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泥人形
子供の頃の話です。

僕は熱を出すと、必ず同じ夢を見ました。


どこまでも続く砂浜を僕は一人歩いています。風が少し吹いていて、海が荒れている。
空はねずみ色で、今にも嵐がきそうです。

しばらく歩くと風に乗って誰かが僕を呼ぶ声が聞こえてきます。
僕はその声のする方向へ自然と足が向きます。

声の先には水分をたっぷりと含んだ泥で作られた大きな人形が寝そべっていました。
大きさは僕がちょうど横になったくらいと同じくらい。150cmくらいでしょうか。
丸い頭、円柱を半分に割ったような胴と手足。頭の中央には鼻と思われる突起までも作ってありました。

誰がこれを作ったんだろう? 僕は考えますが答えが出るわけありません。

気が付くと、波の先端が人形に届きそうなほど潮が満ちていました。
僕はどういうわけか、海水にこの人形を浸けちゃいけない、と思います。
人形を移動させようにも崩れてしまいそうでどうすることもできません。

そうこうしている内に波が人形に届いてしまいます。

するとどこからともなく獣臭がただよってきました。
熱気で蒸しかえった檻の中にいるような、鼻をつねり上げるような刺激臭です。

突然、人形の表面がざわざわと動き出しました。
無数の蟻が全体を覆ってうごめいているように見えました。

臭いはさらに強烈になり、そこにいるのさえも苦痛ですが、僕は人形の動きを見続けます。

いつの間にか人形の頭にある突起が人間の鼻になっていました。
その鼻がヒクヒクと動くのです。

あっけに取られていると、人形がムクリと起き上がりました。
ズルズルっと泥が滑り落ちていきます。

その中から全裸の外人とも日本人ともつかない女性が現れました。

僕はこの女性が誰だかも分からりません。

女性は僕を見ると、口の両端が耳に届くのではないかと思うくらいニヤリと笑います。
手を伸ばし、上半身を僕によせようとしてくる。

僕は怖くて怖くてその場から動けません。

女性は僕の頭に手を置くと、女性の顔が見えなくなるほど口を大きく開けます。
口の奥は真っ暗で、深い井戸の底のように思えて僕は絶叫するのです。


僕はこんな夢を熱に苦しみながら見ていたのです。
母親に、泥人形の女の人が来る、と言って寝ようとしませんでした。
母親は子供のたわ言だと聞いてくれませんでした。

しかし、中学上がったくらいからぱたりと見なくなったのです。
いつしかそんな夢を見ていたことを僕は忘れていました。

僕が大学生になった時です。

学校帰り、某地下鉄を利用していました。
その日は天気が悪く、湿気も多く、ジメジメとしてどこにいても不快でした。
いつもの電車に乗り、入り口のドアのところによりかかるように立っていました。

地下鉄なので窓の外に何があるわけでありませんが、じっと見ていると、なぜかすぐに眠くなってきました。
しかし立ちながら寝れるほど僕は器用ではなく、なんとか起きていようと耐えていました。

その時ふと気づくことがありました。

窓に社内の様子が反射しています。シートの一番端の前でつり革をつかんで立っている人がいました。
その人の前の席が空いているようです。

なんであの人は座らないんだろう、と僕は思いました。
しかしよく見ると、シートに何かが置いてありました。なんだろう? 僕は窓越しに見ました。

前の人が邪魔でよく確認できなかったのですが、その人が移動した時に、そこにあの夢で見た泥人形が座っていたのです。

え?!

僕は思わず目を伏せました。
忘れていた記憶が一気によみがえってきました。

なんで? 今は熱もないし、夢の中でもないのに!

