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今からもう四十年程昔の事。 〈オラは死んじまっただ〜 オラは死んじまっただぁ〜〉 こういう歌が流行った。 大迫さんはこの歌が大嫌いだった。 当時大迫さんは観光バスの運転手をしていた。仕事上、遠足や修学旅行の生徒を乗せる事がよくあった。沢山の命をあずかる大迫さんとしてはめいいっぱいの安全運転をといつも思っていた。 それなのに、 〈オラは死んじまっただ〜 オラは死んじまっただぁ〜〉 生徒たちは流行りのくだらない歌謡曲をずっとがなりたてている。他にも流行りの歌はあるだろうに、どうしてどこの生徒もこの歌ばかりを音飛びレコードの様に延々歌うのか。 〈死んじまった〉 だなんて縁起でもない。 全く近ごろの… 生徒たちとしては当時大流行した歌を楽しく皆で歌って騒いでいるだけなのだが、生徒たちがその歌を歌いだすたび、大迫さんは嫌で仕方なかった。 そしてその日もどこぞの生徒たちが、バスが発車してしばらくもすると 〈死んじまっただぁ〜〉 と熱唱しだした。 大迫さんはげんなりした。だから歌ならもっと他の歌もあるだろうに。 ハンドルを取りながら、大迫さんは後方確認のために右のバックミラーを見た。 そこには。 人さし指と親指を立て、残り三本を折り曲げた、手首が映っていた。 四角い鏡の中に男らしき右手首が映り、生徒たちの歌声の音頭をとる様に、ひょいひょいと動いていた。 大迫さんはそれに、生徒の誰かの手が映っているのだろうと思った。しかし、後ろを見てもバックミラーに映る様な窓の外に手を出している者はいなかった。 迫田さんは今一度、ミラーの中を確認した。 手首は変わらず、生徒たちの歌声にあわせてひょいひょいと動いていた。 いや。手首は。 大迫さんに向って人さし指をくいくいと動かし、おいでおいでをした…様に思えた。 〈死んじまっただぁ〜〉 大迫さんはぞっとした。そして 「ううう、うるせぇっ!死んじまった死んじまった言うなぁぁ〜っ!!」 と、大声でわめいてしまった。 その大迫さんに生徒たちは驚き、シン、となった。 大迫さんも自分の大声にはっとなった。 ミラーの中には、もう踊る手首の姿は無かった。 その日、生徒たちが〈死んじまった〉の歌を歌う事はもう無かった。 後日会社に苦情がきたかどうかは知らない。 以後も他の学校の生徒たちが合唱する事はあったが、音頭をとる手首が現れる事はもう無かった。
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» 【+2】オラは [I'd like to tell you something about ...から] × よく分からないんだけど「右のバックミラー」って右側のサイドミラーで良いんでしょうか。 それからぱっと頭に浮かんだ手首は調子よく指... ... 続きを読む
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■講評
文章 2 整然と読める。 稀少度 2 呼んでしまったのでしょうか。
観光バスの運転手さんもいろいろ考えているんだなあ。傍若無人な乗客もなあ。それでも乗って下さればお客様だし… 不吉な歌が、魔物を呼んでしまうというのはあるかも知れない。ティッシュペーパーの伝説は単なる噂かも知れないが、捜してみると案外そういう事例も埋もれているだけなのかも。 手首より上の方は見えなかったのでしょうか。 |
名前: くりちゃん ¦ 08:15, Saturday, Mar 08, 2008 ×
歌にあわせて踊る手首という事象は気味が悪いと思いました。 ただ、手首の様子については少し曖昧な書き方に感じました。 「音頭をとる様に、ひょいひょいと動いていた。」 ひょいひょいの具体的な動きは読者に想像してほしいという意味かもしれませんが、手首を支点にして左右に揺れていたとか、似合った書き方は他にもあるように思います。 また、ミラーに占める手首の大きさや、映り加減もよく分かりません。
「男らしき右手首」だと判別できるのならある程度の大きさだとは予想できますが、やはりミラー全体に占める大きさはあったほうがいいのではという気がします。 この話は踊る手首の映像こそが気味悪さの中心なのですから、見た人が読んで確かな映像が浮かぶように、もう少し書き込まれるべきだと思いました。 また、「バスが発車してしばらく」すると熱唱が始まったようですが、「ハンドルを取りながら、大迫さんは後方確認のために右のバックミラーを見た。」直後には大迫さんは何をしていたのでしょうか。文章からするとかなりミラーを凝視していたようですが、手の主が乗客かどうかを調べるのに後ろを見ているので走行中ではないように思えます。やはり、いつの出来事なのかは作中に描かれたほうがいいと思います。
