| VK | TOP | HP |


2006年3月31日(金)

番付

「昔は、よう皆で相撲をとって遊んでいたよ」
 関本さんは今でこそ好々爺といった風貌だが、子供の頃は腕白坊主で毎日暴れまわっていたという。

 そんな腕白坊主時代によくやって遊んでいたのが「相撲」。
 番付表を作ってしまうほど、皆熱中していた。
「近所の仲間の名前は殆ど載っていたな。ま、遊びだから“昇進するには自分の上の階級に三回連続で勝たないと駄目”とかそういうルールだったんだよ」

 関本さんの番付は【大関】。
 【横綱】は<たっちゃん>という関本さんの同級生。
「たっちゃん、身体小せぇんだ。痩せててな。でもね、あいつは本当に強かった」
 たっちゃんは、年上にも絶対負けなかった。
 得意技は上手投げ。
 真正面からがっぷり四つに組んで、そこから豪快に投げを打ってくる。
 あんな細い身体なのになんであんなに強い力が出てくるんだろう、と皆が不思議に思うほどの強さだった。
 どうしたらあんなに相撲が強くなるの? とたっちゃんに聞いても、たっちゃんは「技だよ、技」といって笑うのが常だった。

 そう言う訳で、関本さんはたっちゃんに一度も勝った事がなかった。
「子どもながらに悔しいんだよ。同じ歳のヤツにどうしても勝てないんだから」
 技を研究しても駄目。
 力をつけようと、大きな石を持って神社の石段を上って鍛えてみたが、駄目。
 関本さんは、いつまでも大関だった。

 ある日の事。
 関本さんは、道に這い蹲るようにして何かを探している様子のたっちゃんを見かけた。

 近付いていって「たっちゃん、何しとるの?」と訊くと、たっちゃんは困った顔をして「お使いの金を落とした」という。
 それは困ったことだな、俺も協力するわ、と関本さんも一緒にお金を探した。

「いっとき探したら見つかってな。たっちゃんがえらい感謝してなぁ」
 お礼、何がいい?とたっちゃんは関本さんに聞いてきた。
 関本さんは一瞬考えて、こう答えた。
「相撲、どうやったらあんなに強くなるんだよ?技なら技を教えてくれよ」
 たっちゃんは少し困った顔をした後、ぽつりと「教えてやるから後で神社の裏に来い。絶対他のヤツに言うんじゃないぞ」と耳打ちしてきた。

 関本さんが神社の裏で待っていると、たっちゃんが息せき切ってやってきた。
 そして「後をついてこい」という。
 たっちゃんの後をついていくと、神社裏手の藪の中に入っていく。
 藪を漕ぎながら進むと、急にぽかっと開けた所に出た。
 たっちゃんは、その開けた場所の隅を指差した。

「これだ」とたっちゃんが指し示した先に、石があった。
 表面がデコボコした石で、高さは三十センチ程度、横は二十センチ程度。
 見ようによっては、何か石仏のように見えた。

「これがなんなの?」
「これをな、こうして使って鍛えると、相撲が強くなるんだ」
 たっちゃんは、その石を両腕で抱きかかえるようにすると、ぐいっと肩の高さくらいまで持ち上げた。
「いぃ〜ち!にぃい〜い!さぁあ〜ぁん!しぃい〜!ごっ!」
 たっちゃんは五つ数えてから、また元の場所に石をごとりと下ろした。

 「ふぅっ。ま、ちょっとやってみろって」とたっちゃんが促す。
 見ると、たっちゃんの顔は真っ赤になっていて、肩で息をしている。
(こんぐらいの石を持ち上げたくらいで、なんでこんなになっているんだろ?)
 関本さんはそう思ったが、まぁ物は試し、と挑戦してみた。

