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廃院を巡る不条理
 初夏にしてはやたらと蒸し暑い夜だった。

 当時、大学生だった私は友人3人と場末の居酒屋で呑んでいた。
「そういや、あそこの病院、けっこうネットに出てんのな」
 誰からともなくそんな話題が出た。
 
 あそこの病院とは町外れにある廃病院のこと。

 曰く、建物内に足を踏み入れると正面の壁から血が噴き出す。
 曰く、1Fのエレベーター前に白衣の男がメスを持って立っている。
 曰く、3Fの廊下の突き当たりに全身に包帯を巻いた男がいて追いかけてくる。

 心霊スポットを紹介するサイトに、どこかで聞いたような文句が並ぶ。
 しかし、これらの噂は地元に住む自分たちにとっては極めて眉唾物だった。
 
 その病院はバブル景気時に建設計画が持ち上がり、着工したものの途中で業者が倒産。土地と建設中の建物は売却されたが、それを買い取った業者も経営不振で工事は中断。結局そのまま放置され、廃墟と化した病院である。
 つまり一度も開院されていないプレーンな病院。そこで人が死んだことはない。
 私も含めその場にいた4人とも、その病院に立ち入ったことはなかったが、実際に侵入を試みた物好きな友人達から「何か出た」という話は聞いたことがなかった。

「せっかく夏だし肝試しでもしとく?」
「まぁ、あそこは安全牌だろうし」
「なんとなく雰囲気だけ味わえればいいんじゃね?」

 何も出ない。出るはずがない。
 全員がそう思っていた。
 

 田舎の町の外れに建てられた病院の周辺には街灯もほとんどなく、車を降りると途中のコンビニで買った懐中電灯が唯一の灯りとなった。
 
 誰がどういう目的でそうしたのか、病院を取り囲む壁は黒いペンキで塗りたくられていた。
 正面入り口の観音開きの扉には、取っ手同士に錆付いた鎖が申し訳程度に引っ掛けられていたが、一番端の扉がだらしなく開いていて、侵入者に対して全くの無防備状態。
 とはいえ、やはり入り口の前まで来ると建物の中に足を踏み入れるのは少々躊躇われた。
 しかし、先程まで呑んでいたアルコールの勢いで私が扉の隙間を抜けて先陣を切ると、すぐ後に3人が続いた。

 建物の中は荒れ放題だった。
 壁には無数の落書きが施され、床にはペットボトルやスナック菓子の袋などが散乱していた。
 建設途中ゆえに窓ガラスなどははめ込まれていないはずなのだが、なぜか通路のいたるところに細かく砕けたガラスが散らばっていた。
 いくつかの部屋にはどこから運び込まれたのか、ぼろぼろになった布団が転がっていた。

「……やっぱりそれなりに怖ぇな」

 誰かがそう言うと、皆が頷いた。
 しかし、特になにか珍しいものがあるというわけではなく、建物内を一通りまわると、<もういいよ。出ようぜ>ということになった。
 一応ネットで噂されている1Fのエレベーター前と3Fの廊下の突き当りにも行ってみたが、建物内に足を踏み入れた際に正面の壁に異変がなかったように、メスを持った白衣の男が立っていることもなければ包帯男が追いかけてくることもなかった。