そして「後日会社に苦情がきたかどうかは知らない」という文も、ありがちな余韻を残そうとする意図から外れて、変な曖昧さを残しています。苦情がきたのなら会社が把握しているはずなので、それは分からない事ではないように思います。この一文は、無くてもいい気がしました。
文章−1:希少度1 |
名前: chidori ¦ 11:15, Saturday, Mar 08, 2008 ×
怒鳴ったから助かったのかも。 良かったですね。 怖いです。 |
名前: ちゅん ¦ 12:46, Saturday, Mar 08, 2008 ×
嫌な話です。しかし流行歌が好きな悪霊とは・・・。今だったら幸田か浜崎か!モーニング娘?それとも子供の真似をするのが好きなら小島よしおか?そんなの関係ねえ!そんなの関係ねえ!はい!オッパッピー!でガッシャーン!おお!怖い! または・・・。 ららららい!ららららい!交通事故でエクサ、サイ―ズ!でガシャーン! すみません、真面目に論評します。 少し文章がたどたどしい印象がありますが、誤字脱字がないので減点にはしません。大変楽しめました。
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名前: くすだまん ¦ 13:18, Saturday, Mar 08, 2008 ×
なかなか面白い話だが、肝心の手首の様子が今ひとつはっきりしない。窓から手を出したように映っていたのか、それとも空中に浮いているような感じだったのか。大きさは。腕の伸びる方向は上か下か横か。 もう少し描写があれば、怪異のイメージもより鮮明になったと思う。 |
名前: ナルミ ¦ 13:49, Saturday, Mar 08, 2008 ×
文:+1 怪:+1
仕事とはいえ確かに毎日その歌を聴かされる側としては たまったものではないでしょうが……。 そして、あんなに明るい歌でも呼ばれるんだ異界のものってのは。 それにしても手首に対して、ではなく明らかに生徒に対して叫び声を あげてはダメでしょう(笑)
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名前: 晴 ¦ 17:06, Saturday, Mar 08, 2008 ×
| 歌に合わせて踊る手首とは面白いですね。縁起でもない歌を歌うとそういうのが寄ってくるのでしょうか。怖いというより運転手さんの哀愁が漂ってくるお話でした。 |
名前: じゅりんだ ¦ 18:44, Saturday, Mar 08, 2008 ×
文章がわかりやすく読みやすかった。 妙に「人さし指と親指を立て、残り三本を折り曲げた手首」が気に入ってしまった。 |
名前: 黒ムク ¦ 20:56, Saturday, Mar 08, 2008 ×
おいでおいでするようにくいくいと動いたというのは、ミラーから見えていたのが手の甲側だったという事だろうか。 最初は逆に考えていたので少し戸惑ってしまったが、大迫さんが叫んでしまったのもわかる気がする。
希少性(1) 文章(1)
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名前: ねこや堂 ¦ 22:40, Saturday, Mar 08, 2008 ×
フォーク・クレセイダーズの「帰ってきた酔っ払い」ですねえ。 確かに、遠足のバスかなんかで歌っていたような記憶が……。 希少度 1 文章 0
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名前: じぇいむ ¦ 01:15, Monday, Mar 10, 2008 ×
ネタ+1 死んだ当人にはどう響いたんでしょうね、あの歌。 聞いて不快感を覚え続けていた、ということは、大迫さんには「何かが来る」予感があったのかな。 |
名前: ねこ ¦ 02:12, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
霊だとすると余り邪悪なものではないような感じがしますね。 手首の描写は少しわかりにくかったような気もします。 しかしこの歌、流行ったのは40年も前だったんですね。 |
名前: へみ ¦ 01:57, Friday, Mar 21, 2008 ×