 石の前にしゃがみこんで、両腕で抱え込む。
 何故か、石の癖に妙にしっとりとして暖かかった。
「せぃのっ!」と掛け声と共に、関本さんは石を持ち上げた。

「でなぁ、数を五つ数えようとしたときに、突然石がぶるっと震えたんだ」
 石は震えた後、ぐんと重くなった。
 驚いた関本さんは、石を思わず落としてしまった。
 それを見たたっちゃんは「あ、お前、駄目なのかもな」と言って、残念そうな顔をした。
 その後、たっちゃんはその場所に二度と連れて行ってくれなかった。

「その後、悔しかったから一人で何度かその石のある場所を探したんだわ。絶対持ち上げてやる、と思ってな」
 しかし、その場所はどうしても見つけられなかった。

 結局、関本さんはその後もずっとたっちゃんに勝てずに大関のまま。
 たっちゃんはその後もずっと横綱だった。

「けどな。そんな強いたっちゃんも、病気には勝てなかったんだ」
 たっちゃんはある病気を患い、死んでしまったのだという。
 まだ、十三歳だった。

 たっちゃんはな、最後まで横綱のまま逝っちまったんだよ、と言って、関本さんは少し寂しそうに微笑んだ。


LgbNobN

LgbNobNURL

http://www.chokowa.com/cho-1/entry2/tb.cgi/10
番付 ○ by 【超-1 Championship Chokowa 2006】 講評Blog at 2006年4月30日 0:18
「番付」▲ by 無菌室育ちZ at 2006年4月8日 14:47
[講評][好★★★] 番付 by アンポンタン(:∴:)ポンカン・超−1観戦記 at 2006年4月3日 22:59
[講評]番付 by 極私的【超−1】講評 at 2006年4月1日 5:24

LRg

kaori 2006年6月4日 1:36

兄弟の話は無かった方が良かった

mariman 2006年6月2日 20:25

http://plaza.rakuten.co.jp/mariman1234567/3008

柏木 麻宏 2006年5月30日 13:22

兄弟の部分は要らなかったかなとも思いますが、お話の雰囲気は好きでした。±0

杜井 都衣 2006年5月29日 22:49

■:後半部分はどうせなら入れなかったほうが、よかったと思います。
池にいる何かが、花を使って引き入れてるんでしょうね、やっぱり。
何がいるんだろう…。

有澤 凪 2006年5月29日 17:36

前半の花のお話はよかったと思うのですが、後半のエピソードを入れた事に疑問を感じました。池ではなく、花のことだけでも十分作品として成り立っていたのでは。±0

久遠平太郎 2006年5月27日 22:14

評価±0。
民話などでこんな話ありますよね。
その点では興味を引かれたのですが、
全体的には話がとりとめない感じです。

藪蔵人 2006年5月27日 21:01

思い切って全部取っ払ってショートに!
したら、どうかなあ…
初めて見た死体の話が削れなかったのもわかる気はしますが。
評点: 0

イマニ 2006年5月25日 12:42

素材:A
調理:C
盛付:C
結果:±0

昔話で、一人の男がクモに池の中へ引きずりこまれそうになる話があって、すごい怖かったんですが、それを彷彿させました。

マリポーサ 2006年5月24日 7:38

最初の花のトラップは面白かったけど、後半のせいで散漫になってしまいました。
±0

brother 2006年5月17日 22:15

評価が難しいですねぇ。
前半は良いんですが、後半は蛇足にも感じるんですね。
でも前半だけ書いても、何かしら難癖を付けられるんでしょうね。カワイソス(´・ω・`)

じゃあこれだ、前半に加点、後半に減点ということで、±0

ミミちゃん 2006年5月15日 9:54

tb
http://chabin.blogtribe.org/entry-b1c50d7ae8de88c06ad86ddcf2740e88.html

もり けんた 2006年5月13日 9:21

こいつは厳しいのですが、人を誘う花という話には魅力を感じる〜初めて書いた話ならなかなかいいネタだなー(--;)
うーん今回はプラス1。但し構成は勉強がいりよう。あの世の花は蓮の花〜ロハス

