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それは息をするだけでも汗が滲むような、蒸し暑い夜のことでした。
レンタルビデオ店に向かう途中、喉の渇きを覚えた僕は、某ディスカウントショップ入り口にある自販機に立ち寄ることにしました。深夜も2時を過ぎ、店自体はすでに営業時間を終えています。昼間はケバケバしいほどの賑わいを見せている場所ですが、今は人気もなくひっそりとしていました。ただ、そうは言っても国道沿いに面していますから、夜道でも危ないということはありません。長距離トラックは何台も通り過ぎていきますし、近くには24時間営業の吉野家がやっています。そして何より、並べられた4台の自販機が煌々と辺りを照らし出しています。
あれこれと悩んだあげく、その頃お気に入りだった「夕張メロンミルク」を購入することに決め、財布からお金を取り出そうとしたとき、指先が絡まり硬貨を一枚落としてしまいました。小さな硬貨は軽い金属音をたてて飛び跳ねたかと思うと、そのままころころと転がっていき、3、4メートルほど離れた排水蓋の穴へあっという間に吸い込まれていきました。
その排水蓋はどこにでも見かけるようなコンクリートでできたものでした。硬貨の落ちた穴は側面の凹状にへこんだ部分にあたり、持ち上げるときはそこを利用するのかもしれませんが、蓋の隙間にはびっしりと砂やら土やらが詰まっていて、何年も動かされていないことと、ひとりでは到底もち上げられそうにないことがわかります。同じ型の排水蓋は幾重にも連なっていて、一方は、ほとんど車のとまっていない駐車場の暗闇へ消えていき、もう一方は、店舗の脇にあるひと回り大きい鉄製の排水蓋――おそらく下水道へ通じているのでしょう――へと繋がっていました。
あイター、やっちゃったな
しゃがみ込んで中を覗いてみるものの、自販機の照明は穴の底まで届いてはくれません。僕はしかたなくケータイを取り出し、液晶の明かりを懐中電灯替わりに、もう一度、排水蓋の中を覗き込むことにしました。
頼りない光の中に映し出される光景は、あまり気持ちの良いものとは言えませんでした。影なのか汚れなのかわからない煤色のシミ、長年の沈殿物により変色した底面、陰に隠れた先からは苔のような黒いもやもやが見えます。何度かケータイの角度を変えて中を覗いていると、光に小さく反射するものがありました。100円玉です。
貧乏性と言われるかもしれませんが、1円玉ならともかく100円玉となると、そのまま放っておくのも気が引けます。幸か不幸か、排水蓋についている穴は、少し大きめの穴に見えますし、穴の底もギリギリ手が届くぐらいの深さに見えます。近くに棒状のモノはありません。僕は少し気味が悪いのを我慢して、穴の中に左手を差し入れました。
ひんやりとした空気が左手を包み込みます。穴の縁で手の甲を切ってしまわないように、できるだけ慎重に、ゆっくりと底の方へ沈ませていくと、予想に反して、ちょうど親指の付け根ぐらいから、手を差し入れることができなくなってしまいました。指先に触れるものは何もありません。
もうちょっと、って感じなんだけどなあ
人差し指をぴんと張って、できるだけ下の方へ伸ばそうとしたときでした。生暖かい風が指先を撫でたかと思うと、突然、何か柔らかく湿ったモノに人差し指が挟まれました。
うわっ、何だよ
僕はとっさに左手を引っ込め、そのまま勢い余って、ぺたりと尻もちをついてしまいました。片明かりに人差し指をかざして見てみましたが、何も変わったところはありません。排水路なんだし、水が滴ってきたのかも…。無理に自分を納得させようとしましたが、あの感覚が絶対に水滴なんかでないことは、指先がしっかりと覚えています。しばらく排水蓋を眺めた後、僕は決心しました。確かめよう。高鳴る動悸をなんとか抑えながら、再度、ケータイを片手に穴の中を覗き込んでみました。
中の光景は何も変わっていないように見えました。煤色のシミに変色した底面、100円玉も同じ位置に落ちています。ふと、先ほど見た黒いもやもやが目に入りました。何かおかしい。じっと見つめていると、それは少しずつですが、陰になった場所からにじり出ようとしています。僕がそれに気づいて、生唾を飲み込んだ瞬間。
ずずっ
いきなり、穴の底に人間の目から上の部分が現れました。黒いもやもやは乱れた髪の毛で、その下には、液晶の光を受けギラギラと光る血走った目が、かっと僕を睨みつけています。
うわあああああああああ
僕は大声をあげながら、持つものも持たず、その場から走り去りました。半分転がるように近くの吉野家まで逃げ込むと、客だろうと店員だろうと誰構わずに、今起こった出来事を説明しました。最初は迷惑そうにしていた人たちも、僕の尋常でない様子を見て、「じゃあそこにいってみるか」という話になり、長距離トラックの運転手2人、大学生1人と一緒に、ディスカウントショップの前まで戻ることになりました。
しかし、結局、僕が見たモノの正体は掴めませんでした。3人はわざわざ排水蓋も開けてくれましたが、「ほら、兄ちゃん、もう落とすなよ」と100円玉を渡されただけで、中には何もありません。自分の顔が映ったのを誤解してしまったんじゃないか。それが、その場での結論となりました。
部屋に戻り、なおも自問自答を繰り返していたとき、左手人差し指に感じた奇妙な感覚を思い出しました。改めて、人差し指をまじまじと見つめてみましたが、まったく変わったところはありません。やっぱり見間違いだったんだ。安堵のため息を漏らしながら、僕は何の気なしに人差し指のにおいを嗅いでみました。
うっ