そのときです。
あの獣臭が漂よってきました。ハッとして目を開けると、窓越しにあの夢の女性が僕をじっと見つめているのが見えたのです。


気が付くと、僕はシートに座っていました。
どうやら寝ていたようです。全身が汗でびっしょりでした。

夢だったのか・・・・・・。

僕は目的の駅に着くと降りました。

改札まで歩く途中、隣には僕と一緒に降りたカップルがいました。
彼らの会話が自然と耳に入ってきました。

途中さ、すごく獣臭がしなかった??
うん、した。
周りの人たちもキョロキョロして臭いの原因を探してたな。
ね、なんだったんだろう、あの臭い・・・・・・

僕は足が止まりました。あれが夢の中だったのか、現実だったのか分からなく、恐怖で体が震えました。

またいつあの女性が僕の前に現れるか、そう思うと寝るのが怖くなります。
あの女性が何者なのか、なんで泥人形なのか、今でも僕には分かりません。





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■講評

夢の泥人形の大きさについて、
「大きさは僕がちょうど横になったくらいと同じくらい。150cmくらいでしょうか。」
いつの僕と同じなのでしょうか。
「母親に、泥人形の女の人が来る、と言って寝ようとしませんでした。」頃ではちょっと合わない気がするのですが、かといって大学生の頃とも書かれていないので・・・。

それから、大学生になってからの、
「彼らの会話が自然と耳に入ってきました。
途中さ、すごく獣臭がしなかった??」
会話文にしては日常的な話し言葉として無理がありますね。

申し訳ないですが、書き方がこなれてないせいで、胡散臭く見えてしまいました。
これらを除いても全体的に「お話」めいた語りが真実みを無くしていて、語りを差し引いて中身を読んでも、電車内の獣臭さで夢の記憶が呼び起こされた風にしか読めませんでした。

そうなると結局怪異の原因は「電車内で獣臭かった」だけになると思います。

夢の話は現実に相当反映されるような事がなければ、どんなすごい夢を書いても話として成立させるのは難しいのではないでしょうか。この話であれば、電車を降りた後で「獣臭かった」以外にもう1つくらい夢の続きを引きずるような何かがあれば、怖い話になっていたかもしれません。

文章−1:希少度−1

名前: chidori ¦ 08:29, Friday, Feb 29, 2008 ×


文章 0
丁寧に書けてはいるのだが、すんなり読めない。
稀少度 1
泥女の描写は気持ちが悪い。

語り口が素人投稿作品のようでリアルさを感じない。そういう怖い体験があったのだなというのは信じますが。

名前: くりちゃん ¦ 08:33, Friday, Feb 29, 2008 ×


絵本のような文章が読みにくいのと、怖さを実感しにくくしている気がする。
全裸の外人とも日本人ともつかない女性って表現はなんかおかしく感じた。
夢の話から現実へ通じた感じが弱いのではないでしょうか。

名前: 黒ムク ¦ 09:07, Friday, Feb 29, 2008 ×


文章1
内容1

オチは良かったです。前半がちょっと小難しく書きすぎな気がします。

名前: 新田 猫 ¦ 10:05, Friday, Feb 29, 2008 ×


文:+1 怖:+1

ただの夢の話に終始するのかと思いきや。
ラストは良かったです。
文章もそんなに読みにくいとは私は感じませんが、
もう少しこなれればもっと良くなるのでは。

名前: 晴 ¦ 12:01, Friday, Feb 29, 2008 ×


大学生の設定で中学生のようなこの一人称の文章はきっついです。怪異としては興味深くはあるのですが。

名前: ひ ¦ 13:18, Friday, Feb 29, 2008 ×


地下鉄車内での、どこまでが現実でどこまでが夢か分からないといったことが怪異といえば怪異ですが、この書き方だとナルコレプシーで白昼夢を見た人の手記みたいで、どうも入り込めませんでした。
怖いのは怖いんですが。

名前: じぇいむ ¦ 14:13, Friday, Feb 29, 2008 ×


内容の割に長すぎる。
夢の内容を除けば、怪異と呼べるのは「カップルが『獣臭がした』と話していた」ところだけである。これすらも、他の乗客がペットをキャリーバッグなどに入れて持ち込んでいたため、と考えれば、電車の中で寝ているときに獣臭が漂ってきたため久しぶりに泥人形の夢を見た、と説明がついてしまい、怪異でも何でもなくなる。

