ニワンゴ「超」怖い話特集ニワンゴから、毎週二回
「超」怖い話をお届けします。

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のろい
 市役所に勤めている佐田さんの話。

 小さな病院を開業している友人の武本と久しぶりに呑んだ時。
「参っちゃったなあ。お前、拝み屋とか知らないか?」
 のっけから意外な事を言われて、佐田さんは少したじろいだ。
「いや、知らんけど。何かトラブったのか?」
「俺、呪われちゃってさ」
 穏やかでない。
「とにかくさ、これ見てくれよ」
 武本は震える手で、一通の封書を佐田さんに手渡した。
「何だよこれ?」
 話を聞くと、先月に辞めたばかりの看護師から送られてきたものらしい。
 中には破られた御札と紙が入っていた。
 色紙大の和紙。
 真ん中に大きく「呪」と書いてある。
 周りには、恨み言を書き連ねたのだろうか?文字がびっしりと重なっていて、判読できる文字は少ない。
 中には血で書かれたとおぼしき赤黒い文字が幾つか躍っている。
「お前さあ、この子に何したの?」
 呪いに実効性があるのかはさておき、送った側の執念にはそら恐ろしいものを感じる。
「喰っちゃったんじゃないの?」
 重ねて聞いた。
 武本は、昔から女癖が悪い。
 加えて職業が職業だから、結構やりたい放題らしかった。
「喰ってねえよ。むしろその女だけ喰わなかった」
 そう言いながら、武本が首筋をぼりぼりと掻いた。
 そういう怨まれ方もあり、なのか。
「問題はさ、効くわけ?この呪い」
 単刀直入に聞かれても、佐田さんにしてみれば、さあねえとしか答えようがない。
「とりあえず、送られてきた紙と御札は呪物じゃないと思うんだよな」
 思いっきり専門外なのではっきりとはわからないのだが。
 びっしり書かれた紙の方はどちらかというと今後ストーカー被害の方へ繋がって行くような気がした。
「まあ、気にしないのが一番だね」
 気休めにもならないかもしれないが、佐田さんはとりあえずそう言ってみる。
 武本は他人事だと思いやがってとか言いながらまた首筋をぼりぼりと掻いた。
 コイツに、こんな癖あっただろうか?
「首筋、どうかしたのか?」
「コレか……ああ、何かにかぶれたんだろうな。俺皮膚科じゃねえから」
 分からない、というわけか。
「藪医者め、病気してもお前だけには診せん」
「死にかけててもお前だけは診てやらんからな」
 と。型どおりの挨拶をして別れたのがほんの半月前だったという。

「ヤバイんだ俺」
 という連絡が佐田さんに入ったのは、つい最近のことである。
 外には出れないからとにかく来てくれと言うので、彼は武本のマンションを訪ねることにした。
武本は、目張りを施して真っ暗になった部屋の中で怯えていた。
 明かりはローソクが一本。
「どうしたんだよ」
「呪いだ呪い呪われたんだよ俺あの女に」
 甲走った声で武本が怒鳴る。
 ランニングシャツにトランクスといった格好で、肘の辺りをしきりに掻き毟っていた。
「まあとにかく落ち着けよ」
 佐田さんは、自分を落ち着ける必要もあってタバコに火を点けた。
 ライターの火に浮かび上がった武本の姿は確かに化け物じみている。
 首筋から腕にかけて。
 薄暗くてはっきりとはしないが、足も一面に発疹に覆われているらしい。
 しかも掻き毟ったのだろう。所々皮膚が破れて血がにじんでいる。
「その、シャツの下も?」
 めくってみると、シャツの下の発疹は他にくらべてそう多くはないようだ。
 ただ掻き毟った痕は残っていて、発疹よりミミズ腫れの方が目立つ。
「呪いだろ?これ。呪いなんだろ?」
 武本は半ば放心したように呟き続けている。
 呪い?本当か?
 まさか、とは思ったが聞いてみた。
「お前、皮膚科には診せたんだろうな?」
「診せるわけねえだろ。だってこれ呪いなんだからな」
 武本が怒鳴った瞬間。
 突然、気違いじみた女の高笑いが部屋の中で響き渡った。
 どこから聞こえたのかは分からない。
 ただ。
 窓の外、目張りされたガラスの向こうを横切った影。
 ……おいおい、十二階だぜ。ここ……
 武本の悲鳴に包まれて、佐田さんの全身を冷たいものが駆け抜けていった。

