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幽霊家族
真彦さんが奈良県の小明町にあるその一軒家に住んでいたのは、今からもう十年以上も前になる。
その家は、駅から少々距離があるものの、築数年と新しく、二階建てで広く、部屋もたくさんあった。しかも、家賃も安かった。
不動産屋によると、前に住んでいた家族が急に引っ越してしまったので、突然、空きが出たと言う事だった。
当時、大学生だった真彦さんと中学生の妹さん、そして真彦さんのご両親とお祖父さんの五人家族で住むのには好条件の家だった。
真彦さん一家は、早速その家を借りて住む事に決めた。

ご両親とお祖父さんは一階に、真彦さんと妹さんは二階にそれぞれ一室ずつ部屋を持った。

その家に住み始めてまもなくの事だった。
真彦さんは、妹さんの部屋から夜になると音がするのに気がついた。
それは、ドン!とかバン!とかいう壁を叩くような音だったり、パタパタと騒がしく走り回る足音だったりした。
真彦さんは、妹さんがちょっと暴れているのかなあ…ぐらいにしか思わず、あまり気にしないようにしていた。

ある日、真彦さんは風邪をひいたので、昼間に自分の部屋で寝ていた。
すると、妹さんの部屋から、誰かがいる気配の音がしてきた。
妹さんは学校にいっているので部屋には誰もいないし、家には真彦さん以外誰もいなかった。
おかしいなあと思ったものの、熱による幻聴だと自分に言い聞かせた。

それから半年ほどたったある日、妹さんが突然
「今夜から、一階でお母さん達と一緒に寝る」
と言い出した。それを聞いた真彦さんは、妹さんはきっと一人で寝るのが淋しくて、母親に甘えたいのだろう思った。
真彦さんは、ちょうど自分の部屋も物が増えてきて手狭になってきた事だし、それならば今夜から妹の部屋で寝ようと思った。
真彦さんは早速、妹さんの部屋のベッドで横になった。

…夜中の二時を過ぎた頃だった。
いきなり、部屋のクローゼットがカタカタと鳴り出した。
すると突然、バンバン!という物凄い音がした。
一体何が起こったのだろう?と、真彦さんは驚いて暗闇の中で目を覚ました。
すると〈ボソボソ…〉と、何かを呟いている低い男の声が聞こえてきた。
そして、何者かがパタパタと部屋の中を走り回る音がする。
異様な気配が濃くなり、誰かが近づいて来るのがわかった。
まるで呪文のような言葉を〈ボソボソボソボソ……〉と呟きながら、だんだん迫ってくる。
真彦さんは叫びながら飛び起きて、慌てて自分の部屋に戻って震えながら眠った。

次の日、真彦さんは妹さんに何気なく
「お前の部屋、何か変だな…」
と言った。すると妹さんは
「お兄ちゃん。あの部屋は怖いよ」
と真顔で言った。
妹さんによると、あの部屋には幽霊の家族が住んでいるらしい。
暴れて大きな音を出してボソボソ呟くのが父親、パタパタ走り回るのが子供で二人いるらしい、母親はその様子をただじっと見ているだけだそうだ。
真彦さんが感じたのは音だけだったが、妹さんはその状況も見えていたと言う。
真彦さんはあの恐ろしい中で、半年も我慢していた妹さんに感心した。

結局その部屋は誰も使わなくなった。

真彦さん一家が、その家に住んでいる間は、なぜか不運だった。
元気だったお祖父さんが転んで骨折し、そのまま寝たきりになってしまった。
そして、お父さんが交通事故で突然亡くなった。暴走車にはねられたのだった。
色々不幸が重なり、結局その家には住めなくなったので、真彦さん一家は引っ越しする事にした。

引越しの当日。荷物の運び出しも終え、なにもなくなった家の中の風通しを良くするために、すべての部屋のドアを開け放っていた。
そして、いよいよこの家から立ち去ろうとした時だった。
バターン!
と、大きな音を立てて、二階のあの部屋のドアだけが勢いよく閉まったのだ。
真彦さん、妹さん、お母さんの三人はそれを見て呆然としていたが、お母さんがこう呟いた。
「これが、あんたらの言っていた幽霊ね…」





09:46, Sunday, Mar 16, 2008 ¦ 固定リンク ¦ 講評(24) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯

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■講評

文章 1
段落わけも適度で読みやすい。
稀少度 2
聞こえて見えて、それでも住み続けるという話は聞いたことはない。

妹さんがよく半年も我慢していたと思う。そういうことを一度もご両親に言わなかったのだろうか。最後に「これが、あんたらの…」と言う台詞が来るのでいつの時点でかお母さんには話したようだが。
最後に扉が閉まるところ、幽霊のお父さんの示威行動みたいでイヤですね。

