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もう二十年程も昔。 我が家では車に当て逃げされて両目を失明した犬を飼っていた。 しかし失明したのは犬が一歳の頃だったので、家の中やいつもの散歩コースなどはすっかり頭に入っていた様で、生活するには人間が心配する程不自由はしていない様だった。 異様に暑かったある日。 犬は暑い日の真昼間だというのに散歩に行きたがった。 いつもならそんな時間帯には行かないのだが。 お腹でも壊してるのかと思い、犬を連れて外に出た。 あたりがみな白く反射して見えるくらいの強烈な陽射しだった。 その中をとぼとぼと犬について歩いた。 いつもの散歩コースを。 そして気付いた。
音がまるでしない?
住宅街を歩いているというのに、コトリとも音が聞こえて来ない? いつも犬の散歩をしながら雀に餌を撒くので、私が外に出るとすぐに雀たちが何羽も飛んで来るのだが、その雀たちの姿も無い。 そして他の人間の姿も気配も。 自分の耳が突如聞こえなくなったのかとも思った。 しかしそうではない様だった。 唯一、犬と自分の足音は聞こえていた。 強烈な白い陽射しの中、他に動くものの気配も、音もない。 周りの世界は本当にあの、キリコの絵の様だった。
ヤ バ イ
その 異様さに、無条件に思った。 首や背中の毛が逆立って、カンカンと焼ける様な陽射しの中にいるというのに、ぞわりと寒けがした。 その周りの様子と、飼い主の恐怖を知ってか知らずか。 犬はスタスタと足音を響かせ、力強く綱を引いて、ただ真っ直ぐに道を歩いていた。 声を上げたり、走り出したりすると事態はもっと恐ろしい事になる様に思え、凍り付いた様になっている空気の中をただ黙って犬の後について歩いた。 そしてあるT字路の手前に来ると。 犬は足を止め、後ろを振り向いて、見えてはいない目でじぃっと何かを見つめた。 その時。
ワッーーー!
と。 どこかでテレビの音がした。 当時開催されていたオリンピック中継の歓声の様だった。 目の前を、自転車に乗ったどこかのおばちゃんが通って行った。 私たちの前に何羽かの雀たちが舞い降りて来て、餌を催促した。 私は犬を見つめた。 犬も私を見上げ、尻尾を振った。
我が愛犬は。 何をどこまでわかっていたのか。 見えていない目で何を振り向いて見ていたのか。
あの、音が爆発的に復活した瞬間を。 今も鮮明に覚えている。
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» [超−1]【−1】音無 [幽鬼の源から] × 不思議な話であるが、突如として日常の世界が異界とすり替わってしまったという話は類例が多い。 この話も犬という特別な存在があるが、よくあるパターンであると言ってもいいだろう。 こういう異界ネタの場合、やはり描写力が一番ものを言う。 この作品では、体験者や .. ... 続きを読む
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» 【+2】「音無」 [DJ ZIRO『超-1 2007』感想ブログから] × 時間の狭間の世界?に迷い込んだ事例は古今東西で語られていますが、犬の描写が最初に ... 続きを読む
受信: 11:46, Tuesday, May 01, 2007
» 【−4】音無 [Forgotten Dreams 「超」1講評から] × <文章> −1 <体験> −3 <得点> −4 著者が自ら想像した世界に酔ってしまった。そんな印象を受ける。 本来的に音とは関係ない「キリコ」の名を登場させていることから尚更そう感じる。 彼(デ・キリコの方がやや一般的では)の絵に音のない .. ... 続きを読む
受信: 18:57, Tuesday, May 22, 2007
» 【 3】 音無 [hydrogen's blogから] × 内容: 1文章: 2これは怖い。怖いといえるようなことは何も起こっていないはずなのに音のなくなる瞬間が妙にしっかりと描写されていて怖いです。カンカンと照り付ける、みたいな平易なオノマトペとの対比もありなんだか無性に気に入ってしまいました。それだけに「 ヤ .. ... 続きを読む
