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女の子の秘密
 「冬になるとさあ、見せたがりの痴漢っているじゃない」
 昼休みの雑談タイム。
 ミチルが言った。
 「あー、いるいる。コート着た奴でしょ。実際に見たことはないなあ」
 「あれって都市伝承の類なのかなあ、マンガとかでは良く見るけどさ」
 確かに、中学校の頃とかに学校で「そういう人が出るらしいので気をつけましょう」というような注意を受けたことが何度かあったが、実際に出たとか、会ったとかいう話を聞いたことはないような気がする。
 「うーん、会っても言いにくいかもね中学の頃とかだとさ。思春期だもん」
 今ではお弁当食べながらネタにできちゃうんだけどね、とヨウコが言って、話は終わりになった。
 まあ確かにご飯食べながらする話ではない。
 午後は急ぎの仕事が幾つかあって、そんな話はすっかり忘れていた。
 三時休憩の時にサトミが昼の話を蒸し返した。
 「あたし見たことあるよ、露出狂」
 へえー、どんなだった?と誰かが促す。
 サトミはちょっと変わったところがあるコだけど、ウケを狙って嘘をついたりはしない。
 「中三の時かな、塾の帰りにさ。駅前の細い道あるじゃん、あそこで通せんぼみたくしてて」
 サトミは、私とヨウコもそうだけど地元の子で、駅前の細い道はみんな朝と帰りに通るからみんな知ってる。
 あそこで出られたらちょっとお手上げだよね、とミチルが相槌を打った。
 男は黒っぽいトレンチコートを着て、サトミの前に立ちふさがっていた。
 行き違うつもりなのかと考えてサトミは道の端によけて止まった。
 男と目が合う。
 目が合ったことは憶えているのに、不思議と顔は憶えていない。
 男がトレンチコートの前を開ける。
 サトミはコートの中身に視線を釘付けにされた。
 なぜなら、コートの中は何もなかったのだから。

 「って、そっち系の話かいっ」
 誰かが突っ込む。
 「やだなあ、私ら帰りに通るじゃん、あの道」
 変質者は勿論怖いが、幽霊だってやっぱり怖い。
 他愛のない冗談と取ってしまっても構わないような話ではあるが、なぜかその話が引っかかって休憩後の仕事はミス連発になってしまった。
 何だろう。何か知らないけれど記憶にひっかかる、ような……
 
 帰り道は家が近いヨウコと一緒になった。
 他の皆は駅までのバスだ。
 「さっきのサトミの話だけどさ」
 ヨウコが何故か口ごもる。
 私も、そうだ。
 どうしてか先を聞きたくない。
 「私も、見たこと、あるよ。小六の頃」
 あ。
 思い……出した。私も。
 夕方の電話ボックス。
 お母さんに迎えに来てって電話をして、出ようとしたら男の人が立っていた。
 次、使うのかな。そう思って扉を押さえながら外に出ようとする。
 男の人は、何故か動かない。
 だから、電話ボックスから出られない。
 怖い。
 そう思った時、男の人が前を開いた。
 ある、と思っていたものはない。
 代わりに、コートの背の部分、縫い代の部分が三センチぐらいほつれているのが見えた。
 コートに中身があったのなら、見えたはずがない部分。
 「い、意外にさ。みんな実は見たことがあるのかも」
 少し間を開けて答える私の顔を、ヨウコが探るように見る。
 私はいったいどんな顔をしていたんだろう。
 ヨウコは納得した感じでうん、と一つ頷いた。
 「そうだね、きっと忘れてるだけなのかもね」









※メール受信障害の影響で、行間に余計な改行が挿入されてしまっていることが判明しました。
これは、メール受信時に「CR+LF」に置換されなければならないところを、「CR」で受信してしまったことに起因するトラブルだったようです。
2008/3/16 16:30の時点で、正しいファイルと置き換えました。

行間アキについては、作者の落ち度ではなくメール障害に伴うシステム上のトラブルということでご了解いただき、点数についてもご配慮いただけますよう、講評者各位にお願い申し上げます。
(実行委員会より)

10:24, Sunday, Mar 16, 2008 ¦ 固定リンク ¦ 講評(24) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯

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■講評

 新しい書き方にチャレンジした意気込みを評価します。
 マニアル人間のコンクールじゃあるまいし、もっと実話怪談は、表現に自由さがあっていいと思います。
 ただし、基本的な文章のルールを守っての話。
 老若男女が読むのが基本だから。
 
 この文章は要点がまとめてあり、描写も多すぎず、少なすぎず、非常に整理されています。
 内容も変態と怪談の合わせ技!4点です!

