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お互い様
武井さんは一度だけ人を呪ったことがある。
もう随分前のことだ。
「当時、私はまだ二十歳くらいで、大学生と付き合っていました。初めての彼氏でした。三年ほど付き合って、結局振られたんです」
その恋愛にどっぷりと浸かっていた武井さんは、自殺を考えるほどに落ち込んだという。
それとは逆に別れてから彼氏の方は、希望の就職先に合格したりと、順風満帆であった。
「自分の存在は一体なんだったのか・・・・」
そんな風に武井さんは思うようになっていったという。

ちょうどその頃だったという。
たまたま立ち読みしていた書店である本を見つけた。
内容は自分の嫌いな人間に対して、嫌がらせの方法を書いたものだった。
内容はあまりにも幼稚で、中学生以下レベルの悪戯、実際に使えるようなものではなかったという。
その中に、憎い相手を呪う方法が載っていた。
「そんな誰でも簡単に手に入るような本に載っている方法です。内容もいい加減なもので、子供のお遊び程度で本気になんかしませんでした。でもその時の私には、実行せずにはいられなかったんです。まともじゃなかったのでしょうね」
武井さんはそのときのことを振り返った。

その方法はこうだった。
夜中の12時に魔方陣を紙に書き、その中央に呪う人間の名前を書く。
そして、その人の家の方向を向いて座る。
そこで呪文を唱え、魔界の王子、ベールゼブブと47人の使者に自分に代わって復讐を頼むというものだった。
それが終わったら手で紙を細かく千切り、呪いをかけた人間の家の敷地内に撒く、といった内容だった。
後日、武井さんは千切った紙を彼の実家の庭にこっそり撒いた。
それで気が済んだのか、武井さんは急にいろいろなことに対してのやる気が沸いてきたという。
仕事も変えた。
後は新しい彼氏だと思い、すすんで自分から彼氏を作ろうと思った。
見た目は美人の部類に入る武井さんに、言い寄ってくる男性は沢山いた。
しかし、いい感じで話が進み、いざ付き合うとなると相手が必ず、転勤や引越しといったなにかしらの事情で離れることになる。
酷い場合は事故で大怪我をしたり、中には衝動的に飛び降りて下半身不随になった人もいたという。
最初は気のせいと思っていた武井さんも、そんなことが2年で数え切れないほど続くと、さすがになにかあるのではないかと考えるようになった。
「友達を頼りに彼の近況を聞いたところ、仕事がうまくいかなかったようで、行方不明だと聞かされました」

眠れないことが多くなった。
夜中トイレに起きると『おのれ・・・とご・・ふ』という声のような音が、水を流す音に混ざって聞こえたという。
その頃からだった。
「ダニにでも食われたみたいな、小さな赤い点が手の甲に出始めました。痒いとか特になかったので放っておいたんですけど」
次第にそれは、手の甲に細かい赤い粉をかけたかのようになっていったという。
どっからともなく蛆が沸き、部屋を這っていくこともあった。

そんな日々からだろうか、武井さんはあの呪いをかけたことが原因ではないかと思い始めた。
そんなことを考えながら、なんとなく付き合っていた当時、彼からもらった10センチほどのクマのぬいぐるみを指で強く押していた。
「痛いっ」
何かが指に刺さった。
小さく赤い血が指先に滲んだ。
なにかと思いながら、ぬいぐるみを強く押すと、なにか違和感がある。
注意しながら探ってみると、ぬいぐるみの腹のあたりから、一本の長い縫い針が出てきたという。

“人を呪わば穴二つ”
先に恨まれていたのは武井さんの方だったのかもしれない。
武井さんは半分遊び感覚とはいえ、人を呪ったことを後悔した。
しかしこの場合、お互い様と思うと自分のやったことが滑稽に思え、悲しかったという。

武井さんは今も独身。
一人で生活している。
手の甲の赤い点は、今も消えていない。





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■講評

文章 2
読ませる。
稀少度 1
穴二つの話は時々目にしますが。

手の甲の異変を見てから呪いをかけたことが原因ではないかと思うようになったとのことだが、その前の、つきあう人が次々と不孝に見舞われる辺りで「呪いの効用」に気付かないだろうか。
彼から貰ったぬいぐるみに針が入っていたところだが、彼が仕込んだのか、呪いの反作用で針が現れるという超常現象が起こったのか、第三者が何らかの手段で仕込んだのか、その辺りがはっきりしないと、「お互い様」とは断定できないのではないか。

