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垣見さんは一時期キャンプにはまったことがあった。 時間が出来れば何時でも出発できるように、彼のバンにはキャンプ道具一式が積みっ放しだったという。
初夏のある日、友人の上村と山田とでキャンプに行くことになった。
「携帯で話していたら、今から行こうって事になって。」
目的地のキャンプ場に着いたが駐車スペースが満員なので断られた。 予約も入れず行ったことを悔やんだが、このまま帰るわけにも行かない。 どこか野営できる場所がないかと車で走ってみることにした。 山道をしばらく走ると広めの空地を見つけた。 山林に囲まれたところにポカリと広い平地のスペースがあったのだ。
「気味悪い廃墟があるけど。暗くなってきたし、早くビールも飲みたいから此処でいいかって。」
広めの駐車スペースがありその奥に元飲食店らしき廃墟。 シャッターが閉まった入り口の上には、所々流れた赤さびの跡がある看板に『レストラン』の文字が読めた。 そして隣にはレストランの敷地と同じ広さがありそうな空地があった。 そこに車を乗り入れ隣にテントを張る。
夕食を食べ終わった頃あたりは闇に包まれていたという。 焚き火を囲みながらビールやウイスキーを飲む。 垣見さん達は馬鹿話に花を咲かせていた。
「あいつらには黙っていたんだけど。」
垣見さんは奥に広がる真っ暗な山林から視線を感じていたという。 気になっていると軽い頭痛もするようになった。 垣見さんは先に眠ることにした。 テントに入る前に上村のカメラで視線を感じる場所に向かってシャッターを押す。
カシャッ!カシャッ!カシャッ!
連写モードになっていたカメラからフラッシュが三度光り、ジーツとフィルムを巻き戻す音が聞こえてきた。 垣見さんはテントに入ると頭痛薬を飲み眠った。
真夜中、異常な臭いで目が覚めた。 卵が腐ったような臭いだった。 外に出る。 しかし外にも異臭が漂っている。 チラチラとくすぶっている熾火を囲むように、折りたたみ椅子で眠っていた二人も異臭で目を覚ます。 発生場所はわからないが、ますます酷くなり耐え切れなくなった。 テントを置いたまま車で避難することにした。 翌朝空地に戻ると異臭は全くしなかったという。
「次の休日だったかな。」
上村から電話が入った。 今から垣見さんの部屋に行くという。 上村は部屋に入るなり連写したあの三枚の写真を出した。
一枚目を見る。
写真はL版のサービスサイズ。 そこには木の幹と横から伸びる木の枝が撮影されていた。 地面から白く細長い小さなモヤが湧出している。
二枚目を見る。
少し大きくなった白いモヤが写真の真ん中あたりまで浮き上がっている。 それは口を大きく開けた人の首に見えた。
三枚目を見る。
白いモヤは人の上半身のような形になっている。 ワイシャツを着ているようだ。 胸の当りから下が平面的になり白くなっている。 エプロンのようにも見えたという。 そして腰から下は白く霞んでゆき形を成していない。 表情はわかり辛いがスポーツ刈りをした男性のようだ。 だらしなく開かれた口。 右に曲がった首は異常に長かった。
「形体が人の上半身のように見えると言った方が正しいかもな。」
それは小指の第二関節ほどの大きさしかなく全体的に白いモヤがかかりぶれていた。 ただこれが心霊写真に違いないと確信した理由はあった。 ワイシャツに絞められたネクタイとその模様が鮮明なのだ。
「結び目までハッキリと分るんだよな。」
上村はキャンプ後から視線の端に黒い影が見える事があるという。 ぶら下がった巨大な黒いミノムシのように見える。 ゆらゆら揺れているそれを直視しようとすると消えるので正体はわからない。 垣見さんは上村にあの場所で感じた事を全て話し神社かお寺に写真とネガを持って行くこと勧めた。
「氏神となる神社に持って行ったんだと。」
初めは渋っていたがなんとか引き取ってくれた。 その後あの黒い影も見えることはなくなった。 それが一年以上前の話だという。
「そのネガが上村の部屋から出てきたんだ。」
神社には違うネガを持って行った可能性はある。 しかし怖いので垣見さんに引き取ってくれという。 本当は嫌だったが撮影したのが自分だという後ろめたさと、殺気すら漂う上村の頼みを断れなかった。 ただ部屋に置くのは嫌なので車のダッシュボードに保管することにした。
「流石にミノムシは出ないけど。」
車内であの異臭がする事が三度ほどあったという。 もう一度どこかの神社で引き取ってもらおうと思うのだが、行動しようとすると行く気が失せるんだと力無く笑う。
私は垣見さんにその写真を見せてくれないかと頼んでみた。 今日は車で来ていないので渡せないが、郵便でネガを送るからプリントは其方でしてくれと言った。 出来ればネガを預かりたくないのだが・・・。
しかし私にネガが届くことはなかった。
取材の数日後、垣見さんは車で事故を起こしたのだ。 垣見さんにも追突してきた相手にも大きな怪我はなかったが車は大破しレッカー移動された。 車を引き取りに行くとダッシュボードに保管していたネガが消えていた。
最近、上村からまた視線の隅に黒い影が見えたと電話があったという。 垣見さんは村上にネガが行方不明になっている事をまだ話していない。
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■講評
