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寂しい人形
玉枝さんは人形が嫌いである。
「そう、特に寂しい顔をした人形が、ね…」

彼女の実家は北海道。
高校を卒業した玉枝さんは、妹さんと一緒に横浜にある伯母の家に住んでいた。
その人形は、友人の結婚式の引き出物だったという。
掌に載ってしまうくらいの、小さな博多人形の女の子。
「とても可愛いらしかったのだけど、どこか寂しい顔をしていたのよね…」
玉枝さんはそれを伯母の家の居間に飾っておいた。
一年後、妹に縁談が持ち上がり、彼女は横浜の家から引っ越して行った。
伯母と二人きりになった寂しさを紛らわすために、玉枝さんは自分のお気に入りの写真をその人形の隣に飾ったという。
「北海道にいる頃の、父と私と妹が、三人並んで写っている写真でした…」
すると、あの女の子の人形にピシッ、と亀裂が走ったのである。
「慌てて接着剤で修理したんですが…」
しばらくして、北海道の実家から電話が掛かってきた。
「父が、食道癌だっていう連絡で…」
国立の癌センターで最高の治療を受けられた甲斐もなく、父親は半年後に亡くなった。
父親の葬儀がひと段落して、玉枝さんはそのとき居間の掃除をしていた。
棚の上には、妹と一緒に元気な頃の父親が笑っている。
ふとその写真を取り上げようとした彼女の手が、傍らのあの人形に触った。
ピシッと音を立てて、またしても人形には亀裂が走った。
厭な予感がした。
「それからすぐです。妹が急性白血病で倒れたのは…」
嫁ぎ先の台所で突然倒れた妹は、そのまま救急病院へ搬送されたが、入院してから一週間で亡くなった。
立て続く訃報に玉枝さんも伯母も悲嘆に明け暮れた。
「なぜこんなに不幸が続くんだろう…」
そんなとき、ふと伯母がこんな言葉を口にしたのである。
「ここにあんたらの写真飾ってから、ろくな事が起こらないねえ…」
玉枝さんははっとした。確かに人形の横に三人の写真を飾ってから、父親、妹と立て続けに亡くなっているのである。
それも、人形に亀裂が走るたびに。
「まさか…」
振り返ると、人形は相変わらず悲しい目をして玉枝さんを見ていた。
(寂しい)
そんな声が聞こえた気がする。
彼女はすべてを理解した。

人形は、妹の遺品を整理するときに、お寺に預けて処分して貰った。








10:18, Tuesday, Feb 13, 2007 ¦ 固定リンク ¦ 講評(24) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(7) ¦ 携帯

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 いや、人形を粗末に扱ったわけじゃなさそうだから連れてったんじゃないと思いますよ。寂しいから連れて行った、となると真っ先に玉枝さんに接触したと思います。身近だし何より持ち主だから。  人形が「連れて行った」縺 ... 続きを読む

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■講評

怪異:虫の知らせですか。ゲタの鼻緒とかそういうの。
人形が連れて行ったという解釈なんでしょうが、そうと言うにはもう一押し足りない気がします。
体験者さんが無事というのが最後の一押しってことなのかなぁ。
でも人形は預けちゃってるから確認は無理だし……。む〜。
釈然としないのでここは0
文章:セリフに三点リーダ(…)が入ってるのは仕様ですか。雰囲気を出すには良い小道具ですが、使われすぎてるとさすがに気になります。
また、文章が平坦だと思います。もう少し強調したいポイントを絞って書くと良いかもしれません。0

名前: brother ¦ 13:39, Tuesday, Feb 13, 2007 ×


不幸をむりやり人形の仕業に持っていこうとしてませんか。

>(寂しい)そんな声が聞こえた気がする。
>彼女はすべてを理解した。

気がしただけで聞こえたわけではないんですよね?
別の見方をすればこの人形が身内の不幸を事前に知らせてくれた
のかもしれないし。
私には人形が寂しくて連れて行ったとは思えない。

文章は淡々と書かれていて読みやすいし好感ももてます。
が、読解力の無い私はここに書かれた事実のみで
玉枝さんのようにすべてを理解することは出来ません。
きれいにまとめたラストが鼻につく。
なまいきでごめんなさい。

名前: 桜子 ¦ 14:25, Tuesday, Feb 13, 2007 ×


正統派の人形怪談だと思う。いささか公式通りに運びすぎた感がある。
とはいえ体験談というものは体験者にとっては「ありたること」だったのだから受け入れようと思う。
文章は「怪異を語る」というよりも「悲しい物語を語る」ものになっていると思う。


