..。「もちろん店で模型を買うこともできたんだけどね、自分で拾ってきた本物を見て描くってことに特別な意味を感じてたのかな。もちろん墓を掘り返すわけにはいかなかったけどね。当時は落ちてる骨を拾うのなら黙認されてた。今はどうなのかしらないけど。」ある日、大当たりがあった。頭骸骨・・・しゃれこうべである。あごの部分は無かったが、絵のモチーフにするにはそれでも十分だった。「布で来るんで持って帰ったよ。気味が悪いとは思わなかった。それまでも人骨はいくつか拾って持ち帰ってたし。もらってきた刈りたての牛の首を川原に埋めて、牛の頭骨作りなんか、当時の画学生仲間はみんなやってることだった。」 下宿に戻ったコマさんは、持ち帰ったしゃれこうべを水で洗ってモチーフ台の上に載せて眠った。まぶしさで目が覚めた。光から目をそむけるように起き上がった。カーテンの外は真っ暗だった。モチーフ台に目をやるとしゃれこうべが光っていた。それだけではない、眼窩からサーチライトのような光が放たれて天井近くの壁を照らし出していた。「それを見て、とっさに思ったのは、ああ怒ってるんだ!ってことだった。気がついたら部屋を飛び出してた。」玄関から暗い路地に飛び出すと、石畳の歩道に落ちている花束が目に留まった。「拾って部屋に戻ったんだな。とにかく頭がまだちゃんとしてなかったんだろうね。花束を見て、これをお供えすれば!って思ったんだ。」部屋に戻るとコマさんは目から光を放つしゃれこうべの頭上に、光をさえぎるように花束をかぶせた。途端に部屋は真っ暗になった。コマさんは夜が明けて墓地にしゃれこうべを戻しに行くまで、一晩中しゃれこうべにあやまり続けたという。翌日アパートの壁はうっすらと変色していた。それにしてもよくっ都合よく花束が落ちてましたねえ。と言うと、コマさんはこう答えた。「花束は町中に散らばってたよ。俺が拾った花束は、前の日にあったお祭りの時神を祝福するために使われたものだったんだ。だからそのぶん効果があったんじゃないかな。」


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