怖いの一言。 「みのむし」という響きが妙に怖さを倍増させた。 |
名前: 黒ムク ¦ 09:42, Thursday, Mar 06, 2008 ×
怖そうな要素があるのに、書き方のせいか怖さがあまり伝わってこない感じがしました。
1行空きで入る垣見さんの科白によって作品全体が間延びしていて、最後まで読むのが非常に長く感じられました。地の文で処理してもよいと思います。 3枚目の写真がはっきり描かれている割には、1枚目と2枚目のモヤの様子が曖昧な描写で、少し分かりにくかったです。また、「ぶら下がった巨大な黒いミノムシ」も、分かるようで分かりにくい書き方に思いました。題名が「みのむし」であるのに起こった怪異はバラバラで、最後に事故を起こしたとはいえ、みのむしに強烈な恐ろしさが与えられてないように思います。
この話の怪異としては、垣見さんがキャンプ先で気配を感じて撮った心霊写真が、ネガとして彼らにつきまとっているらしい、という事になるのですが、視界の異常と大破した車のダッシュボードの様子についてはもう少し情報がほしい気がしました。視界の異常については彼らに連鎖的に起こっている事で普通ではないとは思えますが、やはり一度病院で見てもらわないと、怪異だと分からないのではないかという気がします。
文章0:希少度1 |
名前: chidori ¦ 10:10, Thursday, Mar 06, 2008 ×
文:+2 怖:+2
とにかく文章に力があります。 ぐいぐいと引きこまれてしまいました。 「みのむし」が何なのか。 具体的に描写することなくそれと示唆させる手腕にも脱帽です。
>だらしなく開かれた口。 >右に曲がった首は異常に長かった。
この辺り。特に。 それにしても、なぜその「みのむし」は上村さんに拘るのでしょう。 拘っているように見えるのですが。
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名前: 晴 ¦ 15:53, Thursday, Mar 06, 2008 ×
怪異は貴重だと思いますが、文章に粗さが目立ちます。 例をあげれば、 そこに車を乗り入れ隣にテントを張る。 そこに車を乗り入れ、隣にテントを張る。 とするのが文章的に正しいのでは? 他にも 夕食を食べ終わった頃あたりは・・。 夕食を食べ終わった頃、あたりは が正しいと思います。 せっかく怪談も、気になって仕方ありません。 一点、減点します。 それから写真の怪異に至るまでの話が長く感じました。 何処を詳しく伝えて、何処を流すか話を整理すべきです。 厳しいようですが一点減点します。 |
名前: くすだまん ¦ 17:03, Thursday, Mar 06, 2008 ×
文章 2 引き込まれていく。段落わけも適度。 稀少度 2 執拗なところが怖い。
たまたま撮ってしまった写真で八つ当たり的に憑いてこられるとは恐ろしい。 「だらしなく開かれた口。右に曲がった首は異常に長かった。」という表現がリアルで気持ちが悪い。 処分しても戻ってくるネガの行は祟りの執拗さを感じて、嫌な気分になる。 |
名前: くりちゃん ¦ 19:38, Thursday, Mar 06, 2008 ×
心霊写真が行方不明になるのはよくある事ですが…。気持ち悪いですね。 一度お払いをオススメします。 効くかどうかは別にしても…。 |
名前: ちゅん ¦ 20:36, Thursday, Mar 06, 2008 ×
怪異は十分に怖い。ただ、文章がそれを上手く伝えきれていないもどかしさがある。 導入部、写真を撮るまではもっと短くできるし、反対に事故の状況はもう少し詳しく書いた方がよいだろう。最後の最後で「上村」が「村上」になっているのも残念。 |
名前: ナルミ ¦ 01:06, Friday, Mar 07, 2008 ×
体験者は「さん」付けであるのに、体験者の友人は呼び捨てというのは違和感がある。 体験者と同じに統一した方が良いのでは。 文章は所々誤字があるのと句読点の付け忘れが気になったが、怪異はかなり怖い。
希少性(2) 文章(-1) |
名前: ねこや堂 ¦ 02:37, Friday, Mar 07, 2008 ×
文章がもう少し短いほうがいいかなと思いました。 キャンプに一緒に行った山田さんはこのお話には何の関係もなさそうですね。 奇妙な写真が撮れてしまった為、負の暗示にかかってしまったような所もありそうに思えました。 とても怖いお話ですね。貴重な心霊写真ぜひ拝見したいです。 |
名前: じゅりんだ ¦ 16:59, Saturday, Mar 08, 2008 ×
「カシャッ!カシャッ!カシャッ!」は、いらないかと。 また、「それは小指の第二関節ほどの大きさしかなく」とありますが、その前段までは写真の中で段々とモヤが大きくなってきていると思って読んでいたので、ここで戸惑いました。
以上のような点を除けば、ほぼ臨場感のある薄気味悪い怪談に仕上がっていると思います。 希少度 2 文章 0
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名前: じぇいむ ¦ 23:11, Saturday, Mar 08, 2008 ×
