2008年度ランキング 総評









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011 2 23 30
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028 3 9 42
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2008年度超-1ランキングは、1位を該当者なしの空位としました。

超-1は、実話怪談著者を発掘する大会として位置づけられています。これは、例年通り変わりありません。
超-1の特色である応募者自身の相互判定及び応募者以外の読者による審査は、基本的に作品単位での判断となります。作品ごとのネタの好悪、文章力・構成力などの優劣については、特定著者への思い入れ贔屓目や色眼鏡を廃した状態で行われていますが、この審査基準は毎年の応募者+読者によって変質していくものでもあります。
今年は特に文章力に力点を置いている応募者が多かったようで、全体の文章力・構成力の向上が見られました。自然、個々の審査もそうした視点からのものが増え、文章力を基軸にした評価が多く行われたようです。その上で、作品全般に極端な低得点のものが少なかったことからも、文章力は及第点、というものが増えたという証左であるように思います。

一方、これを集計して著者単位に振り分けてみたところで、今大会の別の顔が浮かび上がってきました。超-1は、実話怪談著者を発掘する大会ですが、そこで求められる著者には、2つの系統があります。

ひとつは、「単独で実話怪談本を1冊書けるほどの取材力と文章力の双方を併せ持つ著者」。
もうひとつは、「高品質で稀覯性の高い実話怪談を1話〜数話程度なら書ける著者」。

前者は、「超」怖い話 怪歴の久田樹生、「超」怖い話 怪記の松村進吉、恐怖箱シリーズで言えば雨宮淳司のような著者ということになります。
後者は怪コレクションに収録するにふさわしい怪談を書けた著者陣、上位ランカー陣ということになります。
渾身を込めた高品質な一作を生み出すこともなかなかできることではありません。実話怪談の場合、特に「怪異との遭遇」「体験談との出会い」に左右される部分が大きく、体験談を見つけられるかどうかという半ば運のようなものに恵まれなければ、どれほど筆力があっても数をこなすことはできません。

この「数」というのが重要で、前者「単独で一冊書ける著者」には、数をこなす実力があるかどうかが求められることになります。元々持ちネタがある、というだけではダメで、元々の持ちネタを使い切った後に、さらにおかわりを追加取材・蒐集できるかどうかが、「ピンで書ける著者」の資格の有無を問う基準となります。

もちろん、少数の渾身の一作に賭け、とっておきはチャンスが巡ってくるまで隠しておく、という方針の人もいたかもしれません。しかし、それでは「では、一冊お願いします」という話が実現したとき、本当に一冊任せることができるのかどうかという判断を事前に行うことができません。潜在力はあくまで潜在力、可能性は実現性であるとは判断できないわけです。

また、文章力はたった一本を研ぎ澄ますことでも磨かれるのかもしれませんが、より多く数をこなすことで磨かれるという側面もあります。本番で安定した成果を出せるのは、繰り返し練習した成果であり、練習量の少ない選手が本番でだけよい成果を残せるというのは、稀有な例でしかありません。

その意味で言えば、今回は数をこなせる著者はあまり多いとは言えませんでした。探す能力/怪異と出会う才能というのは、半ば運でもあるわけですが、努力で出会いを増やしている人もいますので、常に運だけの問題とは言えません。

寡作な著者の作品は品質が高かったため、怪コレに収録する分には適していた一方、そうした品質の高い著者は「量産力」が未知数のままでした。
果敢に量産を実践した著者陣が上位を占めていますが、当たり外れ(個々の作品への評価のばらつき)から、点数が伸び悩んだ点もあるようです。
ただ、点数が伸び悩んだ作品についても、「多数の評価は集まらなかったが、好き嫌いがはっきり分かれた」というものも多く見られるため、一概に「出来不出来が激しい」と断言できるものでもありません。
個々の作品への評価、審査員ごとの好みの差が現れた部分だろうと思います。

なお、今回は超-1/2006、2007で上位を獲得してきたランカーの一部が恐怖箱シリーズ立ち上げに抜擢され、その作業時期と超-1/2008の開催時期が重なったこともあって、大幅な顔ぶれの入れ替わりが見られました。
参加者の半数以上が今回からの初参加。また初参加にして5位、6位あたりの上位に食い込んできている「すねこすり」「宇津呂鹿太郎」の両名の今後は大いに期待したいところです。

