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【コラム】怪談を仕事にすることについて、どう考えてます?
おかげさまで、超-1/2006から久田樹生氏、松村進吉氏に続き、雨宮淳司氏も実話怪談を世に送るプッシャーとしてデビューすることになりました。
昨年の超-1/2007では主催者・加藤一による「実話怪談を書くってなんぞ?」というコラムを不定期連載させていただきました。

超-1/2007 コラム
http://www.chokowa.com/mail/#8

今年はこの1年間に雨後の竹の子のように世に出たお三方に、今度は「プロになっちゃった先達」からの近況をお伺いしつつ、今の所感を聞いてみることにしました。

第一回のお題は【怪談を仕事にすることについて、どう考えてます?】というもの。
趣味で書く、書きたいときにだけ書くというのと仕事として書くということ、どこに違いがあると受け取っているか、三者三様のコラムをお楽しみ下さい。何かの参考になるかもしれません。

なお、掲載順は「原稿が上がってきた順」になっています。




松村進吉

 はじめまして。あるいは、ご無沙汰しております。松村進吉です。
 ご指名を頂戴致しましたので、憚りながら一発ブチ上げさせて頂きます。

 始めに、お金の話をします。
 それと申しますのも昨年来、上梓を報告致しますたびに友人達が「印税生活か」「いくら貰ったんだ」「酒をおごれ」「風俗をおごれ」などと、間髪入れずゼニの話をするのであります。これも不況の所為でしょうか、マッタク世知辛い世の中になったものであります。世も末であります。
 しかしながら実際に「お仕事」として実話怪談を発表させて頂き、確かに報酬を頂戴しておる訳ですから、僕はもう、お金の話をします。とにかくお金の話をさせて下さい。別にお金が大好きだからとかではありません。黒目が¥になっているのではありません。これを書かないとウソだと思うので、書きます。
 体感で申し上げます。まず、印税生活などと云うものは都市伝説であります。
 実話怪談を書くと云う「お仕事」は、精神力及び睡眠時間を極度に磨り減らす副業として位置づけられるべきものかと思います。
 そもそも、素材の仕入れが安定しておりません。十七年もの歴史を誇る本シリーズにおきましても、狙い通りの獲物を釣り上げる漁法は未だ、確立されておりません。こんなに不確定要素の多い仕事はありません。端的に申しまして、バクチであります。
 金銭面での過度の期待、及び楽観的将来設計は、くれぐれも禁物かと存じます。

 次に、モラルの話をします。
 我々は、人様の不幸を活き活きと、活写すればするほどに読者の皆様から賞賛を賜る「お仕事」をしております。既にこの時点で、我々にモラルを語る資格はございません。以上であります。

 最後に、綺麗事の話をします。
 お預かりした体験談は、全て等価であると云うのが、僕の持論です。
 それらの中から商業的にフックがあると判断したエピソードを、精魂込めて作品化させて頂いております。
 しかしその、背後で。
 作品化されないお話、素材棚に積み上げられていく体験談と云うものも生まれます。
 選別がある以上、選ばれなかった怪異というものがまた、確実にある訳です。
 夢を見た。金縛りにあった。影を見た。影を見た。
 声を聞いた。名前を呼ばれた。影を見た。影、影、影、影。
 ひとつひとつは、小さな事件。しかしそれが何十、何百と手元に溜まる。
 一日取材をするごとに、一本作品を書き上げるたびに、それは増えていきます。 
 毎日毎日、指数的に増加していきます。
 まるで、強欲な錬金術師が練成し損ね打ち捨てた、卑金属のように。
 まるで、己の失したモラルを計る、分銅のように。
 きっとその重みに耐え切れなくなった時が、この「お仕事」の、潮時なのでしょう。
 どう云い繕ってみても、僕は原稿を売りました。蒐集した怪異を、自らの経済活動に運用しました。これで何の業も背負わずに済ませられるとは、到底思えません。

