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東京生まれ東京育ちの私にも田舎がある。
両親の生まれ故郷である場所。電車で2時間半ほどの近場なのだが。
幼い頃に田舎に行ったときの話。

毎年訪れる本来の目的はお盆のお墓参り。
しかし小学生だった私は、それよりも昆虫採集に夢中だった。
もちろん狙いはカブトムシ。
カブトムシは主に活動は夜なのだが、下見が大事。
毎年訪れているので、よく捕れる樹には目星がついており、確認に向かった。

そこは人家がある所から少し離れた場所で、森の中というほどでもない。
1年ぶりの採集。期待に胸を膨らませながら歩を進め、件の樹が見えてきた。
するとそこには昼間にもかかわらず、立派なカブトムシが1匹いた。
嬉しかったが、問題があった。
となりに大きなスズメバチがいたのだ。
昆虫が好きだった私は、スズメバチに刺されると死ぬ可能性すらあるということを知っていた。
どうにかしてスズメバチを追い払おうと、落ちていた木の枝でその近くを突いてみた。
するとスズメバチは飛び上がり、こちらに向かってきた。
と言っても瞬間の出来事であり、実際にスズメバチが私を襲おうとしたのかどうかは解からない。
しかし、刺されると思った私は逃げた。
あらん限りの力を振り絞り、夢中で走った。
逃げている途中で一度、少し左に曲がった記憶がある。
もう大丈夫だろうと歩みを止めると、そこは見慣れぬ場所だった。
いくら夢中で逃げたとはいえ、何百メートルも走ったわけではない。
実際に走った距離は百メートル足らずだったと思う。
しかし、今までに見たことのない風景が目に入ってきた。

眼前には茅葺屋根の家があった。
馬小屋みたいなものが併設されている昔風の家だった。
しかし、馬や牛の気配も、人の気配もまったくなかった。
「こんな家ここにあったかな・・・。」と思ったが深く考えず、逃げて来た道を戻った。
しかし先ほどの樹が見当たらない。ばかりか帰り道がまったく解からない。
しばらく歩いてみたが、状況は変わらなかった。
昼間の出来事というのもあっただろうが、不思議と恐怖は感じなかった。
だがどうしていいのか解からない。
途方に暮れていると、少し先に今までに見たこともないような大きな樹が1本あることに気付いた。
引き寄せられるように歩みを進め、その下で立ち止まった。
見上げると、一匹の大きな梟がこちらを見つめていた。
大きな目。鋭い眼光。しかし厳しさの中にも少し温か味があるような、そんな目で私を見下ろしていた。
なぜか私は梟に向かって話し掛けていた。
「帰り道がわからなくなりました。」
すると頭の中に声が響いた。
「ここはおまえの来る所じゃない。」
「ごめんなさい。」
「帰してやるから目を瞑りなさい。」
私はひしと瞼を閉じた。
「・・・ざわざわ」
頭上に広がる枝葉がざわついた気がした。
「ざわざわざわざわ」
初めは少しだったざわつきが、次第に大きなものへと変わっていく。
「ぱきーーーーん!!!」
脳に刺さるような大音量が響いて、空気が変わった。

驚いて目を開けると、周りの風景が赤味を帯びていた。
それが夕暮れによるものだとすぐに気付いた。
少し先に、カブトムシがいた樹が見えた。
カブトムシはすでにいなかった。

とぼとぼ歩いておじさんの家まで帰ると、父親に大目玉をくらった。
私にとって1時間足らずの時間に感じたそれは、実際には5時間が過ぎていた。
言い訳せずに謝った。迷った事や梟の話はしなかった。
それを言わないことが梟との約束だったように、そのときは感じていた。