また、「ネタには恵まれないが、自分ならこのネタをこう書くだろう」という、著者のための自主トレの機会としても用意されているリライトについては、今年は過去3年間でもっとも活発に行われたように思います。
中でも、「せんべい猫」名義で、リライト許諾が出ている全作品のリライトを達成された「すねこすり」の偉業は前人未踏として讃えるに値すると思います。
タダでさえ睡眠時間と余暇時間を削る超-1にあって、ここまでを実際にやってのけるのはさぞや大変だったでしょう。
同時に、これをすることによってしか手に入らないものもあったかと思います。元の話の採話者は、どういった視点で話を聞いたか、得たか、どこに注目をしたか、それをどう表現したか。リライトをしよいにも手を入れようがないほど完成しているものもあれば、贅肉を落としたことで見違えるもの、一言書き足せばさらによくなったのではないか、と思えるものなどに関わることを通じて、リライトをされた方に残るのは「審恐眼」とも言えるべき目と、体験談を怪談に組み立てる反復練習の機会、そしてそれだけの作業意時間を費やしたことに値する文章力の向上です。
その意味でも、「すねこすり」が新たな体験談をかき集めて来年の超-1に現れるのが楽しみでならないのです。

また、相互講評の漏れでコンプリートを逃した「山際みさき」と「黒ムク」は非常に惜しいところでした。応募総数が多くなるほど、上位を狙っている人が辛くなるという形で奇妙なバランスが取られているのが超-1の厳しい所ではありますが、今回はそれが裏目に出てしまった感はあります。
しかし、2位の「へみ」もそうですが、3位の「山際みさき」、4位の「黒ムク」ともに、前回から大幅に順位を上げています。特に2位の「へみ」は超-1/2006から2年振り2回目の参加で、ランキング1位が空位とはいえ、実質的な1位相当に、「山際みさき」は、2006年大会から順に、49位→9位→3位と順位を上げています。以前の大会の作品と比べても、基礎力が向上してきているのがわかります。

3位、4位の両名は前回に続き、携帯電話からの応募であったという点も注目に値するかもしれません。パソコン/携帯などの執筆環境の相違は、怪談の出来に左右されないということの証左と言えましょう。

総合すれば、全体としてのレベルが下がったわけではないけれども(総数も質も)、単独で一冊書けるだけの著者を見出せた、と断言するには至らなかった。これが、本年度大会の1位を空位とした結論となります。

欲を言えば超-1/2006で選抜された松村進吉・久田樹生を越えるか並ぶ程度の文章力と取材力の双方を兼ね備えた人材。或いは、恐怖箱 蛇苺/老鴉瓜に抜擢された上位ランカーに並ぶ人材。
そういう人材の登場に期待を寄せ、次回超-1/2009へ向けて心機一転していただきたいと思います。

四年目となりますが、来年は確実にあります。
リベンジをお考えの方は、これから7ヵ月掛けて、全力で体験談を取材しておいてください。

 

 

 

(文中敬称略)




ペンネーム eNo








001

(空位)

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002 へみ 011 2 23 30
003 山際みさき 028 3 9 42
004 黒ムク 016 2 11 25
005 すねこすり 007 - 25
006 宇津呂鹿太郎 013 - 22
007 じゅりんだ 006 2 19 16
008 024 2 8 07
009 高田公太 015 2 16 10
010 矢内倫吾 025 3 4 10
011 北極ジロ 023 3 10 04
012 怪聞亭 014 - 04
013 ねこや堂 010 - 10
014 昼間寝子 019 - 27
015 比良坂 泉 022 - 05
016 銅史 要 021 - 10
017 PM 003 - 07
018 茶毛 018 2 35 07
019 SPダイスケ 005 - 10
020 有線 026 2 25 09
021 ナルミ 009 - 01
022 ぼっこし屋 012 3 15 01
023 maggi 002 - 03
024 与粋鴎歌 027 3 14 02
025 ちあき 008 - 03
026 久遠平太郎 032 2 28 01
027 冬野波奈 020 - 01
028 蓬莱 029 - 03
029 山口伸樹 017 - 04
030 島袋旅人 033 - 06
031 LEO 031 - 04
032 sagu 004 - 02
033 hitomi 001 - 03
034 有村圭子 034 - 01
035 恵斗 ゆずる 030 - 01