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松本は6年前、ある地方雑誌の編集をしていた。 「コーナーを担当していたライターが事故っちゃって」 2ページ分がぽかんと空いたそうだ。 「そのライター、いつも締め切りギリギリに入稿してくるもんだから、あと二日で埋めなくちゃならなくなった」
松本は過去にボツになったネタを入れて、急場をしのごうと思ったが、あくまで新企画にこだわる編集長がそれを許さなかった。 数人の編集部員で相談した結果、廃墟探訪というB級企画が持ち上がった。 折しも廃墟ブームに火がついた時期。 編集長にかけ合うと、ボツ企画で埋めるよりはマシかと言われた。 条件は『心霊企画』にさせないこと、あくまで『廃墟』を文化の遺物として捉えること。
松本は降り注ぐ太陽と廃墟という、ギャップを全面に推し出す誌面構成を考え、カメラマンと三件の廃墟を取材した。 しかし時間がない中での取材ということもあり、最後の廃墟を訪れたのは既に深夜だった。 そこは過去に食堂だったらしく、テーブルの残骸やメニューの札があちこちに散らばっている。 「昔は笑顔が集まる場所だったんだよなぁ…」 しんみりとした気持ちになりながらも、なおも奥へと進む松本。
ふと二階へ上る階段をみつけた。 懐中電灯を片手に二階へ上ったが、人の進入を拒むかのような凄まじい荒れ方に、上り切るかどうしようか躊躇しながら、階段の途中から見える範囲だけ一通り照らしてみた。 『がさっ』 何かが動く音がした。
破れた窓から風が吹き込み、散乱した布切れか何かが音を立てたと思った。 しかしその音は、何かを引きずるように横に移動する音に変わる。 松本は無言のまま、階下へ下りて行った。 「松ちゃん、そろそろ帰らないか?」 カメラマンは凄まじい荒れ方に、もはや動けないほど怯えている。
松本はカメラマンに『二階に誰かがいるかも知れない。オレ、もう一度確かめてくる』と耳打ちした。 カメラマンは完全にビビってしまい、一目散に外に向かって走り出す。 松本は恐怖よりも好奇心の方が勝ってしまい、音の正体を確かめたくなった。
もう一度ゆっくりと二階へ上る松本。 『がさっ。ず、ずずず…。ばさっ。ばたばたっ』 ハッキリと聞こえた。 誰かが近寄ってくる気配もする。 やはり誰かがいる。 『ぶんっ』 すぐ近くで何かが空を切るような、風切り音がした。 空耳という可能性が完全に否定された途端、とてつもない恐怖心に襲われ、カメラマンが待つ車に急ぎ逃げるように現場を後にした。
三日後、松本は地元新聞の三面記事で、ショッキングな記事を見つけた。 それは最後に訪れたあの廃墟で、浮浪者の死体が発見されたという内容だった。 記事によると『死後一週間から10日』と書かれていた。 死因は不明だが事件の可能性もあるとされ、警察ではさらに捜査を進めると締められている。 ということは松本たちが訪れたとき、この死体はすでにあったということだ。
あのときの音はなんだったのか。 浮浪者仲間が他にもいたのか、浮浪者を殺害した犯人だったのか、それとも死んだはずの浮浪者が自分を見つけて欲しくて音を立てたのか…。 結局は最後まで一連の音や、耳元で聞こえた風切り音の正体はわからなかった。
「警察にも行ったんですけど、事件のことについては何も教えてもらえませんでした」 しばらく現場は警察の管理下に置かれ、立ち入ることが出来ないまま、ついに取り壊されてしまった。 松本は明るいとき以外、廃墟には近づかないことにしている。
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■講評
ある程度完成された話だとは思うのですが、やはり作品としては弱かったので・・・。
この作品の始まりである「廃墟探訪というB級企画が持ち上がった」に対して「松本は明るいとき以外、廃墟には近づかないことにしている。」という、全く関係ない終わり方が話を盛り下げているように思うので、せめて廃墟探訪が地方雑誌にどんな記事として載ったのかを書いて終わった方が良かったのではないかと思います。
文章0:希少度0
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名前: chidori ¦ 17:04, Tuesday, Apr 01, 2008 ×
文:+2 怖:+1
色々と憶測できる話で、これはこれで良いのではないかと。 風切り音が特に。 亡くなっていた方の聞いた最後の音だった、とか。 |
名前: 晴 ¦ 17:49, Tuesday, Apr 01, 2008 ×
ネタ+1 気のせいとは言い切れない怪異があった、というのは伝わってくるのですが、その描写がとても解りづらいです。 もうちょっと文を短めに整理するといいかもしれません。 |
名前: ねこ ¦ 20:36, Tuesday, Apr 01, 2008 ×
これは体験者に聞いたのですが、人間一人が腐敗した匂いは凄まじく、十日、一週間ともなれば、かなりの異臭がしたはず。 もっとも冬場なら、匂いが1階では漂う事がなかったとも考えられるのですが、季節の記載がないので判断できません。 コメントできませんので0点です。 |
名前: くすだまん ¦ 20:40, Tuesday, Apr 01, 2008 ×
そこに居たのが霊ではなく、犯人の可能性も無きにしも非ず。 この場合、必ずしも怪異に結び付くとは限らないが、別な意味の恐怖、という事で。
希少性(1) 事件性(1) |
名前: ねこや堂 ¦ 21:05, Tuesday, Apr 01, 2008 ×
文章 2 滞りなく読める。 稀少度 2 薄気味悪いですよ、これ。
どういう段取りで雑誌の記事が決まるのかが興味深かった。 幾多の廃墟レポートもよく読みますが、根拠なく怖いと感じる物件ってありますもんね。この件も怖かったです。 わざわざ夜廃墟を訪れる人もいますけど(これは不法侵入をとがめられないためかな)時間の関係で夜になってしまったという場合は、いくら取材だろうとイヤだったろうな。 |