「結局なんも出なかったな」
「そりゃそうだ。使われていない病院だぜ」
「ネットの噂、出所どこよ?」

 建物から出ると安堵感は広がったが、なんとなくしらけた雰囲気になってしまい、その夜は各々がそのまま家路に着いた。 
 

 家に到着した頃には時計の針は深夜1時を回っていて、家族はすでに寝静まっていた。
 着替えるのも億劫だったので自室に戻るとそのままベッドに潜り込み電気を消した。

「ギャアアアアアアアアアアアアッ!」

 突如、耳を劈くような凄まじい叫び声。
 驚いて飛び起きた。
 何が起きたのか理解できなかった。

「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!」

 頭蓋を締め付けられるような金切り声。
 叫び声は部屋の中で反響していた。
 見回したが、暗闇に眼が慣れるまで暫く時間が掛かった。

 部屋の隅に影があった。
 正座をした全裸の女。
 汚れているのか、身体の所々がいやに黒い。
 ぼさぼさに乱れた長い前髪に隠れて顔は見えなかった。
 正座をしたまま、頭だけをガクンガクンと前後に大きく揺すっていた。
 女は身体を小刻みに震わせながらゆっくりと立ち上がると、頷くように首を上下させながらベッドに近づいてきた。
 恐怖で身体が硬直して、動くことができなかった。
 声を上げようとしたが、息が詰まり、小さな呼気だけがひぃひぃと口の端から漏れた。
 ベッドの真横まで来ると、女は突然、ガクッと倒れこむように顔を寄せた。
 眼球が在るべき場所は深く抉れ、その痕が私を睨んでいた。
 鋭利な刃物で切り刻まれたように顔中に滅茶苦茶な線が走り、白い肉が見えていた。
 女が〈ばかっ〉と口を開くと、そこから垂れた舌は黒ずんで腫れ上がり、口元には液体が滲んでいた。
 じっとりと湿った女の吐息が私の顔に掛かった。糞尿と黴の入り交じった臭いが鼻腔を突いた。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 再度、悲鳴。
 
 覚えているのはそこまでだった。
 翌朝、母親に起こされるまでずっと意識を失っていた。
 
 
 あの夜、廃病院へ行った友人3人と数日後に顔を合わせる機会があった。
 真っ先に件の女について話を出すと<お前もか>と皆に言われた。
 聞けばあの夜、病院に足を踏み入れた4人全員の部屋に、同じ女が現れたという。

 朽ち果てた顔、全裸の叫ぶ女。

 なぜ私達の元に現れたのかは判らない。
 現在、病院は別の業者に買い取られ、骨組みの一部活用し、老人福祉施設へと姿を変えている。








04:28, Monday, Apr 16, 2007 ¦ 固定リンク ¦ 講評(16) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯

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■講評

そういう老人ホームも何かありそうで怖いですけれど。
廃墟となった病院の噂が眉唾だとわかっていながら、後で4人が同じ恐怖体験をしてしまうというのは、わけがわからないだけに怖い。
文章も読みやすく整理されていたと思います。

名前: くりちゃん ¦ 09:12, Monday, Apr 16, 2007 ×


肝試しには何も出ず、帰った後に怪異が起こる。
申し訳ありませんが、よく聞く怪談とパターンが似ています。
無論、夜現れた女や仲間と同じ怪異に遭ったというのは怖さとしては十分です。が、前半でよくある怪異の列記や、何もない肝試しの描写が多いなど少し冗長に感じた後に出遭う怪異としては物足りなく感じました。
素材:+1 文章:0

名前: 夢屋 陣 ¦ 14:07, Monday, Apr 16, 2007 ×


□素材:0 □恐怖:0 □リアリティー:0 □文章表現力:0 = 0点

驚かすだけの怪異など、もう食傷気味だ。

名前: ゆんく ¦ 21:51, Monday, Apr 16, 2007 ×


最初から最後まで「どこかで聞いたような話」の連続。唯一新しいと言えるのは、「ここが心霊スポットであるはずがない」という点だけだろう。
文章はそこそこ書けていると思う。

(ここであえて無理矢理考察してみる。本当にその怪異の原因は廃病院だったのだろうか。他に原因はありはしないか。四人で立ち寄った居酒屋やコンビニに何か謂われはないか。車で走る途中、かつての事故現場を通ったりはしていないか?)

名前: ナルミ ¦ 01:54, Tuesday, Apr 17, 2007 ×


素材・0 文章・0
肝試し系の話は、もう無理なんじゃないかな。
キャアアアアアアア、という表現は安っぽい感じを受ける。


名前: つくね乱蔵 ¦ 10:31, Tuesday, Apr 17, 2007 ×


キャアアアアアのせいでお化け屋敷にでも入ったかのような軽さを感じてしまう。
文章にこれといった新鮮な点も感じられなかった。

名前: 黒ムク ¦ 12:32, Tuesday, Apr 17, 2007 ×


内容:1 文章:0

本来、でるはずのない怪異が現れたのおもしろい。(現れたのは自宅でしたが)
女の描写も迫力があった。
前半がやや長すぎるのと、「キャアアアアアア」がくどかったのがマイナスでしょうか。

名前: ダウン ¦ 21:28, Wednesday, Apr 18, 2007 ×


ううーん。
「開業されることもなかった」「何かが起きたという話もない」と先に断られているので、現れた女と関連づけていいのかどうか;
でも、廃墟と化したあとに何か事件があったのかな?とも思えますね。個人的には、廃墟って見ただけでいかにも何かがいそうで怖いので;

何も起こるはずがないとタカをくくっていたでしょうから、後で4人とも同じ目に遭っていたと知った時の衝撃はむしろ大きかっただろうなあ。
これから色々起こるのかもしれませんね。4人がトップバッターだったのかも。

