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監視員
前沢君は海沿いの町の出身だが、海には絶対入れないと言う。

子供の頃、仲の良かった井野君という友達と防波堤で遊んでいた時。
「風で井野君の野球帽が飛んでしまって・・・。」
井野君はそれを追いかけて足元を誤り、海に落ちてしまった。
季節は秋も終わる頃。海水も冷たい。
井野君は溺れてしまい、どんどん沖に流されて行く。

前沢君は泳げなかった。
自分ではどうすることも出来ないと思い、大人を呼んで来ようと思った時・・・。
溺れている井野君の右の方から物凄い勢いで泳いで来る人が見えた。
「夏の浜辺には監視員がいるじゃないですか。ライフセーバーって言うのかな。そういう人が助けに来てくれたんだと思いました。」
前沢君は安堵の息をついた。

「でも良く見るとその人、少しおかしいんです。」
泳ぎながら笑っていた。
顔はずっと水面に出したまま。激しい泳ぎの割には水飛沫も殆ど無かった。
「まるで水面を滑るように井野に近づいて行ったんです・・・。」
井野君の所まで来ると、そいつは井野君の頭を両手で押さえ、全体重を載せるようにして海に沈めた。
「その瞬間そいつと目が合ったんです。」
遠くからは笑っているように見えた顔は、腐った顎が辛うじてぶら下がっているだけの物だった事が解かった。
全体的に白くふやけて膨らんだ顔は髪がほとんど無く、鼻や耳があるべき所も肉片がおかしな具合で付いているだけだった。
「目玉だけはありました。俺をじっと見ていました。」

前沢君は逃げ出した。
近くの家に駆け込み、井野君が溺れたことを告げた。
すぐに救助隊が井野君を見付けたが、すでに息はなかった。
「海ほど恐ろしい所は無いですよ・・・。」
前沢くんは静かに言った。





10:33, Friday, Mar 14, 2008 ¦ 固定リンク ¦ 講評(24) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯

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■講評

文章 2
臨場感がある。
稀少度 2
これは嫌だなあ!

笑っているように見えた→顎がぶら下がって… 
というのも凄まじいが、「物凄い勢いで泳いで来る」水死体も恐ろしい。まるで罠に落ちた獲物を狙う捕食者のようだ。
もしかして帽子が飛んだのもこの「人」が仕掛けたのでは?と思うくらいだ。

名前: くりちゃん ¦ 11:41, Friday, Mar 14, 2008 ×


文:+2 怖:+2

少々たどたどしい文章が、事の現実感をより際立たせている。
海の話は本当に怖いですな。

それにしても、友人の最期をそんなにはっきりと見てしまうなんて・・・・・・。
嫌すぎる。

名前: 晴 ¦ 12:15, Friday, Mar 14, 2008 ×


なかなか怖い話だが、海での話は多い気がする。
希少度は低い気がした。
書き出しが少しありきたりな感じの印象を受けた。
そのため点数は伸びなかった。

名前: 黒ムク ¦ 13:55, Friday, Mar 14, 2008 ×


前沢君にとっては恐ろしくもあり、悲しい話だというのは伝わりましたが・・・。

作品については、描写が分かりにくかったです。

「顔はずっと水面に出したまま。激しい泳ぎの割には水飛沫も殆ど無かった」のと「まるで水面を滑るように井野に近づいて行ったんです」が、映像的に一致しないような気がします。「水面を滑るように」だと、顔だけではなくて体の殆どが水面から出ているような印象を受けます。「水飛沫も殆ど無かった」とあるのは、水面が泳ぎによって全く変化していなかったという事なのでしょうか。この文章ではそのあたりが曖昧になっています。

また「全体的に白くふやけて膨らんだ顔は髪がほとんど無く、鼻や耳があるべき所も肉片がおかしな具合で付いているだけだった」については、せめて髪くらいは泳いで近づいていく時に分かるような気がするのですが、この瞬間にどうして「髪がほとんど無く」と気づいたのか、ちょっと分かりにくかったです。

短い時間内での出来事で、しかも恐ろしい体験だったので、記憶としてははっきりしない所もあるかもしれませんが、もう少し、見たものについての整合性があれば・・・とは思いました。

文章−1:希少度1

名前: chidori ¦ 14:09, Friday, Mar 14, 2008 ×


水死体が近づいて来るのがライフセーバーのように見えたのは、ライフセーバーがボードに乗って移動するからだろうか。
ちょっと想像し難かったかな。
水死体の描写は気持ち悪くて良かった。

希少性(0) 文章(1)

名前: ねこや堂 ¦ 22:52, Friday, Mar 14, 2008 ×


海の怪異としてはありがちな話だが、水死体の描写が怖くてよかった。

名前: ナルミ ¦ 00:47, Saturday, Mar 15, 2008 ×


ネタ+1
描写はていねいで情景も良くわかるのですが、怪異が超怖い話の定番の域を出ておらず、それらに比べるとインパクトが薄く感じてしまいます。
井野君がさほど抵抗していないように思えるのも気になりました。

