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森の遊歩道
ムトウさんが短大時代に体験した話。

当時、彼女は動物病院に週5日のアルバイトに通っていた。
といっても、彼女自身には免許はないため、仕事はもっぱら動物の世話だったという。
学校が終わるとその足で職場に向かい、下宿先に帰れるのは連日夜の9時を回っていた。

ある日のこと、手術が立て込み、仕事場の片づけを手伝って病院を出たのは10時をまわっていた。
職場から下宿先まで、自転車で30分程度である。

行き帰りには森を通り抜けなければならない。
そこは有名な神宮の森で、内部に広い遊歩道が通っており、昼間は地元住人の散歩コースとしてそれなりににぎわっていた。
ただし街灯はまばらで、夜に通り抜ける人はいなかった。

「遊歩道の周りは木がびっしり生えてるだけの景色だし、道がぐねぐねしてて見通しが悪いんで疲れてるときに通ると時間の感覚がおかしくなってくるんです。このまま森が無限に続くんじゃないか・・・みたいな。」

道路沿いの歩道から折れ、森の遊歩道に入ると自然にペダルを漕ぐ足に力が入る。

「最初にあれっ?て思ったのは森の中ほどの池に差し掛かったあたりでした。」

左手の池と反対側、遊歩道沿いに広がる森。その一本の木の後ろにちらっと白い人影が見えたのだ。
とっさに見てはいけないと思った。
自分は今、森の真っ只中にいるのだ。何かに出会ってしまっても逃げ場がない。
必死に目をそらし、反対側の池の水面に視線を固定したままで木の横を通り過ぎた。

数十メートル走っただろうか、水面を見ていた彼女の目の端、池の岸辺に立つ木の向こうに白いものが立っていた。

反射的にそちらに視線を送った。慌てて目をそらしたが手遅れだった。はっきり見てしまった。
木の幹に体を三分の一ほど隠すようにして立っていたのは、髪も肌も全身が真っ白な女だった。
しかもこちらを見ていた。

「本当の本当に怖くなったのはその瞬間でした。体中が熱くなって。もしかしたら看板か何かが立ったのかも・・・って言い聞かせてましたから。」
右も左も向くことができなくなった彼女は、砂利が敷き詰められた道の中央を凝視したまま全力でペダルを漕いだ。
視界の隅に入り込む木の陰に、何度も白い影が映ったが必死に見ないようにしたという。
森の出口、車止めのポールを抜ける瞬間、後ろから女の笑い声が聞こえた。
次の日はバイトを休んだ。

「一回だけとはいえ、はっきり見ちゃったのが痛かった。あれさえなければ今でも看板だってことにできたのに。」
それ以来、バイト帰りに遊歩道は二度と通らなくなったという。








09:23, Wednesday, May 23, 2007 ¦ 固定リンク ¦ 講評(14) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯

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■講評

本人の怖さや雰囲気は伝わってくるんですが。
惜しいというか、目撃談だけで終わってしまっていますので。
終盤に来て何かあるのかと思ったら、女の笑い声でお終い。
怪談ジャンキーは不謹慎な生き物ですので、前半が良いと後半でもっと怖い怪異があるかと期待するのですよ。
そういう生態をご了承ください。
素材:+1 文章:0

名前: 夢屋 陣 ¦ 09:45, Wednesday, May 23, 2007 ×


ご本人はとても怖かったようですが、読む立場としてはそれほど怖くは感じませんでした。

名前: くりちゃん ¦ 14:11, Wednesday, May 23, 2007 ×


むぅ、やはり締め切りが近づくにつれ、ねたが弱くなっていく。
仕方ないのかもしれないですけど。

やはり、書き込みの割りにネタが弱い、それも書き込みはネタに対してではなく、その外側にあるものに集中してるから。
努めて見ないようにしてたから仕方ないといえば仕方ないけど、本質たる怪異に対しての描写が「髪も肌も全身が真っ白な女」のみ。
あとは、白いものがちらちらと目の端に映ってはいるが、それがその女だと断定できるものはないし。
と思うと、その一瞬見た女は生身だった可能性もあるし、以後の白いちらつきは本人の恐怖から来る錯覚かもしれないし、本当に何かしら白いものが怪異とは関係なくそれこそ看板みたいなものや、ビニール袋やそんなものかもしれない。
笑い声は怖いが怪異ではないかもしれない。
とかとか思ってしまうのです。
そう思わせない何かしらの根拠が欲しかったかなぁ。
文章の構築は、うまいと思います。
内容ー1 文章+1

名前: cross2M ¦ 16:31, Wednesday, May 23, 2007 ×


内容:0 文章:0

動物病院から始まるので、動物霊ネタと思っていあたら、人間(元?)でしたね。
全身が白い女は不気味ですが、文章からして本当に何かの見間違いかもしれませんし、怪異だとしてもありきたりで弱めだと思います。