名前: くりちゃん ¦ 08:22, Wednesday, Mar 12, 2008 ×


文:+1 怖:+1

武井さんの思い込み、といってしまっても差し支えのない話。
嫌な事をした、と思い込めば思い込むほど人間てときに
自分でも思っていない症状を表してしまうものです。

その中で唯一物理的に出てきた針。
それは、誰が仕込んだものなのか。
非常に気になりますね。

とにかく「人を呪わば穴二つ」
嫌な話には変わりありません。

名前: 晴 ¦ 10:57, Wednesday, Mar 12, 2008 ×


これは怪異とするには弱いように思いました。

「いざ付き合うとなると相手が必ず、転勤や引越しといったなにかしらの事情で離れることになる。酷い場合は事故で大怪我をしたり、中には衝動的に飛び降りて下半身不随になった人もいたという」の中では「衝動的に飛び降りて下半身不随」の場合がひどいとは思いますが、他についてはたまたま運勢が悪い時期に出会った人たちという実感しかなく、転勤や引越しなら当たり前すぎます。

「友達を頼りに彼の近況を聞いたところ、仕事がうまくいかなかったようで、行方不明だと聞かされました」も、行方不明という言葉を出すことで気味悪さを演出しようとしていますが、ただ連絡がとれないだけかもしれず、非常に曖昧な情報です。

『眠れないことが多くなった。夜中トイレに起きると『おのれ・・・とご・・ふ』という声のような音が、水を流す音に混ざって聞こえたという。
「ダニにでも食われたみたいな、小さな赤い点が手の甲に出始めました。痒いとか特になかったので放っておいたんですけど」次第にそれは、手の甲に細かい赤い粉をかけたかのようになっていったという。どっからともなく蛆が沸き、部屋を這っていくこともあった』
不眠もありがちで、トイレについては流れの不具合も考えられ、赤い点も病院に行ってないので何とも言えません。「どっからともなく蛆が沸き」については、部屋の状況が書かれてないので部屋のどこかが汚いのではないかと思ってしまいます。

「ぬいぐるみの腹のあたりから、一本の長い縫い針」もどこかで聞いたような話ですが、これも彼が入れたという確証に乏しく、店で誰かがいたずらに仕込んだ可能性もないとは言い切れません。また、ぬいぐるみを貰った時の2人の交際状況も詳細に書かれておらず、彼がやった可能性すら曖昧になっています。

この話は、それらしいものを並べて怖さを煽っているようですが、並べた事象の中にはありきたりのものや不確定な事も含まれていて、結局武井さんの自責の念から来る思いこみに見えてしまいます。最後のオチが今どき「ぬいぐるみの腹に一本の長い縫い針」では、ちょっと弱すぎると思います。これが店頭で仕込まれないくらいに何十本も入れられていたのであればぞっとしますが、彼の仕業であるという証拠にはどうか・・・という印象しかなかったです。

起こった事象が日常にもありえる事なのか、そうでないのか。作品で提示した情報には、また伝えきれない事が残っているのか、もう少し全体をよく見直してみてはどうでしょうか。

文章0:希少度−1

名前: chidori ¦ 11:03, Wednesday, Mar 12, 2008 ×


皮肉な話。
人って・・・そう考える話。
怪異を自ら呼んでしまったのでしょうね

名前: 黒ムク ¦ 11:11, Wednesday, Mar 12, 2008 ×


今一つエピソードのまとまりが悪い。
後味の悪さが残るのは良いのだが。

希少性(0) 文章(0)

名前: ねこや堂 ¦ 23:07, Wednesday, Mar 12, 2008 ×


別れた男女がお互いに呪い合っていた、というシチュエーションはなかなか興味深いのだが、どうも今ひとつ決め手に欠ける。彼が本当に呪いをかけていたかどうかもはっきりしないし、起きる事象も「偶然」との境界があいまいである。

名前: ナルミ ¦ 01:16, Thursday, Mar 13, 2008 ×


ネタ+1 文章-1
文章が長いものの、主観が大半を占めており、出来事についての描写が駆け足になっています。
これまでの交際相手の不幸、そして武井さん自身に起こった出来事について、細かく掘り下げて書かれていれば、話の重みが増したかと思います。

また、人形の針については、元彼の呪いであると断定できる要素に乏しく、違和感を感じました。
全体的に、武井さんの後ろめたさから来る思い込み、という可能性がぬぐえませんでした。

名前: ねこ ¦ 21:35, Thursday, Mar 13, 2008 ×


お互い呪いを掛け合っていたという物証に乏しいのではないかと。
また、男の振った上に呪いを掛けるという行為について納得できるような説得力がないように思いました。


名前: じぇいむ ¦ 15:04, Friday, Mar 14, 2008 ×


読後いやーな気分にさせられとても面白かったです。この呪いの方法、私も使わせていただこうかと思わず思ったのですが、自分にも跳ね返ってくるみたいで、使えませんね。残念です。
結局お互い呪いあっていたという事ですね。何だか無茶苦茶ですがこういう不幸な怪異のアンハッピーエンドって好きです。

名前: じゅりんだ ¦ 02:14, Saturday, Mar 15, 2008 ×


これはずいぶんと後味の悪い話ですね。呪いを返されちゃったのでしょうか。もしかしたら、そんな子供騙しの呪法を試そうとしたところからすでに、武井さんに悪霊が憑いていたのかもしれませんね。その彼も生きているのかどうか。

