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大塚さんは某有名私立大学の法学部に入学後、半年で中退している。 「なんで辞めたのか、もったいない」 そういわれる事も少なくないという。 『事故で両親がいっぺんに亡くなって、学費が払えなくなったから』 大塚さんはいつも笑いながら、そう笑顔で答えることにしているという。 笑える話ではないにも関わらずその笑顔。 不自然なものがあった。 「でも本当のことだから・・・」 大塚さんは割り切って考えていた。 『事故』といっても、それはあくまでも表向きの説明で、それ以上はけして話さない本当の理由がある。 それは限りなく自殺に近い形での両親の死。 多額の借金を抱えていた大塚さんの両親は、死を選ぶしかない状況に追い込まれてしまったのだ。
大塚さんはその後、年配のある女性に援助を受け、今に至ることになる。 亡くなった両親の友人ということで紹介された。 親戚の家に引き取られた後も、なにかと大塚さんの事を気にかけ、金銭面でも助けてくれたという。 その後、その女性の娘さんと大塚さんは結婚した。 20歳の時である。 相手は10歳近く年上だった。 それでも結婚生活はうまくいっていた。 息子と娘が生まれた。
しかし大塚さんには一つの疑問があった。 「なぜ義母は、友人というだけで、赤の他人の自分にそこまでしてくれたのだろうか?」 義母と出会った頃は、ただ素直に有難く思い、何の疑いも持たなかった。 「子供も生まれ、やっと恩を返すことができたのではないか。今なら理由を聞いてもいいのではないか」 そんな気持ちから、初めて義母に理由を尋ねることにしたという。
義母も幼い頃にやはり、大塚さんと同じように両親を交通事故でいっぺんに亡くしていた。 しかしすぐに、義母を援助してくれる者が表れ、その人の息子と結婚したという。 娘を儲けた。 そして今度は、自分が大塚さんと出会い、援助する側になり、娘がその子と結婚という運びなった。 大塚さんは、そういう偶然もあるのかと不思議に思いながらも、“ありがたい話”という程度にしか感じなかったという。 その空気を感じたのだろうか、義母は最後にこう付け加えた。 「けしてこれは偶然ではない。でも確実にそうなるわけではない。ただ、私の両親も同じように知人というだけで、赤の他人から助けてもらったそうです。血の繋がり以上の何かがある、こういう運命もあると理解してほしい。もしあなたが、同じようなことになったら、その時は快く引き受けてあげてほしい。少なくともそうすることで得られる幸せもあるのだから」 そう言って義母は微笑んだという。
このことには前兆があり、まず作りかけの木の鳥居が夢に出てくる。 それが朱色に変わったなら、必ずその鳥居をくぐるように、義母はそう付け加えた。 「必ず、必ずですよ」 そういった義母の表情にはいつもの優しさはなかった。 大塚さんはそこに怖さを感じたという。
それから随分経った。 義母は昨年亡くなり、大塚さんは45歳を過ぎた。 最近よく鳥居の夢を見る。 もしかしたら、その時が近づいてきているのかもしれないと、大塚さんは嬉しそうに笑っていた。
この話を聞いたのが秋頃のこと。 大塚さんは年明けすぐに亡くなった。 「父が亡くなってから、家を走る人影が目に付くんです。視界の隅にチラッとですが、女性のようです・・・私、家の中がなんだか怖くて」 大塚さんの娘さんは何かに怯えているようだった。 義母から大塚さんに伝わった例の話は知らないようだった。
『・・・大塚さんは鳥居をくぐらなかったのだろうか』 そんな疑問が脳裏を過ぎった。
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■講評
文章 2 読みやすい。 稀少度 2 「良い話」かと思ったら。
義母からの話を聞き、そして今度は大塚さんが誰かに援助を…という展開になると思っていたら、全然違う方向に行くので驚いた。 義母の話、鳥居の夢、女の影など大塚さんの死に関わっていそうで確証の取れないところはまさに怪談だと思う。 順繰りに面倒を見るという環を破ってしまったのか、そうして大塚さんの死はそれに対する罰なのか? 最後の一節は頷ける。 |
名前: くりちゃん ¦ 08:24, Monday, Mar 10, 2008 ×
じわっと怖さがくる。 こういうこともあるのだとあらためて怪異の恐ろしさを思い出した。 夢の意味するところなど疑問も多いが、それが触れてはいけないタブーのような気がするので、この程度の説明でもいいかと思う。 |
名前: 黒ムク ¦ 08:57, Monday, Mar 10, 2008 ×
文が粗い。 たとえば 義母を援助してくれる者が表れ・・・。の部分 現われが正しいです。 よって一点減点します。 なんだが怖くて貴重な話なのに残念です。 |
名前: くすだまん ¦ 13:01, Monday, Mar 10, 2008 ×
文:+2 怖:+2
