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文才の無い私がこの話を書くには訳があります。
連絡が取れなくなってしまった、彼女を知る人がここを見てくれる事を祈って。

元々明るい社交家の彼女がふと真剣な様子で
「ウチに来てみてくれない?」
と言ったのがきっかけでした。
嫁ぎ先の、夫婦の寝室がある部屋の廊下から、人の気配がする気がする、と。
行って見るとなるほど旦那さんのお父さんは一代で財を成した人物らしいと言うだけある、大きな旧家に多い立派な造りの家。
南向きに建っているのに、建物内がしん、と暗いのが妙に居心地の悪い…。
彼女にあんな話を聞いた先入観もあるだろうと、出来るだけ明るくお邪魔しますと中へあがりました。
「寝室の廊下から、人の気配が絶えずしてる気がして。」
夫婦しか使っていない、と言う十畳程の部屋が二つ、真ん中の障子を取り払って続きにしてある。手前のリビングは明るく、居心地も良さそうだが、その奥、寝室が暗い。
手前の部屋の明るさが異様な程。
寝室へ入ると奥に廊下がある。その奥にもう一部屋あるのだそうで、開けて見せてくれたがさらに暗い。北に一つ大きな窓があるのだが、カーテンも掛かっておらず、他には箪笥が五〜六本あるだけの息苦しくなる様な部屋でした。
寝室の廊下に面した障子は木で出来ており真ん中が開閉する格子が付いていて、私は初めて見る珍しいもの。
その障子の側に立つ様に彼女に言われしばらく二人とも黙り込む。
はぁ、はぁ。
当然だが、私と彼女の息づかいが聞こえる。
どう?と言うように私を見た彼女に首を振って見せようと笑いかけた時。
ぎしっ、はぁぁ、…。
室内からではなく、明らかに障子の向こうで音が、した。
あの時、どうしてそう言ってしまったのか。
彼女を怖がらせたくなくて?それとも私自身が恐怖で言えなかったのでしょうか?
笑顔に作った顔をそのままに
「何も聞こえないけど?」
と言ってしまったのです。
「そう、…そうか。」
腑に落ちない顔をしたものの、彼女も笑顔を作って顔を上げました。
どうやって、彼女の家を後にしたか、覚えていません。
とにかく早くその家から出たくて、その一心で。
車に乗り込む私を、見送ってくれた彼女に、何気なく尋ねました。
「あの、たくさんの箪笥は誰の物なの?」
苦笑いで彼女はこう答えました。
「主人のお義母さんは後妻でね。亡くなられた先妻の方の箪笥を洗い直してお義母さんが使っているの。…そんな訳だから…お義母さんも自分の部屋には置きづらいみたいで。」
そう言った彼女越しに見える、あの寝室の窓の暗さが恐ろしくて逃げる様に車を走らせ、帰り道、私は半年間リハビリをする事故を起こしました。
幸い、単身事故でけがをしたのは私一人。
しかし、その間に、彼女と連絡が取れなくなってしまったのです。
どうか、彼女に心当たりのある方。
彼女にお払いに行く様に薦めて下さい。
私は、もう一度あの家に行く勇気がありません。
事故の直前、私は聞いてしまったんです。
一人しかいないはずの車中。
ぎしっ、はぁぁ…
…あの、気配と息づかいを。




12:18, Sunday, Feb 10, 2008 ¦ 固定リンク ¦ 講評(29) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(3) ¦ 携帯

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■講評

文章 2
思わず引き込まれた。
稀少度 2
姿が見えない分、向こうから観察されているような不気味さを感じた。

人少ななお屋敷、陰気な箪笥部屋、と舞台も雰囲気満点で初めから妙にぞわぞわする。箪笥の来歴を聞いた後では納得できる怪異だが、果たして前の大奥様の死因は自然死なのか、とまで考えてしまった。

ただ部屋の説明がちょっとややこしい。
純和風の邸宅なのか、洋館風なのかよく分からない。障子が云々というからには和風みたい?でもリビングといわれると洋風の板張りの床を連想するし。

「お払い」って、「祓」の字の方が感じが出ませんか?