| 指揮する手首と合唱のどちらが「原因」なのでしょうか。合唱するから出てくるのか、手首が出るからつい歌っちゃうのか。手首をもっと調子に乗らせたら大事故を起こしたかもしれませんね。興味深い話です。 |
名前: ひ ¦ 13:08, Friday, Mar 21, 2008 ×
※ブラウザ不調につき、2度送信しました。重複している場合は削除します。
大迫さんがナーバスになっている時に運悪く登場してしまったのかな。 実はこの曲に特化しているものでもなく、悪気はなかったのかもしれないなと思いました。単にノリノリだっただけなんじゃないかと。 +1
でも大迫さんの気持ちもわかります。人差し指をくいくい、なんてやられたら、ねえ…。 どちらで解釈しても楽しめるお話ですね。 +1 |
名前: 眠 ¦ 20:19, Monday, Mar 24, 2008 ×
文章・・・1 希少度・・・1
丁寧に書かれていますが、肝心の手首に関しては説明不足の感があります。 大迫さんの人柄は伝わってくるのでそこは好印象です。 大迫さん以外は霊も含めて全員楽しんでいたんでしょうね。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 18:12, Tuesday, Mar 25, 2008 ×
楽しめました! そりゃあ「死んじまった、死んじまった」 の大合唱だったら「うるせー! くそがき!」と思うのも頷ける。 その手首も、乗客と同世代? |
名前: 茶毛 ¦ 12:29, Wednesday, Apr 02, 2008 ×
歌の内容が内容だけに、リズムを取っていたのが怪異というのはさもあらん、といったところか。 それにしても、体験者もここまで「帰ってきたヨッパライ」を拒絶することもないだろうに……。 |
名前: 磯昆布 ¦ 00:51, Monday, Apr 07, 2008 ×
音楽好きの霊なのでしょうか? それとも、その歌詞が…? なんにせよ、珍しい話だと思います。
文章:1 内容:1
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名前: PM ¦ 21:12, Wednesday, Apr 09, 2008 ×
"大迫さん"が"迫田さん"になっている部分が一ヶ所ありますね。
運転手である体験者は毎日毎日 "死んじまった" と聞かされ、ヤだったんでしょうね。 ただの歌好きな手だったのか、歌詞にひかれてやってきた邪悪な手だったのか。ただの歌好きだったのなら突然の大声に祓われて(?)ちょっとかわいそうな気も。
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名前: MM88 ¦ 21:45, Thursday, Apr 10, 2008 ×
何カ所か出てくる 〈死んじまった〉 の歌詞の部分は 一つに統一した方が、 大迫さんの 「いつも同じ歌」という気持ちを より強調できると思います。
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名前: SPダイスケ ¦ 22:45, Saturday, Apr 12, 2008 ×
稀少性+1 うわぁ、懐かしい……。 といっても、リアルタイムで聴いていたわけではないですが。 指揮棒代わりに人差し指を立てていたのですかね? 手首の『ひょいひょい』という動きが、ちと解りにくいのが残念。 |
名前: 有線 ¦ 00:55, Thursday, Apr 17, 2008 ×
| 楽しそうな雰囲気に誘われて出てきたのでしょうね。「死んじまっただ〜」の歌とは多分関連性は無いと思いますが想像するとシュールな図柄ではありますな。 |
名前: 久遠 平太郎 ¦ 20:39, Sunday, Apr 20, 2008 ×
最初は音頭をとっているだけだった手首が、おいでおいでをした……ように見えたのがひたすら気味が悪いです。 そこは運転手さんの見間違いかもしれませんが、歌っていた歌が歌なだけに恐ろしかったです。 |
名前: こうたろう ¦ 21:59, Wednesday, Apr 23, 2008 ×
悪い霊ではなかったのかも知れませんね。 指をくいっとやったのも、一緒に歌えって事だったのかも。 時代が感じられて良いですね。 |
名前: 昼間寝子 ¦ 02:09, Tuesday, Apr 29, 2008 ×
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