しょっぱいような生臭いような、むっとする悪臭が鼻腔をえぐりました。それは明らかに唾の乾いた臭いでした。僕はすぐに洗面所へ走り、石鹸を丸ごと1個つかってしまうほど、何度も何度も人差し指を洗い続けました。
その後、何か変わったことに見舞われたということはありません。ただ、僕は今でも、缶や短めのペットボトルといった、取っ手のない容器に入った飲み物を、左手では飲むことができないままでいます。人差し指が鼻先へ近づくにつれ、あのとき嗅いだ臭気が蘇ってくるんじゃないかと、気が気でならないからです。
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■講評
文章 0 一節の中でも改行してくれるともっと読みやすい。 稀少度 1 生理的に気持ちが悪い。
溝の中の顔ですが、変わった趣味の人が潜り込んでいたという可能性はないでしょうか。殆どあり得ないことだと思いますが。 他人のよだれの臭いがする指なんて、自分の指だと泣きそうになりますね。 時に大袈裟な言い回しが見られますが、ご自分の言葉で書いた方がよろしいでしょう。
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名前: くりちゃん ¦ 09:08, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
状況の説明がひつこいように思いましたが、減点する対象になるまでとは思いませんでした。 つまり、指を咥えられていたと・・・・。 歯の感触、舌の感触はなかったんですか? 全体的にねちっこい文章なのですから、この重要な描写の書き落としは痛い!しかし妖怪系の可能性もあるので減点しません。 |
名前: くすだまん ¦ 10:03, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
唾の乾いた臭いを穴の中に入れた後でかぎわけるのは困難かと・・・ 題名にもってくるわけだからそれはこの話のポイントになるし、大切な事だと思います。 行間を空けている場所もはたしてそこでいいのか考える。 文章を書きなれていない、そんな印象を受けた。 怪異もばたばたとした印象なので、もう少し整理してほしかった。
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名前: 黒ムク ¦ 10:39, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
普通そんな所に手を突っ込んだら、家に帰ってすぐに洗いそうなものですが、匂いをかぐためにあえて洗わなかった、体験者の変な心理が面白かったです。
くどい言い回しとそれなりの描写に、少年のような語りを用いたこの書き方はよく見かけますが、長すぎるからどうにかしてほしいという印象しかなかったです。 書き手の方は、どうやらこの手法を好んでされているようですけども・・・。
怪異としては可もなく不可もなくといった感じでした。怪異にたどり着くまでが引っ張りすぎで、作品全体も最初から終わりまでだらだらとしていて、題名に振り回された展開も原因だと思います。
文章0:希少度0 |
名前: chidori ¦ 12:43, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
文:0 怖:+1
怪異は十分怖い。 生理的な恐怖を感じる。 でも、排水溝の穴って手が入るほど開いてるかな。 というのと、携帯の明かりって結構頼りないですよね。 きちんと底まで見えたってのも疑問です。 |
名前: 晴 ¦ 15:36, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
ネタ+1 事象は面白いのですが、まず題名が長くて説明っぽい。ちょっと興味がそがれました。 また、改行にはさまれた1行の台詞や擬音がちょっとチープで醒めました。 出現した頭半分についても性別や雰囲気の描写が少なく、インパクトが少し弱いです。 |
名前: ねこ ¦ 19:45, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
長い。 ダラダラと締まりが無く、表現が場にそぐわない、というか大仰でくどい。 長文で引っ張る程のネタではないというのが正直な感想。
外出から戻ったら、まず手を洗えって。
希少性(0) 文章(-1) |
名前: ねこや堂 ¦ 00:46, Wednesday, Mar 12, 2008 ×
| 長すぎる。この程度の怪異なら、十分の一の文章量で書けるはず。余計な描写が多すぎる。 |
名前: ナルミ ¦ 01:44, Wednesday, Mar 12, 2008 ×
百円玉を探す行為にいたるまでの文章が長いので、もう少し尺を短くされてもいいかもしれません。 排水溝の中の顔ですが、中に住んでいた浮浪者かもしれませんよ。 私はこの体験者の方の感性と言うか行動が怪談でした。(申し訳ございません。決して悪い意味で言っているわけではありませんよ)百円玉に対する執着とか、石鹸を丸ごと1個使って手を洗うとか・・・。 タイトルも何だかかっこいい流行の小説のようですしね。 面白い要素はいっぱいあるなあと思いました。 |
名前: じゅりんだ ¦ 22:32, Thursday, Mar 13, 2008 ×
長い、という講評を私は出来ません(^_^;) ただ、怪異に比してねちっこすぎたとは言えます。 暗渠の中にいたブキミなものの気味悪さは充分伝わりました。 また、わざとねちっこくやれる文章力もなかなかです。 希少度 1 文章 1
