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ひとつめ
今年七十二歳になる絹代さんが、まだ小学校低学年だった頃の話。
絹代さんはとある山奥の村で生まれた。
絹代さんは八人兄弟の末っ子で年長の兄弟たちとは歳が離れており、兄弟一番目のお姉さんの佐和子さんは絹代さんより十四歳年上で、絹代さんが小学校に上がってしばらくした頃、佐和子姉さんはお嫁に行った。
佐和子姉さんの嫁入り先は山から下りた海辺の街で、山育ちの絹代さんは佐和子姉さんの嫁入り先に時々遊びに行く事を楽しみにしていた。

ある日何かの用事で絹代さんはお母さんに連れられ、佐和子姉さんの嫁入り先をたずねた。
姉さんとお母さんは何かを話していたが、絹代さんにはそんな事はどうでもいい事で、さっそく姉さんの嫁入り先の裏にある浜辺へと遊びに出た。
浜辺で貝殻を集めたり、蟹を捕まえたり、岩場の中をのぞいたりして散々遊び、気がつくといつの間にやらあたりは暗くなりかけている事に気付いた。
絹代さんはもっと遊んでいたかったが、もう帰らないと叱られるかな、と思っていると
「嬢ちゃん」
と後ろで声がした。
その声に絹代さんが振り向くと。
絹代さんの後ろにはいつの間にか知らないおじさんが立っていた。
知らないおじさんは褌と頭に手拭いのねじり鉢巻きを巻いただけの姿だった。
そしてその鉢巻きを巻いた頭には。
目がひとつしかなかった。
顔の真ん中より少し上にちょっと大きめの、ぎょろりとした目がひとつ。その下に鼻と口が並んでいた。
「……」
絹代さんはその姿に驚いたが、目がひとつしか無いのは病気か何かなのだろうと思った。
「嬢ちゃん」
驚いている絹代さんに、目がひとつしかない褌姿のおじさんは言った。
「もうそろそろ家に帰んな。でないと人さらいにさらわれっどぉ」
「……」
そう言われて絹代さんは急に怖くなり、集めた貝殻をハンカチに包み、おじさんに背を向けて佐和子姉さんの家へと走り出した。
すると姉さんの家の方から佐和子姉さんとお母さんが、絹代さんの名前を呼びながらやって来ていた。
「もう帰るで。あれ、この子はまたこんなに貝殻ばっかり」
「姉ちゃん」
「え?」
「あのね、目がひとつしか無いおじちゃんがね」
絹代さんは後ろを振り向いて言った。
しかしそこには。
もう誰もいなかった。
目がひとつしか無いおじちゃんに、もう帰れと言われたんだよと絹代さんが言うと、佐和子姉さんもお母さんも、浜にはお前しかいなかったよ、と言うばかりだった。





13:34, Thursday, Mar 27, 2008 ¦ 固定リンク ¦ 講評(22) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯

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■講評

変わったものを見られましたね。

前半の説明が長いのと、終わり方が少し冗長に感じるので、そのあたりが整理されれば怖さが引き立つと思います。
ただ気になるのが「ひとつめ」の描き方で、「ひとつめ」のあった場所として眉間を基準にするとか、本来の目の位置には何もなかったのだという点を強調された方が良かったのではないかと感じました。また、まぶたや眉については、無かったせいか何も描かれてないのですが、もし絹代さんの記憶があるようでしたら、それらの情報も書いてほしかったと思います。

文章0:希少度1

名前: chidori ¦ 15:22, Thursday, Mar 27, 2008 ×


文+1 怖:+2

なんだか良い話。
タイトルがひらがななのは何かのミスリードを狙っているのかと思ったのですが。
違ったのかとちょっとだけがくり。

名前: 晴 ¦ 17:27, Thursday, Mar 27, 2008 ×


浜辺でひとつめ、という状況がなんともユニークに思えました。
とってもいいお話です。

名前: 黒ムク ¦ 20:14, Thursday, Mar 27, 2008 ×


文章 1
読みやすい。
稀少度 1
珍しい妖怪譚ですね。

何だか子供向けの妖怪映画に出てきそうな物の怪ですね。それが悪さをせずに「家に帰んな。」という良き妖怪だったというところに安堵する。
ほのぼの系でイイと思う。


名前: くりちゃん ¦ 22:45, Thursday, Mar 27, 2008 ×


昔はこういう怪異が身近だったんだろうなぁ。

希少性(1) 文章(0)

名前: ねこや堂 ¦ 22:55, Thursday, Mar 27, 2008 ×


知ったかぶりをすると、
一つ目は山の妖怪が多いのですが、
海で一つ目の妖怪というのは珍しい。
百々爺のような人さらい妖怪と思いきや、
人にさらわれるから早く家に帰りなさいとさとす妖怪だったのが面白い。
水木しげる先生の言うとおり妖怪は楽しいんですよ。
読後ほのぼのするような怪談でした。

名前: 撃墜王の孤独 ¦ 23:36, Thursday, Mar 27, 2008 ×


さりげない目撃談で、雰囲気が出ていてよかった。
導入部はもう少し短くてもよかったと思う。

名前: ナルミ ¦ 01:04, Friday, Mar 28, 2008 ×


ネタ+2
一つ目の容姿の山神様の話は昔からあるのですが、砂浜で、というのは初めて聞きました。
悪いものではなく、子供の世話が好きそうな物の怪さんでよかったです。
途中で嫌な展開になるかな、とふと思ってしまうのは、私が汚れているのでしょうか(^^;