名前: ナルミ ¦ 21:14, Friday, Feb 29, 2008 ×


惜しい感じがします。
夢の中の描写は詳しく面白いのですが、やはり夢ですからねぇ・・・。
さらに・・・の展開があればと思ってしまいました。

名前: へみ ¦ 00:38, Saturday, Mar 01, 2008 ×


 中学上がったくらい・・・。の部分、中学に上がった・・・。が正しいので一点減点します。
 泥人形が謎の女性になる描写は気持ち悪くてなかなかの文才を感じますが、効果を盛り上げる箇所でもないのに文章を開けるテクニックが連発するのが気になります。確かに読みやすくはなりますが、文章がイタズラに間延びしている印象があります。
 たぶんポツリ、ポツリと体験者が、口を開いているさまを描きたいんでしょうが、携帯の長文を読んでいるような気分にさせてしまい。せっかくの文才が生かされていません。
 ですが、あくまで趣味の問題ですので減点の対象にはしませんでした。
 夢魔の不気味さが、よく表現された内容です。欲を言えば怪異と体験者の因果関係が判明、又は推測が欲しいと思いますが、これも趣味の問題なので減点にはしません。


 

名前: くすだまん ¦ 11:51, Saturday, Mar 01, 2008 ×


文体に多少難はあるが、読み物としては面白い。
だが実話怪談としては必要な裏付けがないように思う。

希少性(0) 文章(0)

名前: ねこや堂 ¦ 21:58, Sunday, Mar 02, 2008 ×


夢の中の描写は呪いの詩を読んでいるような、独特の世界観を感じられました。
特に人形に異変が起こる部分は、本当に気持ち悪さを感じて良かったです。
夢の中の方がインパクトが大きいので、残念ながら電車のエピソードが弱く感じられてしましました。
これからもしかして本当に現実に、泥人形がもっと凄い形で現れたら今度こそ凄い大ネタに化けそうな気がしますので、次の怪異を期待しております。



名前: じゅりんだ ¦ 15:10, Monday, Mar 03, 2008 ×


文章-1
まず「分からりません」「社内」等の誤字が目立ちました。
また、文章が長く中だるみが目立ちます。
小説ではこの文体はありだと思います(朱川湊人さんの「白い部屋で月の歌を」に近い感じがします)が、実話怪談を語るには不向き、ないしは相当練る必要があると思います。

怪異についてですが、夢のみで完結していて、獣臭のみが事実としてあり、これはもしかしたら、獣臭から幼少期の夢が想起され、再び同じ夢を見た、という可能性のほうが高いのではないかと思いました。

名前: ねこ ¦ 21:48, Monday, Mar 10, 2008 ×


ほとんどが夢だけれど、読みごたえのある文章でした。いかにも体験談の投稿という雰囲気がかえっていい味を出してて。 +1

>途中さ、すごく獣臭がしなかった??
獣臭って言うかな?「獣くさい」とか言うんじゃないかな、と。
そう言ったのだから仕方ないですが、唯一のリアルな部分なのでそこでひっかかってしまったのが残念。 -1

名前: 眠 ¦ 23:08, Monday, Mar 10, 2008 ×


文章・・・0

丁寧に書かれているお陰で夢の部分は不気味な印象を受けます。
しかし全体としては、長さのわりに内容がないようにも感じられました。
また、細かい部分で引っかかる言い回しがあり、そういった部分からこの点数にしました。

