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夜勤中
家蔵さんは高校卒業後、精密機器部品加工会社に就職した。
小さいものは小指の先くらい、大きいものでも長さ50センチくらいの鉄板を機械で切削加工することが主な仕事内容だった。
黒い外壁の工場は変則的な造りになっており、一階が作業場、二階には事務所と更衣室と食堂が乗った造りになっていたという。

「精密加工を行う関係で、作業現場は常に一定の温度に保たなければならない。そのため真夏でも半袖では寒いくらいにエアコンがガンガンに効いていました」
そんな工場での仕事にもなれ、ちょうど半年ほどたった頃だった。
家蔵さんは初めて、夜勤業務に廻されることになったという。

昼間はたくさんの機械が常に動き、賑やかな工場内とは違った雰囲気がそこにはあった。夜間で外からの騒音も聞こえない、尚且つ、動かす機械も限定されているせいか、機械音の合間合間に、少しの静寂があり、その静寂に紛れるように、誰かが話している声が聞こえてきたという。
囁くように小さな声でなにを言っているのかはわからない。
家蔵さんの他に人はいない。
「これはエアコンの音だ」
そう自分に言い聞かせながら、家蔵さんはいつものように切削加工を始めたという。

途中、加工用の鉄板を付け替えようと、加工を終了し自動停止した。
そして機械に近づき手を伸ばした時だった。
目の前を通り過ぎる、白い煙のような塊の存在に気が付いた。
「作業現場には、切削加工の際に冷却と潤滑に油を使う関係で、どうしても煙や蒸気が発生します。でも加工が終わると機械は必ず自動で停止するようになっているので、その時機械は確かに停止していました。しかし何らかの原因で煙や蒸気が周辺に滞留し、加工終了後に流れてくる事がないわけじゃありませんから。最初はその煙か何かだと思いました」
次の瞬間だった。
そう思って油断していた家蔵さんに一気に鳥肌がたった。
その煙の大きさは小学生低学年の子供位。
ゆっくりと通り過ぎるそれには、首と下半身がなかった。
服装は長袖のブレザーか詰襟のように見えたという。
「シースルーという表現がいいかもしれません。服装もはっきり見えていたのに、白い煙の塊ように見えたのは、その上半身が白い煙のようなものをまとっていたからなんです」
そのせいで、最初に白い煙の塊だと思ったのだという。
慌てて身を引いた家蔵さんの前を、それはゆっくりと通過すると、壁を通り抜けるように、隣の部屋に消えていったという。
その直後。
さっきまで聞こえていた話し声が、急にボリュームを上げたかのように大きくなった。
それにも係わらず、なにをいっているまったく理解できなかったという。
家蔵さんはその場から逃げ出したい衝動を抑えて、
「ノルマを終えるまでは・・・」
その一身で作業を続けた。
しかし、それも限界と思い、最低ノルマを終えると二階にある更衣室で着替えてから、逃げるように事務所を出ようとした時だった。
事務所の一番奥にある社長の机上にぼやっと光るものがあった。
さっき見たものとは違うものがそこに乗っていた。
「大きさは人と同じくらい。身長にして考えると160センチ前後でしょうか。ただ、それは“人”という感じではありませんでした」
家蔵さんは走って階段を降り、入り口に鍵をかけると一目散に自分のアパートに逃げ帰った。
翌日、上司から昨晩の仕事の進行状況について聞かれ、事の次第を話したが信じてはもらえなかったという。

以後も夜勤は家蔵さんに容赦なく廻ってくる。
その度に、いろいろなものに遭遇するようになってしまったという。
誰もいない筈の社内での人の気配、人影や話し声・・・それらは昼夜を問わず、家蔵さんを苦しめた。
「上司にはその度に報告しました。でも困った顔をするだけでまともに取り合ってはくれませんでした」
家蔵さんはそれでも3年程、がんばってその会社に勤務した。
しかし、それももう限界と退職したという。
「毎日が“シックスセンス”状態で、どうにもなりませんでした。最後の頃はもう鬱状態でした」
家蔵さんは、
「あんなもの見るもんじゃない」
そう強く厳しい口調で言った。




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■講評

文章 1
読みやすい。
稀少度 1
信じて貰えないというのが辛かっただろう。

今ひとつ出現するモノの状態がわかりにくい。はっきりわかるようなモノじゃなかったらしいが。
上司ではなくてもっと身近な同僚に打ち明けたら、同じような体験をした人もいて恐怖のシェアが出来、鬱状態までは行かなかったかも知れない。普通、上司は立場上否定せざるを得ないだろう。