「とにかく無理矢理病院に連れてったんだけど……」
 皮膚科を受診した武本は、なんとかかんとか言う慢性皮膚疾患を宣告され、現在も通院を続けているという。
 







08:12, Wednesday, May 09, 2007 ¦ 固定リンク ¦ 講評(14) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯

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» 【 4】 のろい [hydrogen's blogから] ×
内容: 2文章: 2これは面白い。またイヤじゃないですか、皮膚炎ってのが。骨の一本や二本折るほうがまだ親切ですよ。会話もテンポよく引き込まれました。最後は一応症状に病名らしきものがついてはいますが原因は不明ってところでしょうね。一種のバイオテロって可能性も .. ... 続きを読む

受信: 18:34, Sunday, May 27, 2007

■講評

皮膚疾患は偶然に女のストーキング行為と同時期になったかも知れないが、女の高笑いや高層階の外をよぎる影、などを見てしまったらもう超常現象を信じるしかないような気がするが、「呪われちゃってさ」といいながら、その女との経緯が書かれていないので、ちょっと不満。
不気味な雰囲気がよく出ていると思うが、「目張りを施して真っ暗になった部屋の中で怯えていた。明かりはローソクが一本。」はどうだろう。本当に怖いときには明かりを全部煌々とつけておかないかな。光源が小さい方が影が揺らめいて余計に怖いと思うのだが。
実話にあれこれ注文をつけて無粋ですが。

名前: くりちゃん ¦ 11:56, Wednesday, May 09, 2007 ×


佐田さんと武本さんの交流を描くよりも、呪ったという女を書いた方が良かったのでは。
ある程度は想像できるが、やはり迫力には欠けると思う。武本さんが呪いと信じ込む経緯も、理由が読み手には今ひとつ不明なため、しっくりこない。
高笑いや影という怪異があったからならば、最後の病院での診察結果はあえて書かない方が不気味さが残ったかも。
素材:+2 文章:0


名前: 夢屋 陣 ¦ 13:55, Thursday, May 10, 2007 ×


なかなか怖い話。
看護士ならそういう疾患を起こしそうな薬品を入手できるかもしれないし、それを御札に塗っていたのかもしれない。そう考えると、明確に怪異と言えるのは窓の外の影だけなのだが、怪異が小粒の割に恐怖感が強いのは、やはり、武本の常軌を逸したとも見える恐がり方のせいだろう。
欲を言えば、武本がこうまで「呪い」を信じ込んでしまった理由もきちんと書いてほしかった。

名前: ナルミ ¦ 00:08, Friday, May 11, 2007 ×


呪い・・・怖い。
ただ怖さはあるが、肝心の肝心の部分が、女の高笑いとガラスの向こうを横切った影のみではそこまで期待した個人的な気持ちには届かなかった。
慢性皮膚疾患とわかった点でミミズ腫れ部分は怪異とは切り離して考えた。
おしい。

名前: 黒ムク ¦ 17:20, Friday, May 11, 2007 ×


内容:1 文章:1

武本さんがただ狂っただけと思わせて、最後にはきちんと怪異が現れている。
怖さはそれほどでもないですが、うまい終わらせ方ですね。
しかし、手をださなくても呪われるなんて、そちらの方が怖いな〜。


名前: ダウン ¦ 01:27, Saturday, May 12, 2007 ×


その看護師以外は喰ったって、おいおい武本さん;
それはおいといて。

ただ痒いのならさっさと皮膚科へ行くでしょうから、呪いだと確信して引きこもる何かが起きたんでしょうね。
照明をつけない程度ならストーキングかと思いますが、目張りがイヤな感じを示唆してます。
最後にはきっちり現れてくれて(?)やっぱりそうか、とスッキリ。12階というのがまた親切でw

文章もこれまたスッキリですね。
会話、佐田さんの心境、武本さんの様子がうまく混ざり合っていて、かなり好きです。

名前: 13 ¦ 21:47, Saturday, May 12, 2007 ×


色に狂うののも、ほどほどという事でしょうか。
武本くんは今まで散々遊んでいたせいで、そういう女性達の負の念が、ストーカー女の呪いに加算され、助長したと思われます。嫌な怖さはありました。
ラストは結局、お医者さんに行って終わり。という普通でしたね。章技術評価0 体験談希少度評価2

