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潜伏期間
 岩本君と静かに飲んる時に聞いた話。

 岩本君が大学1年の11月。中学時代の同級生、山下君の遺体が海から引き上げられた。
海に向かって突っ走るチキンレースの失敗で、車ごと海に飛び込んだそうだ。
山下君は海面に衝突したショックで気絶して、そのまま溺死してしまったらしい。

 「『人間死ぬときゃ石につまづいたって死ぬ』っていうけどな」
 山下君の葬式の帰り道、ふと工藤君がつぶやくような声で独り言を言いはじめた。

 「無謀運転なんてもんじゃない。チキンレースだもんな。死んで当たり前とまでは言わんけど
あれは自分で死ぬ可能性上げた結果だからな。あれはしょうがない」

 一緒に歩いていた岩本君も心の中では多少同じことを思っていたが、打ちひしがれた山下君のお母さんの葬儀での
姿を見て、口に出してはいけないことだと思っていたので、工藤君がわざわざ口に出すことに反発を覚えた。

 「なんでそんなこと言うんだよ」
 「あ、いや、悪い。そういう意味じゃないんだ」
 「どういう意味なんだよ」
 「悪い」
 工藤君は黙ってしまった。
もう一人、一緒に歩いていた堺君は、悔やみの言葉以外、朝からほとんど口を開いていない。
 気まずい空気のまま三人で歩き、その日はそのまま別れた。

 三人とも、すでに別々の大学に通っていたこともあり、その後連絡を取ることもなかった。

 岩本君が大学二年の六月。堺君から工藤君が入院したとの連絡が入った。
 1週間後、工藤君は亡くなった。すい臓癌だったそうだ。

 工藤君の葬儀の帰り道、堺君と二人無言で歩いていたが、ふいに堺君が話はじめた。

 「お前も知ってる通り、俺らの中学の同級生、五人死んでるだろ?工藤入れて六人になっちゃったけど」
 「ああ、お前や工藤が仲良かったやつばっかだろ?お前らなんか呪われてんじゃね?」
 「・・・・・・。お前とは中学時代ほとんどど遊ばなかったからあんまり知らんと思うけど、俺ら六人、中一から
中二ぐらいまで、毎晩千人塚の辺りで遊んでたんだ」
 「ああ、なんかお袋から聞いたことあるよ。お前らが毎晩千人塚の広場でたむろしてるって」

 千人塚とは、戦国時代、地元を支配していた武将が攻め滅ぼされた時、地元の百姓がその武将の供養の為
戦場に打ち捨てられていた無数の兵士の遺体とともに、その武将の首を埋めたとされている場所である。

 「あの頃、俺らの家の周りで夜明るいのはあそこぐらいだったからな」
 「あそこ、広場もあるけど塚のすぐ横が墓地じゃん。気持ち悪くなかったのかよ?」
 「はじめは肝試し的なとこもあったんだよ。そのうちなれちゃって塚の裏でしょんべんしたり、墓石の上で
ポーズとったりしてたよ」
 「馬鹿だな、ほんとに。で、なんで急にそんな話するんだよ?」
 「あそこで遊ぶのやめたの、中二の一月に桑名が死んだからなんだよ」
 「そうなのか」
 「そのときはみんなやっぱり千人塚とかのせいかなって思ってビビッてたんだけど、その後なんもなかったから
そのうち忘れちゃってたんだよ。でもな・・・」
 「でも、なんだよ。気持ち悪いよ」

 堺君は立ち止まり、岩本君の顔を見ながら続けた。

 「聞いてくれ。中二の一月に桑名が死んだ。高一の八月に大木が死んだ。高二の十二月に伊藤が死んだ。高三の一月に三輪が死んだ
去年の十一月に山下が死んだ。で、今度は工藤が死んだ。全員違う死因だよ」
 「・・・」
 「でも千人塚で一緒に遊んだやつらばっか死んでるんだよ。結構間があいてるから大木ぐらいまでは千人塚とは関係ないって思ってたんだけどな」
 「・・・」
 「だんだん早くなってきてるんだよ。伊藤が死んだぐらいから怖くなってきてな。霊障かもって。でも霊能者とか知らねえからさ。
俺、三輪と、工藤と一緒に神社とか寺とか相談に行ったんだよ。結構いろいろ回ったんだけどな
どこでも『何にもない、偶然だ』って言われるんだよ。」
 「で、どうしたんだ」
 「どうしようもねえよ。最後には自分らでも偶然だって無理やり思い込んでお仕舞いにしたんだ」
 「でも三輪も山下も工藤も死んだ・・・」
 「山下の葬式の帰り、工藤ぶつぶつ言ってただろ?あいつもビビッてたんだよ。違うって思いたかったんだな」
 「今からでも霊能者探せよ」
 「ずーっと探してる。でも見つからねぇ」
 「どうするんだ?」
 「わからねぇ」
 