一体どういう縁が繋がっていたのか、 一体なぜ大塚さんはその縁を切ってしまったのか。 色々と考えてしまいます。 確かにじわっと怖い。 こういうのが本当の恐怖。 |
名前: 晴 ¦ 18:55, Monday, Mar 10, 2008 ×
冒頭はもう少し簡潔にまとめられるのではないか。 最初は両親の死因から始まる因縁かと思ってしまった。 ネタは大変興味深い。
鳥居をくぐらなかったから亡くなったのか、くぐる前に亡くなってしまったのか。 どちらにしても想像するしかない訳だが。
希少性(1) 文章(0) |
名前: ねこや堂 ¦ 23:38, Monday, Mar 10, 2008 ×
前半詳細に語られた「血の繋がり以上の何か」の語りの濃さに対して、結末のあっけなさは、あまりにも曖昧でこじつけのような気がしました。 「『・・・大塚さんは鳥居をくぐらなかったのだろうか』 そんな疑問が脳裏を過ぎった」 これに向けて強引に話をまとめようとしているような感じを受けました。
鳥居の夢については、義母の話には「まず作りかけの木の鳥居が夢に出てくる。それが朱色に変わったなら、必ずその鳥居をくぐる」という詳細な様子が出てきますが、大塚さんの見た夢はただの鳥居としか書かれておらず、いったいどこまで一致していたのかは不明です。もしかしたら義母の話のものとは違っていたのかもしれないという気もするので、大塚さんの夢がもたらしたものが何か分からないという点で薄気味悪さはあります。
しかし、「大塚さんは年明けすぐに亡くなった」に関しては死因を全く書いておらず、それ以前の大塚さんの健康状態についても触れていないのはどうかと思います。
結末について言えば、語り手の脳裏に過ぎった疑問は読者が想像することなので書く必要はないと考えます。 しかし前半の濃密な語りに対して、断片的で曖昧なこの程度の結末では、情報不足と憶測の域を出ません。アンビリバボーのいい話風な前半部分をもう少し簡潔にして、後半には年明けに至るまでの大塚さんと、その後残された娘さんに起こる怪異を中心に描いた方が良かったのではないでしょうか。
文章−1:希少度0 |
名前: chidori ¦ 00:16, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
冒頭、「学費が払えず大学を中退した」と「年配のある女性に援助を受け」「金銭面でも助けてくれた」のところで引っかかってしまった。その女性は学費の援助はしてくれなかったのだろうか。中退して就職したのであれば、金銭面の援助は必要ないと思うが。具体的にどのような援助を受けたのかを書いてほしかった。 その後の展開も、怪異と呼べるのは娘さんの見た「家を走る人影」くらいで(鳥居の夢は、義母から話を聞いていたのだから、見ても不思議ではない)物足りない。 大塚さんには息子さんもいたはずだが、息子さんには話を聞かなかったのだろうか。大塚さんから何かを聞いていたかもしれないのに。 |
名前: ナルミ ¦ 01:14, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
ネタ+2 文章+1 途中と最後で「縁」の意味合いがずいぶんと変わりました。 付きまとうモノによって不幸が発生し、そしてそれは次代へ伝染していく、そんな仄暗さを感じました。 鳥居をくぐらなかったことで縁を絶つ事が出来たかどうか、まだわからないですよね。 まだ何かありそうな、そんな予感を感じさせるため、追跡取材への期待を込めて3点どまりです。 |
名前: ねこ ¦ 17:41, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
| 奇妙さは感じました。ただ、肝心の怪異が夢の中で終わってしまったことと、最後の大塚さんの死因が本当に一連の出来事と関係があるのか曖昧なので怪異としての評価が薄まってしまいました。奇妙な因縁話といった感じがしました。 |
名前: じゅりんだ ¦ 01:52, Thursday, Mar 13, 2008 ×
終盤の駆け足が残念。 鳥居をくぐる前に急死してしまって、何かの円環構造が崩れてしまったのかなあ、とも思いました。 くぐる気満々のようでしたので。
「くぐらなかった」のか「くぐれなかった」のかで、かなり意味合いが違うので、そのへんを前面に出すと、また一段と不気味なお話になったのかもしれません。 希少度 2 文章 0
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名前: じぇいむ ¦ 04:55, Thursday, Mar 13, 2008 ×
| 血のつながりではなく、不幸(事故や自殺など)で始まり夢(鳥居の)で続く縁ですか。良いものなのかどうか判断つきかねますが、嫌な感じの方が強いです。忌み話のようで。家の中を走り回る女とか、非常に怖いです。 |
名前: ひ ¦ 20:37, Saturday, Mar 22, 2008 ×