TOMOKI 2006年5月11日 17:37

前半のお祖母さんの話で、その溜池には人を誘い込もうとする何かが
いるということから、後半の兄弟もひょっとしたら…と示唆しているの
でしょうか?もしくは、お祖母さんがどれだけ危険な状況だったかを
補足するために、兄弟のエピソードを加えたのでしょうか。筆者氏の
意図が伝わりにくいです。後者であれば、事故が多発しているという
ことを短く冒頭に加え、前半のみで1本に纏めた方が良かったのでは
ないかと。人を誘う花のエピソードは魅力的だったのですが−1

林不二男 2006年5月9日 23:39

後半は要らなかったと思いました。
得点無し

田原 誠 2006年5月8日 12:33

 祖母の話だけだったら不思議な話として好印象を持てていたかも。半日以上経っていたなら顔を真っ青にした、ではなく明らかに死人だと思う。助かる云々もだから表現としてはおかしい。   ▼

ponken 2006年5月7日 18:00

人を池に誘う花は不気味でしたが、そのほかは余計だったと思います。±0で。

じぇいむ 2006年5月6日 23:56

見方を変えると、池からお母さんがルアー釣りされているようで、怖くなる要素はあると思います。けれど今回はまとまらなかったようなので。
評価−1

hydrogen 2006年5月6日 22:29

-1

兄弟の話は良いなぁ。
良かったのに、ひどい前振りで始まってもっとひどい落とされ方だったのがちょっと。
更に今ひとつな話が二つあったので、(配点が)負の方向に引っ張られた感じ。

てらまち 2006年5月6日 15:11

この溜池の不思議さを伝えたかったのだろうが、3つのエピソードともインパクトに欠け、中途半端に終わってしまっている。どれかにスポットを当てるか、ネタ自体の選択をあきらめるか、熟考すべきだったのでは。−1。

sora 2006年5月4日 1:36

文章;■■□□□
怪異;■■□□□
恐怖;■□□□□
評価;■□□□□→-1
結局、作者は何を読み手に伝えたかったのか判らなかった。二人の兄弟の話などは怪異ではなくただの事故目撃である。
ラストの女幽霊のくだりもこれだけで終わらせてしまうのであれば何故導入したのか理解に苦しむ。

ナルミ 2006年5月3日 1:55

池の花・兄弟・女の幽霊と話の肝が三つに分裂している。しかも、兄弟の話は怪異とは言えない。
-1

ネジ 2006年5月2日 0:38

「池の花」というタイトルから見ると、やはり初めて見た死体の話はいかにも付け足しな感じしますね。±0

吉田 2006年5月1日 22:52

得点なし
話・文体、すごく僕の好みです。
民俗学的なレポートとしては、上質な部類に入るのではないでしょうか。
惜しむらくは、キチンと一つの怪談話としてまとまっていなかったところ。
やはり「超」怖であるということを意識して、小粒なネタや、怪異が話としてまとまっていなければ切り捨てる、という英断も必要では。

風来月人 2006年5月1日 20:30

↓私の書いた批評です。

2006年5月1日 20:25

怖さのポイントが曖昧です。-1です。

くりちゃん 2006年5月1日 17:14

おばあちゃんに起こった怪異だけで書いてみてもよかったのでは?

撃墜王の孤独 2006年5月1日 15:16

うう〜ん、祖母の話に無理矢理兄弟の溺死事故と幽霊の噂をくつけて怪談に仕立てあげている。作者もネタが弱いのを承知で何とかこねくり回したようだ。
祖母の話に思い入れがあったのかもしれないが、ネタが弱かったらスパッとボツにする勇気が必要だと思う。
文章はいいので今後も投稿し続けて下さい。評価は−1です。すいません。

金縛郎 2006年5月1日 14:14

後半の兄弟の話は蛇足、というか祖母に起こった怪異が
小粒だったので補強材料に使われているに過ぎません。
小粒なら小粒なりに短くまとめた方がよかったかも。
×。
O
e