名前: くりちゃん ¦ 11:49, Friday, Mar 14, 2008 ×


文:+1 怖:+1

夜の工場ということで何が起こるのかと期待して読み進め、
期待したものがそのまま、期待した通りに現れた感じ。
つまり、意外性がなく「ふーん」という感想しか抱けませんでした。

実際体験された方には「そんな事言われても!」かもしれませんが、
自分の中の恐怖の基準として。
申し訳ない。

名前: 晴 ¦ 12:20, Friday, Mar 14, 2008 ×


丁寧に書いていると思う。
夜勤中にこんなもの見たら即辞めますね・・・
夜間なんてただでさえ怖いのに。

名前: 黒ムク ¦ 14:00, Friday, Mar 14, 2008 ×


話としてはそこそこなんですが・・・見えたもの、感じたものが、よくある話といった感じのまま、それで終わってしまったような印象でした。

結局、家蔵さんの体験した怪異は、ここで大きく取り上げた事が最大級の怪異だったんでしょうか。
「その度に、いろいろなものに遭遇するようになってしまったという。」と「毎日が“シックスセンス”状態」では、もっとすごい話があるような煽り方なのですが、埋もれた話の中にはまだすごい怪異があったのかな・・・とも思ったりはします。

家蔵さんに起こった最大級の怪異がこの作品で大きく取り上げた事くらいであれば、その日だけを切り取って小さいなりの怪異として書くべきで、もしもこれ以降に起きた出来事がすごいのであれば、そっちを大々的に扱うべきではないかと思います。この作品は、家蔵さんシリーズその1を描きたかったのか、家蔵さんの夜勤のある1日を描きたかったのか、構成が定まらずに書いたような印象を受けました。

中盤までの描き方はそこそこでしたが、「翌日、上司から昨晩の仕事の進行状況について聞かれ、事の次第を話したが信じてはもらえなかったという。」からの文章がだらだらとしているのが良くないのではないかと思います。変に終わりを引っ張らずに、この話はさっさと終わった方が良かったのではないかと思いました。

冒頭から中盤までは、かなり力を入れて書き込まれていただけに、とても残念です。

文章−1:希少度0

名前: chidori ¦ 14:32, Friday, Mar 14, 2008 ×


夜勤は一人だけだったんだろうか。
他に体験した人はいなかったのかな。
同僚に聞いてみたら、意外と他にも体験者がいたかも。
そう思うと、ちょっと惜しい。

希少性(1) 文章(0)

名前: ねこや堂 ¦ 00:02, Saturday, Mar 15, 2008 ×


ネタ+1
発生している怪異がどうしても弱く感じます。
初日の様子だけではなく、多少くどくなっても、その後に起こったことも重ねて記述したほうが、より嫌な感じになったと思います。

名前: ねこ ¦ 00:55, Saturday, Mar 15, 2008 ×


一人の夜勤はやっぱり怖い。起きる怪異は、最初の「子供」はいいが、二つ目の「社長の机上のもの」の描写があいまいでイメージしにくかった。
ラストの「”シックスセンス”状態」も、映画を見ていない者にはわからないので、別の表現の方がよかった。

名前: ナルミ ¦ 00:57, Saturday, Mar 15, 2008 ×


怪異の表現がわかりずらくそれを理解するのに気をとられてしまいました。
煙を纏ったとかシースルーとかでも服装ははっきりと見えていたとか・・・情報が多いのはいいのですが、ちょっと整理されていないかなあと。 でもこのお話の体験者さんは、色々と本当にまだネタをお持ちのようですから、再度取材されてみたら凄いのがでてきそうですね。
ただの目撃談で終わったのが惜しかったかなあという感じがあります。

名前: じゅりんだ ¦ 12:58, Sunday, Mar 16, 2008 ×


そんな職場、私なら一日も勤まりません。

名前: くすだまん ¦ 12:36, Friday, Mar 21, 2008 ×


怪異のオンパレードでしたが、「煙に包まれた小学生の胴体の霊」は描写が巧みだったのでよくわかりました。反対に社長室の光るモノの説明があっさりでした。しかし、怪異よりも、そんな妖怪パラダイスな職場で普通に働いている社員や社長さんが怖いですね。ほんとは気づいているのかもしれませんが。

