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ちどり足すくみ足
 年度末の残業からようやく解放され、終電を降りてとぼとぼと家路を辿っていた。
 人もまばらとなった繁華街を背に数分歩いて細い路地に入ると、似たような家が立ち並ぶ住宅街が見えてくる。
 家々の明かりが消え、闇と外灯の光が縞を描く道路は寒々しく見えて、冬のこの風景が嫌いだった。早く帰って温かいものを飲もう。
 そこで、コーヒー豆を切らしていたのを思い出した。
 疲れた体を引きずってコンビニまで戻る気力はなく、自販機で缶コーヒーを買うことにした。
 二つ、三つ……いつも通り数えながら四つ目の角を曲がる。あとはコーヒーを買い、五本の外灯を数えれば、部屋でゆっくりと寛げる。
 四つ目の角を曲がって、自販機から五本目の外灯の下。新居に越したばかりの頃に泥酔して帰り、自分の家がわからなくなって以来、数えながら帰るのが習慣になっていた。

 鞄の中から財布を取り出し顔を上げると、二本目の外灯の下に人影が見えた。
 極端に背中を丸め、ふらふらと歩いてゆく大柄な後ろ姿。スーツを着ているようだ。今にも転びそうな足取りから、酔ったサラリーマンだと思っていた。伸ばした手は道路に向けられていて、何かを捕まえようとしているように見えた。
 一旦闇に消えた男が三本目の外灯の下に現れると、まだ何かを追いかけている。自販機に硬貨を入れながら、その滑稽な様子を眺めていたが、おかしなことに気付いて気味が悪くなった。
 どこから来たんだ?角を曲がって来た時には、誰もいなかったじゃないか。
 男がピタリと止まり、かがみこんだ。
 缶コーヒーを取り出そうとしていた掌に、汗が滲んだ。
 おもむろに立ち上がり背筋を伸ばしたその男には、首から上がなかった。
 ここから五十メートルくらい離れているだろうか?自慢の視力を棚にあげ、これは錯覚に違いないと自分に言い聞かせた。男は首のあたりにバスケットボール大の楕円形の物体を乗せると、軽く左右に動かして位置を整えるような仕草を見せた。
 歩き出した男が、五本目の外灯、うちの前にさしかかる。そのまま通り過ぎてくれ。左右に揺れながらゆっくりと進む歩調に苛立った。
 男はうちの前で立ち止まった。楕円形のてっぺんに両手を添え、左右に動かしては首を傾げている。座りが悪いとでもいうのか?冗談じゃない、早くいなくなってくれ!心の中で叫ぶと、男の肩がビクッと上がった。と同時に、楕円形の物体はゴロッと道路に落ちた。勢いよく転がり、男からどんどん離れていく。
 男は慌てた様子で、再び背中を丸めてよろよろと追いかけながら遠ざかっていった。

 男が見えなくなってからも、一歩も踏み出すことができなかった。足の裏は道路に根が張ったように固まり、膝はがくがくという音が聞こえそうなほど震えている。
 動けないので自販機まで迎えにきてくれと家に電話した。
 家はもう目の前だろう、そんなに酔っているのかと責められた。
 どんなに飲んでも頭をなくしたりはしない、と言い返すと、呆れ顔の妻が玄関から出て来た。








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 >。男は首のあたりにバスケットボール大の楕円形の物体を乗せると、軽く左右に動かして位置を整えるような仕草を見せた。 これが取れた首を乗せなおしている、置き直している?動作とすぐに理解できなかったんですよ。 ... 続きを読む

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■講評

-1と-1
語りがどんな人なのか、を追っかけてしまってポイントのずれた読み方をしてしまいました。行ごとに、「若めの男の人っぽい」「年度末=3月末でまだ寒い」「人は居ない」で!なに?!角が何個めで外灯(街灯?)が何個だって!!! 自分が間取り図や配置図をイメージ出来ないのをかなり思い知りますです。屈んだサラリーマンは登場と共にネタバレしたので新鮮に語るにはつらいキャラクターですが、恐怖の場所がそれ以降なので楽しめました。

名前: ちみ ¦ 11:56, Friday, Feb 23, 2007 ×


体験者の恐怖を追体験することで怖さが伝わるのでしょうが、状況説明などの情報の多さに気が向いて、怖さを感じ取れませんでした。
素材:+1 文章:−1

名前: 夢屋 陣 ¦ 13:49, Friday, Feb 23, 2007 ×


「…自販機で缶コーヒーを買うことにした。
 二つ、三つ……いつも通り数えながら」
というところ、たくさんコーヒーを買うんだなと思っていたら、道の話だった。これでは混乱する。
後半「鞄の中から財布を取り出し顔を上げると〜」からが冗長に流れている。あれも書きたい、これも書かなきゃ、と取り入れすぎた感じがする。