名前: くすだまん ¦ 15:54, Sunday, Mar 16, 2008 ×


文:+2 怪:+2

読みく、親しみやすい文体。
怖い。

「そっち系の話か」

で一旦ついたオチを覆される辺りが怖い。
私も忘れてるのかも?という気にさせられる。

名前: 晴 ¦ 16:34, Sunday, Mar 16, 2008 ×


文章 1
読みやすい。
稀少度 2
意外性はある。

(行間空けすぎというのが、通信エラーと分かったので講評をやり直します)

社会人達に「女の子」というのはキツい。違和感がある。「ウチの女の子」=女子社員といういい方はあるが。(これは先の講評をしてからも引きずっていた事です)
「コートの背の部分、縫い代の部分が三センチぐらいほつれているのが見えた。」というのはとてもリアル。
ただ、コートの中に中身が何もなかったんだったら、首の部分はどういう状態でそこにあったのでしょうか?知りたい。

名前: くりちゃん ¦ 18:05, Sunday, Mar 16, 2008 ×


お笑い系の話かと思っていたら、だんだんと怖くなっていった。「ずっと忘れていた、女の子のころの記憶」というのが興味深い。

名前: ナルミ ¦ 21:41, Sunday, Mar 16, 2008 ×


ケータイ小説っぽい文体と作風を盛り込みながら実話怪談を書こうとした心意気は面白いと思いました。また、連鎖して記憶から呼び起こされる怪異と、全てが曖昧なコート男の目撃情報が、最後の「そうだね、きっと忘れてるだけなのかもね」という結末に繋がるのであれば、この現実味のない書き方も、まんざらでもないかという気がします。

ただ、この作風が最大限に活きたのは今回の、この怪異であればこそ、ではないかと思います。ケータイ小説に見られるようなリアリティのなさが今回の一連の怪異を表現するのにうまくあっていたのでしょう。似たり寄ったりになりがちな実話怪談の中に、少しでも新鮮な風を送り込んでくれることを期待します。

とはいえ人物の描き方は、社会人でありながら中高生のように見えます。登場人物が全て学生であればこの話はこれでいいかもしれませんが、さすがに社会人ではどうかと思います。これについてはもう少しどうにかする必要があるのではないかと感じました。

文章−1:希少度1

名前: chidori ¦ 01:34, Monday, Mar 17, 2008 ×


ブログやケータイ小説なら点数は高かっただろうが、どうしても創作物のように見えて仕方なかった。
頭が固いもので申し訳ない。
実話の怪談はリアルさを求めてしまうもので。
それを抜きにしても、少しダラダラとした印象を受ける。
余計な記述や主観を抜いてもう少し簡潔にすれば、話が締まったと思う。

希少性・都市伝説っぽさで(-1) 文章(0) 好み(-1)

書き方が違っていたら評価も違っていたかも知れないので(2)

名前: ねこや堂 ¦ 04:09, Monday, Mar 17, 2008 ×


通信エラーとのことなので訂正します(削除できなかったので^^)

ケータイ小説っぽいからか、軽い印象を受けた。
文章が都市伝説のような感じと、「見せたがりの痴漢」などの怪異以外の要素が書かれていて、そちらに気をとられてしまった。

名前: 黒ムク ¦ 12:05, Monday, Mar 17, 2008 ×


ネタ+1
タイトルと全体的な印象から、なんだか体験者全員怖がっていないような気が。むしろ楽しんでいるような。
コート男も、ある意味無害だけど、コート男としての本懐を遂げていないような気が(^^;

微妙に引っかかるのが、話者が体験を思い出す部分。
なんとなくですが、近い体験(生身のコート男、もしくはただ怖い雰囲気の男に遭遇した)を、サトミさんの体験で上書きしてしまったのではないか、という風にも受け取れます。

名前: ねこ ¦ 20:34, Monday, Mar 17, 2008 ×


文章・・・1
希少度・・・1

開いたら何もないというのは面白い。自分も是非会ってみたいと思いました。でも男の前には出んのだろうなぁ。

一本調子になりがちな実話怪談の中で、この構成はなかなか面白いと思いました。
テレビの心霊体験再現ビデオのように画も浮かびます。
最後の台詞はちょっと狙いすぎのような気もしますが。

名前: 鹿太郎 ¦ 13:59, Saturday, Mar 29, 2008 ×


見たことあります露出狂。ちゃんと中身はありましたが。
中身がないのを見せたいんですかね、変態が考えることはわかりません。 +1

くだけた文章なのに女性雑誌の投稿にありそうなバカっぽい口調(失礼?)でもなく、昼休みやお茶の時間を一緒に過ごしているような気分になれました。面白かったです。 +2

名前: 眠 ¦ 21:02, Monday, Mar 31, 2008 ×


話の内容的にはそれほどの目新しさは感じませんでしたが、会話を多めに取り入れ、それでも大きな破綻がない点は評価できます。
「思い出す」という感覚も分かる気がします。
なぜかふっと思い出す怪奇体験ってありますよね。実際。