名前: くりちゃん ¦ 14:09, Sunday, Feb 10, 2008 ×


私が思うに、おそらく相当やばい家なのかと・・・
もっと怪異を突っ込んで描写して怖さをプラスして欲しかった。
知人の無事を祈るのはわかるのですが、それが効果的かどうかは少し考える。ちょっと演出しずぎかと思うのですが。

名前: 黒ムク ¦ 15:21, Sunday, Feb 10, 2008 ×


ネタ+2 怖さ+2 文章-1
怪談としての起承転結がしっかりしていますし、「触れちゃいけない感じ」が出ています。
ただ、最初と最後の文章が小説的過ぎて、逆にうさんくささを出しています。
最初を削って、事象を発生順通りに記載し、最後を「その後、彼女との連絡が取れなくなった」とすると、嫌な余韻が残ったかもしれません。

名前: ねこ ¦ 15:41, Sunday, Feb 10, 2008 ×


最初に文才に関する前置きがありましたが、
投稿者は皆プロを目指しているわけではありませんし気になさらない方がいいのではないでしょうか。
超ー1は創作怪談のビーケーワン怪談大賞のように敷居が低いと思いますので、
「家」の投稿者さんは力を抜いて気軽に怪談文芸を楽しむつもりで投稿されてはどうでしょうか?
余計なおせっかいを長々と書いてしまいましたが、何故いらぬおせっかいをしたかというと
謙った前置きが妙にわざとらしく感じさせてしまいせっかくのいいネタを殺しているからです。
文才の前置きはいらない。
と、書くと投稿者さんは萎縮しちゃうかな?(笑)
ただ、この家は凄く禍々しいものを感じますね。
投稿者さんが友人に何も聞こえないと言ってしまった件はリアルに感じました。

名前: 撃墜王の孤独 ¦ 16:47, Sunday, Feb 10, 2008 ×


これはやばい。書き手が超−1云々よりも友達の安否を本気で心配しているところからみても、怪談としてどうかとか論じている場合なのかと思ってしまった。余計なお世話かもしれないが、書き手の方も自分で霊能者に相談してみたほうがいいんじゃないでしょうか?連絡方法も探せばもっと色々あるかもしれないし。 希少度+2 文章+1

名前: 昼間寝子 ¦ 17:12, Sunday, Feb 10, 2008 ×


文章:1 内容:1

おこった怪異自体は、(事故は大変お気の毒ですが)それほど怖くはありません。
でも、友人の安否が気になります。
そこら辺をサラッとしか書いていないところが余計に怖い。
連絡があるといいですね。

名前: %uC290先行量産型PONKEN ¦ 20:35, Sunday, Feb 10, 2008 ×


本当に彼女を救いたいと思っているなら、ここに投稿するよりももっといい方法があるのでは。冒頭とラスト近くの「語りかけ」は、かえってリアリティを削いでしまうので不要だろう。
怪異自体はかなりやばい感じがして、よかったと思う。

名前: ナルミ ¦ 23:41, Sunday, Feb 10, 2008 ×


評価が難しい作品。
描写は緻密なのだが、よく読むと部屋と障子と箪笥、廊下以外に生活臭を感じさせるものが出てこない。
部屋の大きさ、明るさと闇は分かるのだが、何だかすっからかんなCGの部屋のような印象がある。
開閉の付いた珍しい障子が詳細に描かれている割には、箪笥はかなりの重要アイテムにも関わらずさらっと書かれているので印象に残らない。

全体的に、人が住んでいるのに引っ越し直後の部屋にやってきたような、そんな感じを受けました。
書かれたご本人が部屋の説明に走るあまり、こういう文章になってしまったのでしょうか。

そんなわけで作者の方には、事後のこともあり気の毒なのですが、怪異に対しては個人的にそれほど感じることができませんでした。ゆえにこの点数にしています。

そして、ぎしっ、はぁぁ…は、具体的にどんな気配と息づかいだったのでしょうか。
それが少しでも書かれていれば違った印象を持ったかもしれません。

文章+1:希少度0

名前: chidori ¦ 23:56, Sunday, Feb 10, 2008 ×


恐怖+2
体験者が感じたのは息遣いと気配のみ。
しかしながら、生々しい厭な感じを受けました。
不謹慎ながら好みの話です。

名前: 有線 ¦ 03:05, Monday, Feb 11, 2008 ×


読み難い文章でイメージしにくいかな?

