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通り道
 今から十四年ほど前の話。僕の勤務していた会社のビルは古かった。銀座六丁目にある雑居ビル。当時で築四十年は経っていると聞いていた。一階から三階にかけては飲食店が入り、四階からは各階様々な業種の会社がテナントとして入っている。このビルは入口に入った瞬間から何か陰気な湿った空気を感じる。エレベーターに乗り、六階で降りる。この会社の業務内容は、紙媒体のセールス・プロモーション・ツール制作を中心としたデザイン・プロダクションだ。この業界は当然納期の迫った仕事も数多く、デザイナー職の社員は徹夜も余儀なくされていた。僕もこの会社のデザイナーだった。
 この日は旅行代理店のツアーパンフレットの入稿準備をしなければならなかった。明朝には印刷会社の営業が原稿を引き上げに来る。朝から仕事にかかったにもかかわらず、午前零時を回った時点で全体の三分の二しか出来上がっていなかった。
 余談ではあるが、このビルには管理人が常駐し、午前零時を越えると、三階から四階にかけての階段の踊り場にシャッターを降ろし、施錠して誰も出入りが出来ないようにしてしまう。当然エレベーターも電源を切ってしまうので動かなくなる。
 一人会社に残り、作業をしていると玄関のドアが開き、管理人が顔を覗かせた。
管理人「今日はお泊まりですか?」
僕「はい、泊まります」
管理人「それでは階段のシャッター、降ろしますね」
僕「お願いします」
 いつもは世間話を多少するのだが、今日は作業に追われているので最低限の会話に抑えて仕事に専念する。
 それから一時間近く経った頃、玄関から人が入ってきた。
 作業中の視界ギリギリのところに人影が見えて、玄関から奥の会議室に消えていく。僕はおもむろに、
「忘れ物ですか? こんな時間に誰ですか?」
 と、問いかけるが返事がない。とりあえず会議室の方へと行ってみた。照明もつけずに何をしているんだと思い、蛍光灯のスイッチをオンにし、奥へと進む、が……誰もいない。
 待てよ? さっき管理人がシャッターを降ろし、鍵を掛けたので誰も入れない筈では?
 会社の玄関の脇のエレベーターの前に行ってみる。やはりこれも動いていない。少し気味が悪かったがそうもいっていられない。作業に戻らなきゃ。
 それから明け方近くまで、玄関から奥の会議室にかけて何人も黒い影のような人型が歩いて行く。行ったきりで一つも戻って来ない。
 空が明るくなりはじめた頃にやっと仕事が終わった。さすがに眠かった。この会社内でゆっくり足を伸ばして寝ることの出来る場所といえば……奥の会議室のテーブルの上しかなかった。しかし、そこはさっきから人影が何人も入ってきては消えている場所でもある。
「気味悪いけど、背に腹はかえられない……か……」
 ブツブツと独り言を呟きながらテーブルに大の字になり仮眠をとった。そして、出社してきた別の社員に起こされ、入稿も無事終了。
 その晩の深夜に帰宅して、すぐに寝ようと照明を消してベッドに仰向けになると、僕の真上に、ちょうど交通事故の現場に白墨で書かれているような輪郭の人型がボーッと光りながら浮いていた。さすがに腹が立ち、人型に向かってこう叫んだ。
「もう、いい加減にしてくれよ! 僕は眠いんだよ!」
 一度横を向いて、また仰向けになると、もう人型は消えていた。連れてきてしまったのかも知れなかったが、それ以来人型を見ることはなかった。
 数日後、会社の上司から聞いた話だと、最近、怪談話で有名な某タレントがこのビルに取材に来たらしい。“銀座六丁目の幽霊ビル”として。
 今年の一月に銀座に出掛ける機会があった。そのビルは今でも健在だった。








05:10, Friday, Mar 09, 2007 ¦ 固定リンク ¦ 講評(19) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(6) ¦ 携帯

