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代々、各種供養を請け負う家系の岡崎さん。 請け負う内容は幅広く、拝み屋のような祈祷も行うらしいが、どちらかと言えば、“人の業の解放”を意味する「解脱」が多いそうだ。 その家柄のためか、実家では幼い頃から様々な怪異に遭遇し、今となってはさほどの怪異では驚かない、と岡崎さんは言う。
そんな彼には兄弟がいる。岡崎さん同様、やはり怪異に囲まれて育った兄だ。 岡崎さんから、それなりに怪異慣れしている兄が恐怖したという、高校時代の体験を聞くことが出来た。
当時、兄は高校2年生。 実家は愛媛のとある島に存在するのだが、島内には高校がなかった。そのため兄は一人その島を離れ、本土に住む母方の祖父母の元で下宿しながら高校へと通っていた。 兄の部屋は二階にある。祖父母の部屋は下の階だ。
その日はなにも特別な事はない、いつも通りの夜の事だった。
兄が布団に横たわり、ウトウトしていた頃。 階段の方から足音が聞こえてきた。 祖父でも上がってきたのだろう…と思っていたが、おかしい。足音が重過ぎる。 時折、ガチャリという何か硬いもの同士がぶつかるような音もする。 (…泥棒か?) 万一に備えるため身体を起こそうとしたが、これがピクリとも動かない。 まさかの金縛りに恐怖を覚えた兄は、祈るような気持ちで目だけを部屋の扉に向けていた。
ガチャリ… ガチャリ… 足音が部屋の前に来た。 息を呑む…間もなく、その勢いのまま扉をすり抜け、それは姿を現した。
鎧武者だ。 時代劇に出てくる武将が身に着けているような立派な兜と日本鎧。 頬当てをしているため、その顔は見えない。 全体的にぼんやりとしているように見えるが、確かな存在感があった。
驚きと恐怖のあまり、悲鳴すらあげられない。 ガチャリ… ガチャリ… その鎧武者がゆっくりと兄に近付いてくる。 金縛りはまだ解けない。兄はただ、震えて鎧武者を見つめるだけだった。 鎧武者が足元に立つ。 仰向け寝る兄が、丁度、鎧武者の正面に落ちる影になるかのような位置関係だ。 兜と頬当ての間から覗く目が、じろりと兄に向けられたのが分かった。 少しの間、そのまま兄を見下ろしていた鎧武者だったが、突然、グラッとこちらに傾いたかと思うと、そのまま覆い被さってきた。 兄はその勢いに目を瞑り、味わうであろう痛みと重量感に備えた。
…痛みはない。しかし、代わりに今まで感じたことのない、何とも言えない奇妙な感触が足元から伝わってきた。 その感触の元を確かめるべく、恐る恐る目を開くと、鎧武者は兄の真正面にいた。 視線を足の方へと動かすと、鎧武者が足元からゆっくりと、直立の姿勢のまま自分の身体に入り込んでくるのが見えた。 兄が驚き戸惑う中、鎧武者はずぶりずぶりと入り込んでくる。 初めて味わうこの奇妙な感触は、気付くと下顎にまで至っていた。 「うわっ、うわっ、うわっ!!」 声が出た。と同時に金縛りが解けた事に気付く。 身体を動かそうとしたその瞬間、自分に入り込んでいた鎧武者とその感触が消えた。
すぐに兄は父に電話し、この事を伝えたのだが、 「あー、それ、お前の守護霊だから。」 と、そっけない返事と共に、意外な話を聞く事になった。
父の話によると、実家のあるその島は昔、平氏に追われた源氏の一部が逃げ込んだ場所であるらしく、島の住民の大半が源氏の血を引いているそうだ。 そして島内には時折、鎧武者を目にする人がいる。その鎧武者は、その人を守護するご先祖様なのである、との事だ。
このすぐ後、兄はある事件により、首に大きな切り傷を作ることになる。 だが、見た目ほど傷は深いものではなく、大事には至らなかったとの事だ。 事前に危険を察した守護霊が、兄を守るため、その身体の中で何か備えていたのかもしれない、と岡崎さんは語る。
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■講評
文章 2 読みやすい。 稀少度 1 体に入り込んでくる描写が面白い。
まず守護霊に対しても恐怖を感じるんだな、というのが意外だった。というのもそういう家筋の人ならば、覚悟が出来ていると思うし、そういう有り難い霊は見分けがつくと思っていた。
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名前: くりちゃん ¦ 12:15, Saturday, Mar 15, 2008 ×
代々、各種供養を請け負う家系の岡崎さんということで、[敵味方関係]の話と関係があるのでしょうかね・・などと思いました。 話は面白かったのですが「また岡崎さん!」と思ってしまいました(笑) |
名前: 黒ムク ¦ 16:06, Saturday, Mar 15, 2008 ×
この話は岡崎さんシリーズ『敵味方関係』の中で起きた、岡崎さんの兄の負傷事件を補足するように書かれていますが、やはり連続シリーズを意識することなく、その話の中で因果関係が完結していることが望ましく、裏話的な楽しさを読み手に提供する事で作品を面白くしようとするのは、話の本筋から逸れているように感じました。