名前: アンデルセン ¦ 17:11, Monday, Feb 11, 2008 ×


彼女の安否確認に「超‐1」を利用するのは、ちょっと無理があるのではないかと。
やはり、その点にどうしても違和感を憶えてしまう。
全体として薄気味悪さは漂っており、切迫感もあるので、文才はあるんじゃないですか?
文章 1 希少度 0 薄気味悪さ 1

名前: じぇいむ ¦ 22:51, Monday, Feb 11, 2008 ×


怖い家なのだろうなというのは感じますが、その後、体験者の方が事故にあわれた事との関連性がちょっと唐突な気がしました。最初の書き出しが実験的にも思えたのですが、ああいう風にされなくても十分怖さが伝わったかなあと思いました。

名前: じゅりんだ ¦ 03:00, Tuesday, Feb 12, 2008 ×


冒頭の「私は文才がない云々」から、江戸川乱歩の告白小説のような文章ですね。これは狙いなのか素(の相談手紙文)なのか判断しかねますが、一代で財をなしたという義父、義母(後妻)、先妻、りっぱな家と沢山の箪笥など道具立ては非常に込み入って、何かありそうと感じることはできます。が、なにぶん「私」がかなりびびってしまっており取材が不足です。怪異が呼吸と気配だけでは…。

名前: ひ ¦ 13:25, Tuesday, Feb 12, 2008 ×


文:+2 怖:+2

これは、いわゆるまだ終わってない話なのでしょうか?
最初に「文才云々」と出てくるように確かに読みやすい文章ではありません。
が、それを補えるほどの緻密な描写が嫌な感じに拍車をかけます。

何かよくわかりませんが、とにかく嫌な感じ。

名前: 晴 ¦ 16:31, Tuesday, Feb 12, 2008 ×


このCGI、FireFoxだと名前が文字化けしますね。
最初に「文才がない」宣言をしたら、それを裏切るような文章を期待してしまいます。

名前: 与粋鴎歌 ¦ 09:50, Thursday, Feb 14, 2008 ×


なんかズルいなあw
事故にも遭われてますし、友人が心配で…と言われてしまうと気が引けますね。評価していいのかしら。

しかしここはあえて。「文才が無い」と真っ先に書かれているわりには、かなりしっかり書ける方のように思えます。構成まで計算されているような。違ったらごめんなさい。
内容にはあまり惹かれませんでしたが、文章に+1です。

名前: 眠 ¦ 23:38, Friday, Feb 15, 2008 ×


文章・・・0
希少度・・・1

他の方も指摘されている通り、文才云々は言わない方がいいでしょう。私の場合、話に集中できなくなりますし。
で、その文章ですが、私にはなんだか判りづらく感じました。
特に前半はそう。
でも構成は良いと思いましたので、この点数を付けさせていただきました。

早く連絡取れたらいいですね。

名前: 鹿太郎 ¦ 18:13, Saturday, Feb 16, 2008 ×


他の方々も仰っているが「文才がない」の一文は余計であったように思う。
怪異自体はかなりなものを感じるが、文章が読み辛い。
途中で改行を入れるなど工夫すればもう少し読み易いかと。
「ぎしっ、はあぁ…」の部分を改行で

ぎしっ
はあぁ…

と、離して書くだけでも読み易くなるし、臨場感も伝わり易くなるのでは。
携帯から見たら改行部分が詰まって表示されるので、わざわざ言う事ではないかも知れないが。

故に、希少性(2) 文章 (0)