 岩本君は、正直関わりたくないと思ったそうだ。その後は黙って別れた。

 その年の十月。母親から堺君が死んだという連絡が入った。
 鉄工所で冷却水を流す、巨大な鋼鉄製のパイプを清掃するバイト中に眩暈を起こし、パイプの内壁で頭を打って死んだそうだ。

 「実際七人死んだんです。でも、結局なんだか分からないし霊障だとも思わないけど、気持ち悪い話でしょ?」
 岩本君は愚痴を言うような口調で同意を求めた。

 私は頷いた。








05:25, Saturday, Mar 10, 2007 ¦ 固定リンク ¦ 講評(18) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(6) ¦ 携帯

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■講評

うう〜ん。評価が難しい。
「偶然でしょ。」と言われればそれまでの話なんだけど、そう割り切れない気持ち悪さがある。
そう割り切れなく感じさせられなくなるのは作者の文章力によるものでしょう。
これが並みの人が書いたら怪談として成立しないんじゃないだろうか。
読み手をグイグイ引きこんでいく文章に誤魔化されているような感じもするのでこの点数です。

名前: 撃墜王の孤独 ¦ 17:13, Saturday, Mar 10, 2007 ×


偶然でなければすごい話ですね。
やはりそ遊び仲間に共通の何かがあったのでしょう。
車ネタかと思っていたら、話は祟りの方に向かっていって、確証のない終わり方だったが、面白かった。

名前: くりちゃん ¦ 18:58, Saturday, Mar 10, 2007 ×


確かに評価が難しい話だ。
本当に祟りのせいなら怖いのだが、偶然であるという可能性も捨てきれない。暴走族の死亡率が高いのは当たり前という気もするし。
説得力を持たせるには、全員の死因を明記すること、そして、死ぬ前におかしな言動があったのならそれも記述すること、などが必要だろう。

名前: ナルミ ¦ 02:01, Sunday, Mar 11, 2007 ×


内容:0 文書:0

たたりなのか偶然なのか、はっきりしないところが恐怖のキモなのでしょう。
でも、途中がくどくてあまりに怖くはありませんでした。

名前: ダウン ¦ 02:05, Sunday, Mar 11, 2007 ×


偶然ぽいですが、最後の7人が
7人みさきみたいで面白いので1点。

名前: 高尾 ¦ 11:02, Monday, Mar 12, 2007 ×


3人は死因が書かれていますが、いずれも、亡くなるのも無理はないと思われるものです。(冷たい言い方ですが、怪談として読んだ上で思ったことなのでご了承ください)
千人塚でこれといった何かが起きたor見たといったエピソードもないので、結びつけて考えづらいです。
寺や神社でも偶然だと言われたというところで、「うん、偶然じゃないかな」とさらに思ってしまいました。(−1)

偶然にしては続きすぎている、と思ったのも否定はできません。なんたって7人ですから。
呪われても仕方ないような不謹慎な行動をとっていたとはいえ、前ぶれもなく殺されたのだとしたら、罰が当たったでは済まされない怖さがあります。(+2)

名前: 13 ¦ 20:45, Monday, Mar 12, 2007 ×


犠牲者が7人? 訳ありの塚での因縁、タイトルからしても怪異に結び付けてるのでしょうが、正直、疑問で怖くは感じませんでした。
ちょっと誘導が強かった印象。
作中の「気持ち悪いでしょ?」には私も頷きますが。
素材:0 文章:0

名前: 夢屋 陣 ¦ 15:12, Tuesday, Mar 13, 2007 ×


気持ち悪い話です。
偶然が重なれば必然となってしまうものです。
そこにはなにがしかの因果関係を求めたくなってしまう。
それが軸になっている話なのですが、いまいちその世界に入り込めずにいます。
抑揚無く語られるからでしょうか。
もっと、事象の気味悪さをかもし出せるかもしれませんね。
内容+2 文章0

名前: cross2M ¦ 17:09, Saturday, Mar 17, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■□□□□(±0)…a
構成;■■■■■□□□□(±0)…b
怪異;■■■■■□□□□(±0)…c
恐怖;■■■■■□□□□(±0)…d
嗜好;■■■■■□□□□(±0)…e
※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)

