ニワンゴ「超」怖い話特集ニワンゴから、毎週二回
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言えない事情
 ミホさんが看護師として働いていた頃。
勤めていた病院を辞め、新しい勤務先を探すため職安通いをしていた。
 〈またこの病院、求人出してる…〉
今回だけでなく、ミホさんが友人の付き添いなどで職安に来るたび必ずと言っていいほど求人を出している病院があった。
 〈何かあるんだろうか…〉
 看護師は独自のネットワークを持っていて、病院関係のウワサは事欠かない。
「あそこは対人関係が最悪だ。あっちは仕事がキツイ割に給料が安すぎる。」など。
ミホさんがいた町はさほど大きくない所だった為、大抵の病院・医院のウワサは知り尽くしていた。
ただ、その病院についてのウワサは聞いた事も無かったし、人に聞いても「わからない」と返答が来る。
正直、まったく予備知識の無い所に面接に行くのは不安だったが、好奇心の方が勝ってしまった。

 いざ面接日になり、初めて病院の中に入った。
…フツーの病院。それこそどこにでもあるような…。
〈…って事は、対人関係か勤務体制に問題があるのかも…〉
 面接は院長の他に、奥様、事務長の3人いて話しをしたのだが、勤務体制も給料も満足、とまではいかないものの、特に不服もなかった。
恐る恐る聞いてみる。
「あの、対人関係は…。イジメとか」
「…あぁ!まぁ…キツイ性格の人はいるけれど、どこにでもあるような程度だからその辺は心配しなくても大丈夫!」
すかさず奥様が答えた。 この病院を仕切っているのは奥様なんだと態度・話し振りから容易に見て取れた。
 面接の結果は《即・採用》だった。いつも求人を出している病院だったから、来る者拒まずだったのかもしれない。勤務開始日はまだまだ先だったが、その日のうちに病院内を案内してくれるという。案内役はもちろん奥様だ。
病棟・リネン庫・処置室など「ハイ次。ハイ次。」と走るようにして案内された。
最後に更衣室だった。「ちょっと遠いんだけど…」とすまなさそうな顔をされ、正面玄関の近くにあった鉄製の重そうなドアを指差した。『関係者以外、立ち入り禁止』と看板が下げてある。
 …ギィー…
鉄製の重いドアが開かれる。長く長く続いた真っ暗な廊下。
左側がずっと壁で右側に部屋が並んでいる。まるで旅館のような造りだ。
だが、病院なんて大抵一つや二つは変わった所はあるものだ。ミホさんは気にしなかった。
奥様はどんどん先に進んでいく。ミホさんも遅れないように小走りで追いかけていった。
 〈あれ?〉
違和感を覚えた。何だかさっきから下へ下へ進んでいるような感覚。まるで地下室に下りているような…。
そんなハズはない。廊下は下り坂になっている訳でもないし、一階のままである。
でも確かに古いコンクリート造りの地下室のようなジメッとした感じや、かび臭いにおいまでする。
〈古いからかなぁ〉
あえて考えないようにした。
それにしても暗い…。途中に窓がないせいか、長い廊下は真っ暗である。
どんどん進んでいくと、突き当たりにあたった。ここだけ左側は壁ではなく大きな一面ガラスの窓があり、日が差し込んでいた。
「ここよ、ここ」 右側の部屋を奥様が指差す。
 ……大きな大きな和室だった。立派な欄間まである。
和室にしてはとても似つかわしくない灰色のロッカーが真ん中に集められるようにして並んでいた。日は差し込んでいるはずなのに部屋の中だけ真っ暗だ。
 部屋に入った途端、一瞬にして全身に鳥肌が立った。
〈見られている…〉
誰もいない和室なのに、四方八方から視線を感じた。欄間の隙間から覗かれているような気配さえする。強いて言えば、周り中遺影に囲まれた部屋に一人残された感覚であった。
 奥様といえば、この部屋に入ってから、一気に口数が多くなり何だかんだとしゃべり続けている。 ミホさんの身体は鳥肌から冷や汗に変わっていた。
真っ暗い部屋よりさらに黒い影が幾度となくシュッシュッっと視界に入る。
「そうそう、電気はこのスイッチね…」と奥様がスイッチに手をかけようとした瞬間、
…パチンッッ… 
なにかが弾けるような音がした。
「暗くなったらこのスイッチを…あら?…点かないわ。切れたのかしら?ヤダ、朝まで点いてたのに。ごめんなさいねー。」
ブツブツ文句を言ってる奥様を尻目にミホさんは思った。
〈ダメだ。ここ。…耐えられない…〉

