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ハナ
「飼い主の贔屓目かも知れないけど」
 うちの犬は物覚えが早い利口な犬なんです、と那須さんは話す。
 トイレの躾は言うに及ばず、その他諸々で苦労をしたことがなかった。
 ハナ、って言うんですけど、と彼女が携帯を差し出す。
 待ち受け画面の中ですっくと立っていたのは柴犬。
 太めの手足とくりっとした墨色の瞳、ふんわりとした茶色の毛並みに、くるんと巻いた尾。
 福々と賢そうな顔をした中々の美犬だ。
 このハナと散歩をするのが、那須さんの日課だった。

 ある休日の午後。
 いつもの様にハナを散歩させようと門を開ける。
 近所の散歩コース。右側に足を踏み出……そうとしたところで危うく転びそうになった。
 リードを持つ右手が、グイグイと左側に引っ張られている。
 見ると、ハナはいつもとは逆方向へ進んでいた。
 ハナ! と叱るが我関せずといった様子だ。
 リードを引っ張ってみたものの、全く言うことを聞かない。
 どれくらいハナと綱引きをしただろう。
 那須さんはついに諦めた。
「おかしいなぁ、こんなに聞き分けのないハナは初めてだなって思ったんですけど」
 今日はハナの行きたい方でいいや、と歩き出すが何か違和感を感じる。
 自分のすぐ傍を歩くよう躾けていたのに、今日のハナはまるで先導するようにどんどん歩いている。
 時折立ち止まってはくるりと振り返り、得意げな顔で何かを促しているようだ。
 おっかしいなぁ、と訝しみながら、どれくらい歩いただろう。
 気がつくと、あまり見慣れない風景の中に那須さんはいた。
 長い塀が続くこの場所に人気はなく、あたりはしん、と静まりかえっている。
 あ、これ。塀の向こうはお寺だ、と那須さんは気付いた。
 ハナと散歩で来たことのない場所。
 ふいにハナが軽やかな足取りで境内に入っていく。
「ハナ、駄目!」
 きつく叱っても、言うことを全く聞かない。
 それどころか勝手知ったる何とやら、といった風に本堂の裏手に回っていく。
 リードを引いて言うことを聞かせようとするものの、逆に物凄い力で引きずられてしまう。
 柴犬は中型犬。何処からこんな力が出るのだろう。
 那須さんを引きずりハナは本堂の裏手に向かった。
 お目当ての場所が見つかったとばかりに、地面をざくざくと掘り出す。
 こらっ! と叱っても、力を込めリードを引いても、掘る勢いは止まらない。
 見る間に小さな土の山が出来上がっていく。
 急にハナは掘るのを止め、土に汚れた鼻先をこちらに向けた。
 何かを咥えている。
 それをポトリと那須さんの前に落とした。
 蒲鉾板のような大きさと形をしている。
 泥汚れの隙間から見える地肌は艶のある黒。
 ほめて、とばかりにハナは那須さんを見上げ、尻尾を振っている。
 残念ながらハナを褒めることはできそうにない。
 何故なら、目の前のモノは〈位牌〉だったからだ。
 咄嗟にハナを抱きかかえ、那須さんはそのまま境内から走り出した。
 お寺が遠くになった頃、そっとハナを地面に降ろす。
 こら、ハナ! と叱ろうとしたときに気が付いた。
 咥えている。あの黒い蒲鉾板のような位牌を。
 どうにかして取り上げようと悪戦苦闘してみたものの、戦利品だと思っているのか頑として口を開けようとはしない。
 結局諦めざるを得なかった。
 迷いながら自宅に帰る間中、ハナは誇らしげに位牌を咥えたままだった。

 色んな意味で疲れ果て、なんとか家に帰り着く。
 居間に入ると、母親が落ち着かない様子で部屋の中を歩き回っていた。
 訳を聞こうとしたとき、「ワン!」と鳴き声。
 庭先を見ると、締め切ったサッシの向こうに得意げに尻尾を振っているハナの姿が見える。
 間髪を入れず「あ、あった! あった!」と母の声。
 見ると、仏壇の前で手を合わせていた。
「さっき仏壇を開けたら位牌が無くなってて吃驚したの。何処いったんだろうって。ああ良かった」
 安堵の表情で微笑む母親。
 位牌は本来あるはずの場所にきちんと鎮座していた――それは、泥で汚れていたけれど。