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■講評

切羽詰った仕事がある時、そんな時怪異は邪魔なだけですね(笑
話は大したこと無いのですが、やたらと共感してしまいました。
そこを買って+2で。

名前: 水無月あくあ ¦ 10:31, Friday, Mar 09, 2007 ×


冒頭から冗長で書き込みすぎかと。怪異にたどり着くまでに疲れを感じました。
で、キモの怪異の印象が薄いです。何を、どう伝えるかをもう少し整理してみては。
素材:+1 文章:−1

名前: 夢屋 陣 ¦ 17:12, Friday, Mar 09, 2007 ×


始まりが詳しく書いてあったので、怪異も詳しく激しく書いてあるかと思ったら尻つぼみな感じだった。始まりの書き方が上手かったので期待したのだが。

名前: くりちゃん ¦ 22:29, Friday, Mar 09, 2007 ×


怪異自体があっさり書かれているのに、それ以外の部分が長すぎる。
怪異をもっと詳しく描写して、それ以外の部分を削ればよくなったと思う。

名前: ナルミ ¦ 23:36, Friday, Mar 09, 2007 ×


内容:1 文章:0

怪異の話にいたるまでが、少し無駄な描写が多かったと思います。
通り道というタイトルには、納得しました。

名前: ダウン ¦ 00:50, Saturday, Mar 10, 2007 ×


意地悪な見方をすれば「徹夜による疲労で幻覚を見たんじゃない。」とすごく失礼な感想が言える話です。(すいません。)
体験者である作者にとっては怖かったと思いますが、僕はこの話に恐怖を感じませんでした。
もう一度あの時いったい何が怖かったのか客観的に洗い出す必要があると思います。
前置きも長すぎです。

名前: 撃墜王の孤独 ¦ 17:36, Saturday, Mar 10, 2007 ×


これも書き込みが濃くて、怪異が消し飛んでしまっている例でしょうか。
もう、怪異が起こるまでの部分なんて、「納期が明朝の仕事がまだ3分の2しか終わっていなく、しぶしぶ一人で残業して作業する羽目になった」くらいで終わったしまっていいところではないかと思うのですが。
自身に起こったことは、細かいところまで書いてしまいたくなるところを、ぐっと堪えて書く勇気が必要だと思います。
怪異が起こるまでに疲れてしまいますから><
内容0 文章ー1

名前: cross2M ¦ 23:14, Friday, Mar 16, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■□□□□(±0)…a
構成;■■■■■□□□□(±0)…b
怪異;■■■■■□□□□(±0)…c
恐怖;■■■■■□□□□(±0)…d
嗜好;■■■■■□□□□(±0)…e
※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)

 結局筆者の方が書きたかったのは、怪異そのものではなく、多忙な身の上についてではなかろうか。そのような印象を受けるほど怪異についての書き込みが雑である。
 浮かぶ人型の発光体はそれなりに興味深いのだが、如何せん作品全体に不要と思われる表記が多すぎる。
 特に、結末に書かれたタレントのくだりなどは怪異に説得力をもたらす意図で加えられたものであろうが、全くの逆効果といっていいだろう。
 最も致命的なのは、この話は第三者から取材されたものではなく、筆者本人が体験者として書かれた作品であるという点である。
 怪異の出現を目の前にして、一喝して寝入ってしまうなど怪異を書く者のする行為ではないと私は思うのだが。
 怪異に対する探究心の無い者に良い怪異譚など書けるはずもない。

名前: 空 ¦ 08:06, Saturday, Mar 17, 2007 ×


『幽霊ビル』として有名ならば前半でそのエピソードなどを披露してくれたほうがよかったのでは。
そこから実体験に繋がるような流れで。

会社では『黒い影』だったのに家では『白墨の人型』になっていたことにも触れてほしかったです。

気味が悪いけど現実の生活のほうが大事というスタンスは一般的なものなのかもしれませんね。
体験者によって怪異の流れも変わってしまうということでしょう。

名前: 雛人 ¦ 06:27, Sunday, Mar 18, 2007 ×


丁寧な説明なのはわかるが、ちょっと無駄な部分が多い。
最後に銀座六丁目の幽霊ビルともってくるなら、最初にビルに関する説明は省いてもいいかと感じる。
忙しいことに関しても、それほど丁寧に書かなくても読者はある程度判断できるものでは?
それだけ有名な幽霊ビルならほかの体験談も取材したうえで、書いたほうが幽霊ビルとしての説得力も出てくるのではないでしょうか。
建物ネタは大好きなだけに残念です。
長く、丁寧すぎた文章で、大切な部分がぼけて見える。

