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岡村が中学生の頃に住んでいた家の近くには寂れた墓地があった。
学校からの帰り道、この墓地を抜けるとかなり近道になるので、岡村はいつも墓地を抜けて帰っていた。
ある日、暗くなるまで遊んだ岡村は、一人でトボトボと墓地の中を歩いていた。 考え事をしながら歩いていると、自分の後ろを誰かが歩いている事に気付いた。
足音がする。
岡村の家はかなり山を登った場所にある。 この墓地を抜けた先には、もう岡村の家以外民家は無いはずだ。
こんな時間に墓参りか? いや、暗くなってから墓参りに来るヤツなんて、そういないだろう。
岡村は考えた。 岡村の家族であれば声をかけるはず。 岡村は考えるより見たほうが早いと振り返った。 しかし、そこには誰もいない。 振り返った途端、今まで聞こえていた足音さえも消えていた。
あれ? 確かに誰か歩いていたはずなんだけど…気のせいか…
だが、岡村がまた家の方向へと向き直したその瞬間、また聞こえてきたのだ。 足音が。 路面に敷きつめられた小粒の石を踏みしめ歩く音が。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……
岡村は全身が痺れるような、熱くなるような感覚を覚えた。 もう一度、なかば反射的に振り返る。
やはり 誰もいない。 だが、足音は聞こえたままだった。 姿の見えない何かが小石を踏みしめ、足跡だけをを刻みながら岡村の方へと近付いて来る。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「ひっ…!!」
岡村は声にならない悲鳴を漏らすと、自宅の方向へ全力で走り出した。
ザクザクザクザクザクザク……
背後からは、一定の距離を保ったままで足音がついてくる。 どれだけ岡村がスピードを上げても、その間隔は変わらない。 ただ、岡村のスピードに合わせて、ついてくる。
一分ほどで墓地を抜けた。
もしかして墓地を抜ければ足音も消えるのではないか。 その淡い期待も一瞬で過ぎ去った。 墓地を抜けても足音は消える事はなかったのだ。
岡村は背中に、追いかけてくる者の嫌な圧力を感じながら、暗い夜道を走り続けた。
やがて家の灯りが見えてきた。
もうすぐだ。もうすぐ家に着く。
岡村はスピードを上げてもどうにもならない事をわかっていながらも、疲れた足に力をこめて走った。
早く…早く…
岡村は全速力のまま玄関の引き戸にすがりつき、この上無い速さで戸を開けて中へ飛び込んだ。 そして、戸を閉める瞬間に岡村は見た。
戸が閉まるまでの、後10cmの隙間にニヤニヤとい やらしく笑う男の顔があったのだ。
岡村は悲鳴をあげた。
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受信: 15:17, Friday, May 25, 2007
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■講評
「ニヤニヤといやらしく笑う」というのがすごく禍々しい。 すがりつこうと、ある意味必死でついてくる霊よりも、おふざけと分かってやっている確信犯的なものがある。 文章も読みやすく段落わけしてある上に、擬態語が効果的だと思う。 |
名前: くりちゃん ¦ 22:12, Sunday, May 13, 2007 ×
| 徐々にエスカレートしていき、最後にとどめの一撃があるのがよかった。これはなかなか怖い。 |
名前: ナルミ ¦ 00:30, Monday, May 14, 2007 ×
名前: ペペ ¦ 04:25, Monday, May 14, 2007 ×
べとべとさん、送り狼・・・まんまやん。 妖怪好きとしては基本そのままの展開なことに、嬉しいような、つまらないような。 素材:+1 文章:0
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名前: 夢屋 陣 ¦ 15:40, Monday, May 14, 2007 ×
ニヤニヤ笑う男は人間なのか?それとも妖怪なのか?不気味ですね。 誰かにつけられるのはそれだけで気持ち悪いです。 文章技術評価0 体験談希少度評価1 |
名前: ナメコ ¦ 18:02, Tuesday, May 15, 2007 ×
内容:2 文章:1