女の描写がしっかりしていて怖かった(((;゜Д゜)))
悲鳴は文字でそのまま表すとやけにチープに見えるので、一ひねりほしいところですね。

名前: 13 ¦ 22:56, Friday, Apr 20, 2007 ×


どうしても、この手の語り方(以前にも何度か出てきている手法)は、小説を読まされている気分に陥ってしまい、怪異を楽しめなくなってしまう。
こう感じる作品は、同じ方なのだと想像して、ああ、あの作品の人かなぁなんて思いながら読むんですが、ほぼどれも自分の中での評価が低い。
中には「おっ」と思うものもあるんですが、概ね低いです。
凝る事に凝って書かれた文章と、小説然として構築されている時点で、私はフィクションとして読み進めてしまう。
フィクションだ!と断罪してるわけではなくて(中には断罪してるのもありますが^^;)、そういう風な錯覚に陥ってしまうという事です。
例えば、怪異が起こるまでの前半、つまり怪異が起こらなかったことを書いてる部分は、小説としては十二分に成り立つのだが、こと怪談として読むにあたり、そこまで書き込む必要があるのかが分からないのです。
また、凝られた各描写の中のことが、どれもこれも、あちこちから引っ張ってきてつなぎ合わせたような、パッチワーク的な印象も受け、怪談としても物語としても、自分の中では評価を上げることができないです。
内容ー1 文章0

名前: cross2M ¦ 02:12, Thursday, Apr 26, 2007 ×


現れた女の描写はとても不気味でよいと思いますが、一連のホラー映画に出てくるような霊とオーバーラップしてしまいまいます。廃病院の描写も含め、迫力はあったのですが不思議と怖くは感じませんでした。
4人全員の部屋に、同じ女が現れたというのは凄いですね。文章技術評価0 体験談希少度評価1

名前: ナメコ ¦ 15:24, Thursday, May 10, 2007 ×


おお、こちらの作者さまも書き方に凝っておられます。
なかなか題材も思い起こせば怖いのでは思います。だけど、なぜこの無残な女幽霊の怖さがこちらにまで伝わって来ないのでしょうか?
僕の表現は的確ではないと思いますが、何か「学術書」を読んだときと同じ印象を覚えたのです。ああいった類の本は上手な文で内容を理路整然と的確に書き上げています。
でも、面白い小説とは違って飽きてしまいます。休み休み読まないと疲れてしまいます。
うう、こんな表現でごめんなさい。
味を感じないというか、作者さま独特の個性が余り感じられない、というところですか。一定の水準をたもちながら執筆者独自の個性を醸し出すのも自分たちの仕事かもしれないなあと。
勉強になりました。

名前: 矢内 倫吾 ¦ 23:55, Saturday, May 12, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■□□□□(±0)…a
構成;■■■■■□□□□(±0)…b
怪異;■■■■■■□□□(+1)…c
恐怖;■■■■■■□□□(+1)…d
嗜好;■■■■■■□□□(+1)…e
※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)

 文章を装飾し過ぎてリアリティが失われている。
 折角の怪異が台無しだ。

名前: 空 ¦ 12:20, Friday, May 18, 2007 ×


他にも指摘している人がいますが、文章が小説調ですね。
せっかくのよい素材ですから、調理しすぎないほうがいいと思います。

名前: 梶ゆういち ¦ 00:53, Monday, May 21, 2007 ×


心霊スポット探索ものは嫌いだが、この作品は大丈夫だった。きっと文章のせいだな。

名前: ペペ ¦ 16:28, Wednesday, May 23, 2007 ×


ありがちなシチュエーションを逆手に取った構図は好感が持てます。
そのような謂れがたとえ無くとも、荒れた場所に霊は集まりたがるのかもしれませんね。
人間の方は荒れた場所を「怪奇スポット」として認識しますが、霊の方もそういう場所を「憑きスポット」として活用してたりして。

名前: 藪蔵人 ¦ 14:27, Saturday, May 26, 2007 ×


作者が当事者であるから主観的に書き綴りたくなるのも分かるが、どうにも装飾過多に思えてしまう。営業したことがない病院で怪異が発生した、という点が作品の肝なのだろうが、それ故冒頭で語られている建物に関する噂話が余分にも思える。
「ギャアアアアアア!」は一回だけでおなかいっぱいである。

名前: GPZ ¦ 20:55, Thursday, May 31, 2007 ×



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