読み終わった後に題名の意味がよく分かります。 作者様は大塚さんと大塚さんの娘さん両方との知り合いだったようですね。 大塚さんの亡くなった理由は話の内容的にも書いたほうがよかったと思います。 それがあれば、さらに因縁めいたことを感じ取れたかもしれません。
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名前: へみ ¦ 02:48, Sunday, Mar 23, 2008 ×
文章・・・2 希少度・・・2
こういう薄気味悪い話は大好きです。 読んでて久々にゾワッときました。 冷静で淡々とした語り口も効果を高めています。 「いつも笑いながら、そう笑顔で答えることにしている」というところはどうかと思いますが。 これは後で訂正しましょう。
結局夢と偶然の積み重ねと言われればそれまでですが、それらが集まって別の何かが姿を現すところに怪談の面白味があります。 これはその良い例と言えると思います。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 00:15, Thursday, Mar 27, 2008 ×
ハッピーエンドであろうという予想をばっちり裏切ってくれました。素敵に後味が悪いです。鳥居、くぐらなかったんでしょうね。娘さんがどうなるのか気になります。 +3
どちらかというと「鳥居をくぐらなかったんだろうな…」と思わせる方向へ誘導しているように感じられたので、締めはダイレクトすぎて野暮な一言に見えます。 とことん後味悪く、モヤモヤしたまま終わってほしかった。 -1 |
名前: 眠 ¦ 00:46, Friday, Mar 28, 2008 ×
田舎の神様なんか、祟り神と富をもたらす神と表裏一体ですから、その類のものだったのでしょうか。 娘さんが、心配です。 |
名前: ちゅん ¦ 12:40, Tuesday, Apr 01, 2008 ×
薄気味悪い因縁めいた話としては 良かったと思う。 序盤の文章はもう少し簡略化したほうが 鳥居の部分がもっと浮き彫りに なると思う。 |
名前: 茶毛 ¦ 14:12, Wednesday, Apr 02, 2008 ×
なんとも後味が悪い話である。連鎖の中心にあるのが夢だけという点が頼りないが、結びの段に登場する黒い影が、単なる偶然の一致ではという懐疑を払拭させているように感じる。
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名前: 磯昆布 ¦ 22:13, Tuesday, Apr 08, 2008 ×
怪異らしき怪異は起こっていない。 良い話と思いきや、何か後味の悪い話。 夢に現れる鳥居の部分は気味が悪いですね。 血縁は関係ないとしたら、どういった人がその鳥居の縁に引き込まれるのか。 その可能性は誰にでもあるのでしょうか。
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名前: MM88 ¦ 19:11, Thursday, Apr 10, 2008 ×
なんか後味の悪い話ですね…。 最後の方、ちょっと話し急いでいるというか、ちょっと関連性がわかり難かったです。
文章:1 内容:1
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名前: PM ¦ 22:00, Friday, Apr 11, 2008 ×
| 大塚さんが亡くなった時の話も もう少し詳しく書いていただいた方がよかったかと思います。 |
名前: SPダイスケ ¦ 22:49, Sunday, Apr 13, 2008 ×
恐怖+1 稀少性+1 後半の『縁』に纏わる話が薄いのが残念。 何か狂気めいた雰囲気のある話なので、もう少し怪異をしっかり描写して欲しかったです。 |
名前: 有線 ¦ 15:09, Thursday, Apr 17, 2008 ×
途中までは良い話だったのに、鳥居が出てから急に風向きが変わって、何か禍々しい神仏の影が浮んできました。神との契約は往々にして何らかの代償を要求され、決まりを守らなかったなら神の怒りに触れることも考えられます。 大塚さんは鳥居をくぐらなかったのかどうなのか? そこの部分が非常に気になりますね。 |
名前: 久遠 平太郎 ¦ 00:29, Monday, Apr 21, 2008 ×
いい縁の話で終わらない。 大塚さんは本当に鳥居をくぐらなかったのか、はっきりとはしませんね。 ですが非常に後味悪い話です。 |
名前: こうたろう ¦ 18:12, Thursday, Apr 24, 2008 ×
鳥居をくぐらなかったんでしょうか。 何故、何者がその連鎖を生み出したのか、深い謎と後味の悪さが怖い話ですね。 |
名前: 昼間寝子 ¦ 04:14, Tuesday, Apr 29, 2008 ×
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