名前: ねこや堂 ¦ 13:35, Monday, Feb 18, 2008 ×


う〜ん、冒頭の呼び掛けや話の締め方が少し勿体無いですね。実話怪談では筆者自身を前面に出し過ぎると読み手が共感し難くなるような気がします。(怪談としての良否ではなく)実話怪談のコンテストである超-1ではこういう書き方はあまりプラスに働かないこと多いようです。この作品も自分が体験した事ながら一歩引いて客観的に書かれたのなら違った印象になったと思います。
ネタ的には旧家、先妻の遺品、人の気配とゾクゾクする要素が満載で怖さが伝わって来ました。

名前: 久遠 平太郎 ¦ 19:15, Saturday, Feb 23, 2008 ×


怪異が弱い気がしましたが、それによりリアルさが伝わってきました。
お友達と連絡とれるといいですね。
申し訳ありませんが、私は捜索のお役には立てそうにないです。

不思議度+1

名前: へみ ¦ 06:20, Sunday, Feb 24, 2008 ×


 友人の安否がわからないということには不安を覚えましたが、初めの文章、最後の語りかけが……なんというか、あまり。

名前: こうたろう ¦ 19:51, Sunday, Feb 24, 2008 ×


 最後の読者に対する呼びかけは余計だと思います。
 文章は面白く、箪笥とか息づかいなど怖い要素が満載なのに、其処が残念でなりません。
 それで、せっかく盛り上がった恐怖が薄れてしまうのです。
 すみません、趣味というより技巧の問題に思われますので1点を引かせていただきます。

名前: くすだまん ¦ 20:05, Monday, Feb 25, 2008 ×


メタ実録怪談(?)という新ジャンルに突入した感があっていいと思いました。
まだまだ実録怪談文体にも可能性がある証です。

名前: tanaka ¦ 12:51, Friday, Feb 29, 2008 ×


最初と最後の呼びかけは 逆にリアリティを高める効果があると 私は思いました。
こういう手法も良いと思います。

名前: SPダイスケ ¦ 22:42, Wednesday, Mar 05, 2008 ×


難しい話ですね。危険な感覚は伝わりますが…。彼女の無事をお祈り致します。

名前: 茶毛 ¦ 19:27, Friday, Mar 28, 2008 ×


妙にリアルで、なんだかヤバそうな体験ですね…。
技巧なのか本気なのか…判断に迷いました。

彼女は無事なのでしょうか?
スミマセン。私の周りには思い当たる人はいません…。

内容:2

名前: PM ¦ 22:18, Monday, Mar 31, 2008 ×


怪異:0.5
怪異っぽい怪異は声だけですが、出張までするのは怖いかもしれません。
事故との因果関係は不明ですけど、家の前まで行くくらいならご自分でも出来ると思いますよ。
文章:-2
主観の語りはともかく、感情が入りすぎて読み辛いです。
色々指摘すべき箇所はあるんでしょうけど、ボクはこれ以上書くことはないです。この作品自体が私信みたいなもんだし。

名前: brother ¦ 15:48, Tuesday, Apr 01, 2008 ×


"お払い"その間違いが真っ先に気になってしまいました。
知らないで違う漢字を使ってしまう事は誰にでもある事ですが、怖い話を読んでいれば"お祓い"という表記は他の話でも見掛けた事はあるでしょうから気付いてほしかったです。
事故直前に聞こえた(?)声は"気のせい"と言われればそれまでになってしまいますね。
"連絡が取れなくなった友人"というのもパターン的。
話自体は気味が悪いので、違った書き方をしたらもっと怖い話になったかも。
もったいないです。


名前: MM88 ¦ 12:20, Thursday, Apr 10, 2008 ×


この作品はたいへんクセを感じ、この書き回しが作者側の意図なのか、それともありのままなのかによって、内容の中身が変化してくるという、ある意味大変困った性格を持っていると思いました。
ショートのホラーとして受け止めれば、怪異の部分を整理すれば怖さ満点に違いなく、また逆に、その整理の無さが、リアルな厭らしさを醸し出しているといえるのかも知れません。
これは本当の話なの?それとも?というボーダーが魅力ではあるのですが、「実話」というくくりがある限りでは、その曖昧さが逆に減点要素になってしまったかも知れません。

名前: みくりや かつと ¦ 22:12, Thursday, Apr 24, 2008 ×



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