 家に帰ったミホさんは高熱を出し、二日ほど寝込んだ。
起き上がれるようになってすぐ病院に断りの電話をした。当たり前だが、相手はかなりご立腹でしつこく納得のいく理由を聞いてきた。
人の生き死にを断る理由にはしたくなかったので、「結婚する事になった。」とかかなり無理なこじつけを言った。
ガッチャリと電話が切られた。
 …言えない。言える訳が無い。 二十歳もトウに過ぎたいい大人が〈更衣室がこわいんです〉などと。
あの病院に勤めたら昼夜問わず更衣室を使うことになる。そんなの耐えられない。
 友達にも言えない。電波系と思われるか、信じてくれたとしても「気のせいでしょ」と言われたらそれまでなのだ。
だが本能が言ってる。
〈あそこはダメだと〉

あの視線は何だったのか。
あの動く影は何だったのか。
タイミングよく切れる電気なんて偶然だなんて思えない。
 結局、ミホさんは小さな個人病院に勤務が決まった。
 あの病院は相変わらず、求人の広告を出している。









10:43, Monday, May 14, 2007 ¦ 固定リンク ¦ 講評(14) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯

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■講評

職安の行はもっと短くてもいいと思うが、その次の病院での場面はかなり読ませる。
鉄製の重いドアや、真っ暗な廊下、不釣り合いな日本間等ワクワクしたのだが、どうしても中途で投げられてしまったような感じが残った。
また所々説明不足の場所があると思う。
例えば更衣室のところは、
真っ暗な部屋なのにそのしつらいまで見えるのですか?そうして明かりもつけずに部屋に入るのですか?
と思ってしまった。
最後の段落はいらないと思う。別の病院に就職したことくらいは必要と思うが。

名前: くりちゃん ¦ 13:19, Monday, May 14, 2007 ×


難しいなぁ。あくまで当人の感じた怖さを書き重ねていった、ということなので読み手が共感できるかどうかに委ねられてしまっている。
誰もが怖いことならば良いが、本文中にあるように「友達にも言えない。」レベルであるし、奥さんも理由を知りたがるのは具体的な怪異に心当たりがないということかもしれない。
更に、序文など少々書き込みすぎの感があって肝心の怪異の印象を薄めているのではないだろうか。
素材:+1 文章:0

名前: 夢屋 陣 ¦ 15:52, Monday, May 14, 2007 ×


体験者の恐怖感はよく伝わってくるが、明確に「怪異」と言えるようなことは起きていない。

名前: ナルミ ¦ 01:24, Tuesday, May 15, 2007 ×


怪異と断定できるものが不足しているような気がします。
体験者がおおげさに怯えているだけにも感じられます。
病院の暗い雰囲気はよくでていると思うのですが。
文章技術評価0 体験談希少度評価0

名前: ナメコ ¦ 18:16, Tuesday, May 15, 2007 ×


病院のイヤな雰囲気とミホさんの恐怖心はとても丁寧に描かれていて、怪異がその影に隠れてしまっている印象です。

鉄製のドアが開かれるまでと、内定を断ってからのくだりはもっとサックリ済ませても良かったですね。
けれど、イラつくことなくスムーズに読めて、上記の感想に至ったのは読後でした。文章に加点です。

名前: 13 ¦ 22:05, Wednesday, May 16, 2007 ×


内容:1 文章:0

少し長めの文章にもかかわらず、ハラハラとしながら読めました。
病院の不気味さなどきちんと描写されていて、暗に「ここはヤバイ所」と十分に感じさせられます。
タイミングよく電気が消えるなど怪異らしいことは起こっていますが、やはり決定打がなかったように思えます。