ベトベトさんみたいな話でおしまいかな?などと思っていたら、最後にやってくれました。 隙間のニヤニヤ顔、怖かったです。 文章も迫力がありました。 |
名前: ダウン ¦ 23:50, Tuesday, May 15, 2007 ×
逃げきったと思わせておいてとどめですか; 家に無事着いても、窓の外は見たくないですね。
イヤだなとは思ったものの、ネタそのものには新鮮味を感じませんでた。追われている緊張も、徐々に盛り上がってきてはいるのですが岡村さんと同じ気分とまではいかなかったです。上手さゆえ淡々としているというか。 誉めているのかいないのかわからない講評になってますね、ごめんなさい; |
名前: 13 ¦ 21:35, Wednesday, May 16, 2007 ×
-4 0 +4 文章;■■■■■■■□□(+2)…a 構成;■■■■■□□□□(±0)…b 怪異;■■■■■□□□□(±0)…c 恐怖;■■■■■□□□□(±0)…d 嗜好;■■■■■■□□□(+1)…e ※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)
当事者に付き纏う怪異の執拗さは丹念に描かれており、その点は評価したいのだが、やはり怪異自体の既出感、追い詰められてから結末に至るまでの展開は予定調和の感が否めない。 この怪異を水木しげる氏も遭遇したことがあるという妖怪「べとべとさん」の雰囲気を漂わせるように描いていたとしたら全く違った印象に仕上がっていたかもしれない。 また、個人的にはそうしたほうが面白い作品として成立したように思うのだが如何か。 |
名前: 空 ¦ 16:37, Friday, May 18, 2007 ×
う〜ん、怪異の王道というか、オーソドックスすぎて面白みが少ないのですが、最後のニヤニヤにはぞっとしました。 描写もうまいとは思うのですが、やはり小ネタゆえの弱さをカバーできるほどではなく、評価点を上げるまでには至れません。 内容+1 文章0 |
名前: cross2M ¦ 02:34, Sunday, May 20, 2007 ×
素材・0 文章・0 恐ろしいことは確かである。 最後にニヤニヤと笑う、というのも 意外性がある。 が、高得点にまでは至らない。 |
名前: つくね乱蔵 ¦ 10:43, Thursday, May 24, 2007 ×
追っかけてくる足音。 ぶっちゃけいってしまうと、最後のニヤニヤ以外は怪異体験者からよく聞きますし、自分も疑似体験よくあります。(気のせいだったかなと思うシュチェーションあれば、あれえ、変だなと確信犯的なものまで)従って描写がお上手で臨場感が大変ありました。 でも、王道的?(この言葉あまり好きではありません)というか、古典的なムジナの話にも近く、オチが読める(この引用も好きではない)と、たぶんすぐ後ろにいるんだろうな、思っていた通りに落とされてしまって、うーん、という感じでした。 実話だから、あったる事を書いていると思われますので仕方ないと思います。ただ、読み手側の心をくすぐるという点では、ストレート過ぎる怪談であったかも知れません。 |
名前: 矢内 倫吾 ¦ 09:35, Sunday, May 27, 2007 ×
やや意外なオチが用意されているものの、どんでん返し、という程の衝撃力はないですね。 それ以外はありきたり、と言えるほどに語りつくされた怪異なのですが。 誰もが一度は怖がったことのあるシチュエーション(何かが後をつけてくる。振り返っても誰もいない) だけに、途中の文章はなかなか怖かったです。 |
名前: 藪蔵人 ¦ 18:24, Sunday, May 27, 2007 ×
あと10センチ、という箇所は個人的にツボである。 足音に追いかけられるというシチュエーションは類型が多すぎて、それだけでもうオチ対する期待が低くなってしまう。そこへ来てこの展開は、怪異の恐怖を底上げするに十分である。 構成を含めた作者の作戦勝ち、といったところか。 |
名前: GPZ ¦ 20:36, Tuesday, May 29, 2007 ×
希少価値1 文章1 気もちの悪い体験である。 言葉の選び方がよい。 |
名前: HEATH ¦ 19:58, Wednesday, May 30, 2007 ×
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