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「怖い話? うーん、そうねえ」 そう言って、ユキさんは視線を泳がせて考え込んだ。 ユキさんの職業はキャバクラ嬢。涼しげな顔立ちの美女である。年齢は「企業上機密」だそうだ。 「じゃあ、あたしが昔働いてた店の話でもしようか」
五年ほど前、ユキさんはとあるキャバクラ店で働いていた。容姿端麗で会話上手ということもあり、人気が高かった。 その日ユキさんは、フリーの客を相手にしていた。 席について数分後、後輩のレナがヘルプとして席に着いた。 「あたしより三歳下の子。舌足らずな口調なんだけど、逆にそれがお客さんに受けてたみたい」 レナがヘルプについて十分ほど経った頃、別の客から指名が入ったため、ユキさんは席を立った。 そのときユキさんは、店内に設営されている広さ三畳ほどのステージに、誰かが上がっていくのを見たという。 ステージの上には、ウェーブがかかった髪を肩まで伸ばした若い女の人がいた。 女性に見覚えが無かったため、ユキさんは「あんな子、店にいたかな?」とぼんやり考えていた。 ユキさんがステージを凝視していると、客とレナも会話を止めてそちらの方へ顔を向けていた。 三人が見守る中、女性はステージの中央に置いてあるスツールに腰を下ろしたのである。 「それを見て、あれ? て思ったのよ。だってそのスツール、歌のリクエストをもらった時にお客さんを座らせるための物なの。あなたのために歌います、てね。だから、店の子がそこに座るのは変なのよ」 三人は顔を見合わせた。客は「何だあの子? 新入り?」とユキさんに訊ねてきたが、ユキさんとレナは首を横に振った。 ステージから目を離したのは、ほんの数秒のことだったという。 再び視線をステージに戻すと、女性は忽然と姿を消していた。店内を見回したが、どこにもいない。 「そこからは大変だったな。お客さんが『おい、何だよ今のっ?』て騒ぎ出しちゃったから、フロアマネージャーがすっ飛んで来ちゃって。他の席の人たちも、何事か、て覗きこみに来るしさ」 騒動の最中、レナは真っ青な顔をしてずっと震えていたという。 しかし、怪異はこれで終わりではなかった。 スツールに座る女性が現れた数日後から、奇妙な出来事が頻発した。 店内に、その女性が出没するようになったのである。 「それもさ、接客してる女の子の隣に、あの女がいつの間にか座ってるのよ。じぃっと顔を覗き込みながらね。中には、卒倒しちゃう子もいたの」 いつしか女性の霊は「ヘルプさん」と名付けられた。ヘルプのように隣に座っているから、という理由だそうである。 ヘルプさんは、およそ二週間にわたって出没し続けた。 「幽霊は客を呼び込むから店にいたほうがいい、とは言うけど、さすがにあれだけ頻繁に出られちゃね。辞めたい、て言い出す子もいたし、何より店の評判が悪くなるじゃない。だから、御祓いをすることにしたのね」 非番も含めた従業員全員が開店前に店のホールに呼ばれ、御祓いをしてもらった。その最中、誰もいないはずのバックヤードから大きな物音が数回聞こえてきたという。 御祓いは効果覿面だった。 その日から、ヘルプさんは店に現れなくなり、スタッフは一様に胸を撫で下ろした。 ただ、一人だけ元気が無い者がいた。レナである。 接客していないときは常に沈み込んだ表情を見せており、メイクでも隠し切れないほどに疲労の色が彼女の顔に滲み出ていた。 「悩みでもあるのかな、て思って、それとなく訊いてみたのよ。そしたらね、実は今まで言い出せなかったんですけど、て切り出されてね」 ヘルプさんが店に現れる数週間前から、レナが住むマンションの自室に、見知らぬ女性が出没するようになったという。 時にはリビングの中央に、またある時にはバスルームに現れ、レナを一瞥して消えるのである。 「でね、レナの部屋に現れた女ってのが、まさにヘルプさんだった、て言うのよ」 そして、店で御祓いを済ませた翌日から、ヘルプさんは毎日レナの部屋に出没するようになった。 最初は無言でレナを見ているだけだったが、日が経つにつれ、聞き取れないほどの小声で何やら呟くようになったという。 「それからも、ずっと現れ続けてたみたい。段々と、精神的に不安定になっちゃってね」 ある日、レナが失踪した。 店に「今日限りで辞めたい」とだけ電話を寄越したきり、消息が分からなくなってしまった。 マンションには、彼女の持ち物が多く残されたままだったという。 「でね、関係あるかどうかわからないけど」 と、ユキさんは前置きした。 「レナが住んでたとこって、寮代わりに店が借りてた部屋だったの。彼女が住む前から、ね」 ユキさんは現在、別の店で働いている。 「たまにね、あの店で働いてたって子が入ってくるんだけど……店の中でヘルプさんを見たって子も、ちらほらいるのよ」 その店の場所をユキさんにしつこく尋ねてみたが、とうとう最後まで教えてもらえなかった。
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» 【+3】「ヘルプさん」 [DJ ZIRO『超-1 2007』感想ブログから] × 多くの人が同時に目撃しているとは。かなり強烈な霊ですよね。それに貴重な体験談です ... 続きを読む