名前: ナメコ ¦ 16:34, Tuesday, May 15, 2007 ×


職業柄やりたい放題の意味がわかりませんorz
医者をそんな目で見てしまうではないですか!!
うらやまs(ry
消化不良です。
この消化不良は医者に行っても治らなさそうです。
だって、何かしらの事聞けると思うんです。
呪われるに至った経緯だとか何とか。
聞けたのに、敢えて書かなかったのか、聞かなかったのかわかりませんが、因果関係がスグそこに転がっているのに、それを拾って見せてくれない著者の意地悪さに腹が立つ!(いや、立ってませんけどね^^;)
って、唯一喰ってない女性って事は書かれていますけどね。
医者に行ったら皮膚炎でしたって普通に診断されたら、そういうのを起こせる薬かなんか、うまい事摂取させられたんじゃないのぉ?とかうがってしまうのは、超ー1での講評を行うようになってからの悪い癖ですか?そうですか。
とにもかくにも、投げっぱなしではない投げっぱなしに消化不良起こしただけで、怪異ってどれだろ?横切った影か?そうですか。で終わってしまったのが残念。
内容0 文章+1

名前: cross2M ¦ 06:17, Wednesday, May 16, 2007 ×


   -4   0  +4
文章;■■■■■■□□□(+1)…a
構成;■■■■■□□□□(±0)…b
怪異;■■■■■□□□□(±0)…c
恐怖;■■■■■□□□□(±0)…d
嗜好;■■■■■□□□□(±0)…e
※(a+b+c+d+e)/5…総合点(小数点以下第1位四捨五入)

 画が容易に頭に浮かぶということは、描写表現が達者であるということなのだろうが、個人的にはどうにも怪異が戴けない。いや、怪異自体は決して悪い代物ではないのだが、状況が悪化する以前から当事者が要因を呪詛によるものであると信じて疑わないところがどうも理解できず、違和感を感じてしまうのである。
 当事者をそうさせる何かしらの理由があるようにも思えるのだが、当事者が呪詛の対象となるに至った肝心の部分がすっぽり抜け落ちてしまっているために、腑に落ちないまま結末に至ってしまった。
 当事者2人の会話など、非常にテンポ良く読ませて戴いただけに少々残念に思った。

名前: 空 ¦ 09:12, Friday, May 18, 2007 ×


きれいな文章、怖い内容。
にもかかわらず、どこか冷めてしまって川の向うの火事のように感じてしまうこの作品のネックは「分かり易く書きすぎている」のではないかなあと僕は思いました。
「のろい」とは、やっぱり「どっかーん出てます」的な要素ではなく、本人の精神を侵食し、蝕んでいくじわじわっとした要素が不可欠です。
うーんでも、何となく八方美人的に「これなら誰が読んでも理解できるだろう」という感じで書いてしまったため、舞台裏から芝居を眺めているような気分で物語を見てしまうのです。
これはひとえに作者さまだけのせいとはいえない面もあるかも知れません。匂わす描写だけですと、「怪異はどれですか?」という講評の集中砲火を浴びてしまうのが今大会にはよく見られますから、その部分を拾っての仕上げ方だったのかも知れません。
もちろんこのままでも一定の水準をクリアしている作品とは思いました。ので僕はちょいと惜しい気がしないでもなかったです。

名前: 矢内 倫吾 ¦ 08:46, Saturday, May 26, 2007 ×


武本氏に心当たりがなさそうなので、余計怖い。くわれなかったから呪ったのか?ホント、わからないところで恨まれたりするからな。

名前: ペペ ¦ 14:49, Saturday, May 26, 2007 ×


呪いが効いちゃったのはきっと半分以上武本さんの功績なんだろうなあ。
呪った側としては、してやったりなんでしょうね。

名前: 藪蔵人 ¦ 07:58, Sunday, May 27, 2007 ×


素材・1 文章・0
呪い殺すだけが呪いではない、か。
『痩せる男』というホラー小説の中に、ワニのような皮膚になっていく
男というのが出てくるが、それと同じ嫌さ加減。
面白かった。

名前: つくね乱蔵 ¦ 23:35, Sunday, May 27, 2007 ×


やけに現実味のある「呪い」である。いきなり「呪われたからどうしよう?」など切り出されて、筆者もさぞ困惑したことだろう。
医者である友人が、自らを襲う身体的異常を「呪いだ」と決め付けてしまうアンバランスさが面白い。皮膚科もそうだが、まず寺か神社に行けよ、と突っ込みたくなってしまう。
それだけに、オチで皮膚病であることは明かさないほうが良かったのではないだろうか。呪いは呪いのまま終わらせたほうが良かったように思う。

名前: GPZ ¦ 01:44, Tuesday, May 29, 2007 ×



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