 偶然を重ねることによって怪異とする譚であるが、どうにも納得できないのが、当事者達が怪異に冒される要因である。
 7人の死を以てまで償うほどの行為がこの作品中には提示されておらず、おそらく決定的な要因などなかった=偶然の範疇という疑念まで沸いてくる。
 考えられる冒涜は「千人塚の裏で小便」「墓石の上でポーズ」であるが、死亡した者全員がこの行為を行ったわけではないだろうし、また、死に値するほどの行為とも思えない。
 そう考えると、やはり千人塚、または隣接する墓場と友人達の死を結び付けること自体に無理が生じる気がする。
 
 前半で次々と出される友人の名前も読み手を混乱させかねない。
 誰も突っ込んでいないが、チキンレースという単語が常用されていることに少々面食らった。

名前: 空 ¦ 00:28, Sunday, Mar 18, 2007 ×


『千人塚とは、〜』の説明は歴史だけではなく、現代でもよくない事が起こる場所なのかどうかの情報がほしかったです。

岩本くんと亡くなられた方たちとは、あまり顔も合わせないほどの遠い関係のようですので、そこが話として弱い、情報量が決定的に少ない部分だと思いました。

『結局なんだか分からないし霊障だとも思わないけど、気持ち悪い話』とありますが、確かに読み手はその通りの印象しか受けないのではと思います。

名前: 雛人 ¦ 15:46, Sunday, Mar 18, 2007 ×


文章:+1 怪異:+1

本当に、気持ち悪い。
偶然といってしまえば偶然だし。
しかもお寺さんなども何もないと認めている。
それはひょっとして祟りではなくて、最初の一人が原因だったり…。

名前: 晴。 ¦ 16:57, Wednesday, Apr 11, 2007 ×


これは純粋に祟りとか呪いとしか言いようがない。亡くなった方には気の毒だが、怒らせても仕方がないような事を面白半分にしてしまったっからでしょう。個人的にこういうお話は好きです。
霊能者を探しても見つからなかったというのも、邪魔をされていた祟りとしか思えませんね。
読んでして素直に怖さを感じました。
章技術評価1 体験談希少度評価2

名前: ナメコ ¦ 14:20, Saturday, May 05, 2007 ×


チキンレースって本当にやってるんだ。一週間ですい臓ガンで死ぬんだ。マジかよ?霊障だからか。しっかし、この話に限らず、祟り系の話で、何でまとめてやらないんだろうなというのがありますな。

名前: ペペ ¦ 09:45, Saturday, May 19, 2007 ×


素材・0 文章・0
チキンレースの失敗は、祟りも何も関係ないでしょうねぇ。
別の講評にもありましたが、
徐々に間隔が短くなるぐらいなら、
まとめて祟ればいいのになと思います。

名前: つくね乱蔵 ¦ 21:35, Monday, May 21, 2007 ×


偶然の一致にしては犠牲者が多すぎる点では、強い因縁をひしひしと感じる作品ではある。
徐々に間隔が短くなっているのも、恐怖を煽るスパイスとして作用している。
しかし、祟られるに至った原因として、決定打となる事件が発生していない点が、怪異を水準点止まりにしてしまっているように思う。

名前: GPZ ¦ 00:26, Tuesday, May 22, 2007 ×


因果話は実話怪談ではかえって扱いにくい気がするのは私だけでしょうか。
この話では工夫もあって、上手く使っているように思えます。

名前: 藪蔵人 ¦ 21:44, Tuesday, May 22, 2007 ×


これは死に方も何もかもがすべてバラバラにも関わらず、関わった全員が死んでしまったという一家断絶怪談のパターンで、全てはラストシーンに集約されています。
そういった意味でグロもショッカーもどっかーん出てますも存在しません。
あるのはただ薄気味悪さ。その意味では成功しているのではと思います。
何かはわからない。しかし確実に死んでいく。最後まで正体不明。まるで「ファイナル・ディスティネーション」(でしたっけ?)を地で行くような展開。
ああいった不可解な死に様シーンが付随しないと理解できない方もいるとは思いますが、それは活字でやると陳腐なだけでは?と僕は思います。
強烈な一発はないですけど、文章巧者のような一編でした。

名前: 矢内 倫吾 ¦ 08:51, Thursday, May 24, 2007 ×


七人ミサキを思わせる話ですね。確かに偶然と言えばそうかも知れませんが、偶然が積み重なるその事自体が怪異であるとも考えられるわけで…
良い意味でのモヤモヤ感や気味の悪さがありました。

文章1 怪異1 =2

名前: 久遠平太郎 ¦ 21:36, Wednesday, May 30, 2007 ×



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