 ワン! とハナがもう一度吠えた。
 誇らしげに尻尾を振りながら。








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内容: 0文章: 1うちの猫もね、最初のもの覚えはそりゃあ早かったですよ。でも最近はどんどんルーズになってきてしまいまして。これは面白い話ですね。位牌はなぜそんなところに・・・。なぜハナはそれを知っていたのか・・・。ハナが持っていって埋めた?そうかも知れま .. ... 続きを読む

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■講評

不思議な話と思います。
位牌は勝手にでていったのでしょうか。そっちのほうが気になります。
怪異と呼べるか微妙な話で・・・
もっと解りやすい簡単な説明で、文章を短くしてもよかった気がします。

名前: 黒ムク ¦ 13:22, Friday, Apr 06, 2007 ×


いやどれだけ怖い話なのかと期待して読み進めていったのですが。
やられましたな、ハナの得意げな顔が目に浮かびます。
やはり怪異は急に仏壇からなくなった位牌ですね。
可愛らしい愛犬の話よりも、ジャンキーとしてはソチラにひょっとしてドロドロとした怪異があるかも、とそそられます。
素材:0 文章:0

名前: 夢屋 陣 ¦ 16:00, Friday, Apr 06, 2007 ×


柴犬っていいですね。
紀州犬や秋田犬等は家庭で飼うには大きいので手に余るけれど柴犬は丁度手頃な大きさだし、柴犬は小柄な体でいながら人間に媚びず誇り高きところがいじらしい。柴犬にはやっぱり和名が似合いますよね。

「ハナ」のお手柄+御位牌の不思議 というところですが、私は「ハナ」のお手柄よりも、御位牌の方が不思議でなりません。
なぜ御位牌がお寺に移動していたのか、その寺は「那須」さんの檀那寺だったのか、「ハナ」は御位牌に呼ばれたのか…

ただ本堂の裏に行くまでの過程がまどろっこしかったです。

名前: くりちゃん ¦ 21:29, Friday, Apr 06, 2007 ×


まさかその位牌は、ハナが自分で寺まで持って行って埋めたのでは? 犯人が第一発見者のフリをする、という推理小説にはよくあるトリックで‥‥。

とまあ冗談はともかく、不思議な話でなかなか面白かった。

名前: ナルミ ¦ 01:21, Saturday, Apr 07, 2007 ×


ハナ可愛い。怖くはないです。実際に起きても不思議ではない。

□素材:-1 □恐怖:-1 ■リアリティー:1 □文章表現力:0 = -1点

名前: ゆんく ¦ 01:48, Saturday, Apr 07, 2007 ×


待て待て。
那須さんは仏壇に手を合わせないのか?
犬が庭先でくわえてる位牌を、部屋から見てた母が分かったくらいだから、近くでくわえてる位牌を見たときに、那須さん自身も気付くだろう。
まぁ、仏壇に手を合わせたことがないのかもしれないけど。
なくなった位牌をハナがくわえてることに何の疑問も持たず、また怒らずスルーする母、しかも汚れたまま位牌置いてるしorz
とか突っ込んでたら、ハナに誇らしげに「わん」といわれて終わってしまった。

あれ?もしかして位牌って、ハナの口から消えて、勝手に仏壇に戻っていたってオチなのかな?

う〜ん、大事なところで混乱してしまったのか。
だめな私だ。読解力がないなorz
内容0 文章0

名前: cross2M ¦ 11:58, Saturday, Apr 07, 2007 ×


内容:0 文章:0

これは果たして怪談なのかな?というのが正直な感想です。
確かに自然と位牌が仏壇に戻っているは、不思議でしたが。
最初はハナが位牌を隠して、その後、自分で掘り返しただけの話に思えてしまいました。
そこいら辺の説明や描写をしっかりと書いてほしかったですね。

名前: ダウン ¦ 13:18, Saturday, Apr 07, 2007 ×


位牌が仏壇に戻っているのは不思議。家出したのにハナに見つけられてしまって観念したんでしょうかw
誰かに盗まれて埋められたなら、位牌は家に帰りたかったのかもしれないとも思えます。
どっちにしろ、ハナよくやった。撫で回したいw

テンポの良い文章で読みやすかった。
慌てる那須さんと、おかまいなしのハナがきっちり対照的に描かれていてちょっとコミカルw

ところでハナは、脱走癖などはないんでしょうか。従順でお利口さんだと書かれているものの、ハナが位牌をそこへ持ってったのでは…と邪推も;