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■講評

文章 2
引き込まれる。
稀少度 1
パラレル物かな。なかなか興味深い。

話の展開もスズメバチに追われて、と自然に展開しているし、読むのにもつっかえない。
梟は森の主だったのかも知れませんね。

名前: くりちゃん ¦ 08:56, Saturday, Mar 01, 2008 ×


冒頭3行あたりの大人っぽい語りが、読み進めていくうちに段々と文体が幼くなっています。
終わり頃の文章の「とぼとぼ歩いておじさんの家まで帰ると、父親に大目玉をくらった。」などにそれが出ていますが、その少し前に出てくる
「ざわざわざわざわ」「ぱきーーーーん!!!」という幼稚な表現が、それまでの真面目な雰囲気を一気に壊しています。
内容自体も別世界に迷い込んだ辺りから子供向けのお話と化しているので、せめて書き出しの文体と雰囲気を最後まで維持できたら胡散臭さも伴わず、楽しめたかと思います。

また、
「すると頭の中に声が響いた。」
にしても、もう少し不思議がってもいいはずですし、そう思わなかったのであってもこの声の感じが男性だったか女性だったか、若い声か年老いた声か、頭の中に響く感じなど、それらを言葉で再現するだけで作品が与える印象が現実味を帯びてくると思います。

事象については、無事に帰れて良かったと思います。

文章−1:希少度+1

名前: chidori ¦ 11:36, Saturday, Mar 01, 2008 ×


知らない場所にでた、時間がずいぶんと経過していた、という話はよくきく。
梟は体験者を助けてくれたような気がする。
「・・・頭の中に声が響いた。」
どんな声でどんな風に聞こえたのか、そこを詳しく描写してくれた方がより現実味を帯びたとおもう。

名前: 黒ムク ¦ 12:05, Saturday, Mar 01, 2008 ×


 まるで童話のような話です。
 文章は巧みでリアルですが、なぜか途中で稚拙になるのはなぜ?作者の狙いか???
 さすがに夢だったのか怪異だったのか意見が分かれると思います。
 趣味の領域とも思うのですが、うーむ、時間が過ぎていただけでは・・・。
 一点減点します。
 

名前: くすだまん ¦ 13:08, Saturday, Mar 01, 2008 ×


道に迷って知らない場所に出た。帰ってきたら思ったより時間が経過していた。というのはよく聞く話。助けてくれたのが梟である、という点だけはちょっと新しいか。

名前: ナルミ ¦ 18:59, Saturday, Mar 01, 2008 ×


文:0  怪:0

物語調の文章がなんとなく滑る。

名前: 晴 ¦ 21:39, Saturday, Mar 01, 2008 ×


迷い家かと思いましたが、人気も家畜もいないのですか。いったいどんな世界に滑り込んだのか。梟に助けられるというのは珍しい。

名前: ひ ¦ 22:00, Saturday, Mar 01, 2008 ×


冒頭の三行は不要。
なくても意味は通じる。
所々もう少し簡潔にまとめても良いのではないか。

希少性(0) 文章(0)

名前: ねこや堂 ¦ 00:00, Monday, Mar 03, 2008 ×


幼い頃の不思議な体験ですね。きっと知らない間に異界に迷い込んだのでしょうか?
梟一体何者だったのでしょうか。子供に語り聞かせたいような良いお話ですね。

名前: じゅりんだ ¦ 16:05, Monday, Mar 03, 2008 ×


スズメバチに追われた後、風景が変わるところまでは良かった。
梟もいい感じなのだが、その後「ざわざわざわ」と擬音で処理してしまったので、重厚な感じが削がれてしまってガッカリした。
希少度 1 文章 −1

名前: じぇいむ ¦ 04:02, Tuesday, Mar 04, 2008 ×


梟は別名「森の賢者」と言われていますね。
助けてもらえて良かったです。
お盆の時期だったことから、先祖の誰かの仮の姿だったのかもしれません。
無邪気に遊び回ったのんきな子供時代に、たまに戻りたくなります。