名前: くりちゃん ¦ 15:01, Tuesday, Feb 13, 2007 ×


「逆に考えるんだ、人形が家族の不幸を知らせてくれた、と」

か、どうかはともかく人形と家族の不幸との因果関係は少し弱い気もする。でもそれから何事もないのであれば、とりあえずよかったよかった。
それと個人的に気になったのは、人形のひび。どういったひびが入ったのか知りたかった。

名前: いただ ¦ 19:05, Tuesday, Feb 13, 2007 ×


内容:0 文章:0

呪いの人形譚ですか。
申し訳ないですが、あっという間に、先がよめてしまいました。


名前: ダウン ¦ 21:36, Tuesday, Feb 13, 2007 ×


古典的な怪談話という感じでした。
個人的な体験としては怖い話と思うのですが、
珍しくはないかと。

 >彼女はすべてを理解した。
などと突然書かれると、体験談なのに創作物語的に見えてしまって、実話怪談としては損をしてしまう気がします。

名前: 飛泉 ¦ 22:04, Tuesday, Feb 13, 2007 ×


人形の亀裂と家族の死、どちらが原因でどちらが結果か、これだけでははっきりしない。
人形の独白(寂しい)も、寂しいから父と妹を連れて行った、父と妹が死んでしまって寂しい、どちらにも解釈できると思う。
「彼女はすべてを理解した」とあるが、その理解の内容はどちらだったのだろうか?

名前: ナルミ ¦ 23:50, Tuesday, Feb 13, 2007 ×


事故や自殺などの突発的な死なら、まさか人形が・・・とも思えますが、人形が病気をもたらすこともあるんですね。
気がつくのに時間がかかりそうで個人的にはイヤです。
文章は、括弧書きのセリフ部分に工夫がほしかったです。

名前: 雛人 ¦ 01:25, Wednesday, Feb 14, 2007 ×


出だしの2行を「玉枝さんはこの件を経て人形が嫌いになった」と解釈すべきなのは承知の上ですが。

人形のひびは、虫の知らせでしょうか。
人形のせいでお二人が亡くなったと思える要素はなく、人形が言った(と思われる)「寂しい」の一言も、隣にいる人たち(写真ですが)が亡くなったことを悲しんでくれているのかな、と。
そう考えると、出だしが「元から人形嫌いな玉枝さんから見た、いやな人形の話の前フリ」のように思えました。(−1)

ここからはあくまでも好意的に解釈した場合の話ですが、玉枝さんが理解した「すべて」が、人形のせいだとして。
次は自分の番かもしれないと思ったら、人形を手離す気持ちもわかります。自分の死期を知らされるなんて怖い。(+1)

名前: 13 ¦ 12:28, Wednesday, Feb 14, 2007 ×


技術0 素材0
怪異(と認識された、偶然の積み重ね)の規模に比して、体験者の方の心理描写がそぐわない印象をもちました。
ご家族をお二人も亡くされ、その元凶であると判断なさった対象を目の前にして、「彼女はすべてを理解した。」だけでは、あまりにも達観なさっているように感じられます。

飾られた写真にはご自身も写っているのですから、「次は自分かも知れない」という切迫した恐怖感や、「寂しいからといって私の家族を奪って許されるのか」という絶望的な怒り、など、もっともっと沢山の想いが一気に押し寄せて来られたはずではないかと思うのです。
現状では、作品全体の雰囲気、トーンを操作するために、あえてそれらの感情を描かなかったという意図があからさまに見えます。
あるいは、遺品整理の際まで処分せずに放置なさっていたかのような状況から判断すると、体験者の方は、心底「命を奪う人形」という現象を信じられていたわけではなかったのではないか、とも思ってしまいます。

雰囲気だけを追う展開になると、リアリティや臨場感が薄れてしまうのではないか、と思いました。

名前: Chelsea ¦ 12:49, Thursday, Feb 15, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■■□□□(+1)…a
構成;■■■■■■□□□(+1)…b
怪異;■□□□□□□□□(−4)…c
恐怖;■□□□□□□□□(−4)…d
嗜好;■■■■■□□□□(±0)…e
※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)

 文章スキルは平均以上のものであると思う。
 肝心の怪異については、玉枝さんの主観のみでしか表現されておらず、読み手を納得させるだけの材料が揃っていない(起こった事実は人形に2度亀裂が入った現象だけである)。
 筆者の方が伝えようとしていることは十分過ぎるほど理解できるのだが、申し訳ないが、怪異は起こっていないと判断する。