受信: 22:27, Sunday, May 27, 2007
» [超−1]【+2】ヘルプさん [幽鬼の源から] × 同じ霊体が長期にわたって現れるという点で、この作品はなかなか貴重な内容であると思う。 また目撃者が複数という点でも評価は高い。 しかしながらしっくりといかないところもいくつかあるのも事実である。 特に問題だと思ったのは、この一連の怪異の視点軸がずれてい .. ... 続きを読む
受信: 07:54, Wednesday, May 30, 2007
» 【 4】 ヘルプさん [hydrogen's blogから] × 内容: 2文章: 2ああ、これも怖い話ですね。集団で見ているから余計に。古典的なヘルプさんの立ち振る舞いに対し、ただ居るだけなのに存在感のありそうな描写もよいです。レナさんだけに「お持ち帰りぃ〜!」かなと思っていたら連れてきちゃってたんですねぇ。 ... 続きを読む
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» 【+1】ヘルプさん [Forgotten Dreams 「超」1講評から] × <文章> 0 <体験> +1 <得点> +1 冒頭から複数の人間が動じ目撃する、というレベルの高い怪異で始まり、期待して読んだ。 で、その後もさまざまなことが起きてきた。 だが、本来エスカレートしていくべき怪異の記述が、その後ほとん .. ... 続きを読む
受信: 12:20, Thursday, May 31, 2007
■講評
「ヘルプさん」が「レナ」さんの部屋に出ていたのだったら、ステージの「ヘルプさん」を見たときに「レナ」さんはもっと驚かないだろうか。 後日談としてまたお店に「ヘルプさん」が出ているらしいが、寮であった「レナ」さんの部屋でほとぼりの冷めるのを待っていたのか。ならば、手強い。 御祓いの場に全員が揃ったのに誰も幽霊の来歴を詮索しなかったのが、疑問。 すらすらと分かり易い文章だが、所々で行間を空けて下さるともっと読みやすい。
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名前: くりちゃん ¦ 15:47, Saturday, May 26, 2007 ×
説明不足ではっきりわからないが、 ・レナさんの部屋にヘルプさんが出没し始める。 ・数週間後から二週間に渡って、店にヘルプさんが出没する。この間はレナさんの部屋には出ていない。 ・お祓い後、店には出なくなったが、再びレナさんの部屋に出始める。 ということだろうか。怪異はけっこう怖いのだから、もう少しわかりやすく描写してほしかった。 最初の段落も、無駄に長くなるだけなので不要。「五年ほど前‥‥」からの始まりで十分だろう。
(しかしレナさんも、どうして事実を店長に話さなかったのか。お祓いしているくらいだから、信じてもらえない、ということはなかっただろうし、店の寮に出るということはレナさん自身に関係のある霊ではないはずだろう) |
名前: ナルミ ¦ 00:45, Sunday, May 27, 2007 ×
内容:1 文章:0
こんなヘルプさんは、嫌ですね。 店に現れて、御祓いしたらいなくなった、で終わっていたらつまらなかったですが、今度はレナさんの所に現れて、いろいろやってくるところが不気味でした。 どう見ても、ヘルプさんは以前、店にいた女性に思えますね。 |
名前: ダウン ¦ 02:42, Sunday, May 27, 2007 ×
「ヘルプさん」、店とマンションを行き来してたのかな。 レナさんは自分が連れてきちゃってると思ってたんでしょうね。 思い切って店長にでも打ち明ければ、マンションもお祓いしてもらえたかもしれないのに(´・ω・`) でも効果がなかったみたいですねえ。お祓いを済ませた今も現れてるじゃないですか;
するすると誘導してくれて読みやすかったです。導入部はちょっと余分な気もしますが、いかにも売れっ子キャバ嬢という雰囲気は出てますねw |
名前: 13 ¦ 16:32, Sunday, May 27, 2007 ×
何人にも姿を見せたり、お祓いが無効果なところといい、強力な霊のようですね。実際、悪さをしたわけではないのでしょうが、負の存在感とでもいうのでしょうかありすぎでイヤです。 マンションに何かいわくがありそうな気がして興味がそそられます。 所々の業界ネタも話を邪魔するほどでなく散りばめられているところも楽しめました。 できれば時系列はしっかりとして、分かりやすく整理して欲しかった気はします。 素材:+1 文章:0
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名前: 夢屋 陣 ¦ 10:31, Monday, May 28, 2007 ×