首に逃げられているサラリーマンは滑稽で気に入ったのだが。

名前: くりちゃん ¦ 14:49, Friday, Feb 23, 2007 ×


楕円形の物体。絶対に「頭」って言わないんですね…。いや、それ頭でしょ!頭じゃなかったら、それはそれで気味悪いです。
自宅の前で立ち止まったところで、家に入るのか?どうするんだ?と思ったら、また頭を落とすとは。エンドレスの予感です。(+1)

絶対に「頭」と言わないのと同様、一人称が全くないですね。これは狙ったものでしょうか?
ご自分の体験だったのなら、感じたことをもっと書いた方が、伝わるものが大きいです。
取材した体験談を本人談風に書いたような印象を受けました。(−1)

名前: 13 ¦ 20:27, Friday, Feb 23, 2007 ×


怖がらせようという意図が見えてしまって、かえって怖くなくなっている感じです。
体験談なのか聞き書きなのかも曖昧ですね。
聞き書きに徹した方がよかったのではないでしょうか。

名前: 丹羽 ¦ 20:52, Friday, Feb 23, 2007 ×


真夜中に首を拾ったり、落としたりしながらフラフラ歩く男に会ったら、確かに腰を抜かしかねないですね。怪異に+2です。
表現は気になる点がいくつかあります。
前の方も指摘しているように、位置を示す為の街灯の数がずっと気になって話に集中できませんでした。
“首のあたりにバスケットボール大の楕円形の物体”は頭の事なのでしょうか。それとも頭のような何か別のものを不自然に乗せている事で恐怖を更に煽ろうとしているのでしょうか。

>どんなに飲んでも頭をなくしたりはしない、と言い返すと、呆れ顔の妻が玄関から出て来た。

自販機の前っていうのは、もう家のすぐ前だったんですか?地理が全く理解できずお手上げで、不自然に感じてしまいました。
しかしこの部分の表現にはちょっとひかれました。
全体に独特の雰囲気があっていいと思うのですが、もう少しシンプルに書かれた方が怪異そのものをじっくりと味わう事ができるようになるのではないでしょうか。文章に−1で。

名前: 飛泉 ¦ 23:46, Friday, Feb 23, 2007 ×


妙にディテールが詳しい割には、体験者の性別・年齢・家族など、基本的な情報が抜けているので、どうにもイメージがつかめなかった。
妻が最後に登場するのも唐突。前半で言及があってもよかったと思う。
怪異自体はありがちといえばありがちだが、実際に体験したら、やはり怖いだろう。

(余談だが、「年度末」は通常は3月末のこと。「冬」というほど寒くはないだろう)

名前: ナルミ ¦ 00:42, Saturday, Feb 24, 2007 ×


ちょっと間の抜けた怪異ですが、私はいい意味で印象に残りました。

文章は少し状況の説明が丁寧すぎたのではないかと感じました。
分かりやすくイメージは出来ましたがその分、五十メートルも離れてるんだから大丈夫、と恐怖との距離を持って読んでしまいました。
全体的にイメージしやすい内容だったのですが、『楕円形の物体』だけはシックリこなかったです。
ここは一番大事な部分だったのではないでしょうか。

あと最初のコーヒー豆の件と最後の妻とのやり取りは、真ん中の怪異を引き立てようとしてのものかと思いますが、ちょっと間延びした印象を持ってしまいました。

名前: 雛人 ¦ 00:54, Saturday, Feb 24, 2007 ×


内容:1 文章:0

ずいぶん、詳しく状況が書かれていますね。
それはともかく、自分の首を拾っている男という異常な場面なのに、どことなくユーモラスの漂う感じがして面白かったです。

名前: ダウン ¦ 01:06, Saturday, Feb 24, 2007 ×


ブロッケン伯爵も落ちぶれたな(笑)
首が転がる男の絵を脳裏に描くとかなり怖さ秀逸。ところが文章の流れが怪異に追いついていないのがとても気になりました。
滅多に文体は気にしないほうなんですが、想像するのに絵が細かすぎてちょっとくたびれたなーと思うあたりでようやく怪が始まった…。
「ちょっとお客さん、いいとこはこれからだよ」っと言われても帰るお客も出ますよ出し惜しみのストリップ(?)
ディティールを簡略化して整理するだけであっという間に秀作怪談に生まれ変わる要素いっぱいのネタですから、またリライトしなおしてみるのもよろしいかと。
最後の段落は、妙なリアリティーがあって面白かったです。いや、これ本当。