 僕は、怪異を売りました。

 ご精読ありがとうございました。それでは、また。





雨宮淳司

 雨宮イアンです。
 怪談を仕事にすることについてですね。
 最近、怪談というものは、集めようとするとかえって集まらないというとっても厭な性質を持っている物だと思えてきました。
 ただ、それでもまるで時期を選んだようにぽつりぽつり巡り会うというのには、縁というのか因縁というのか、何か隠れた流れみたいなものがあるのではないかと。
 まるであっち側に話を開帳する選択権があるような、そんな印象さえ憶えます。
 たぶん他の方の所も同じだと思いますが、その怪談を書いているときとかのとんでもないタイミングで不幸事や怪我などがあると、やはり緊張しますし、とってもイアンな気持ちになります(^_^;)
 まあ、直接の祟りとかではないにしても、何か影響しているのではないかと、やっぱり思っちゃうわけですね。
 それでもまあ、結局重大事とまでは至らずにいます。
 そんな妙なことがいろいろあっても、嗜癖というのか物好きなのか、現状怪談を原稿に直していく作業はやっぱり面白いです。
 その理由は自分でもよく分かりません。
 「超‐1/2006」以来、ずっとこの妙な気分というのが続いていて、なんとか原稿も溜まってきたわけですが、やはりこれにも何か隠れた流れみたいなものを感じます。
 怪談を仕事にするということは、この何だかよく分からない細い流れの上を、うまく乗っかっていかなければならないんじゃないか、などと考えます。
 恐らく、踏み外すと怪談の方からお呼びが懸からなくなるし、それ以前に自分でもよく分からない理由で怪談を書かなくなってしまうような……。
 踏み外すというのも、どういうことなのかは分からないんですが、そんな感じです。
 多分、面白半分に心霊スポットに行って痛い目を見るのと同じように、畏敬の念を忘れてはいけないということも含まれているのだとは思っています。
 怪談を書いていると何というのか鉛毒みたいな遅効性の毒に冒されているような疲れを憶えることがあります。
 私はスタート年齢が遅いので平均寿命まではもつと思いますが、他のお二人は……とそっと目頭を押さえております。




久田樹生

 どうもー皆様お久しぶりです。久田樹生でー、ございます。
 皆様お風邪などお召しになっていませんか?
 今回「コラムを書きなさいよ。テーマ出すから」という話を加藤氏からいただきまして。あたしにゃ役に立つようなこと書けませんよ、参考になるのは絶対松村氏と雨宮氏のコラムのほうですよ、と儚い抵抗をしたのですが。
 緑の魔神は首を縦に振らなかったばかりか、鬼の形相。
「みっくみくにしてやんよ!」ハートマン軍曹ばりに厳しいお人です。

 今回のテーマは【怪談を仕事にすることについて、どう考えてます?】でした。
 仕事にはなりましたが、実は、自分の中で変わったことってほんの少しなんです。
【原稿を書くことは仕事である】と自覚したこと。
 他は以前と殆ど変わっていません。
 だいたい「仕事だ!」なんて気負って出かけることもありませんし。
 楽しく雑談とか食事とかお酒を飲むとかそんな感じで。
 やはり実話怪談を集める/書く上で「欲をかく」のはいけないようです。
 怪談を書くというのは、言わば【負】を聞き集めて世に出すという【忌み仕事】。
 自分のために書くことはよろしくないのかも知れません。
 体験談を預けて下さった皆様と、読者の皆様と、出版して下さる版元が存在するからこそ、実話怪談は書けるわけですから。
 どれかひとつが欠けても、絶対に出来ない仕事ですからねー。
 感謝の気持ちを忘れずに、これからも責任を持って前に進みたいものです。
 もし「久田に預けてもいいよ」って話がありましたら、雑談ついでにお聞かせ下さい。

 そうそう。体験談が表に出ることはある意味、昇華/決着になります。
 怪談を仕事にすることは、そのほんの僅かな手助けをさせていただく、ということなのかも知れません。
 だから、怪異が集まる限り、ずっと続けていきたいと思います。
(許される限り)ずっと「超」怖い話、します!




by 超-1実行委員会 ¦ 14:00, Monday, Feb 25, 2008 ¦ 固定リンク ¦ 携帯

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