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足元にすがりつく幽霊
 当時の新宿駅西口通路には、両脇一面にダンボールハウスが並んでいた。
 山下文廣さん、通称ブンさんも、そんなダンボールハウスを寝床にする住人のひとりだった。

 西口通路に住みはじめて間もなくの頃、ブンさんにひとつの趣味ができた。
 ダンボールの隙間から、行き交う人々の足元を眺めることだ。
 大して面白い訳ではなかったが、足元から、その人の生活ぶりを推理していると時間がつぶれた。

 ある日、ブンさんがいつものように孤独な趣味に耽っていると、突然、老婆の顔が目の前を横切った。
 はじめこそ驚いたブンさんだったが、落し物でも拾ったのだろう、そう思えば不自然なことではなかった。
 しかし、同じ老婆の顔は、次の日も、そのまた次の日も、同じ時刻にブンさんの目の前を横切っていった。

 普通じゃない。

 ブンさんはそう思いはじめていた。
 そしてもうひとつ、ブンさんには気付いたことがあった。
 どうやら、その老婆は、ある女の後について行ってるらしいのだ。
 あの老婆は一体何者なのだろうか、ブンさんは気になって仕方がなかった。

 4日目。
 同じ時刻に老婆の顔が現れたとき、ブンさんはいてもたってもいられずダンボールハウスから飛び出した。
 
 あっ

 ブンさんは思わず絶句した。
 薄汚れたパジャマのようなものを着た老婆が、スーツ姿の女の脚にしがみついていた。
 しかし、ブンさんを驚かせたのはそれだけではなかった。
 スーツ姿の女のもう片方の脚には、3、4歳ぐらいの男の子が、老婆と同じようにしがみついていたのだ。

 唐突に飛び出してきたホームレスの男に、皆は一様に顔をしかめたが、すぐに見て見ぬ振りで通り過ぎて行った。
 スーツ姿の女も、一度だけブンさんの方を振り向いたが、すぐに老婆と男の子を引きずったまま人ごみの中へ消えていった。
 誰一人として、引きずっている本人でさえも、老婆と男の子に気付くことはなかった。
 その日を最後に、ブンさんは西口通路から出て行った。

 数ヵ月後、拾った雑誌のある記事を目にしたとき、ブンさんは妙に納得がいったという。
 その記事のタイトルは「実母と長男を虐待死させた女の素顔」というもので、記事中の写真に写っているのは、あのスーツ姿の女だった。

「水子はさ、よく母親の背中にしがみついて現れるっちゅうけど、あれはやっぱり負んぶしてもらいたいからなんだろうな。
 でも、幽霊ん中にゃ足元にすがりつくしかできない奴もいる。
 俺にはさ、何だか、そいつらの気持ちが少しわかる気がするよ」

 ブンさんは言った。





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■講評

文章 2
低いところからの視点が興味深い。
稀少度 1
これは気味が悪い。

だが、「パジャマのようなものを着た老婆が、スーツ姿の女の脚にしがみついてい」る状態で、「老婆の顔が目の前を横切った」ように見えるだろうか、と思ってしまった。大人が大人の足にしがみついてもかなり高い位置に顔が来るのでは?男の子についても然り。
一度疑問を持つと、ダンボールハウスの大きさが中で座れるくらいなのか、寝そべって入るくらいなのか、「ブンさん」の視点の高さは?と気になってくる。
雑誌で後日譚を知るところはちょっと偶然が過ぎるかなと思ったが、あんまり詮索しては怪談読みの面白さが無くなりますよねw

名前: くりちゃん ¦ 15:55, Sunday, Mar 30, 2008 ×


怪異としては面白いが、細かい点で疑問が残る。足下にしがみついていたなら、老婆の顔だけでなく体も見えるはずではないのか。それなら、最初から「落とし物を拾った」などとは思わないのでは。「一度だけブンさんの方を振り向いた」だけの女の顔を、雑誌に載った写真と照合できるくらい鮮明に覚えていられたのも違和感がある。タイトルもネタバレでストレートすぎるので、もう少し考えた方がよかった。
そして、ラストのブンさんの「解釈」は言わずもがな。

名前: ナルミ ¦ 21:24, Sunday, Mar 30, 2008 ×


ネタ+2
ブンさんの日課や週刊誌の下りなど、部分的にできすぎているかも、と感じる部分がありました。
おそらくそういう部分だけ文章の密度が濃いためだと思われます。
老婆と少年の霊についてより明確に書くか、全体を最低限の表現のみに絞るなどのバランス調整が必要な気がします。