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名前: じぇいむ ¦ 14:35, Friday, Mar 14, 2008 ×
| 排水蓋の状態を丁寧に説明しすぎで、かえってわからなくなってしまいました。怪異は充分怖いし気持ち悪いので、省ける描写など整理していただけるとありがたいです。 |
名前: ひ ¦ 14:10, Monday, Mar 24, 2008 ×
文章・・・-1 希少度・・・1
とにかく無駄に長い。 丁寧なのはいいのですが、何事も度が過ぎると逆効果ということもあります。 すごくおしゃべりな人の話を聞いてるようで、退屈してしまいました。 もっとあっさり書けば面白い作品になったかもしれないと思うと残念です。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 02:34, Thursday, Mar 27, 2008 ×
最初から最後まで続く大げさな表現と説明のしつこさは、好きになれません。 こういうのをねちっこい文章と言うのかな? 長距離運転手2人と大学生1人と書いてあるという事は職業を聞いたのでしょうか・・・。 せっかく美味しい牛丼を食べていた彼等に同情してしまいます。
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名前: へみ ¦ 03:12, Sunday, Mar 30, 2008 ×
いや、指を何だか正体不明のモノになめられたら絶叫でしょ。チビりますって。 人呼んだり、冷静ですなぁ…。 |
名前: ちゅん ¦ 13:19, Tuesday, Apr 01, 2008 ×
タイトルで惹かれてしまった分 ガッカリ感も倍率ドン! とにかく、長くて飽きさせた。 まとめ方によっては、面白い作品に なれたはずなのに。 とりあえず、夕張メロンミルクで乾杯。 |
名前: 茶毛 ¦ 22:44, Wednesday, Apr 02, 2008 ×
夕張メロンミルク、おいしいですよね。 怪異自体は十分怖いと思います。 たかが100円でこんな目にあったら堪りませんよね。
ただ、文章が読み辛く、途中で読み疲れてしまいました。 もう少し、全体的にまとめる必要があるかと思います。
文章:-1 内容:1
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名前: PM ¦ 10:14, Saturday, Apr 12, 2008 ×
だらだらと長い とは感じませんでしたが 内容の割には長文で 読み終えてみると インパクトが弱く感じてしまいました。 もったいないです |
名前: SPダイスケ ¦ 23:04, Sunday, Apr 13, 2008 ×
| 気味は悪いのですが…文章は1/3くらいにしたほうが良いかと。 |
名前: MM88 ¦ 22:15, Tuesday, Apr 15, 2008 ×
※点数が講評文の配点と一致していなかった為訂正します。以下変わらず。
美味しいですね夕張メロンミルク。ダ○ドーかな。 …じゃなくて。 それも含め、この辺りはバッサリ省いて「ジュースを買おうとしたら側溝に100円玉落とした」だけわかれば十分だったかなーと。 -1
拾いたいです100円でも。なかなか諦めつかないですこういうの。 あと、匂いに敏感なもんでウッときました。何の気なしに嗅いだだけなのに、その瞬間に匂い発動なんて冗談じゃない。 夕張メロンミルクといい、気が合いますね; +1 |
名前: 眠 ¦ 00:14, Wednesday, Apr 16, 2008 ×
恐怖+1 そんなのに舐められれば、かなり気持ち悪いですな。 周りの状況をあれだけ盛り込めるのですから、怪異自体ももっと書き込んでいいかと。
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名前: 有線 ¦ 01:28, Friday, Apr 18, 2008 ×
体験者(筆者氏?)の主観が勝ちすぎているような。 例え自身の体験だとしても、怪異の部分のみを抽出するような感じで書くとより客観的に書けると思います。 怪異自体は生理的な嫌悪感をもよおす話でした。 |
名前: 久遠 平太郎 ¦ 22:06, Monday, Apr 21, 2008 ×
| この文章量に怪異の質が伴っていれば高評価だったのだろうが……。タイトルは一捻りしたのだろうが、別に缶コーヒーじゃなくてもいいんじゃん、と思ってしまった。 |
名前: 磯昆布 ¦ 00:19, Thursday, Apr 24, 2008 ×
長すぎな気がします。 わざとこのような文章にしたのかもしれませんが、短くできるところは短くしたほうがいいですよ。 怪異は怖かったのですけれど、勿体無いです。 |
名前: こうたろう ¦ 20:54, Thursday, Apr 24, 2008 ×
排水蓋の説明はもっと簡潔にまとめたほうが良かったと思います。 タイトルも怪異も良いだけに、そこがちょっと際立ってしまったか。 すごく気持ち悪いですよ、指咥えられたら。 想像するとひたすら気持ち悪い。嫌だなあ。
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名前: 昼間寝子 ¦ 06:30, Tuesday, Apr 29, 2008 ×
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