受信: 03:03, Sunday, May 27, 2007
■講評
どうなるんだろう、と先を知りたくなる書き方が上手いと思った。 ただTVの音が急に「ワッーーー!」と聞こえたら、もっとびっくりしないかな、とも思った。 終わり方があっけなかった。 文章は読みやすかった。 「当て逃げ」というと車が無生物にぶつかって逃げていったように感じるので、普通に「ひき逃」げでいいのでは? |
名前: くりちゃん ¦ 07:41, Tuesday, Apr 24, 2007 ×
難しいなぁ。文章が上手いだけに期待感がぐいぐいと来て、落としどころが「音のない世界」でしたから。 事象としては非常に不可解なのでしょうが、読み手には伝わりづらいかと。 上手いだけに拍子抜けの感がなきにしもあらずです。申し訳ない。 素材:0 文章+1
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名前: 夢屋 陣 ¦ 13:07, Tuesday, Apr 24, 2007 ×
「無音状態」というのは何かが起こる前触れのことが多いので期待していたら、それだけだったのでちょっと拍子抜け。 まあ実際に体験したら怖いとは思うが、「無音」を文章で表現するのはなかなか難しい。 |
名前: ナルミ ¦ 00:08, Wednesday, Apr 25, 2007 ×
素材・1 文章・0 この話の肝は、いかにして静寂な世界を 表現できるかという点であるが、 残念ながら作者の文章力は、そこまでのレベルではない。 あのキリコの絵のように、などと言われても 知らない者は説得できない。 |
名前: つくね乱蔵 ¦ 10:24, Wednesday, Apr 25, 2007 ×
無音状態のみで終わっているため怖い感じはなかった。 キリコなどの絵画的な要素をもってくるなら、もっと描写を工夫して絵的な表現をしたら怪異のなかにも独特の感じがでてきた気がする。 音が爆発的に復活した瞬間も、もっとうまい書き方はなかったのだろうかと思う。 夏の暑さ、音など現実の世界に一気に帰ってきた点を強調したら、無音の世界との差がついてよかった気がする。 |
名前: 黒ムク ¦ 12:13, Wednesday, Apr 25, 2007 ×
「キリコ」と聞くと○保、魚○が思い浮かぶ漫画っ子です。 さてキリコとは?と絵を見てきて…ますますわからなくなりましたorzマニアックな表現だなあ; 静けさを伝えるのって難しいですね。いかにうるさいかを示すより、かなり難しい。暑い日だったんだよぉー!というのは思いっきり伝わりました。 表現と区切り方がやや詩的にも見える、個性のある文章ですね。個人的にあんまり好きではないです、ごめんなさい。
体験者はゾッとしているようなのですが、怖いというよりは不思議なお話という印象。異世界に行ったらしいお話は好きです。犬は本当に何か見えていたのか気になるところ。 |
名前: 13 ¦ 15:11, Wednesday, Apr 25, 2007 ×
内容:1 文章:1
これは不思議な話しですね。 音無しの世界で平然としている犬は、すごいのかあるいは鈍感なのか。 怖い話しではないですが、文章がうまくて引き込まれました。 |
名前: ダウン ¦ 21:34, Wednesday, Apr 25, 2007 ×
怪異の中心が「音の無い世界」という事なのだが、いかにして著者がそれを記す事が出来たか。 文章はうまいとは思うのだが、やはりその肝となる部分が伝わってこず、「ヤ バ イ」という感情も同様でした。 著者さんもかなり苦労して表現しようとされたのだと推測するのですが、それを諦めて、既存の情報「キリコのあの絵」に集約されてしまったのは痛い。 今大会でも散々講評されているが、「それを知らないものには一切伝わらない」ものを持ち出して、「それだ!」というのはいただけない。 それが出来るのは余程の知名度がないと無理です。 それこそ、フネさんのような(あれはあれで行き過ぎですが)ものでないと、です。 時間はまだあったから、諦めずに表現する事に時間を取ってほしかった。 内容0 文章0 |
名前: cross2M ¦ 15:09, Tuesday, May 01, 2007 ×