名前: 13 ¦ 23:49, Saturday, Apr 07, 2007 ×


うーん面白いです(笑)
主人公のハナのひとり舞台ですね。文章もそつなくお上手で綺麗にまとまっていらっしゃるし。
ただ、ハナがお寺へ行くまでの心理描写が細かいのは、単に怪異と展開のみを期待する読者様たちにとっては辛かったかも知れません。また、心温まるような作風にしてしまっているのも全体像が優しくなりすぎてしまって、ボリュームはあるのに味付けが薄い感じにも取れます。
作者様に「怪談のスパイス」をひとつまみ所望いたしますハイ。
しかし僕も、この位牌をハナが埋めたとは思いませんが、位牌がなぜお寺の本堂の裏に埋まっていたのかは異常に気になります。ひょっとして、たまに散歩に出る位牌とか!?それも結構怖いものが!(笑)
お話としては充分水準レベルに達しているものだと思います。

名前: 矢内 倫吾 ¦ 20:34, Monday, Apr 09, 2007 ×


「消えた位牌」くらいのタイトルにして、位牌消失に関する前フリがある上でハナが登場する、ってのはどうでしょうか。ちょっとストレートすぎるように感じまし。

名前: 高田公太 ¦ 22:43, Sunday, Apr 15, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■■□□□(+1)…a
構成;■■■■■■□□□(+1)…b
怪異;■■■■■■□□□(+1)…c
恐怖;□□□□□□□□□(-)
嗜好;■■■■■□□□□(±0)…d
※(a+b+c+d)/4…総合点(小数点以下第1位四捨五入)
※この作品は、恐怖とは直接紐付けする必要性がないと判断したので評価項目からは除外した。

 怪異の力点が捉え辛い。
 初読では、作品の大部分を占めて書かれている「愛犬が位牌を掘り出す」ほうに気を取られてしまった。
 しかしながら、よくよく読み返してみると、凄いのは「位牌の消失」であり「愛犬が掘り返した位牌がいつの間にか仏壇に戻っている」ことであるのに気付く。
 筆者の方の飼い犬を愛でる心情が前面に押し出されて書かれているからか、怪異の比重が前者に置かれ、書くべき後者がお座なりになってしまった印象を受ける。

 どうでもいいことだが、2/20公開の「誰の?」でも書いたが「吃驚」を日常会話に用いるのは不自然ではないだろうか。

名前: 空 ¦ 21:07, Sunday, Apr 22, 2007 ×


位牌を見つける過程が長かったような気がします。飼い犬が位牌を発見したことよりも、位牌がどうして土中に埋まっていたのか?どうして家の仏壇からなくなったのかの方が凄い怪だと思います。
しかし名犬ハナですね。ほのぼのとして心温まるお話でした。文章技術評価0 体験談希少度評価1

名前: ナメコ ¦ 22:38, Wednesday, May 09, 2007 ×


那須さんとハナが散歩で行った事の無いお寺に何故位牌が埋っていたのか…不思議ですね。
いつから位牌が消えたのかは分かりませんが、ハナがそのお寺に無理矢理行こうとしなければ、位牌は行方不明のまま、きっとどれだけ探しても見つからなかったでしょうね。

相手が動物じゃなければ、色々聞く事ができたのでしょうが、何はともあれ、ハナ偉かった。

あと、不思議なお話なのですが、位牌の方に重点をおいても良かったのでは?と個人的な意見なのですが。


名前: フジ ¦ 00:52, Thursday, May 10, 2007 ×


ハナをほめてあげて!ハナは誰かの知らせで位牌を掘りに行ったのでしょう。位牌がなぜ寺に埋められていたのかが薄い。

名前: ペペ ¦ 15:35, Tuesday, May 22, 2007 ×


位牌を掘り当てるところまでドキドキしながら読んだわけですが。
なーんだ自分ちの位牌なら安心だね、と逆に何故かホッとしてしまいました。
いや、不思議ですけどね。

名前: 藪蔵人 ¦ 13:11, Saturday, May 26, 2007 ×


掘り出した位牌がいつの間にか仏壇に戻っているのは不思議だが、掘り出した時点で寺に届けたりしないものだろうか。品が品だけに、自宅まで持ち帰ってしまうのはやや非常識では。
この怪異が話の主体なのか、はたまた犬の賢さを語りたかったのかで評価が分かれるところである。前者ならいいが、後者であるなら積極的に評価をする気にはなれない。

名前: GPZ ¦ 02:35, Monday, May 28, 2007 ×


素材・0 文章・0
犬が可愛いですな。
怪異を語る場所ですので、それだけの理由で点数をあげるのは止めておきます。
位牌が消えたことをもっと掘り下げて欲しかった。

名前: つくね乱蔵 ¦ 07:00, Wednesday, May 30, 2007 ×



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