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水の上を
須藤さんはいつもの様に朝の満員電車に揺られていた。
須藤さんが乗る駅から少し出たところには大きな河が流れており、電車は河に架けられた鉄橋を渡ってゆく。その日も電車は鉄橋に差しかかり、ゴトンゴトンという大きな音が車内に響きだした。
(今日は朝イチで…)
その日の作業を考えながら、ドアのすぐ前に立っていた須藤さんは鉄橋の下を流れる河面をぼんやりと眺めた。
電車はすでに河の中頃を通過していた。と、その河面の真ん中に。
人がいた。
(…え?)
それは肩にかかるくらいの髪の、季節は真冬だというのに白っぽいキャミソールの様な服一枚の女性の後ろ姿だった。背を向けていたので顔はわからなかったが、少なくとも老婆ではない、華奢な体格の女性だったという。
その姿が、車窓から十メートル程斜め下の河面を、素足で飛び歩く様にふわんふわんと渡っていた。
女性の足元は中洲などにはなっていない、まさしく河の流れのど真ん中である。履き物を履いていない女性の足の下に、小さな丸い波紋が広がっていた。
薄い金色の朝日を受けて、キャミソール一枚の後姿は河面にてんてんと波紋をつけ、アメンボウの様に河を飛び渡って行った。

満員電車の中、河面を渡る姿に気付いたのは須藤さんだけの様だった。車内はいつもの朝と同じ、静かな満員電車のままだった。
電車が轟音をあげて進むにつれ、河岸の雑木が目の前を遮り、河面は見えなくなっていった。




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■講評

文:+2 怖:+2

そ、それはまた珍しいものを。
中央線から神田川に河童を見たという話を
以前聞いたことがありますが、似たものを感じます。
でも同じようなもの見るならやっぱり河童がいいな。

あと、せめて1、2人でも周りで気付いてくれた人が
いたならば共感できたのに、もやもやしますね、それ。

名前: 晴 ¦ 12:31, Thursday, Mar 13, 2008 ×


朝から貴重なものを見られて、須藤さんはその日仕事がはかどったのでしょうかね。

描写もきれいにまとまっているようですが、所々でちょっと気になるところがありました。
「華奢な体格の女性だったという。」と、ここだけ語尾が違いますが、全ては須藤さんから聞いた話という前提で書かれているので、ここだけこの語尾にすると、見た事象に対して自信のなさが現れてしまいます。文の表現を工夫するかして、語尾が他と揃うようにしたほうがいいと思います。

また「車窓から十メートル程斜め下の河面」と距離を書かれていますが、電車の進行方向に対して女性はどういう方向に後姿を見せ続けていたのでしょうか。彼女との距離が案外近いだけに、そして「キャミソール一枚の後姿は河面にてんてんと波紋をつけ、アメンボウの様に河を飛び渡って行った」ほど見え続けて、電車もその間走っているのに、どの瞬間においてもやはり後姿しか見ることができなかったのかなと、少し気になりました。

「薄い金色の朝日を受けて、キャミソール一枚の後姿は河面にてんてんと波紋をつけ、アメンボウの様に河を飛び渡って行った」は、彼女を綺麗な情景の中に描こうとしているのに、アメンボウという言葉を持ち込んだのは良くないと思います。波紋をつける様子を須藤さんがそう形容したのであっても、この美しい情景の中にアメンボウがくると、途端に綺麗さが中断してしまうので、他の表現に直したようが良いと感じました。

たぶん書き慣れてないせいだとは思いますが、表現など細かい所に気をつけられれば、もっといい仕上がりになるでしょう。

文章0:希少度1

名前: chidori ¦ 12:56, Thursday, Mar 13, 2008 ×


文章 1
読みやすい。
稀少度 1
怖いというよりも不思議な感じ。

この文章からは、白い女性に禍々しさを感じない。
「ホントにふっしぎ〜。何だったの、あれ」という心情が伝わってくる。
何だったのでしょう。

名前: くりちゃん ¦ 19:52, Thursday, Mar 13, 2008 ×


ネタ+2 文章-1
今年の投稿ネタは、ヘンなものの目撃談が多いですね。
アメンボ女もなかなかインパクトがると思います。

ただ、「少なくとも老婆ではない」の一言のために、かえってアメンボ女のビジュアルを想像させづらくさせています。ここは変に濁さず、何十代くらいの風貌だったかを伝えて欲しかったです。
また、「(今日は朝イチで…)」は不要かな、と思います。後述の「(…え?)」だけにこの記述を使うことで、文章にアクセントを与えることが出来たと思います。
文末もややもたついている感じがしました。

名前: ねこ ¦ 21:44, Thursday, Mar 13, 2008 ×


非常に細かい事で申し訳ないのだが、元々「河」は中国の「黄河」の事を指し、後に転じて外国の広大な河川を示すようになった言葉なので少々違和感を感じてしまった。
ここは「川」の方が良いのではないか。
いや、大筋に関係なくて申し訳ない。
怪異に関しては、面白いモノを見たなと。
羨ましい限りで。

希少性(1) 文章(0)