似たような経験はよくあります。体調にもよりますが。 音がすうっと遠のき、肌が冷たくなる。 はっと気付いてあたりを見回せば、大概そのそばには墓地か神社が存在します。友人にはこれをもっと強く感じる方がいまして一緒にいるとゾッとさせられたりします。 おそらく作者さまはあの感覚を題材にされたのでしょう。これはなかなか難しい挑戦といえば挑戦です。 なぜならそれは感覚的なものですから。それを文章的に伝わり易くするため「キリコの絵」の比喩を用いたのでしょうが、これはあまり歓迎できませんでした。 これだけの文章力をお持ちの方ですから、他の方法があったような気がしないでもないのです。 そういった意味合いを含んだ配点ではありますが、実力を伴われた方とお見受けしますので、次回作にまた期待したいと思っています。 |
名前: 矢内 倫吾 ¦ 20:50, Sunday, May 06, 2007 ×
-4 0 +4 文章;■■■■■■□□□(+1)…a 構成;■■■■■■□□□(+1)…b 怪異;■■■■■■□□□(+1)…c 恐怖;■■■■■■□□□(+1)…d 嗜好;■■■■■■■□□(+2)…e ※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入) 異世界に迷い込んでしまった体験譚であるが、その異常な世界の情景を描くことよりも当事者の心情を追うことに力点が置かれているようで、その点に少々物足りなさを感じる。 盲目の犬が当事者とともに怪異に巻き込まれていることをひとつのポイントとして書かれているが、これは筆者の方の期待ほど効果は得ていないように思う。 文章には魅力を感じた。 怪異に対しデ・キリコの絵画が引き合いに出されるとは少々意表を突かれた。 |
名前: 空 ¦ 00:09, Sunday, May 13, 2007 ×
突如、異界に迷い込んだということでしょうか。 文章は凄く臨場感はあるのですが、怖いという感じはなく、むしろ日常のヒトコマを切り取った感じがするのです。飼い犬がいつもと違う行動パターンを取ったので、いつもと違う風景によけいに感じたかもしれません。文章技術評価1 体験談希少度評価0 |
名前: ナメコ ¦ 22:33, Sunday, May 13, 2007 ×
目の不自由な犬が何かを感じて、その世界な世界を体験させた、ということか。 |
名前: ペペ ¦ 14:54, Thursday, May 24, 2007 ×
文章:0 怪異:1 暑い日の昼ひなか、音の無い誰もいない世界。 怖いというより不思議な世界というか。 体験者さんは異様に思えて怖かったのでしょうが、こういう世界を文章で表現というのは難しいですね。
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名前: コウ ¦ 21:11, Thursday, May 24, 2007 ×
全てが文章力にのみ依存したモチーフ、構成ですね。 よほど自信がなければ、挑めない作品だと思う。 私には無理だなあ。 犬を水先案内に仕立てている感がありますが、「見えていない」点がポイントであり、 そこを上手く生かしきるためには、風景描写をもっと頑張る必要があったのではないでしょうか。 キリコに関しては、読み手が「何となくキリコの絵を見ているようだな」と、感じれば成功なのであり、 書き手が提示してしまえば怠慢であると感じました。 |
名前: 藪蔵人 ¦ 18:02, Saturday, May 26, 2007 ×
状況描写を無理に引き伸ばしているように思えた。 「さあ、これから何が出てくるんだ?」と身を乗り出したところで元の世界に戻ってしまい、肩透かしを食わされてしまった。 異界に迷い込んだ話は個人的に好みなのだが、これだけの描写に対して「誰もいなかった」「音が消えてきた」だけでは少々物足りない。
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名前: GPZ ¦ 19:45, Thursday, May 31, 2007 ×
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