名前: 黒ムク ¦ 13:22, Tuesday, Mar 27, 2007 ×


文章:0 怪異:+1

微妙。
いらない部分が多すぎる気がします。
が、そのいらない部分に共感(笑)
怪異なんぞ相手にしてられないほどきつきつの仕事というのはありますよね。
がんばってください。

名前: 晴。 ¦ 15:43, Wednesday, Apr 11, 2007 ×


>鍵を掛けたので誰も入れない筈では?
先に「シャッターを閉められている」と教えてもらっているので、「そりゃそうでしょ」位にしか思えず;
閉められてから1時間も経っているし、ご本人も考えなくてもわかるのでは。詳しい説明が先回りしていて、損してます。

けれど、ご本人も閉じ込められてるってことなんですよね。怪異を目の当たりにしながら、逃げ出すこともできずに働くなんて辛すぎる!
家にまでついてくるなんて、どれだけしつこいんだよとorzお疲れ様でした。

名前: 13 ¦ 16:19, Friday, Apr 13, 2007 ×


お仕事の凄まじさのインパクトが強くって、肝心の怪異がかわいいものに思えてしまった。
クッキー型みたいな人型を思い浮かべてしまった。懐かれてしまったのですね。
文章技術評価1体験談希少度評価0

名前: ナメコ ¦ 23:23, Sunday, May 06, 2007 ×


冗長な部分あり、疲れた。簡潔に書けば、評価アップ。

名前: ペペ ¦ 16:59, Friday, May 18, 2007 ×


全体的に冗長な文章、という印象を受けた。
特に、導入部が無駄に長く感じた。多くの読み手はここでだれてしまうのではないだろうか。これが怪異と密接な関連性があればいいのだが、それも殆ど無い。あれもこれもと詰め込めばいい、というものではない。
そのため、肝心の怪異についても「ああ、霊道だったわけね」で済まされてしまう。書き方をもっと工夫すればよかったのだろうが……。

名前: GPZ ¦ 22:58, Monday, May 21, 2007 ×


これも書き方に工夫が要りますね。
全体の焦点がぼやけ気味なんで、非常に勿体ないです。

名前: 藪蔵人 ¦ 21:07, Tuesday, May 22, 2007 ×


うーん初球スクイズを喰らって、しかしそのままアウトになってしまったという印象ですか…。
怪異よりも、人物の感情描写が勝ってしまっています。他の部分は削って怪異の描写をクローズアップしてそこに重きを置くべきではと感じました。オチは一応付いているのですが何か「いいわけ」めいたものにしかとれませんのでご一考を。
お話の長さに比較して、ネタもバランスが悪いです。これだけの精密描写が出来るのですから、いまさら対策は練られているのでしょうが(笑)
ただ、怒鳴って消えてしまった霊って、何か気弱ですね。本当にぼよよよよんって感じで、そこが通り道をウロウロしている霊のゆえんなのでしょうか?

名前: 矢内 倫吾 ¦ 10:23, Thursday, May 24, 2007 ×


素材・0 文章・0
長い。余計な情報が多すぎる。
もう少し校正していただきたい。
怪異にたどり着くまでに疲れてしまう。

名前: つくね乱蔵 ¦ 15:56, Friday, May 25, 2007 ×


>交通事故の現場に白墨で書かれているような輪郭の人型がボーッと光りながら浮いていた。
という部分はちょっと珍しかったのですが、全体的に人物描写のほうが怪異より勝ってしまっているため、怪異が埋没してしまったように感じました。
ところで、>怪談話で有名な某タレント って稲川さん? “銀座六丁目の幽霊ビル”というのはちょっと心当たりがないので、後で調べてみます。


文章0.5 怪異0.5

名前: 久遠平太郎 ¦ 22:58, Sunday, May 27, 2007 ×



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