名前: 矢内 倫吾 ¦ 01:07, Saturday, Feb 24, 2007 ×


怪異:動きの愉快な幽霊さんです。滑稽っていうか。
面白いんですが、これだけの長文で表現する必要があるのかなぁと。+1
文章:動作一つ一つの描写は丁寧ですね。想像も容易です。
ただ、怪異自体が心霊落語向きであるのに、無理に恐怖を引き出そうとした結果、かなりの長文になってしまった感があります。
これだけ書けるなら、心霊落語に挑戦してみてはどうでしょう。+0.5

名前: brother ¦ 21:37, Sunday, Feb 25, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■□□□□(±0)…a
構成;■■■■■□□□□(±0)…b
怪異;■■■■■■□□□(+1)…c
恐怖;■■■■■□□□□(±0)…d
嗜好;■■■■■■□□□(+1)…e
※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)

 怪異自体は妖怪の類を連想させる振る舞いをしておりなかなか興味深いものである。
 作品全体を通して、描写が非常に丁寧であると感じるとともに、とにかく気になったのが前半部の執拗なまでの当事者周辺描写である。ここまで事細かに書く必要が果たしてあったのだろうか。
 最後の結末の一文、話の括り方から想像するに、もしかしたら筆者の方は装飾した文章を好む方であり、それが過剰に作品中で表されているのかもしれないと思った。

名前: 空 ¦ 12:29, Thursday, Mar 01, 2007 ×


もう少し簡潔にまとめれば怖さが引き立ったかもしれないですね。奥さんに必死で説明する絵が浮かびます。

名前: 竹下 登 ¦ 20:29, Thursday, Mar 08, 2007 ×


状況は面白いんだけどなぁ
行間で読ませられるようなところまで、文字が埋まっていて
印象としては黒いです。
書き込みの異常に多い漫画を黒い漫画と表現するんですけど、そんな感じでしょうか。
ネタが面白いだけに、すごく惜しい><
内容+2 文章−1

名前: cross2M ¦ 18:02, Saturday, Mar 10, 2007 ×


文章:-1 怪異:+2

頭の中で書くべきことが整理できていないのか、文章が読みにくいのが残念です。

自分の首を拾って位置を探り、心の中で罵倒されたらびくりとし、落として慌てて追いかけていく。

とてもコミカルで面白い怪異なだけに残念。
でも、それをさっぴいても上記のコミカルさは秀逸。

名前: 晴。 ¦ 17:57, Friday, Mar 16, 2007 ×


タイトルも、怪異も非常にコミカルなのに文章は重たいなあ。
どういう作品を意図したのかちょっとわかりませんね。
怪異自体非常に珍しく、面白く、怖いのに印象に残らない感じでした。

名前: 藪蔵人 ¦ 20:22, Tuesday, May 01, 2007 ×


小説のような文体ですね。体験者さんが怪に出会い、あせる心理描写がとてもよく表現されていると思います。 自分の首を追いかけ、またはめて、外れては追いかけるというのを繰り返している男性はとても恐いはずですが、滑稽でコントのような感じで、笑ってしまいそうです。
奥様が迎えに来られたので、一応ほっとしましたね。文章技術評価1 体験談希少度評価1

名前: ナメコ ¦ 14:14, Sunday, May 06, 2007 ×


やや装飾過剰な点が気になった。
実話怪談において、必要以上に文章を飾ると途端に小説ぽくなってしまう。読み手によっては、作為的な感がある作品、と受け取ってしまうかもしれない。
とは言え、怪異そのものは興味深い。謎の男に対して、不気味さよりもユーモラスさすら感じる。体験した当人にとっては、たまったものではないだろうが。

名前: GPZ ¦ 22:26, Saturday, May 12, 2007 ×


超-1では珍しい文体で新鮮な印象を受けました。
ただ、文体の所為か、怖くて不気味な話のはずがシュールな怪談小説のように感じてしまったのが残念です。

文章0.5 怪異1 =(繰り上げて)2

名前: 久遠平太郎 ¦ 20:05, Sunday, May 13, 2007 ×


怖いと思うのですが、全体的に余分な部分が邪魔しているように思います。

名前: ペペ ¦ 16:07, Thursday, May 17, 2007 ×


素材・0 文章・−1
書き込み過ぎ。
書き慣れているように思えるが、
技に溺れた気がする。
怪異自体は面白いが、要するに
落語の首提灯だ。

名前: つくね乱蔵 ¦ 13:23, Friday, May 25, 2007 ×



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