この作品に関しては、最後の負傷事件のエピソードはこじつけのように見えるので必要ないと思います。もし入れるのであれば、「見た目ほど傷は深いものではなく、大事には至らなかった」と言葉をごまかさずに、もっと具体的に病院での処置について詳しく書くべきだと思います。
そして今回の作品についても、やはり具体的な表現が曖昧になっています。 「鎧武者が足元からゆっくりと、直立の姿勢のまま自分の身体に入り込んでくるのが見えた。兄が驚き戸惑う中、鎧武者はずぶりずぶりと入り込んでくる」が、怪異の中心でありながらも読者に想像を投げたような感じで、実に分かりにくいです。例えば鎧武者が兄の腰まで来た時には、鎧武者の腰のあたりも兄の体に完全に埋まっていたとか、「ずぶりずぶり」に対する鎧武者の映像的な表現が全くないので、共感がしにくかったです。また、「奇妙な感触」についても、温感や冷感なのか、力が抜けていく感じなのか、今までにない感覚ではあっても、できるかぎりは言葉をつくして表現してほしかったと思います。
それにしても、息子が高校生になるまで守護霊の存在を全く語っていないとは、電話の受け答えに見られるように、岡崎さんのお父さんは呑気すぎるのではないかという気もしました。「代々、各種供養を請け負う家系の岡崎さん」という冒頭の書き出しが、今となっては全く威厳を感じさせず、何だか胡散臭く感じられます。もしかしたら、書き手はそういう意図で書かれているのかもしれませんが・・・。
文章−1:希少度1 |
名前: chidori ¦ 17:10, Saturday, Mar 15, 2008 ×
文:+2 怪:+1
まさか守護霊だったとは。 お父さんの暢気さもわらいました。
長文のわりに文章が読みやすかったです。 |
名前: 晴 ¦ 21:09, Saturday, Mar 15, 2008 ×
「怪異慣れしている兄が恐怖した」というから期待していたら、よくある「金縛り」「鎧武者」の話で拍子抜け。 しかしこの岡崎さんの家系も「各種供養を請け負う」という割には無知だったりいい加減だったりで、かなりうさんくさそうである。 |
名前: ナルミ ¦ 21:09, Saturday, Mar 15, 2008 ×
申し訳ないが、また鎧武者か、と苦笑いしてしまった。 いや、これはこれで面白いんだけどね。 最後の部分で題名との辻褄合わせをしたように見えたのは残念。 題名を変えれば無くても良かったと思う。 怪異部分はちょっと想像し辛かった。
希少性(0) 文章(0)
>くすだまんさん、親元を離れて「母方の祖父母」の家に下宿してたのだから、「祖父と母」ではなく「祖父母」で良いんですよ。 |
名前: ねこや堂 ¦ 01:29, Sunday, Mar 16, 2008 ×
ネタ+1 文章-1 「コンボ」「敵味方関係」に続く岡崎さんシリーズですね。 過去の2つのエピソードにも言えることなのですが、「見える人」という前提、とくにそれを生業としている方の話となると、どうしても読者はハードルを高くします。 このエピソードも含めて、全てに共通するのは、「見える人」の立場により過ぎて、どうしても怪異そのものの描写がおろそかになったり、また、怪異についての説明が加わるものの、当事者のみで完結しているため、読者の共感を得がたい、という点です。 「見える人」の話というのは、そのまま書くと胡散臭さが際立つため、通常以上に文章を切磋琢磨しないとならないと思います。 恐らく他にもエピソードがあると思いますので、次の投稿の際に留意いただければと思います。 |
名前: ねこ ¦ 01:34, Sunday, Mar 16, 2008 ×
岡崎さんシリーズですね。守護霊がずぶずぶと入り込む所は面白かったのですが、お父さんが電話で守護霊だからと言われたから、守護霊だろう・・・と思うのは根拠が弱いような気がしました。見えるお方だからそう判断されたのだと思いますが。 (一応、平氏に追われた源氏の説明はしているものの・・・。) 鎧武者の幽霊ってもうスタンダードな感があるので、そんなに恐ろしさは感じられませんでした。 あと前回のお話に繋げるエピソードとしては少し無理があるような・・・。 しかし、次から次へと事件が起こる岡崎さん一家は凄いですね。 |
名前: じゅりんだ ¦ 20:57, Sunday, Mar 16, 2008 ×
文章・・・1 希少度・・・1
少々冗長な印象も受けますが、鎧武者が体に入り込んでくるところから、電話でのお父さんの返答のあっさり具合の落差が面白かった。 島の鎧武者の説明も解り易く、その辺りは好印象です。 鎧武者登場の辺りでもっと読者を引っ張れるぐらいの文章があればなお良かったのですが。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 03:00, Saturday, Mar 29, 2008 ×
「ガチャリ」だけで、鎧武者かな?と思ってしまった…。今大会、なぜか多いんですよね鎧武者。
岡崎さんシリーズは、どうしても見る目が厳しくなってしまいます。出だしの岡崎家の説明で期待が高まるので。 読ませていただいた中では、いちばん興味深いお話でした。守護霊が同化して中から支えてくれるなんて、心強いですね。 「あー、それ、お前の守護霊だから。」とサラリと言ってのけるお父さん面白いw +2