名前: ダウン ¦ 22:52, Wednesday, May 16, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■□□□□(±0)…a
構成;■■■■■□□□□(±0)…b
怪異;■■■■■□□□□(±0)…c
恐怖;■■■■■□□□□(±0)…d
嗜好;■■■■■□□□□(±0)…e
※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)

 当事者が感覚的に感じた恐怖に対し、仰々しい表現が長々と綴られているのであるが、その当事者自身が直面している恐怖というものがイマイチ伝わってこない。
 時系列的並べられた文章も無理に雰囲気を作り出そうとしている印象を受け、読み手と一線を引いた場所で当事者だけが怯えているように感じる。
 決定的な怪異が提示されていない点も作品の評価を下げている。

名前: 空 ¦ 17:07, Friday, May 18, 2007 ×


三点リーダ経の教祖様ですね。
さておき、本人が怖いと思っただけのことを、仰々しく書いただけのような印象。
怖いと思っている事は伝わってくるのだが、残念ながらそれまでですね。
やはり、怪異らしい怪異が錯覚や偶然で片付けられてしまいそうなほど弱い。
その弱さを分の長さでは補えないといいますか、これくらいのことならもっと短くても良いような気がしますね。
つまり、引っ張るだけ引っ張って、読み手は期待に煽られてるのに、これでは肩透かしを食らわされると同時に疲れてしまう。
怪異に合わせた背の丈で表現できれば、結果はまた変わったかも知れません。
内容0 文章0

名前: cross2M ¦ 02:44, Sunday, May 20, 2007 ×


素材・−1 文章・−1
変な言い方だが、状況証拠しか
揃っていない怪異である。
具体的にどうこう、が弱い。
文章も妙な癖があり、読み辛い。

名前: つくね乱蔵 ¦ 10:39, Thursday, May 24, 2007 ×


長い。恐怖心を煽ることには役立っているが、怪異自体が見られていること、電灯が点かなかったことで、肩透かし。

名前: ペペ ¦ 16:13, Saturday, May 26, 2007 ×


ネタと全般的な文章の配分バランスがよくない(という批評家的な言い回しは嫌だなと今思ったので)というか、陰気な病院内部で何が起こるのかとワクワクして期待大だったのですが、何かが棲み付いている止まりであったのが悲しかったです。
体験を気のせいと思っているわけではありません。
こういったレベルのお話は霊感の強い方のお話を聞いていると、露払い式にたくさん出てくるのです。あそこのビルが、会社の更衣室が、駅のトイレがetc…。
と、いうわけで体験者が近付くのをやめた、というのでしたら、書き手としてはその裏に隠されたものを後日自分で調べるなりしての肉付けも必要となると思うのです。
ここの時点で投げっぱなしにされても、読み手は物足りなかったのではと思ってしまいます。少なくともスパゲティの味付けでいうと、「タバスコ下さい」とウェイトレスのおねえさんに頼んでしまう感じ(笑)

名前: 矢内 倫吾 ¦ 09:53, Sunday, May 27, 2007 ×


うーん、これは難しい。
ミホさんはもっと強烈な体験をしたのではないでしょうか。
あくまでも個人的な推測にすぎないのですが。
もっと詳しく話を聞いて欲しかったですね。

名前: 藪蔵人 ¦ 18:25, Sunday, May 27, 2007 ×


状況説明が長すぎるように思う。看護師のネットワークだとか面接や院内の様子だとかを事細かに書かれているが、そこまで長々と書く必要性も感じられないくらい、正直どうでもいい情報ばかりである。。擬音や三点リーダの多用を含め、この方の癖なのだろうが、今回は特にそれが目に付いてしまう。
登場する怪異も、気配や黒い影、消える電灯といった弱いものであるうえ、最後はミホさんの本能に頼ってしまっているのはいただけなかった。雰囲気だけで怖がらせようとしているようにさえ思えてしまう。最後の段における、体験者の独白も引っ張りすぎに思えた。

名前: GPZ ¦ 20:52, Tuesday, May 29, 2007 ×


希少価値0 文章2
当事者が感じた恐怖はよく伝わるが、自称自体の恐怖度が少々乏しく残念。 

名前: HEATH ¦ 11:34, Wednesday, May 30, 2007 ×



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