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卒業の記念に
「怖い話か。ちょっと待っててな」
 そう言うと飯田は、押入れの奥に潜り込み、学ランを引っ張り出してきた。裾が袖より短い、俗に短ランと呼ばれていた代物だ。
「また懐かしい物持ってるな」
 私がそう言うと、飯田は学ランを床に置いて話し始めた。
「高校の頃の話なんだけどさ」

 飯田は高校の三年間、彼女がいなかった。
 硬派を貫いていたわけではない。単純に、もてなかっただけだ。
(高校になれば、俺にも彼女が出来るかな?)
 入学当初に抱いていた淡い期待は実現しないまま、彼は卒業を迎えた。
 卒業式も終わり、春休みに入った日。
 飯田が買い物から帰宅すると、玄関に鍵が掛かっていた。
(誰もいないのかな?)
 そう思いながら、ドアを開けた。
 飯田の家は、玄関を開けると真正面に二階へ上がる階段がある構造になっている。
 その最上段に、何者かの足が見えた。
(あれ? 母ちゃんいたのか?)
 見上げた格好のまま、飯田は階段を上り始めた。
 数段上った所で、飯田の足が止まった。
 長いストレートヘアに、白いカーディガンを羽織った制服姿。
 明らかに、母親ではない。
「だ、誰だお前っ!」
 早鐘のように打つ心臓を押さえつつ、飯田は大声で誰何した。
 するとその人物は、驚いたようにびくりと身体を震わせ、二階にある飯田の部屋のほうへと走り去っていった。
 迷ったものの、飯田は意を決して自室へと踏み込んだ。
 部屋には誰もおらず、荒らされた形跡は無かった。
 押入れの中や布団も調べたが、誰も隠れていない。
 部屋の中をきょろきょろと見回す飯田の視線は、壁に吊るしてあった学ランで止まった。
 外出するまでは無かった異常な痕跡が残っていた。

「……で、こうなってた、ってわけか」
 私の問いに、飯田は無言で頷いた。
 床に置かれた学ランの、第二ボタンがあるべき場所には、火で焼き切ったような丸い穴がぽっかりと開いていた。
 消えた第二ボタンは、いくら探しても見付からなかったそうである。
「俺の第二ボタンを貰ってくれるのは、嬉しいは嬉しいけど、こういう形じゃなあ」
 飯田は苦笑した。








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■講評

怖くはないがひとつの話としてはよくまとまっていると思う。
可もなく不可もなくといった印象。

名前: 黒ムク ¦ 12:40, Wednesday, May 16, 2007 ×


「俺の第二ボタンを貰ってくれるのは、嬉しいは嬉しいけど、こういう形じゃなあ」という文章が面白かった。
他人の家に突然現れる人影も怖いが、清楚な姿に見えるのでどう解釈すべきか迷う。何なのでしょうか?

名前: くりちゃん ¦ 12:50, Wednesday, May 16, 2007 ×


話の内容は面白いのですが、一点を除いて現実感のある事実を淡々と描写していっているせいか怖さという点では薄いかと。
非現実的な点、火で焼ききったような丸い穴、も物証としては貴重ですが心霊的とするには釈然としないかと。
怪談かといえば怪談、だけど不思議な話に限りなく近い、のかと。
素材:+1 文章:0

名前: 夢屋 陣 ¦ 14:43, Wednesday, May 16, 2007 ×


ボタンを取っていったのは、幽霊?それとも人間?と迷いました。
すぐいなくなったところをみると、恐らく霊的なものなのでしょうが。
取られたボタンが記念という意味ではなくて、呪いに使われなければいいですね。
文章技術評価0
 体験談希少度評価1

名前: ナメコ ¦ 23:26, Wednesday, May 16, 2007 ×


怪異としては些細なものだが、シチュエーションが面白かった。

名前: ナルミ ¦ 00:45, Thursday, May 17, 2007 ×


内容:1 文章0

ボタンだけを持っていくところが、かわいいというか奥ゆかしい。
しかし、女性は霊というより、なんかSF的な存在のように思えます。
制服を焼き切ったところなんて、特に。