名前: へみ ¦ 07:00, Wednesday, Mar 05, 2008 ×


ネタ+1 文章+1
アイヌには梟の神様がいらっしゃるそうです。なんとなく思い出しました。
色は普通の茶色だったのか、それともアルビノだったのか気になります。
最後に沈黙を守ったのはいいことだったと思いますが、ここに投稿しちゃ台無しでは(^^;
やさしそうな梟神様のようなので、大目に見てくれるとは思います(^^;;;

名前: ねこ ¦ 23:01, Monday, Mar 10, 2008 ×


大好きなんですよ〜猛禽類。
途中まではどこかで聞いたようなお話でしたが、梟と会話!?と一気に興奮。こんな素敵な梟に会ってみたいです。 +2

「ざわざわざわざわ」
「ぱきーーーーん!!!」
でヘナヘナと脱力。緊張感漂う場面だったので、この音をうまく表現してほしかったです。 -1

名前: 眠 ¦ 19:08, Tuesday, Mar 11, 2008 ×


文章・・・0
希少度・・・1

そういう世界に迷い込めたなんて羨ましい。
しかも梟と話せたなんてますます羨ましい。

冒頭など特にそうですが、文章に無駄な部分があり、そこを省いて藁葺屋根の小屋やその周辺の描写をもっとしっかり書けば、更に良い作品になったでしょう。
あと他の方々も指摘されている擬音表現、私も気になりました。

ただこういった話は個人的に好きなので、1点加算します。

名前: 鹿太郎 ¦ 02:12, Wednesday, Mar 12, 2008 ×


異界と梟、良いです。
効果音の部分で−1でした。
好きな系統の話です。

名前: 茶毛 ¦ 23:29, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


異界彷徨譚は個人的には好きではあるのだが、
怪談というよりお伽噺のテイストが強いように感じた。
終盤、状況描写を安っぽいオノマトペに頼ってしまったのはいただけない。

名前: 磯昆布 ¦ 01:52, Thursday, Apr 03, 2008 ×


なんだか幻想的ですねぇ。
貴重な体験だったと思います。
文章も割りとすっきり読めました。

文章:1 内容:1

名前: PM ¦ 21:13, Monday, Apr 07, 2008 ×


「ざわざわざわざわ」
「ぱきーーーーん!!!」 がなければ良かったかと・・・

名前: SPダイスケ ¦ 23:27, Monday, Apr 07, 2008 ×


稀少性+1
迷い家ですかね?
什器の一つでも持ちかえれば、もしかしたら……。
しかし、主的なモノがいるとは珍しい。

名前: 有線 ¦ 02:29, Friday, Apr 11, 2008 ×


面白い。
どこかに迷い込んで困っているとそこに…という話は多いが、現れたのが梟、というのは初めてである。

名前: MM88 ¦ 20:21, Tuesday, Apr 15, 2008 ×


隠れ里の入口まで行っちゃったのかな。異界の住人が梟のような外見をしていたのが珍しい。
全然関係無いですけど、私は子供の頃、田舎で妖怪ポストを捜して山に迷い込んで、異界に行きそうになりました。行けませんでしたが(笑

名前: 久遠 平太郎 ¦ 22:22, Thursday, Apr 17, 2008 ×


怪異:1.5
子供はそーいう扉を開けるの得意なのかなぁ。バイストンウェルにも行けそうです。
梟との会話はちょっと面白かったです。
文章:1.5
発言と擬音(効果音)が同じかぎ括弧で括られてるのが気になりましたが、それ以外は良いです。

名前: brother ¦ 09:20, Tuesday, Apr 22, 2008 ×


 「ざわざわ」「ぱきーーーーん」、という表現があまりよくない気がします。
 体験自体はとてもいいのに、残念です。

名前: こうたろう ¦ 18:07, Tuesday, Apr 22, 2008 ×


不思議な良いお話ですね。
梟超かっこいい。私も話してみたいです。
5時間も経っていたっていうのもすごいですね。
いい意味でファンタジーな感じで。
文章はさらっと読めましたよ。

名前: 昼間寝子 ¦ 05:13, Sunday, Apr 27, 2008 ×



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