名前: ダウン ¦ 21:46, Wednesday, May 23, 2007 ×


左手が池、の反対側(右手)の森、を見ないように反対側(左手)の池を見た。ややこしい;
池の岸辺に立つ木も、池の手前なのか向こう岸なのか。そもそも池は大きいのか小さいのか。頭の中に景色を描くのに手間取りました。
この手の説明ってわかり易く書くのが難しい。私は苦手ですorz

さて、視界につきまとった白い何か。
同じ女がついてきてたんでしょうか。あるいは分身しまくり?と、勝手に考えても小粒な発想しか湧きませんでした。想像するにはちょっと物足りないです。
本人のお話も含め、ムトウさんの気持ちは丁寧に綴られていて緊張が伝わってきました。
でも一緒に怖がることはできなかったので(±0)で;

名前: 13 ¦ 21:06, Thursday, May 24, 2007 ×


文章読解力がなかったせいか、位置関係がよくわかりませんでした。
体験者さんの怖れみたいなものは伝わってくるのですが、白い女がそれほど怖いとは感じませんでした。
文章技術評価0 体験談希少度評価1

名前: ナメコ ¦ 23:45, Thursday, May 24, 2007 ×


ムトウさんはバイトを辞めなかったようだ、よしよし。
怪異は小粒とは言え、それなりに怖い。ただ、その恐怖を減殺させているのが、「看板」という言葉である。ムトウさんがそう考えたのは事実だろうが、読者に「本当に看板だったのでは」という疑念を与えてしまって逆効果である。

名前: ナルミ ¦ 00:33, Friday, May 25, 2007 ×


超こわい!
・・・とは思いませんが実話らしくて良いとおもいます。

名前: 梶ゆういち ¦ 12:13, Saturday, May 26, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■■□□□(+1)…a
構成;■■■■■□□□□(±0)…b
怪異;■■■■■■□□□(+1)…c
恐怖;■■■■■□□□□(±0)…d
嗜好;■■■■■■□□□(+1)…e
※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)

 全身が白い女というのは個人的に好みの部類の怪異。また、怪異が直接当事者に目撃されるまでの雰囲気づくりもなかなか巧いと思った。
 残念なのは怪異の行動があまりにも月並みなことである。
 木の陰から覗き込むように当事者を見る行為、そして笑い声。
 正直なところ、「髪も肌も真っ白な女」という記述がなかったら点数を入れていなかったかもしれない(ただし、女の描写については、年齢等、もう少々情報を盛り込んだほうが親切だったように思う)。
 全力でべダルを踏む当事者の視界に何度も入り込んだ白い影を、筆者の方は当事者が最初に目撃した白い女であることを前提に描かれておられるようであるが、もしかしたら女とはまた異なる存在の怪異であったかもしれないと、ふと思った。

名前: 空 ¦ 00:08, Sunday, May 27, 2007 ×


ずーっと見られている怖さ、何かされるのではないかと不安な気持ちは伝わります。

名前: ペペ ¦ 05:51, Monday, May 28, 2007 ×


粗筋にしちゃうとただの目撃談に過ぎないのだけれど、
読んでいる時は結構、緊迫感がありましたね。
臨場感のある書き方だったように思います。

名前: 藪蔵人 ¦ 23:45, Monday, May 28, 2007 ×


白い人影が、生きた人間ではなかったという確証がない以上、どうしても懐疑的になってしまう。
その一方で、暗い遊歩道というシチュエーションでありながら、女性が全身白かったということを視認したということを考慮すると、もしかして怪異と遭遇したのでは、とも思う。
判断が難しいところである。
評点には加味しないが、遊歩道の状況描写がやや煩雑に思える。池と森との位置関係は少し言葉を省いてもよかったのではないだろうか。

名前: GPZ ¦ 21:48, Wednesday, May 30, 2007 ×


素材・0 文章・0
まずまずの怪異ではあるが、何か弱い。
文章のせいかもしれないが、怖いという印象が得られなかった。
丁寧に書かれてはいるんですがね。

名前: つくね乱蔵 ¦ 22:19, Wednesday, May 30, 2007 ×


その情景が何となく目の前に浮かんできます。ちらっ、ちらっと目の隅にちらつく白い影。誰もいない遊歩道。
特にこれといった霊の描写も少なく、雰囲気だけに任されていますから、恐怖感と言う点ではおとなしめの作品かも知れません。
ただ、一人で夜道を歩いている時、不意に思い出して怖いのは、こういった風味の怪談ではないかとも思います。
「大ネタ」的な霊体験は、そのあたりには転がっていませんから(笑)
でも、香港映画「ドミノ」のように、ただの人だったら「ゴルァ!」ですね白い女の方!

名前: 矢内 倫吾 ¦ 00:08, Thursday, May 31, 2007 ×



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