名前: くりちゃん ¦ 08:56, Wednesday, Apr 02, 2008 ×
| 怪異と言えるかどうか微妙な内容だし、体験者本人がわざわざ「浮浪者仲間が他にもいたのか、浮浪者を殺害した犯人だったのか」と、怪異ではない可能性があることを認めている。もう少し決定的な描写がほしかった。 |
名前: ナルミ ¦ 01:01, Thursday, Apr 03, 2008 ×
単純に怖い。 殺人犯がまだいたのかも知れなくても怖いし、 死体だけだったとしても怖いよ〜(T^T)
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名前: ちゅん ¦ 20:39, Thursday, Apr 03, 2008 ×
| 文章は大変読みやすく没頭しましたが、怪談かというと難しいかと。大変、もったいないような。 |
名前: 茶毛 ¦ 23:09, Sunday, Apr 06, 2008 ×
ごめんなさい、怪異と関係ないところがいちばん気になってしまいました。 残り二日という無茶なスケジュールで立ち上がった企画なのに逃げ帰っちゃってますが、雑誌の穴埋めどうなったんでしょう…。 先に訪れた二軒でどうにか済ませたのかな^^;
廃墟を題材にした作品がいくつか掲載されていますが、どれも建物の怪しい雰囲気をこれでもかと書いてくれていて引き込まれます。このお話もしかり。 +1
「ぶんっ」と空を切る音は、明らかに悪意が感じられて怖い。当たらなくて何よりです。 遺体がある場所に踏み込んでいた、何者かがそこにいたという恐怖は感じました。でもこれは事件に巻き込まれていたかもしれないという恐怖であって、怪異かもとは思えないまま終わってしまった…。 |
名前: 眠 ¦ 00:07, Thursday, Apr 10, 2008 ×
死体があった事実。 そこで起こった怪異。 単純に怖いです。 |
名前: 黒ムク ¦ 13:08, Thursday, Apr 10, 2008 ×
| 体験者の方は本当に怖かったでしょうが…物音や気配は怪異だったかどうかわかりません。 |
名前: MM88 ¦ 22:20, Monday, Apr 14, 2008 ×
死体がすでにあったというのなら腐敗臭や死体の臭いなどしなかったのでしょうか? 廃墟行った後で、そこに死体が実はあったというパターンは聞きますね。 そのときに感じた気配は謎ですが、微妙ですね。 |
名前: じゅりんだ ¦ 00:43, Wednesday, Apr 16, 2008 ×
「ぶんっ」という風切音は印象的です。 ただ引き摺っていた音も含めて、作者様が言うように、犯人や被害者等の生きている人間のものだったかもしれませんね。 廃墟には魅力を感じるので、やや惜しかった様に思います。
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名前: へみ ¦ 11:12, Thursday, Apr 17, 2008 ×
文章的にはよくできていると思いますが、怪異と呼ぶにはどうかと? 微妙なところです・・・ |
名前: SPダイスケ ¦ 23:28, Saturday, Apr 19, 2008 ×
とても読み易かったと思います。 怪異としては少し小粒ではありますが、十分不気味さはありました。
文章:2 内容:1
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名前: PM ¦ 19:42, Sunday, Apr 20, 2008 ×
怪異と決め付けられませんからね。 けれどもとても読みやすく、気味が悪いのが伝わってきましたので。 |
名前: こうたろう ¦ 18:01, Tuesday, Apr 22, 2008 ×
コーナーを担当していたライターが事故ったところから怪異が始まっていたのかなとも思いましたが。 死体が呼んでいたのなら、発見してもらうのは失敗だったわけですね。 直接の見聞は音だけですが、雰囲気もあって読みやすかったです。 希少度 1 文章 1
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名前: じぇいむ ¦ 17:14, Wednesday, Apr 23, 2008 ×
文章・・・1 希少度・・・0
怪異かどうかは微妙なところですね。 でもこれは怪談として成立はしていると思います。 怪しい音を聞いたのは事実であり、その場所に死体があったことも事実。 その音を立てたのが死体であろうと人間であろうと、気味悪い話であることに変わりありません。 しかも現場の雰囲気もよく伝わります。その読感は怪談そのものだと感じました。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 04:41, Sunday, Apr 27, 2008 ×
| この風切り音だけではちょっと弱いです。というよりあぶないところだったのでは? 犯人がいたのかも知れませんし。達者な文章で期待したのですが。 |
名前: ひ ¦ 17:09, Monday, Apr 28, 2008 ×
| 後日談を考慮に入れても、怪異が気配と音だけではやはり弱いですね。文章はとても読みやすく臨場感はありました。 |
名前: 久遠 平太郎 ¦ 21:01, Tuesday, Apr 29, 2008 ×
| うーん、犯人がいたとしたら怪異ではないし、というか本当に危ない所だったんじゃ…。 |
名前: 昼間寝子 ¦ 16:59, Wednesday, Apr 30, 2008 ×
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