名前: ねこや堂 ¦ 21:44, Thursday, Mar 13, 2008 ×


なかなか面白い怪異。しかし描写にはところどころ引っかかる箇所があった。電車がずっと動いているのに、その女性はずっと後ろ姿しか見えない、というのは疑問。もう少し説明がほしかった。

名前: ナルミ ¦ 01:21, Friday, Mar 14, 2008 ×


ねこや堂様同様に「河」より「川」の方がいいと思います。
なかなか面白い話です。

名前: 黒ムク ¦ 09:29, Friday, Mar 14, 2008 ×


波紋が出来る程度には水面に接しているわけですね。
アメンボウには、あまり「虫」としてのゾワゾワする印象がないので、個人的には違和感はなかったです。
希少度 1 文章 0

名前: じぇいむ ¦ 15:19, Friday, Mar 14, 2008 ×


朝から貴重なものをご覧になられましたね。満員電車の窮屈さとは対照的に爽やかな光景なのがいいですね。その女性は水の精なのでしょうか?色々と想像させられて面白いです。

名前: じゅりんだ ¦ 11:46, Sunday, Mar 16, 2008 ×


 文章に問題なしだと思う。
 文章も整理されていて、美しい。

名前: くすだまん ¦ 16:58, Friday, Mar 21, 2008 ×


キャミソール姿の幽霊ということは、何か事件に巻き込まれたのでしょうか。朝っぱらから出現できるほど強い思いを残しているのかな。最後の2行はいらないのではないでしょうか。それがあるとすんなり終わらないので。

名前: ひ ¦ 15:06, Tuesday, Mar 25, 2008 ×


文章・・・1
希少度・・・1

なんなんでしょうね。
幽霊なのか、それとも水の上を歩ける人なのか、あるいはQ課の秘密兵器の実験なのかもしれません。

文章に関しては何も違和感を感じませんでした。

名前: 鹿太郎 ¦ 15:18, Thursday, Mar 27, 2008 ×


息苦しい満員電車の中から見たら、さぞかし気持ちよさそうだったでしょうね。清々しい気持ちになれそうです。 +1

綺麗な表現が多くて、清々しさ2割増し。 +1

名前: 眠 ¦ 21:50, Saturday, Mar 29, 2008 ×


忍者だったのか、霊だったのか・・・。
でも忍者はキャミソールは着ないかな。
珍しいものをご覧になれて羨ましいです。
もっと観察して欲しかったですが、電車が動いているんだから無理ですよね。
また会えるといいですね。

名前: へみ ¦ 04:02, Monday, Mar 31, 2008 ×


女の霊も怖いのじゃなくて、こういう綺麗系ならいいんですが。綺麗なおねーちゃんは好きだ(笑)。

名前: ちゅん ¦ 13:38, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


良いと思います。
アメンボウを使ったのも水面の
波紋を表す部分で適切だと
思います。

名前: 茶毛 ¦ 13:55, Thursday, Apr 03, 2008 ×


なんだか綺麗な話ですね。
妖精さんの類でしょうか?
見てみたいですねぇ…。

文章:1 内容:1

名前: PM ¦ 10:33, Saturday, Apr 12, 2008 ×


不思議な体験ですね。
アメンボのよう・・ の表現は分かりやすくてよいです。

名前: SPダイスケ ¦ 22:08, Monday, Apr 14, 2008 ×


朝日を浴びて、というのが何とも。
霊、というより精、といった存在なのでしょうか。

名前: MM88 ¦ 02:24, Wednesday, Apr 16, 2008 ×


稀少性+1 好み+1
これは面白い。
個人的には、簡単な川幅と女性の進行方向があれば良かったかなと。
鉄橋が川に対して斜めに渡してあれば、女性の姿ももっと確かめられたんでしょうね。

名前: 有線 ¦ 10:58, Friday, Apr 18, 2008 ×


波紋法で水の上を歩いていたッ!?(笑

冗談は置いといて、実際に波紋が広がっていたことから、霊というよりは妖怪や妖精(ウンディーネ?)の様な気がしますね。一度見てみたいなあ。

名前: 久遠 平太郎 ¦ 23:28, Monday, Apr 21, 2008 ×


女性が水面に波紋を残しながら歩行していた、という点が特異である。客観的に観察しうる物理現象を伴っている以上、霊ではなくもっと別の存在だったのでは、と想像させられる。
ただ一方で、女性の描写が不足しているように感じる。「老婆ではない、華奢な体格の女性」とあるが、後姿だけでどう判断したのだろうか。その結論に至る根拠がほしかった。

名前: 磯昆布 ¦ 01:25, Thursday, Apr 24, 2008 ×


 読みやすいです。
 浮いているわけではなく、僅かに触れる程度に水面についていたんですね。
 その光景がこの話を、怖いと言うよりも不思議な印象を与えるものにしていますね。
 

名前: こうたろう ¦ 21:21, Thursday, Apr 24, 2008 ×


神秘的で綺麗な怪談ですね。
こういう話の場合、描写を飾り立ててしまいがちですが、うまくまとまっていて良いですね。

名前: 昼間寝子 ¦ 07:22, Tuesday, Apr 29, 2008 ×



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