..きなので、店長さんのお店によく遊びに行っていた。実は、店長さんには霊感がある。今まで数々の怪異体験をしているが、その話はあまりしたがらないし、幽霊も見ないようにしているらしい。店長さんは、昔から霊感が強かった。幼い頃、お母さんと一緒に外を歩いていると、すれ違った近所の人を指差して「あの人死ぬよ。」と、言う。するとほどなくして本当に死んでしまう。また、誰もいないのに、あそこに人がいると言うことも多かった。ご両親は心配して、「そんな気持ち悪いこと言っちゃダメ。」と、厳しく叱った。店長さんは、 <こういう事は、言っちゃいけないんだ。>と思って、それからは何も言わないようにしていた。ある日、店長さんの家に、突然どこかの宗教団体の夫婦らしき男女が訪ねてきた。そして、ご両親に「お宅の息子さんは、もの凄い霊力を持っている。ちゃんと修行すれば、偉大な霊能者や宗教家になれるので、私達のところでぜひ預からせて欲しい。」と申し出てきた。もちろんご両親は、そんなことは出来ないと断ったらしい。そのころの店長さんは、怒られるから、何かあっても決して言わなくなっていたので、霊感があることを知っている者など、周囲には誰もいないはずだった。一体、何処から店長さんの霊力のことを知って訪ねて来たのか、とても不思議だったらしい。今でも時々、肩の上に誰かが乗っているような嫌な感じが二週間ほど続くそうだ。そんな時は決まって、夜寝る時に目をつぶると、たくさんの知らない人の顔が次々と、暗闇の向こうから現れては消えていくのだった。そんな店長さんが初めて店を構えようと、あるテナントビルの一室を下見した時のこと。そこのオーナーが、「本当に、ここでいいんですか?」と、何度も聞いてきたそうだ。でも、大阪の中心の駅からすぐという立地条件などの良さもあり、店長さんは即決したそうだ。そして、いよいよ開店準備で引越しようと、次にその部屋に入った時。床に敷いてあったはずの四角いタイルカーペットが、全部剥がされていて、何もない部屋の端にどっさりと山積みに置きっぱなしにしてあった。それを見た店長さんは、<片付けからしないといけないのかよ。でもまあ、とりあえずこのカーペットでもまた床に敷きなおそうかな。>と、思ってカーペットの一枚を取り上げて、裏をふっと見たら。明らかに、古くなって乾いたと思われる、どす黒く変色した血がべったりといっぱい付いていた。他のどのカーペットも裏を見たが、血がたくさん付いていた。それを見た店長さんは、<なるほどな。ここは以前、サラ金が入っていたと言う事しか知らないが。恐らく殺人事件があったのではなかろうか。しかし、居るけれどもちゃんと成仏しているな。だから悪いことはしないだろう…。>と、感じ取ったそうだ。とりあえず、そのカーペットの再利用はあきらめて、全部捨てることにした。その場所に店を構えてから間もなくの事。店長さんが一人で店番をしていると、カウンターの方で人の気配がした。「いらっしゃいませ〜。」と、店長さんは、お客さんかもしれないと店の奥から出てみるが、まったく人の気配がない。外の共同トイレに入っていると、店に入っていく人影が見えたので、慌てて店に戻っても誰もいない。そんなことが何度もあったそうだ。店長さんは、そのたびに<あの人が来たな。>と、思ったらしい。店長さんは、何となく男の人だということはわかったらしいが、ついにその姿をはっきりと目で見ることはなかった。しかし、そのビルも取り壊しが決まったので、店長さんの店も他の場所に移転することになった。それからKさんが、店長さんの移転後の新しい店に遊びに行った時の事。同じように、店に遊びに来ていた知り合いのお客さんが「Kさん。早く、早く。見せてもらいなさい。店長がすぐに消したいんだって。」と言ってきた。店長さんは、以前の場所に十年もいたので、去る前に、誰もいない店の部屋の写真を最後に撮っておきたいと思った。店長さんは、<お世話になりました。>という気持ちを込めて、携帯のシャッターを押したそうだ。ということで、Kさんは店長さんの携帯を覗かせてもらった。「霊感のない俺でも、明らかにわかるぐらいだった。」店の白い壁をバックに、男性の首から上の顔だけが、はっきりと写っていた。二十代後半ぐらいの若者で、正面から無表情でこちらを見ていたそうだ。店長さんは、見せてくれた後、すぐにその写真を消してしまったそうだ。


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