寮代わりに店が借りてた部屋だけで、怪異の原因=起こるべくしておきたとは考えにくい。 話自体は読みやすく、問題は特に感じない。 ヘルプさんの顔かたちなどの詳しい描写がもう少しほしい。 |
名前: 黒ムク ¦ 13:14, Monday, May 28, 2007 ×
前半部、水商売系怪談としてはとても典型的な例ですね。 やはりこういう事はあるのだろうなと、改めて認識しました。 ヘルプさんという呼び方はいかにもそれらしくていいですね。 |
名前: 藪蔵人 ¦ 06:46, Tuesday, May 29, 2007 ×
| お祓いして大丈夫かと思ったら、自分のところに出てきてブツブツ言われたら、そりゃおかしくなりますわな。根が深そうな霊みたいですね。誰か探しているのではないでしょうか。 |
名前: ペペ ¦ 10:03, Tuesday, May 29, 2007 ×
多くの方が目撃される怪異というのは、それだけでインパクトがある。 怪異自体に強烈な何かを感じさせられる。 にしてもレナさんは災難ですな^^; お店で借りてた寮なら、相談すれば一緒にお祓いしてくれたかも知れないのにね。 お店と、寮と両方でお祓いをしたら、彼女はどこへ行ってたんだろうか。 なんて考えたり、文章も綺麗にまとめられていて面白く読めました。 やはりそのお店で以前働いていた女の子の霊なのかなぁ。 大人しい怪異ではあるが、やはり目撃者の多さが肝か。 ただ、お店に出没する前の彼女が、レナさんの部屋に毎日現れていたのか、時々だったのかが読み取れなかったが、読中は毎日現れていたと思っていたので、お祓いの後から元気が急激になくなっていく様はやや納得できなかった。 内容+1 文章+1 |
名前: cross2M ¦ 10:37, Tuesday, May 29, 2007 ×
-4 0 +4 文章;■■■■■■■□□(+2)…a 構成;■■■■■■□□□(+1)…b 怪異;■■■■■■■□□(+2)…c 恐怖;■■■■■■■□□(+2)…d 嗜好;■■■■■■■□□(+2)…e ※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)
単に出現するだけの怪異なのであるが、複数の目撃者と頻繁に姿を現すことで、それが恐怖の感覚に巧く繋がっている。 その頻出性ゆえに、怪異が一体何を訴えようとして姿を見せているのか判然としないのだが、それもまたこの怪異独特の味となっている。 時系列が判り辛い構成にやや難を感じるが、細かいディティールの提示も功を奏し、全体としては巧く纏まっているように思う。 怪異そのものについての描写は少々情報が不足していると感じた。 |
名前: 空 ¦ 12:44, Wednesday, May 30, 2007 ×
素材・0 文章・0 大人しく、哀切感さえ漂う怪異。 読みやすく、巧みな文章が書ける人なので、もう少し突っ込んで欲しかった気がする。 |
名前: つくね乱蔵 ¦ 15:10, Wednesday, May 30, 2007 ×
複数の目撃者がいるという点において、怪異に説得力が出ているように思う。 状況から、やはりかつて店で働いていたキャバクラ嬢だったのかな、と推察される。 いくら店が忙しくとも、このようなヘルプは御免被るところだろう。 |
名前: GPZ ¦ 00:29, Thursday, May 31, 2007 ×
ヘルプになっていないヘルプさんの霊ですか、そりゃまた困ったなあ。 って、キャバクラ行った事ないんですよ。色情沙汰自主規制男ですから(笑)以前そんなスケベなことばかり考えてて、おみくじを連ちゃんで三回凶出して以来、慎んで居ます。 念が残ってしまっているんですかね、レナさんのいたマンションは…。薄もやの向うにいるような記述のせいでヘルプさんの目的が測れないところにほんのりとした怖さを感じます。 誰彼構わず祟るような怖さ。 オーソドックスなお話ですが、作者さまの取材の片鱗が伺える部分もなかなかヒットでした。 |
名前: 矢内 倫吾 ¦ 07:25, Thursday, May 31, 2007 ×
| どこまでもついてくる怪異って嫌ですね。しかし、ヘルプさんはどうしてそこまでレナさんに付き纏ってきたのか疑問です。水商売だから色んな怨念があるのでしょうね。文章技術評価1 体験談希少度評価1 |
名前: ナメコ ¦ 14:02, Thursday, May 31, 2007 ×
レナさんの部屋に出没していたヘルプさんは、お店に現れるようになってからは、レナさんの部屋には出なくなったのでしょうか。 だとしたらホッと一安心していたはずなのに、お店がお払いをした為に、再び部屋に出没。 それはレナさんじゃなくても参りますよね、ブツブツ独り言も言い出したら。
昔、お店に勤めていてレナさんの部屋で亡くなった方なのでしょうかね、その2ケ所を移動している様ですし。 怖いんですが、ヘルプに付く幽霊。 想像するとちょっと笑えます。 |
名前: フジ ¦ 23:41, Thursday, May 31, 2007 ×
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