006年5月27日 3:23

1

なんか世界観が「日本昔話」。
そして怖いとまでは行かないもの非常に不快なオチ。
GJ。

brother 2006年5月26日 21:20

いいお話なのに、最後には不安になりますねぇ。^^;
変化球を決められた気分です。

いろいろ感想が脳味噌を巡って渦巻いてるんですが、うまく表現できないので書きません。
でも好きです。
+1

ああ、みなさん同じ感想を。(笑)

その他の人 2006年5月25日 0:10

な、なんと美しい怪異!その後が案じられてスッキリ終わらない読後感。忘れがたい印象を残してくれる佳品ですね。
文句なしの+1です。

TOMOKI 2006年5月23日 15:06

ううう、妹さんの結婚は妹さんだけでなく、布引家全体に不幸を及ぼす
ほどのものだったという事ですか?これから一体布引家に何が起きるのか
気になって仕方ないじゃないですか…何年かかっても是非後日談を。+1

杜井 都衣 2006年5月23日 11:32

▲:「はれおんなさま」という語感が素敵
です。
しかし、妹の結婚と何の関係があるんだ
ろう。気になるし、心配だ。
妹と一緒に出て行っちゃたのでしょうか?

田原 誠 2006年5月23日 9:34

 なかなかに興味深い。神なのだったら女、ではなく女性位の方が良いのでは。また、彼女と女が近接して使われているので若干読み辛い。文章的にはもう一工夫できそう。   △

ponken 2006年5月21日 19:13

やはり、最後の足元をすくう展開が効きました。はれおんなさま、戻ってきてくれるといいですね。
+1で。

てらまち 2006年5月21日 18:17

著者はこの体験者と密接に連絡を取って後日談を取材すべき。布引家にもし、何かがあれば「はれおんなさま」の有難みがわかる。怪談とは言えないが、文章構成の良さや読みやすさも考慮して+1。

くりちゃん 2006年5月21日 9:00

はじめは「ええ話や〜」と読んでいたのですが、最後のどんでん返しがすごい。幸福感が吹き飛んで、不吉な雰囲気が充満してくる。○

金縛郎 2006年5月21日 4:44

日本昔話的ほのぼのかと思いきや、ラストは厭〜な感じ。
構成の勝利ですね。文章もお上手です。
○。

ネジ 2006年5月21日 1:15

見てみたいですね、その舞いを。
良いことの前に出てくるとわかっていて、それが途絶えてしまったということは・・・という落差が怖い。+1

ナルミ 2006年5月21日 1:06

怖くはないけれど、面白い話。ほのぼのさせておいて、最後に不安を感じさせる、という展開がよかった。
+1

風来月人 2006年5月21日 0:55

なかなか興味深いですね。読みやすいので+1です。
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