「敵味方関係」を先に読んでいないと、お兄さんが首に傷を作るエピソードを端折って雑に終わらせたように見えます。 先にこちらを読んでいたら胡散臭いお話に見えてしまうのでもったいないです。 -1 |
名前: 眠 ¦ 00:36, Monday, Mar 31, 2008 ×
岡崎さんシリーズですね。 個人的には岡崎さんシリーズの中で一番良かったです。 守護霊とはいえ、知らなければ鎧武者の亡霊だと思ってしまいますよね。 お父さん、知ってるなら早く言っておいてくれればよかったのに。 最後に、首に切り傷を作る事になるという、前作への振りがあるのも面白かったです。
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名前: へみ ¦ 23:59, Monday, Mar 31, 2008 ×
友人の守護霊が、見た目、まるで貞子の様です。出てくる度にビビるから何とかして欲しいと言っていましたが…そんな感じ? 守護霊だからといって見た目が恐ろしくないとは限らないようですね。 |
名前: ちゅん ¦ 22:50, Tuesday, Apr 01, 2008 ×
「ずぶりずぶり」だと鎧武者ではなくて、お兄さんの体の方が柔らかくなっているように思われます。 逆にそのへんが面白かったですが。 武者の鎧はどうも戦国時代以降のもののように思えます。(面頬してるし) 源氏の流れを汲んだ武将の方でしょうか。 希少度 1 文章 0
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名前: じぇいむ ¦ 11:41, Wednesday, Apr 02, 2008 ×
| 「首に大きな切り傷」とは、ただ事ではありません。その「ある事件」が知りたいですが、それは無理なのでしょうね。でもお兄さんを守るためとはいえ、そんな気色悪い、恐ろしげな重なり方をしなくても(笑)。 |
名前: ひ ¦ 14:29, Thursday, Apr 03, 2008 ×
キターーー!!岡崎さんシリーズ。 今までの経緯を考えると公正では 無いと思うので単作として 読みました。 「鎧武者は守護霊だ」→なるほど そうか!じゃあ、辛すぎます。 家族では当たり前かもしれませんが、 読む側としては文章のテクニックが ないと納得がいきません。 |
名前: 茶毛 ¦ 15:30, Thursday, Apr 03, 2008 ×
階段を上がってくる鎧武者。うーん。 鎧武者が身体に入ってくるところは怖いです。 しかし鎧武者が体験者の守護霊であるのか、体験者が後に首に怪我をした事と鎧武者の関係はわからないままですね。
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名前: MM88 ¦ 18:42, Thursday, Apr 10, 2008 ×
祖父母は間違えていました、すみません。けれども、状況説明に集中しすぎて細かい文が拙い。 2点減点します。 |
名前: くすだまん ¦ 14:37, Saturday, Apr 12, 2008 ×
前のシリーズと比べると、読みやすくはなってきたと思いますが、まだ表現不足、無駄な表現がありますね。 守護霊とは言え、鎧武者の格好では怖いです…。
文章:0 内容:1
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名前: PM ¦ 21:05, Saturday, Apr 12, 2008 ×
シリーズ3作目ですね。 一番面白かった気がします。 鎧武者が入り込んでくる様子が容易に想像できました。 |
名前: SPダイスケ ¦ 22:19, Tuesday, Apr 15, 2008 ×
好み+1 兄を襲う奇妙な感覚と、鎧武者が入り込んでいく過程が想像しにくかったですね。 怪異慣れしている筈の兄が取り乱しているのは、何故か面白く感じました。 |
名前: 有線 ¦ 13:41, Saturday, Apr 19, 2008 ×
ダイバーダウンで潜行してダメージを引き受けるッ!(笑
なんて頼もしい守護霊でしょうか、こんな守護霊、私も欲しいです。(でも怖いのは嫌ですが) あの話の裏にこんな出来事があったのには驚きました。
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名前: 久遠 平太郎 ¦ 21:26, Thursday, Apr 24, 2008 ×
守護霊が身体に入っていくと言う話は珍しいと思います。 ですが、いくら守護霊でも怖いですよ。 |
名前: こうたろう ¦ 18:25, Friday, Apr 25, 2008 ×
強そうで頼りになりそうな守護霊ですが、何もそんな現れ方しなくても・・・ 最後のはあえて書かなかったほうが良かったと思います。 |
名前: 昼間寝子 ¦ 10:49, Tuesday, Apr 29, 2008 ×
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