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どのうぶくろ
歩道に人が集まっていた。
コンビニの店員が折れた枝を引きずっている。
前輪がひしゃげた自転車。
その脇でスーツ姿の男性がうつ伏せになっている。
歩道側にある枝が何本もへし折れている街路樹。
ビルを見上げる。窓は何処も開いていない。
八階の屋上からだろう。
川原俊行さんは嫌なモノを見てしまった後悔と通行人が巻き込まれるかもしれない無責任な行為に怒りを覚えたという。
不思議なことに男は艶のある白い布袋を頭から被っていた。
好奇心から遠巻きで見ている野次馬を押しのけて前に出る。
布袋は質感や大きさから土嚢袋ではないかと思ったという。
興味本位で男を見つめている自分に気付く。
じわじわと沸いてくる自己嫌悪。

けたたましい消防車とパトカーのサイレン。
蘇生処置を始める隊員、大声で叫んで意識の確認をする隊員、黄色いテープを張り野次馬を遠ざける警察官。
現場は騒然となった。
被っていた布袋を消防隊員が脱がす。
ちらりと見えた顔面は紫色でパンパンに膨らんでいたという。

<嫌なもの見ちゃったね。夢に出るよ>

二人組みの女が会話をしながら写メで撮影をしている。
憂鬱な気分で立ち去る川原さんの後方から救急車のサイレンが聞こえてきた。


真夜中、川原さんは息苦しくて目が覚めたという。
部屋の空気がまるで圧縮されたように重かった。

<ズルズルズルズル>

ベッドの下でスーツを着た男がうつ伏せで藻掻いていた。
部屋は暗いのに男の姿がはっきりと見える。
頭から白い布袋を被っていた。
男は右腕を付くとグニャッと曲り、左腕を付くとまたグニャッと曲がる。
全身の骨が砕けているのか、のたくっているように見えた。

<なんで俺に憑くんだ。何も出来ないので帰ってくれ。>

男の動きが止まった。
グニャグニャと正座をすると川原さんの方に顔を向けた。
頭から被った白い布袋がパンパンに膨らんでいる。
口のあたりがモゴモゴと動いている。
川原さんに向かって倒れるとベッドの上に芋虫のようにくねりながら這い上がってきた。
ヒッと川原さんは反対側の壁に向かって飛び上がる。
壁に顔を押し付けて震えあがった。
余計な事をした後悔と恐怖で頭の中が一杯になった。

「ちがう。」

くぐもった声で男は何度も呟く。

「ちがう。ちがう」

ズズズズズッと男が詰め寄ってくる。
川原さんの後頭部に白い布袋を被った顔を押し付けて来た。
堅めの布の質感。
中にある柔らかい感触が後頭部にめり込んでいく。

「ちがう。ちがう。ちがう。」

後頭部から伝わる口の動きに同調した「ちがう」という言葉が何度も何度も繰り返された。
このままでは狂ってしまう。
嗚咽と涙が無意識に流れ続けていた。

「ちがうんだよ。としくん。」

子供の声だった。
幾つかのイメージが川原さんの頭の中に流れ込んできたという。
後頭部から感触が消える。振り向くと男はいなかった。
川原さんは全てを理解した。
「ごめんな。ごめんな。ごめんな。」
何度も呟きながら朝まで泣いた。

やはり男性は小学校時代の親友だった。
自ら命を絶った彼の死を知らせる電話があった。








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受信: 23:48, Wednesday, May 30, 2007

■講評

「やはり男性は小学校時代の親友だった。」の根拠が弱い。
現場で見たときに予感があったのか、怪しいモノが迫ってきてその気配でわかったのか。突然「としくん。」といわれても混乱する。
電話→自殺を知る→現場を聞き、思い当たる、ならば何となく納得できるが。
文章は読みやすいのだが、上記のようなわかりづらい点があるので一人合点しないように推敲するのは必要だと思う。

名前: くりちゃん ¦ 17:49, Sunday, Apr 29, 2007 ×


理不尽な祟りだと思っていたらちゃんと理由があった、という展開は面白い。
ただやはり、小学校時代の親友だと気付くのが唐突。もう少し過程を書き込んでほしかった。

名前: ナルミ ¦ 21:51, Sunday, Apr 29, 2007 ×


事故かな、と思いながら読んでいるうちに、だんだんイヤ〜な雰囲気に。自殺とはっきり書かずに、じわじわとわからせる書き方が良かったです。掴まれました。
部屋に帰ってからのイヤさは更にすごいですね。こんな目に遭ったら、まさに「狂ってしまう。」ですよ;
「写メで」には違和感が。「携帯電話のカメラで」まではいかずとも、せめて「ケータイで」とか。細かいことでごめんなさい。

「ちがう」はどういう意味だったんでしょうね。お別れの挨拶に来ただけだったんでしょうか。とは思えない怖さですが;まさか、土嚢袋を被せられ、落とされて殺されたとか?
川原さんがどうやって全てを理解したのか気になります。思いっきり引き込まれていたのですが、最後に置いてきぼりにされましたorz

名前: 13 ¦ 05:30, Monday, Apr 30, 2007 ×


■素材:1 □恐怖:0 □リアリティー:0 □文章表現力:0 = 1点

「どのうぶくろ」の意味が不明。死んだ男は、袋をかぶって飛び降りたのか、飛び降りたところどのうにつっこんだのか、本文からすぐわからない。
としくんのところにそれが現れるくだりの描写は、上手だと思う。気味の悪い動きのヴィジュアルが自然と目に浮かぶ。
ストーリーの流れにそった叙述がいまひとつ。惜しい。