希少度・・・-1

私は目に見えて怪異が起こらなくとも怪談は成立すると思っています。
しかしそれが夢だけだと怪談と呼ぶには厳しいとも思います。
この作品の場合、薄気味悪い印象を与えているのは夢の中の出来事だけで、現実に起こったことと言えばカップルの臭いに関する会話のみです。
夢と現実が完全に符号すれば確かに怪異とも言えますが、それが臭いだけだと弱い。
怖い夢なら誰でも見ます。同じ夢を何度も見ることもあります。
それを綴っただけの文章は怪談とは呼べないと判断します。

名前: 鹿太郎 ¦ 01:12, Wednesday, Mar 12, 2008 ×


夢で始まると辛い部分が結構ある。
文章も長い割に読ませる力も無く
苦痛だった。

名前: 茶毛 ¦ 14:51, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


長い割りに文章はさくさく読めました。
不気味な夢ですね…。
何か因果があるのでしょうか…?
ただ、今ひとつ、物足りない感も否めません。

文章:1 内容:0

名前: PM ¦ 22:12, Sunday, Apr 06, 2008 ×


最後の方は面白かったのですが 前半部分をもう少し短くしてもよかったかと思います。
内容の割には文章が長いかと・・・

名前: SPダイスケ ¦ 22:58, Monday, Apr 07, 2008 ×


好み+1
夢ネタは、余程現実世界とのリンクがなければ信憑性が薄くなってしまいます。
要は悪夢の女性が此方側に来たらしい、ということなのでインパクトに欠けるかと。

名前: 有線 ¦ 01:38, Friday, Apr 11, 2008 ×


冒頭部分はわりと引き込まれる内容だったのだが、
"分からりません"
でカクンとなった。
うーん、自分も気をつけよう。
電車の中での部分は話が長いだけで、よくわからなかった。
体験者にすれば厭な体験だろうが、
"ただの夢だったんじゃ"
と言われればそれまでの様な。
怪異だとすれば、泥人形とその中の女性と体験者の因果は興味深く思える。


名前: MM88 ¦ 11:44, Monday, Apr 14, 2008 ×


怪異:1
物理的被害も厭ですが第三者に知覚できる怪異ってのは怖いですね。
一体なんの因果があってそうなるのか興味がありますが、何かがあっても困りますよねぇ。
文章:-1
さて、これはどうでしょう。
長すぎる気もするし、短くしたら説明不足になりそうだし。
夢の話を前提にしないと地下鉄の話が片手落ち、個々に分けても良いことはなさそうです。
ちょっと無責任に言わせてもらうと、もう少し恐ろしい目に遭っていれば長編として組めるレベルの恐怖譚になったかもしれません。
プレーンテキストで1900文字くらい、1ページギッチリ詰めて650文字くらいだから300〜350文字と仮定して6〜8枚ですか。
むぅ。

名前: brother ¦ 15:30, Thursday, Apr 17, 2008 ×


夢の怪談というのは難しいですね。
霊的なものなのか、無意識の内にあるものを象徴的に見せるものなのか、他人にはなかなか分かり辛いところがあるので。
この話も第三者であるカップルが獣臭を嗅いでいるので、かろうじて霊的なものなのかな、とは思いますが。

名前: 久遠 平太郎 ¦ 21:10, Thursday, Apr 17, 2008 ×


 このような文章は好きではないのですが、この話自体には引き込まれます。
 今後、何もないことを祈っています。

名前: こうたろう ¦ 22:14, Monday, Apr 21, 2008 ×


うーん、難しいですね。
怪異ならかなり怖い話なんですが、獣臭い電車内で記憶を呼び起されたともとれてしまう。

名前: 昼間寝子 ¦ 04:02, Sunday, Apr 27, 2008 ×


話自体に大変魅力を感じるのですが、小説臭い(創作という意味ではありません)言い回しと、まだプロローグとしか言いようの無い中途半端さがマイナス要素となりました。
事実を前提として、このお話は、今が旬ではない可能性があります。もう少し熟しきった時点で発表した方が良かったのではないかと思いました。

名前: みくりや かつと ¦ 21:24, Tuesday, Apr 29, 2008 ×



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