名前: ねこ ¦ 00:51, Saturday, Mar 15, 2008 ×


助けに来てくれたと思いきや、ドザエモンだったとは・・・。
笑いながら沈めに来るというのが面白かったです。そうやってみんな溺れて行くのでしょうかねえ。
なかなか興味深かいお話でした。

名前: じゅりんだ ¦ 12:29, Sunday, Mar 16, 2008 ×


文章・・・1
希少度・・・2

猛烈な勢いで泳いできて溺れた者を沈めるとは、なんと迷惑かつ恐ろしい死体!
死体のグロさよりもやっぱりそのスピード感に怖さを感じました。
人を直接死に至らしめる亡霊というのは珍しいかもしれません。

名前: 鹿太郎 ¦ 02:15, Friday, Mar 28, 2008 ×


海で死んだ人が溺れている人の足を掴んで海底に引きずり込むというのは、よく聞いたことがありますが、ものすごいイキオイで泳いでくるなんて・・・ 
嬉々とした感じが非常にイヤです。巣にかかった獲物に襲いかかる蜘蛛のようで、ぞっとしました。

名前: ひ ¦ 14:30, Friday, Mar 28, 2008 ×


海こわい。
今さっき「のあい」を読んで、たまには海でも見たいなあ…なんて思ってましたが、こんなの絶対イヤだー!
やっぱり海こわい。 +1
前沢君、海に入れないどころか見たくもないでしょうね;これはトラウマ一生ものです。 +1

おっそろしい内容なのですが、緊張感があまり感じられなかったので点数が低めですごめんなさい。
あー、海こわい。

名前: 眠 ¦ 00:36, Sunday, Mar 30, 2008 ×


海はやはり怖いですね
そんなものに「監視」されているかと思うと海水浴も出来なくなってしまいます。
目の前で友達を助けられなかった前沢君と、亡くなってしまった井野君に同情します。

名前: へみ ¦ 23:12, Monday, Mar 31, 2008 ×


グロ描写よりも、溺れかけている人間にとどめを刺しに来る、その悪辣さに嫌悪というか恐怖ですね。
希少度 2 文章 0

名前: じぇいむ ¦ 00:28, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


 あまり遺体(遺族の配慮があってこその怪談。)を醜く描くのは私的にはNGですが、これは内容的にも、それを描かなければ成り立たないし、場所もぼかしてあり、特定も出来ません。よって減点はなしです。
 しかし・・・赤いヤッケの男という怪談集に似たような話がありますね。

名前: くすだまん ¦ 12:05, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


漁師の孫娘としては海の怖さは含み聞かされていますが…やっぱ、海、怖い。
私も、カナヅチではありませんが、海には入りません。

名前: ちゅん ¦ 22:28, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


自分も海育ちだったので、
同じような話は結構聞いてきた。
なくなった方には何とも言えない
思いはありますが、海とは
そういうものだと思います。
ちなみに、お盆中に海で泳ぐ事は
私の地元では禁止されています。

名前: 茶毛 ¦ 14:33, Thursday, Apr 03, 2008 ×


海でのこの手の話は多いが、この話はこの話でなかなかに怖い。
トラウマになっても無理ないですね。
文章もわかりやすく良いと思う。

名前: MM88 ¦ 20:41, Friday, Apr 11, 2008 ×


面白いです。キモイです。

インタビュー調の文章
手馴れた感じのグロ描写
とても安心(?)して読めました
(もしかすると、そこが「オーソドックス」
という弱点に繋がるのかもしれませんが…)

うーん、ひとつ気になった点は
溺れた後の井野君の描写がなかったことです
その追加が良いか悪いかは別として

井野君に合掌

3点(ネタ1 視覚的恐怖1 グロ度1)

名前: NOV ¦ 18:42, Saturday, Apr 12, 2008 ×


海ではよくある話ですね。
でも、想像し易くて良かったと思います。
こんな対応の早い霊がいると、海の近くに行くだけでも怖いですね…。

文章:1 内容:1

名前: PM ¦ 20:28, Saturday, Apr 12, 2008 ×


嫌すぎますね この幽霊は・・・
海に入るのが嫌になるのもわかります。

名前: SPダイスケ ¦ 22:42, Monday, Apr 14, 2008 ×


恐怖+1
類話も結構ありますが、呼びにくるのではなく積極的に向かってくる様に怖さを感じます。

名前: 有線 ¦ 02:12, Saturday, Apr 19, 2008 ×


海の怪談では足を引っ張る話をよく聞きますが、こんな凄まじい話は聞いたことがありません。悪意を遥かに通り越した悪霊の殺意に鳥肌が立ちました。

名前: 久遠 平太郎 ¦ 20:13, Thursday, Apr 24, 2008 ×


 足を引っ張られるという怪異はよく聞きますが、全体重をかけて沈めに来るとは……
 背筋に怖気が走りました。
 文句なく怖いです。

名前: こうたろう ¦ 17:52, Friday, Apr 25, 2008 ×


これは恐ろしい霊ですね。
海で出る幽霊というと、足を引っ張ったり、なんらかの方法で上手いこと惑わして連れて行こうとする場合がほとんどですが、直接力ずくで連れて行くとは。
逃れようのなさが怖いです。

名前: 昼間寝子 ¦ 09:52, Tuesday, Apr 29, 2008 ×



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