名前: ゆんく ¦ 23:16, Monday, Apr 30, 2007 ×


前半の書き込みに比べて、「ちがう」から期待させて「やはり〜」とくる締めの展開が唐突。
読み手としては、感情的に置いてけぼりを食らったようで冷めてしまった。
怪異の描写は、かなり嫌なものがあり生理的な怖さを感じた。
タイトルにもなっている土嚢袋に関して、これはということが何も触れられておらず、いささかしっくりこない印象が残った。
素材:+2 文章:0

名前: 夢屋 陣 ¦ 14:59, Tuesday, May 01, 2007 ×


素材・4 文章・−2
惜しい。実に惜しい。
状況を考えると、寒気がするほど怖いのだ。
それなのに、今一つ、活かしきれていない。
あぁ悔しい(笑

名前: つくね乱蔵 ¦ 11:48, Wednesday, May 02, 2007 ×


死んでいたのが知人ということにまったく気づいていない状態で最後のオチにもっていったのが、少し強引な展開な気がした。
前半で少しその点を臭わせてから最後に持っていったほうがよかった気がする。
その点に置いていかれた感を感じる。

名前: 黒ムク ¦ 13:53, Wednesday, May 02, 2007 ×


内容:1 文章:1

土嚢男が、川原さんの所に現れる描写は凄い。
唐突に知人だったのと、土嚢袋の意味がわからなかったのが、少しだけ引っかかりましたが。

名前: ダウン ¦ 20:13, Thursday, May 03, 2007 ×


作者様の、人物に対する心理描写のこだわりが伝わってくるような作品です。
前半では自殺の現場に立ち会ってしまった不快感、中盤の怪異の異様さ、友人を亡くしたという事に気付くという喪失感が矢継ぎ早に展開されていくのがわかります。
ただ、その部分が前半に重たすぎて、ショート小説の感覚に陥ってしまいがちなのがやや残念に思われます。
というのは、土嚢男の異様さよりも、初めのシーンの河原さんの心情にえらく同一化してしまって、その後の展開に切り替わる余裕が無いような読後感を受けてしまった気がします。
ただ、このままでも充分普通に読むことは苦ではありません。もう少し時間を掛けて書いてみればかなりの秀作になったのではないかと惜しい気がしないでもないです。

名前: 矢内 倫吾 ¦ 22:21, Saturday, May 05, 2007 ×


全体的にいや〜な雰囲気が漂っていて、それが読み手に伝わってくる話ですね。
怪異の描写など、うまく処理されてるなぁと。
反面、後半の唐突ととして「やはり」親友だったと認識する行が勿体無い。
漫画の打ち切りを思わせる取って付けたようなオチに見えてしまって、そこはもう少し書いて欲しかったところ。
前半〜怪異までのように。

「ちがう」の意味するものは・・・自殺ではなく、「殺された」ことを意味してるのだろうか、そういう想像を掻き立てる怖さも秘めているのだが、「ごめんな」は冒頭の「興味本位で男を見つめている自分に気付く。じわじわと沸いてくる自己嫌悪。」に掛かっているのか、いまいち私の中で処理できなくて、また上で書いた部分も併せて高評価には出来ず。
内容+1 文章0

名前: cross2M ¦ 23:54, Tuesday, May 08, 2007 ×


展開は良いと思います。そこに出くわすのも必然ということ。

名前: ペペ ¦ 09:58, Monday, May 14, 2007 ×


死んだ男が出てくる場面は気持ち悪い感じがして怖かった。
「ちがうんだよ。」と言う所でどういう展開になるのかと思ったら、親友だったわけですね。
ラストはあっさりという感じでした。文章技術評価1 体験談希少度評価1

名前: ナメコ ¦ 02:07, Tuesday, May 15, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■■■□□(+2)…a
構成;■■■■■■■□□(+2)…b
怪異;■■■■■■■□□(+2)…c
恐怖;■■■■■■■□□(+2)…d
嗜好;■■■■■■■■□(+3)…e
※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)

 作品全体に漂う湿り気を帯びた雰囲気は好みのものである。
 また、怪異自体も超-1では敬遠されがちなグロ系であり、この作品は筆者の方が敢えてそれに挑んだものと受け止めた。
 展開自体は目撃した自殺者が自分のもとへ現れる王道的なパターンであるが、ここまでグロい姿で現れた怪異が当事者へ懇親のあった身であることを伝えるというのはなかなか興味深い。
 怪異の訴えそのものも、いろいろとその意味を想像させられる。

名前: 空 ¦ 08:25, Friday, May 18, 2007 ×


いやいや、これはなかなか。
ぞくりと来る怖さがありました。
子供の声で子供の頃の呼び名で呼ばれた時に、何か蘇るものがあったのでしょうね。

名前: 藪蔵人 ¦ 23:14, Saturday, May 26, 2007 ×


土嚢袋という小道具で怪異の外見をブラインドしたうえに、感触だけは伝達しているため、生理的嫌悪感を伴った恐怖が伝わってくる。
しかし、ラストがあまりに唐突すぎる。体験者の中だけで話が消化されてしまい、読み手が置いていかれてしまっているように思う。脳内に浮かんだイメージの描写がすっぱり抜け落ちてしまっているため、取ってつけたような感じがしてしまう。
気になったのだが
>布袋は質感や大きさから土嚢袋ではないかと思ったという。
とあるが、その前に「艶がある白い布」という記述がある。
一般的な土嚢袋の場合、麻のようにざらざらした合成繊維を使用している。
艶がある布、という表現から「のっぺりとしてつやつやの布」というイメージに繋がってしまい、ここから土嚢袋を連想するのは少々苦しいのでは、と感じた。

名前: GPZ ¦ 21:45, Thursday, May 31, 2007 ×



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