名前: ひ ¦ 14:03, Tuesday, Mar 25, 2008 ×


文章・・・0
希少度・・・0

ただの思い込みとしか思えませんでした。
もっとも呪いというものはそういった思い込みからくるものが多いので、それでも良いのですが、ただこの作品には呪われていると感じるに至った事象がもつ薄気味悪さがあまり感じられません。
当人はそういった薄気味悪さを感じたために呪いが返ってきた、あるいは自分も呪われていると判断したんでしょうが、読み手にはそういった感情が伝わってこないため、怖さが真に迫ってきません。
文章は丁寧ですし、状況説明はよく出来ているのですが、この作品の場合それだけでは薄い。物足りないという気持ちです。

名前: 鹿太郎 ¦ 15:04, Thursday, Mar 27, 2008 ×


全てが呪いの効果かというと首を傾げる点が多いです。それでも後味が悪かったのは確かです。 +1

二人の関係がどういうものだったのかがわからないので、はたして本当に「お互い様」なのかな、と。
例えば武井さんが元カレにひどい仕打ちをしていたとしたら、呪われるのも振られるのも仕方ないと思います。そしてこの場合は武井さんの呪いは逆恨みになるわけで…。

人を深く恨むというのはとてもエネルギーの要る行為ですから、そういった根っこがわかればもっと違った視点で読めたかもしれません。

名前: 眠 ¦ 21:35, Saturday, Mar 29, 2008 ×


「人を呪わば穴二つ」確かにそうなんでしょうね。
ただこの話の場合、熊のぬいぐるみから針が出てきただけでは自分も呪われていたと決め付けるのは早計でしょう。
呪いによる被害の原因の多くはマイナスプラシーボ効果と聞きます。
呪っている方も呪われている方も悪い事を関連付けて考えてしまうんですよね。
できればそのような事に縁のない生活をしたいですね。

名前: へみ ¦ 03:54, Monday, Mar 31, 2008 ×


雑誌に載っているようなモノが効くんですか?
そんな気軽に人を呪わないで欲しいし、気軽に呪う方法載せないでほしいな〜…。
人間が一番怖いかも。

名前: ちゅん ¦ 13:33, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


針が元彼の呪いと決め付けることが
出来ない。
そうなると、お互い様の理屈も
崩れ、結局は「人を呪わば…」の結果かと
思う。

名前: 茶毛 ¦ 23:09, Wednesday, Apr 02, 2008 ×


気味は悪いがどれも
"思い込み"
で片付けられてしまうものの様な。
本当に呪えるかどうかはわからないが、呪いをかけた、という事を自分で怖がっているのだろうか。

名前: MM88 ¦ 19:56, Thursday, Apr 10, 2008 ×


やっぱり、人を呪っておいて、自分だけ幸せにはなれないんでしょうねぇ…。
ただ、ちょっとこれの因果が解り難いように思えます。

文章:1 内容:1

名前: PM ¦ 10:28, Saturday, Apr 12, 2008 ×


 そんな子供の雑誌で載っている様な方法で人が呪えるとは思えません。もう一度読み直しましたが内容も偶然の連続のような気がするし。
 0点です。

名前: くすだまん ¦ 14:22, Saturday, Apr 12, 2008 ×


元彼が呪いをかけた というのも、あくまで推測の域なので 今一つ決定打に欠ける話で
終わってしまったような気がします。

名前: SPダイスケ ¦ 16:53, Monday, Apr 14, 2008 ×


恐怖+1
起こった不幸が呪いによるもの、とするにはちと弱い気がします。
怪異らしき部分が、ほとんど掘り下げられていないのが残念。
読後の嫌な感じや、雰囲気は出ているかと。

名前: 有線 ¦ 02:23, Friday, Apr 18, 2008 ×


話の流れからすると、先に呪われていたのではなく、人を呪ったことにより自分にも負の念が障ったように思えたのですが、違うのかな。
どちらにせよ“人を呪わば穴二つ”
恐ろしいことです。

名前: 久遠 平太郎 ¦ 23:11, Monday, Apr 21, 2008 ×


全ての因果を呪いに求めるのは少々無理があるように思う。
男運の悪さの引き金が呪いであったことを示す記述が欠落しているからだ。
明確に怪異として提示されているのは、謎の声とクマのぬいぐるみに仕込まれた針。しかしこれも、呪いと結び付けるには根拠が足りないように思う。

名前: 磯昆布 ¦ 01:13, Thursday, Apr 24, 2008 ×


 本当に呪ったせいなのか分かりませんね。
 男運が悪いだけなので、それ以上の怪異にあったならまだしも、これだけでは弱い気がします。
 ですが、とても後味が悪い話ですので。

名前: こうたろう ¦ 21:15, Thursday, Apr 24, 2008 ×


人を呪わば穴二つ、自業自得ではありますが、軽い気持ちでも人を呪おうなんてしてはいけないという良い教訓ですね。

名前: 昼間寝子 ¦ 07:11, Tuesday, Apr 29, 2008 ×



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