名前: くりちゃん ¦ 12:47, Sunday, Mar 16, 2008 ×


不幸になったのが家のせいと決めつけるのはどうかと思うのと、肝心の幽霊の描写が少ないので怖さが伝わりづらかった。
妹さんへの取材不足な印象をうける。
この長さで怪異のメインが「音」というのはインパクトとして弱い。
オーソドックスな話という感じが強くした。

名前: 黒ムク ¦ 13:15, Sunday, Mar 16, 2008 ×


文:+1 怪:+1

お母さんは気付いてたのでしょうか、それとも妹さんに相談されてて
今まで信じてなかったのが、最後の最後で「これが」となったのでしょうか。
そこが少し分かりにくかったです。
あと、全体的な怖さが伝わってこないのが残念。
起こった事象をもっと掘り下げてみて欲しかった気がします。

名前: 晴 ¦ 16:39, Sunday, Mar 16, 2008 ×


怪異の肝が音だけではちょっと弱いと思う。この話は妹さんの視点で書いた方が効果的だったのではないか。
引越当日の出来事も、風のせいという可能性も捨てきれないので、締めに持ってくるには弱い。

名前: ナルミ ¦ 21:35, Sunday, Mar 16, 2008 ×


真彦さんと、その妹の証言による幽霊家族の描写と音がこの話の一番の盛り上がり所のようで、後に続く家族の災いや、「家の中の風通しを良くするために、すべての部屋のドアを開け放っていた」ところで「二階のあの部屋のドアだけが勢いよく閉まった」という流れでは、怪異が強まるどころか、怪異とは言い切れないような事象が混ざってきて、話に締まりがなくなった感じがしました。

母親は最後に自分の見せ場をつくるために出てきたような登場の仕方で、娘が半年間怪異と暮らしていても作品中には何の反応も描かれておらず、今まで一体何をしていたのかという風にしか見えませんでした。もちろん現実には、家族間でいろいろとやりとりがあったと思うのですが、この話においては、このオチのために、母親は作品中で最後まで目立った登場を許されていなかったように見えてしまいます。

この作品は、真彦さんの妹の証言で幽霊家族が明かされるあたりまでで話を盛り上げ、後の文章は簡潔に終わらせた方がいいような気がしました。怪異自体は恐ろしいのに構成と書き方でそれを伝えきれていないと思います。

文章0:希少度0

名前: chidori ¦ 23:11, Sunday, Mar 16, 2008 ×


もう少し簡潔にまとめられるのではないか。
説明の部分がもたついているように思う。
怪異は面白いと思うが、幽霊家族の詳細について妹の証言のみに頼って、それだけで済ませてしまった感がある。
若干取材不足か。

希少性(1) 文章(0)

名前: ねこや堂 ¦ 03:44, Monday, Mar 17, 2008 ×


ネタ+1
真彦さん自身の体験は克明なのですが、妹さんの体験についても同様に克明に記載して欲しかったです。
また、続く不幸については記載しないほうが良かったと思います。関連が明確でないと、読者に与える印象は悪くなります。

ひとつ個人的に気になったのが、真彦さん(大学生♂)が妹さん(中学生♀)の部屋に寝る、という部分。
なんだかすごく違和感があります。妹さんが完全にその部屋を放棄しているという表現がないのも気になります。

名前: ねこ ¦ 20:28, Monday, Mar 17, 2008 ×


 やたら「000た。」で終わる文章が続きます。
 一点減点します。
 

名前: くすだまん ¦ 12:31, Friday, Mar 21, 2008 ×


文章・・・1
希少度・・・0

文章は少々たどたどしいところがあるものの、その飾らない文体からは取材した体験談に対する真摯さが伝わってきます。
ただ怪異がお兄さんの視点からしか書かれていないのが残念です。
強烈な体験をしているのは妹さんの方なので、そちらの視点からも描写してもらいたかったというのが読者としての素直な意見です。

怪異自体はよくある幽霊屋敷ものの範囲を出ていませんが、最後に扉が閉まる件は「やっぱりいたか」とゾッとさせられます。

名前: 鹿太郎 ¦ 13:50, Saturday, Mar 29, 2008 ×


相次いだ身内の不幸をこの家と関連づけるには決め手が足りないかも。
冒頭で前に住んでいた家族が急に出ていったことも書かれていて、この家がおかしいor幽霊がこの家族であることをほのめかしているように思えるのですが、これもちょっと苦しいです。
音しか聞こえない真彦さん、姿まで見えた妹さんのギャップだけでも面白味はあるので、無理に怖がらせる方向へ持っていかなくても良かったのではないでしょうか。

怪異とは全く関係ないところなのですが、中学生にもなる妹さんに対して「きっと一人で寝るのが淋しくて、母親に甘えたいのだろう」なんて思うかな^^;