名前: ねこ ¦ 21:50, Sunday, Mar 30, 2008 ×


ブンさんの趣味ができたことも、そのうちいつもと違うものを見つけたのも、新聞を拾い読みして記事を見たのも、これらのいろんな偶然が重なった事こそが怪異であると言えるのでしょうから、結果、こういう話として落ち着いたのではないかな・・・と思って読みました。
まとまりすぎかな、という気もしますが、これはこれで良いと思います。

文章1:希少度1


名前: chidori ¦ 23:46, Sunday, Mar 30, 2008 ×


少し出来過ぎの感もあるが、中々面白い。
ただ、「しがみつく→引きずる」と定義付けてしまうと、どうしても重みでちゃんと歩けてないような印象を持ってしまう。
実際はしがみついているのは霊なので、重みを感じる筈はないのだが。

希少性(1) 文章(0)

名前: ねこや堂 ¦ 02:09, Monday, Mar 31, 2008 ×


文:+2 怖:+2

珍しく落ちのあるお話。
それにしても、そんなにぶら下げてたら重いでしょうに。
憑けてる人に限って鈍感なので嫌になる。

名前: 晴 ¦ 12:37, Monday, Mar 31, 2008 ×


嫌な話ですよ。
人を死なせても平気で歩いている人がいる。
そういう、やりきれない悲しさがあります。

名前: ちゅん ¦ 15:23, Thursday, Apr 03, 2008 ×


怪異としては面白いですが、出来すぎな部分と矛盾点が引っかかりました。多少投げっぱなしな文章の方がこの作品には合っていたようにも思えます。

名前: 茶毛 ¦ 15:06, Sunday, Apr 06, 2008 ×


きちんと解明されていてスッキリ!のはずなんですが、矛盾を感じてしまいモヤモヤ〜っと。

初日から三日目まではどのように見えていたのでしょうか。「顔が横切っていった」「落し物でも拾ったのだろう」というのが、お婆さんがどういう姿勢だとそのように見えるのか思い浮かびません。
飛び出して初めて全身像が明かされるので、それまでは生首だけ見ていたかのような印象です。

そんなものが二人も足にしがみついていたらそちらの記憶の方が鮮明で、一度振り向いただけの女性の顔なんて覚えていないんじゃないかな、とも。
女性の顔に特徴があったとか、ブンさんがものすごい記憶力の持ち主であるとか、数か月経っても記憶が褪せない要因があったのでしょう。これだけでは雑誌に載っていた女性は同一人物ではないかも、と疑念を抱いてしまいます。

たとえ長くなってもそれらの裏付けまでしっかり書かれていたら、全てがピタッと繋がる面白いお話です。

名前: 眠 ¦ 23:41, Tuesday, Apr 08, 2008 ×


怪異:+2 文章:+1

通常とは違った視野からの怪異。見えている世界も事象も面白…いやいや、興味深い。
”足元にすがりつくしかできない”
そんな場合もあるのかな。

名前: MM88 ¦ 14:33, Wednesday, Apr 09, 2008 ×


最初のダンボールの隙間から見ているところの老婆の顔が見えるくだりは、やはりその後の体の部分が見えてないのは不自然に感じた。
それと数ヶ月後に拾った記事に虐待死のことが書いてあったとのことだが、老婆と男の子は目撃した時点では生きていたのだろうか。
それとも亡くなっていて、数ヶ月後に露見したのか。
拾った雑誌が目撃直後に出た物だったのか。
生き霊だった場合を考えると、とても悲しいですね。


名前: じぇいむ ¦ 14:41, Friday, Apr 11, 2008 ×


 どう考えても、お婆さんがパジャマ姿でしがみ付いているというのが初めからわからなかったというのが理解できない。だいたい少女も見えてなければ理屈に合いません。
 よく書けていますが、描写に問題がありすぎます。
 0点です。

名前: くすだまん ¦ 18:28, Saturday, Apr 12, 2008 ×


この話は凄いですね。
ブンさんに見えたものだけでも充分な価値があると思いますが、オチが凄すぎる。
まさかその女性を週刊誌で見るとは。
文章からの印象だと、ブンさんは普段はあんまり霊を見る人じゃなかったのかな。
たまたまその霊とは波長が合ったのかもですね。