| 唯一はっきり見えたネクタイが、その「みのむし」なのでしょうか。その絵ヅラを想像すると非常に怖い。斜め後ろ上にその男が憑いているのでしょうね。 |
名前: ひ ¦ 15:00, Sunday, Mar 09, 2008 ×
ネタ+2 文章+1 臭いはやっぱり腐敗集なんでしょうね。首が長い霊、そしてみのむし。ということはやっぱり、吊ったんだろうなぁ。 そしてネガ。恐らく上村さんの下に戻ったんだろうなぁ。
さらに続きそうな気がします。でも、なんで上村さんなんでしょうね。 |
名前: ねこ ¦ 01:34, Tuesday, Mar 11, 2008 ×
処分しても戻ってくる話って怖いです。苦手かも。 +1 撮った垣見さんではなく、カメラの持ち主である上村さんに執着しているところが不条理でこれまた怖い。 +2
読みやすかったです。描写も丁寧で気味悪さが伝わってきました。 知り合いでない上村さんにも、「さん」付けてあげてください…。ちぐはぐで気になりました。 ±0 |
名前: 眠 ¦ 00:08, Sunday, Mar 16, 2008 ×
心霊写真が撮れたことから始まる一連の現象は、不思議ですね。 戻ってくるネガや事故との因果関係もいいと思います。 ただ個人的に「みのむし」という表現にピンとこないものがありました。 ネクタイが揺れていたのであれば、そのまま「ネクタイ」で充分怖いと思ってしまいました。
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名前: へみ ¦ 20:46, Sunday, Mar 16, 2008 ×
文章・・・0 希少度・・・0
やはり心霊写真に重点が置かれる話は難しい。 それが撮られた状況も詳細に書かれていますが、そこで起こったことが異臭だけだと読み物としては弱いと言わざるを得ません。
ただ最後にネガを紛失してしまうところに対して1点を加算します。 これって私の経験上、心霊写真に関してはよくあることなので、ああやっぱりそうよねということで。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 13:50, Tuesday, Mar 25, 2008 ×
この作品を序章としてなら 受け入れられるが、本編と考えると 難しい。 まあ多分長いお付き合いに なるパターンだと思いますが。 |
名前: 茶毛 ¦ 01:34, Wednesday, Apr 02, 2008 ×
全体的に間延びしているような印象を受ける文章だったが、禍々しさは十分に伝わってくる。 写真に収められた異形の存在のインパクトに比べ、視界の端に映りこむ黒い影のそれが薄かったように思う。 |
名前: 磯昆布 ¦ 01:58, Sunday, Apr 06, 2008 ×
怖い話ではあるとは思いますが、ちょっと文章が読み難く思えました。 後半、もうちょっとコンパクトにまとめられるかなーとは思います。 心霊写真のくだりはすごく引き込まれ、面白かったです。
文章:0 内容:2
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名前: PM ¦ 22:18, Tuesday, Apr 08, 2008 ×
もう少しコンパクトにまとめた方が読みやすかったかと思います。 「みのむし」という作品名が妥当だったかどうか というのが若干疑問です |
名前: SPダイスケ ¦ 22:34, Friday, Apr 11, 2008 ×
恐怖+1 稀少性+1 写真の怪異ですが、緊迫感に欠けるというか。 じりじりと近付いてくる怖さがあるのに、妙に怪異が薄く感じてしまいます。 するりと読ませる上手さはありますが、坦々としていて物足りないかと。
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名前: 有線 ¦ 03:16, Wednesday, Apr 16, 2008 ×
タイトルで怪異の内容はわかりました。 怖くて厭な話なのですが、文章が散漫としていて、せっかくの怪異が薄まってしまった感があります。 |
名前: MM88 ¦ 11:43, Wednesday, Apr 16, 2008 ×
写真を撮ったことにより関わりができてしまったのでしょう。。多分、ネガをきちんと処分しない限り付き纏われることになると思います。首吊りを暗示するみのむし等、正統派実話怪談の要素を満たした作品だと思います。
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名前: 久遠 平太郎 ¦ 22:55, Saturday, Apr 19, 2008 ×
ネガがなくなってしまったのにそれが見えてしまった今、どうすればいいか迷いますよね。 お払いをしてもらっても、またいつかどこからかネガが出てきそうで怖い。 写真の描写とみのむしの単語に怖気が走りました。 |
名前: こうたろう ¦ 21:27, Wednesday, Apr 23, 2008 ×
しつこい霊ですね。 ネガはやっぱり上村さんのところに戻ったんでしょうか。 |
名前: 昼間寝子 ¦ 00:12, Monday, Apr 28, 2008 ×
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