名前: へみ ¦ 00:59, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


そうそう、あそこの公園で…って思わず加わってしまいそうな語りでいいですね。
背中のほつれに目がいっちゃう辺りにリアルな感じを受けました。

名前: ちゅん ¦ 23:13, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


「露出狂な痴漢は伝承」説と怪異を混ぜ込んだ意欲的な文だと思います。コートを開いたら中身がないなんて、ルネ・マグリットの絵を思い出してしまいました。普通の露出狂の痴漢(コートの陰からイチモツを見せる)ならやたらいますが、「マンガの世界だけ」というのは、まっぱだかにコートを羽織ったヤツのこと? そうなら、それも書いておいた方がいいかもしれません。

名前: ひ ¦ 15:32, Thursday, Apr 03, 2008 ×


新しい書き方に挑戦したように思えるが、私的にはあまり受け入れられない。怪異もそんな怖いと思えない。

名前: 茶毛 ¦ 23:20, Thursday, Apr 03, 2008 ×


開いて何もなければ露出狂としての意味をなさないのではないかと小一時間悩んだ。
また、首の部分はどうなっているのか、そのへんの情報がないのが残念。
さらにトレンチコートから出ていたはずの足の部分にも触れられていないことも残念。
文章は、この話に合っていたと思います。
希少度 1 文章 1

名前: じぇいむ ¦ 18:37, Friday, Apr 04, 2008 ×


中身が何もないというのは想像の域を出ていない、意外性はないかなと思いました。
目撃情報が非常に曖昧な部分があるので、怖さとしてはそんなに感じなかったです。
あまり重たさを感じないライトな感覚で読めるお話ですね。

名前: じゅりんだ ¦ 12:19, Sunday, Apr 06, 2008 ×


怪異:+1 文章:+0
霊なのか透明人間なのか?
オチは面白いですがよくある漫画オチ。
とはいっても実話ならオチに注文はつけられないですが。

名前: MM88 ¦ 13:18, Wednesday, Apr 09, 2008 ×


 小説風というのも表現の趣味の問題なので減点対象にはしません。
 これが実話怪談?と思う人もいるでしょうが、文面からすると体験者自身が作成しているらしいのが判断できます。
 また会話から体験者が高校生である事、又は怪異を発見したのが一人でない、状況描写がしっかりしているなどから考察して幻覚、夢、思い込みの類の現象ではないのは一目瞭然。
 個人的には好きな表現方法ではありませんが、4点です。

名前: くすだまん ¦ 12:01, Sunday, Apr 13, 2008 ×


これはこれで読み易いですね。悪くはないと思います。
そのコートの男は、見せるものもないのに、わざわざ隠して見せられないものを見せ…ややこしいですね。
つまるところ、意図はなんなんでしょうね?
やっぱり変態さんなのでしょうか…。

文章:1 内容:1

名前: PM ¦ 20:16, Sunday, Apr 13, 2008 ×


中身がないと言う事は コートだけが歩いていたってことでしょうか??
貌、手足はあって 体だけ透明だったのか・・  その辺の説明がほしかったです

名前: SPダイスケ ¦ 22:48, Tuesday, Apr 15, 2008 ×


好み+1
ふわふわとした現実味のない話なのに、妙に惹かれる話に仕上がっていて面白く読ませて頂きました。
どうしても開いたコートの中身に目が行くのはわかりますが、コートを開いた後の男の首、足の状態が気になりますね。

名前: 有線 ¦ 14:56, Saturday, Apr 19, 2008 ×


う〜ん、ちょっと取り留めない印象がしました。
話の重点を怪異に置きたいのか、それとも同じ怪異を体験していたことに置きたいのか構成的にどっちつかずな気がします。
軽妙な文体の実話怪談というのは新鮮ではありましたが。

名前: 久遠 平太郎 ¦ 22:58, Thursday, Apr 24, 2008 ×


 こういった書き方もありなのかと思わせるお話でした。
 怪異も弱いような気がしましたけれど、三人もの人間が目撃しているんですものね。
 コートの中身はなかったらしいのですが、手、足などはどうだったのか気になりました。

名前: こうたろう ¦ 18:54, Friday, Apr 25, 2008 ×


書き方に関しては、他の講評で「新しい書き方」となければ気付かなかったほど違和感がありませんでした。(私が鈍感なだけといわれればそれまでだが)
それにしてもいったい何が目的で出てきたのか。
見せられたほうにしてみれば怖いよりもむしろ拍子ぬけしてしまうかもしれませんね。
ある実話怪談本の著者がそのあとがきで、幽霊が時を経るにつれ、その出現することになった理由、つまり怨恨や無念さといった因縁関係を霊自体が徐々に忘れていき、行為のみを繰り返す様になったもの、即ち目的が失われて手段のみとなった存在が妖怪なのではないか、といった意味の事を書いておられたが、この話の幽霊は、中身が無いのにコートをはだけて中を見せるという、手段のみの、まさに妖怪化する途中のものなのかも知れませんね。考えすぎでしょうか。

名前: 昼間寝子 ¦ 19:14, Tuesday, Apr 29, 2008 ×



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