名前: 眠 ¦ 20:45, Monday, Mar 31, 2008 ×


確かに妹さんは半年間もよく我慢できたと思います。
しかし、お祖父さんやお父さんの件は家との関わりがあったのかは微妙だと思います。
もしもそれが原因で父親の命まで奪われたと思うなら許せる事ではないですよね。
相手が霊とはいえ、どうにかして復讐してあげないと。父親のためにも。

名前: へみ ¦ 00:42, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


お母さんの台詞は深いですよ。
もっと早く信じてあげるべきでしたね。
お祖父ちゃんとお父さんの因果関係は誰にもハッキリと言える事ではないでしょうし。
テリトリー意識の強い霊みたいな感じで、淡々と書いてあるけど嫌な感じが残ります。

名前: ちゅん ¦ 23:09, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


お爺さんが骨折したり、お父さんが亡くなったりと非常に深刻な霊障でとても怖いはずなのに、あまり怖くない。最後があまりにもあっさりしているからではないかと思います。

名前: ひ ¦ 15:43, Thursday, Apr 03, 2008 ×


書き方次第で立派な怪談になれた要素は持っていると思う。ただ今回の場合、どこかで聞いた家での怪談のレベルにすぎない。

名前: 茶毛 ¦ 23:15, Thursday, Apr 03, 2008 ×


家の事情もあるだろうからなかなか「怖い」と訴えられない妹さんの事情も思んばかれるのですが、そういった点がすっかり抜けているのはどうかと思いました。それとお祖父さんの骨折や、お父さんが亡くなったという重大事が起こっているわりには、なんだか緊迫感がない感じがして、いまひとつ現実の事件としての説得力がないように思えました。
希少度 1 文章 0


名前: じぇいむ ¦ 18:22, Friday, Apr 04, 2008 ×


お母さんの最後の「これが、あんたらの言っていた幽霊ね…」というセリフがすべてを物語っていると思います。ご家族が亡くなられている事もあり、難しい事情もあるのかもしれませんが一番強烈な体験をしていた妹さんに直接取材出来ることを望みます。話としてはもっと恐ろしくなる可能性を秘めているので。

名前: じゅりんだ ¦ 12:12, Sunday, Apr 06, 2008 ×


ホント半年もよく我慢出来ましたね…。
妹さんは初日でなんとかしようと思わなかったんでしょうかね?
不運続きだったという事は、やはり悪霊の類になるのでしょうか…。

文章:1 内容:1

名前: PM ¦ 20:11, Sunday, Apr 13, 2008 ×


妹さんが一番濃い体験をせれているので もう少し突っ込んだ内容を詳しく
書いて頂いた方が分かりやすいです。

名前: SPダイスケ ¦ 22:54, Tuesday, Apr 15, 2008 ×


怪異はありがちなものだと思うが、そんな家によく住み続けられたと思う。
諸々の事情がなければ、今もその家に住んでいるのだろうか?

名前: MM88 ¦ 22:46, Wednesday, Apr 16, 2008 ×


恐怖+1
出来れば妹さんにも追加取材して、もっと怪異を濃く濃く描写して欲しかったです。
連続する不幸が家の霊の仕業とするには、説得力に欠けるので省いてしまっても良かったかと。

名前: 有線 ¦ 14:42, Saturday, Apr 19, 2008 ×


その幽霊の家族は生前その家に住んでいた人だったのでしょうか?
そこら辺の情報があると話に深みが出て
良かったのですが。

名前: 久遠 平太郎 ¦ 22:42, Thursday, Apr 24, 2008 ×


家と不幸とを関連付けるには、怪異の存在が弱いように思う。
家の一室にのみ、それも走り回ったり呟いたりするだけの霊が障ったとは考え辛い。
これでさらなる強烈な怪異が発生したのであれば合点もいくが、それも無し。話の掘り下げ不足なのか、怪異の含有量が少なかっただけなのか。いずれにせよ、幽霊屋敷の怪談としては粒が小さいように思う。

名前: 磯昆布 ¦ 01:56, Friday, Apr 25, 2008 ×


 本当に幽霊の家族がいたのかが疑問ですが、読みやすいお話でした。
 妹さんの部屋にしか出ないのに、家族に不運を運べるものなのかな、と思いました。

名前: こうたろう ¦ 18:49, Friday, Apr 25, 2008 ×


こういった霊がよく出る家というのは、強烈な類話が数多くあり(例えば某実話怪談の漫画雑誌や、「超」怖い話及びその関連書籍など)、よっぽどでないと高評価は得にくいでしょう。
しかし、読みやすくうまくまとまっていたと思います。
お父さんが亡くなったことなど、話の途中では霊との関連性が薄く感じられるが、最後にドアがバターンと閉まった事で、ああ、やはり霊か、と判る辺りは、怖さが出て良いですね。

名前: 昼間寝子 ¦ 18:41, Tuesday, Apr 29, 2008 ×



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