名前: ひ ¦ 14:24, Friday, Mar 28, 2008 ×


文章・・・0
希少度・・・0

文章量のわりに怪異が小粒と思ってしまいました。
状況説明に多くを割いておりますが、そのため怪異よりも作業現場の機械や雰囲気の方が印象に残ってしまいました。
これでは何のための説明なのか分かりません。
全体の構成を考え直した方がいいように思います。

名前: 鹿太郎 ¦ 02:17, Saturday, Mar 29, 2008 ×


煙のようなものに気付いた→作業で出る煙はこんな感じ→見えたものはこんな感じ→さらにこんな感じ→なので煙だと思った
ここがくどすぎて、途中で「もうどっちでもいいや…」と思いました;
逆に社長の机の上にあったものについてはあまりにも情報不足で、ついで程度の扱いになっています。 -1

それでも3年も勤めた家蔵さんには脱帽。
鬱になるまで働かなくても…。3日で辞めますこんなトコ。 +1

名前: 眠 ¦ 00:54, Sunday, Mar 30, 2008 ×


工場で一人で夜勤するだけでも充分怖いですよね。
現象自体に強烈さはないかもしれませんが、状況を考えればさぞかし恐ろしかったことでしょう。
丁寧な文章にも好感が持てます。

名前: へみ ¦ 23:28, Monday, Mar 31, 2008 ×


煙が人間の形をしているのかと思ったら、煙を纏っているシースルーの詰め襟ということで、ちょっと混乱した。
すると、その詰め襟だかブレザーの部分は普通に質感とかはあったのだろうか。
すんなり読めるように工夫すると、けっこう怖いかも。
希少度 1 文章 0


名前: じぇいむ ¦ 00:42, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


煙の様な見え方って…オーソドックスというか…色つきの方が珍しくありません?
なのに色が分かったりするから「あ、死んでるんだ」って区別がつくんですよ。
3年も我慢しなくても…その我慢強さに脱帽。

名前: ちゅん ¦ 22:33, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


文章が読みづらかったように思う。
怪異も小粒だと思うし。
それならば、シックスセンスの
状態を書き記した方が良かったのでは?

名前: 茶毛 ¦ 14:40, Thursday, Apr 03, 2008 ×


ちょっと文章がくどいように思えました。
この工場、なにかあったんですかね…?
事故に巻き込まれて亡くなった人とか…?

文章:0 内容:1

名前: PM ¦ 20:32, Saturday, Apr 12, 2008 ×


怪異の情景がわかりにくい文章に感じました。

名前: SPダイスケ ¦ 22:31, Monday, Apr 14, 2008 ×


気の毒。
読み手にとってはいくつかの小ネタでしかないが、体験者の恐怖はよくわかる。
怪異に"慣れてしまった"というオチもあるが、本当に怖い目をしていればいつまで経っても慣れるものではないかと。

名前: MM88 ¦ 19:42, Wednesday, Apr 16, 2008 ×


恐怖+1
よくまとまっていると思いますが、オーソドックスな感が強いですね。
丁寧に描写がされているので、もっと強烈なネタを書いたモノを見たいです。

名前: 有線 ¦ 02:27, Saturday, Apr 19, 2008 ×


描写や話者のセリフが丁寧すぎて、回りくどささえ感じてしまう。怪異を見るようになった契機となる出来事は子細に書かれているが、比してその後の展開が駆け足になってしまい、霊現象の目撃頻度がエスカレートしていく様子が伝わってこない。
むしろ、「毎日がシックスセンス状態」のほうに重きを置いてもよかったのでは。

名前: 磯昆布 ¦ 02:25, Thursday, Apr 24, 2008 ×


怪異を丁寧に描写しようとする姿勢は伝わって来ました。
ただ、煙のような霊と比べて光るものの描写が少ないので一体何だったのかイメージできなかったのが残念。
その工場は土地に何か憑いていたんでしょうかね。

名前: 久遠 平太郎 ¦ 20:32, Thursday, Apr 24, 2008 ×


 長文すぎるかもしれないですね。
 家蔵さんについては、可哀想としか言えないです。

名前: こうたろう ¦ 18:01, Friday, Apr 25, 2008 ×


怪異自体は小粒でそう珍しものではないのですが、夜勤の度にというのはきついですね。
毎日がシックスセンス状態なら、聞けばもっと何かあったかも知れません。

名前: 昼間寝子 ¦ 10:02, Tuesday, Apr 29, 2008 ×



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