名前: ダウン ¦ 23:52, Thursday, May 17, 2007 ×


年代的に、短ランとか第二ボタンくださいとかって今もあるのかな?と懐かしくなりました。

行為からして、女の子は飯田さんを好きだったんだねぇ…と思えるんですが、生き霊なんだか亡くなってるんだか;
焼ききってでも第二ボタンが欲しい!という熱意は別の意味で怖いです。
もらうのが第二ボタンなのは心(臓)に近いからだって聞いたことがあります。
苦笑しつつ大事に持っている飯田さんwには申し訳ないんですが、実は命を狙われてたんじゃ?とも思ってみたり。

オチをうまく最後にもってくる構成も良かったです。これは予想外でした。

名前: 13 ¦ 18:02, Friday, May 18, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■■□□□(+1)…a
構成;■■■■■■□□□(+1)…b
怪異;■■■■■□□□□(±0)…c
恐怖;■■■■■□□□□(±0)…d
嗜好;■■■■■□□□□(±0)…e
※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)

 怪異は生霊の仕業か、はたまた当事者に第二ボタンを貰う願いが叶わずして死を迎えたものの仕業か。
 作品としては巧く纏まっているように思うが、怪異自体の弱さは否めない。
 さすがに超-1も大詰めとなってくると、よほどの怪異が提示されない限り恐怖の針は振れない。
 自分のことながら贅沢過ぎるとも思うのだが。 

名前: 空 ¦ 12:52, Saturday, May 19, 2007 ×


多分、それは学生手帳を取りに来た霊の女の子だ!違う!
なんだか、その女の子に萌え〜ですなw
かわいいじゃないですか^^
まぁ、願わくば生きている人間で、その方と会うことが出来れば、彼としてはちょこっと遅い青春を楽しめたかもしれないのにねぇ。
思念がそうさせるのか、やはり死霊なのか、気になるところではありますね。
文章は綺麗にまとまっていますが、彼の思考内の言葉がやや鬱陶しかったですね。
内容0 文章0

名前: cross2M ¦ 04:40, Sunday, May 20, 2007 ×


素材・0 文章・0
なんとも解釈し難い話ではあるが…
生霊かなぁ…
あ、恋の炎で焼き切ったのではないかと。

名前: つくね乱蔵 ¦ 21:50, Monday, May 21, 2007 ×


よい話です。文章も読みやすかった。白いカーディガンにストレートヘアの霊体?と短ランの飯田君の似合わなさ。飯田君、一部でモテてたのね。

名前: ペペ ¦ 17:21, Saturday, May 26, 2007 ×


焼き切るなよ!
もいで行くだけで充分だろうに、と考える僕はムードのない男かも知れません(泣)
恋の炎に身を焦がすを実践したような怪談ですねえ。ああ、僕もさんな風に誰かに慕われてみたい!(でも、ムームーおばさんは嫌です。最近は油断なりません)
怪異の全てはオチに集約されています。直球で余韻だけ愉しんでくださいという意図でしたら、見事にヒットしたといえるのではないでしょうか?

名前: 矢内 倫吾 ¦ 13:21, Sunday, May 27, 2007 ×


ずいぶんと切ない話ですね。
第二ボタンを貰う、という想いを遂げたかったのでしょうね。
全体的に語句の使い方が気になりましたが、なかなか味のある作品ではないでしょうか。

名前: 藪蔵人 ¦ 18:40, Sunday, May 27, 2007 ×


ボタンが焼き切れるという物的証拠が残ってはいるものの、ネタとしてはやや弱いか。
いくらモテなくとも、好いてくれた相手が霊であったなら、喜び半減である。
と、私自らの高校時代を重ね合わせて書いてみた。少し鬱になってしまった。


名前: GPZ ¦ 00:04, Wednesday, May 30, 2007 ×



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