名前: ねこ ¦ 03:32, Friday, Mar 28, 2008 ×


ちょっと、怖いなと思ったんですが。
勘ぐっちゃった私ってば、嫌な大人になっちゃったわ…(哀)。
素直に読めばいい話なのに。
逃げて正解!と思ったのはどうしてかな…。
文章のせいではないと思うのですが。

名前: ちゅん ¦ 13:07, Thursday, Apr 03, 2008 ×


ひとつめで想像するのは眉間に一つのパターンでしたが、今回のは鬼太郎タイプ?海でというのも初めて聞きました。

名前: 茶毛 ¦ 00:12, Sunday, Apr 06, 2008 ×


一つ目というと「小僧」のイメージが強く、褌一丁のオジサンは意外でした。 +1

「人さらいにさらわれっどぉ」って。いやアナタ今まさに私をさらう気(ry と思ってしまった^^;
そんな悪意はなくて、いたずら心で近付いただけなのかな。思いのほかリアクションの薄い絹代さんにがっかりしたかもしれませんね。 +2

「絹代さん」「佐和子姉さんの嫁入り先」を多用していますが、もっと減らすとスッキリした文章になると思います。 -1

名前: 眠 ¦ 13:18, Monday, Apr 07, 2008 ×


文章・・・1
希少度・・・1

出だしが長いのが気になりました。
特に「絹代さんは八人兄弟の末っ子で年長の兄弟たちとは歳が離れており、兄弟一番目のお姉さんの佐和子さんは絹代さんより十四歳年上で、絹代さんが小学校に上がってしばらくした頃、佐和子姉さんはお嫁に行った。」という一文が長すぎます。
途中で一度区切った方が読みやすいし、意味も伝わりやすくなります。
減点するほどのことでもないんで、その対象にはしませんが。

体験談としては興味深いと思います。
一つ目の褌親父と遭遇し、早く帰りなさいって諭されるなんて、とても面白い。
狐か狸に化かされたのかと思ったら、海辺なんですよね。
でもどこぞの小さな島に狸だらけ砂浜があるって聞いたことがあるんで、狸だったとしてもおかしくないのかも。

名前: 鹿太郎 ¦ 01:42, Tuesday, Apr 08, 2008 ×


大変貴重な目撃譚ですね。
やっぱり妖怪系はわくわくしてしまいます。
何も害を及ぼされないで良かったと思いますが、「もうそろそろ家に帰んな。でないと人さらいにさらわれっどぉ」の部分は童謡の森の熊さんの「お嬢さんお帰んなさい」の部分を想像してしまいました。
なんかこう自分に自我が残っている内に早くここから立ち去りなさいみたいな。
そう考えると怖いですね。

名前: へみ ¦ 06:21, Tuesday, Apr 08, 2008 ×


見かけによらず、いいおじさんなのでしょうか。
話の希少度は高いと思いますが、「気がつくといつの間にやらあたりは暗くなりかけている事に気付いた。」等、文章面ではもう少し推敲が必要だったかと。
希少度 2 文章 −1

名前: じぇいむ ¦ 02:36, Wednesday, Apr 09, 2008 ×


個人的にはこういうのは好きなんですが、もしかすると本当に畸形の人だったのかもしれません。昔の不思議な思い出話ですね。

名前: じゅりんだ ¦ 16:15, Friday, Apr 11, 2008 ×


話は、絹代さんが海に遊びに行ったところから始めればよかった様な。
一つ目妖怪はお寺の小坊主さんの姿をまずは思い浮かべますが。
褌いっちょにねじり鉢巻き姿とは。
それはそれでインパクト大ですね。

名前: MM88 ¦ 23:35, Monday, Apr 14, 2008 ×


出だしの文章のもたつき感が気になりました。
妖怪系なのか、事故などで片目を失った方の霊なのか・・・

名前: SPダイスケ ¦ 18:41, Friday, Apr 18, 2008 ×


子供の事を思える良い妖怪ですね。
なんか妖怪って、子供の味方ってイメージが…。
良い体験だったと思います。

文章:1 内容:2

名前: PM ¦ 11:33, Saturday, Apr 19, 2008 ×


妖怪でしょうか。悪さはしなかったようでよかったです。今考えるとアレ?と思うことでも、現実に彼のようなモノを見たら「体の不自由な人」と思ってしまいますよね。のどかで好きです、こんな話は。

名前: ひ ¦ 16:44, Tuesday, Apr 22, 2008 ×


 文章はもう少しですかね。「絹代さんは八人兄弟の末っ子で」の一文の最後の「佐和子姉さん」いらないんじゃ、と、細かいですが気になりました。
 一つ目のおじさん、「人さらいが……」。え?人さらいって貴方の事じゃ?と思ってしまいました。
 本当に注意だけをしてくれたのならば申し訳ないのですがね。

名前: こうたろう ¦ 14:35, Sunday, Apr 27, 2008 ×


おじさんは妖怪だったのかな? 人ならざる者に「人さらいにさらわれるぞ!」と注意されるとは、笑えるような笑えないような話ですな。実際、妖怪や幽霊よりも生きてる人間の方が恐ろしい時代ですからねぇ。

名前: 久遠 平太郎 ¦ 21:45, Monday, Apr 28, 2008 ×


一つ目小僧ならぬ、一つ目親父とは。
しかも褌にねじりハチマキで、方言から地元の方の様ですね。
親切な妖怪でホッとしましたよ。

名前: 昼間寝子 ¦ 08:45, Wednesday, Apr 30, 2008 ×



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