名前: 空 ¦ 12:16, Friday, Feb 16, 2007 ×


人形の気持ちを代弁して、こじつけているように感じました。
ありがちな展開なので怖くなかったです。

名前: 丹羽 ¦ 13:02, Saturday, Feb 17, 2007 ×


普通不幸は一つではやって来ないもので、来るときはまとまってやってくるような印象がありますね。
不幸は寂しがり屋ですから。
なので、人形とやってきた不幸の因果関係があまり納得できませんでした。
文章の方にも強引に納得させる説得力はないです。

名前: 藪蔵人 ¦ 12:51, Sunday, Feb 18, 2007 ×


何だかあんまり本物っぽくない話です。

名前: コテキツブ ¦ 17:40, Monday, Mar 05, 2007 ×


本当に「悪い人形」なのだろうか?
不幸は人形の仕業なのだろうか?
教えてくれたとも取れるし、落ちもちょっと強引な気がしますね。
その方は実際にそう仰ったんでしょうが・・・
難しいですね^^;
内容0 文章0

名前: cross2M ¦ 15:15, Friday, Mar 09, 2007 ×


よくある人形怪談の枠内を越えて欲しかったですね。文章は良かったと思います。

名前: 竹下 登 ¦ 10:24, Sunday, Mar 11, 2007 ×


不幸を予知したのか、招いたのか… 怖い話ではあるのですが、類話が多いため評価は低くならざるを得ません。すいません。

文章1  怪異0 =1


名前: 久遠平太郎 ¦ 21:00, Saturday, Mar 17, 2007 ×


いや、人形って怖いです。
ちょいと珍しかったので少女人形写真集買ったら、おええ、キモッ(お前も買うな〜)
ここに登場する人形はどんな役柄だったのでしょう。予告?憑依?冥府の使い?
人形の異常と同時に写真の中に映る人物がひとりひとり亡くなって行く。
最後に残された玉枝さんは何を思ったのでしょう?ここに作者様の意図は隠されていると思います。他の講評を覗いてみてもその解釈はさまざま。
僕はそれでいいと思います。結局このお話は真相などわからぬまま終ってしまっているのですから。
ただゆるぎない事実は、怖い怖くないの思惑に関わらず、怪異と共に二人の方が亡くなったという事なんでしょうね。
最後に残された玉枝さんの、重き悲哀をお察しいたします。

名前: 矢内 倫吾 ¦ 23:12, Monday, Mar 19, 2007 ×


素材・−2 文章・0 結局、何も怪異は起こっていないと判ずる。 文章も特に秀でた所は無し。

名前: つくね乱蔵 ¦ 13:39, Wednesday, Mar 21, 2007 ×


親族が次々と亡くなっていく様子は怖さが迫ってきますね。
ですが、すべての不幸が無理やり人形と結び付けられた印象。
特に(寂しい)以下の文は、実話怪談としての信憑性と面白みを削ぐのに十分だったと思う。
素材:+1 文章:−1


名前: 夢屋 陣 ¦ 16:47, Thursday, Mar 29, 2007 ×


玉枝さんの御家族が次々亡くなった為、人形が連れて行った…。
そう感じたのかもしれませんが、お話を読む限りではお父さんと妹さんの事を知らせてくれたのでは?と思ってしまいました。
(詳しい前後は分かりませんが、あくまで読んだ感じでは、ヒビが入ってからどちらとも連絡が入ったと書いてあった為)


名前: フジ ¦ 00:58, Sunday, Apr 22, 2007 ×


怪異と取れなくも無いが、一方で単なる偶然の一致では? とも思えた。
靴の紐が切れる、陶器にヒビが入る、といった凶兆と、後に発生する凶事との明確な関連性が見出せない以上、その感は拭いきれない。
見方によっては、無理矢理人形に因果を持たせた話、とも取れてしまう。
良くも悪くも「出来すぎた話」と感じた。

名前: GPZ ¦ 04:33, Wednesday, May 02, 2007 ×


ご家族と一緒に住まない、あるいは住めない理由が何かあるのか?もしかして複雑な家庭事情でもおありなのでしょうか?と余計な事を思わず勘ぐってしまします。家族の写真を人形の横に飾ったとたん、父や妹に不幸が起こる因果関係がわかりませんが、作者自身の家族と離れてくらす寂しい気持ちが、人形がもっていた寂しい気持ちとリンクして増長したのかもしれません。危機一髪でしたね。
文章技術評価0 体験談希少度評価2

名前: ナメコ ¦ 18:26, Friday, May 04, 2007 ×


聞いたことあるような展開。事実でも、ちょっとそれだけ……という感じです。

名前: ペペ ¦ 15:02, Tuesday, May 15, 2007 ×



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