..お互いはしゃぎすぎていたようだ。勢い余って仏壇の前に立ててあった盆提灯を派手に倒してしまった。従兄が三原君を担ぎ上げて振り回した際、三原君の足が盆提灯に当たったのである。 大きな音がした。驚いて飛んできた親戚のお婆ちゃんが怒鳴った。「そんなことしたら、死んだ爺ちゃんが怒って出てくんで!」 その夜のこと。 三原君はふと目が覚めた。横を見ると両親は良く眠っている。 もう一度寝ようとした。その時である。部屋の襖が大きく開いているのに気が付いた。廊下が丸見えだ。その廊下にぼんやりと光が差した。光が広がるにつれ、そこに人が現れた。白い着物を着た男性のようだ。こちらを見ている。 顔をはっきりと確認したわけではないが昼間のこともあり、三原君はそれがお爺ちゃんだと思った。怒られる。怖くて仕方がなくなり、頭から布団をかぶってごめんなさい、許してくださいと心の中で呟いた。 だがその心の声は相手に届かなかったようだ。衣擦れと畳を摺り足で歩く音が三原君の足元まで来て止まった。 と次の瞬間、ばさっと音を立てて勢いよくその人物が三原君の上に倒れこんできた。 悲鳴を上げる間もなく左肩に噛み付かれ、激痛が走った。 後になって気が付いたのだが、その痛みは布団の上からではなく直接噛み付かれたかのようだった。 その後どうなったのか分からない。気を失ったのかもしれない。 気が付くと朝になっていた。 夢だったのかと思いつつ起き上がると左肩がずきりと痛んだ。確認しようと服を脱いでまたぞっとした。左肩の噛まれた箇所には微かに人の歯形が残っていたのだ。※この作品は、3/31に送信されていた作品で、応募作品受け付け処理の不具合のため公開されていませんでした。不手際をお詫びするとともに、講評対象の正規エントリー作品として追公開します。
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