名前: へみ ¦ 07:39, Sunday, Apr 13, 2008 ×


足元に纏わり着く霊のお話は良く聞きますね。非常に性質が悪いそうです。両足にしがみつかれて引きずっていたら、歩きにくいと思うんですけれどね。
老婆の顔が目の前を横切ったという所が、どう言う見え方をしているのかがわかりにくかったかなあ。
拾った雑誌のある記事から、あの一回見ただけのスーツの女とどうしてわかったのかなあ?
と疑問に思いました。珍しい方からの面白い体験談ですね。

名前: じゅりんだ ¦ 17:44, Tuesday, Apr 15, 2008 ×


最後のおちが出来すぎな気もしましたが、なにが起こるかわからないところが怪異ですからね・・・・
足下にしがみついていたなら、老婆の顔だけでなく体も見えるはずではないのかという単純な疑問は残りましたが、怖かったです。

名前: 黒ムク ¦ 18:40, Thursday, Apr 17, 2008 ×


怖いと思いましたが文章に矛盾点もあり、点数は低めです。
ホームレスの方 ならではの視点というところは面白かったです。

名前: SPダイスケ ¦ 21:57, Friday, Apr 18, 2008 ×


雑誌にその女の素顔が乗ったのは、やはりその雑誌の関係者がブンさんと同じようなものを見て調査したのでしょうか…?
案外、世の中の事件の解決口として、こういうものを起因にする事があるのかもしれませんね。
いえ、個人的な推測でしかありませんが…。

文章:1 内容:1

名前: PM ¦ 10:42, Sunday, Apr 20, 2008 ×


文章・・・0
希少度・・・0

以前の新宿駅西口といえば、確かにそこで寝泊りする人々のダンボール製の家で溢れかえっていましたね。
私も一度だけ、終電を逃した夜にその辺で夜を明かしたことがあります。さすがにダンボールの寝床は作りませんでしたが。

さて、私が気になったのも、他の方が指摘されている部分と重なります。
ダンボールの隙間から連日見えたという老婆ですが、ダンボールから出て確認するまで女性の脚にしがみついているとブンさんが気付かなかったというのが、この文章からだとどうにも合点がいきません。
女性がダンボールのすぐ横を歩いていれば、ダンボールの隙間から見ただけでは女性と老婆がどういう状態にあるのかは解らないでしょう。
しかし、いくらいつも通る道だからといって、そんなスーツ姿の女性が4日連続で同じダンボールのすぐ横を通るということがあるでしょうか。
そこがまず疑問に思った点です。

そしてもう一点。
拾った雑誌に出ていたその女性の記事と、それを見たブンさんがあの女性だと気付いたという部分です。
そんな偶然があるのかと思いましたし、それに加えて、理解不能な怪異を経験し、最後に原因が解明されて終わるというのは、一昔前の怪談の定石です。
どうにも古臭い印象を受けると同時に、信憑性も薄れてしまいます。
取材した方がそう言うのなら、それはそれで仕方がないとも思いますが、書く方は読み手が納得するような書き方も考えてもらいたいというのが正直な感想です。

名前: 鹿太郎 ¦ 03:14, Thursday, Apr 24, 2008 ×


老婆と子供がどのような姿で女の足にそれぞれしがみついていたのか、腹ばいになってたのかそこのところを詳しく書いていただけるとありがたいです。足元とあったので、最初は老婆の首が床を転がっているのかと思っていました。

名前: ひ ¦ 14:45, Monday, Apr 28, 2008 ×


 雑誌で見た女性がブンさんの見た女性と同一人物というのは出来すぎている気がしました。
 一度見ただけの顔で、おそらく雑誌では目隠しがされているでしょうし……
 でも、怪異は怖かったと言うか……いえ、生きている人のほうが怖いですね。

名前: こうたろう ¦ 21:59, Monday, Apr 28, 2008 ×


なかなかの話だと思うのですが、タイトルがストレート過ぎて、怪異の予想が出来てしまうのが勿体無い。ホームレスの方のお話は珍しいので

名前: 久遠 平太郎 ¦ 19:18, Tuesday, Apr 29, 2008 ×


珍しく謎が残らない話ですね。
最後の言葉は、ブンさんが言うからなおさら深いですね。

名前: 昼間寝子 ¦ 15:24, Wednesday, Apr 30, 2008 ×



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